ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1781 おねがい、お兄さん
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ankoss
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「いだいいいいいいい!! やべでえええええええ!!」
「ゆえーん! ゆえーん!」
公園の奥。れいむお母さんとれいむお姉ちゃんの悲鳴が響いた。
「ゆうう……。おかあしゃん、おねえちゃあん……」
まりしゃは植え込みの陰に隠れ、目をぎゅっとつむった。体の震えが止まらない。
「どぼじでこんなこどずるのおおおお!? れいぶ……れいぶ、なにぼじでないのにいいいいっ!!」
「ゆえーん! おがあじゃああああんっ!」
お母さんとお姉ちゃんが何をされているのかはわからない。いや、わかりたくない。
人間さんが振りかぶる棒切れが見えたが――あれが何を意味しているのかなど考えたくもない。考えようとするだけで、おそろしーしーが漏れてしまう。すでに数滴漏れた。
まりしゃは思い返す。
今日は以前から約束していた、公園内でのピクニックの日だった。とても楽しい、ゆっくりとしたイベント。元気におうちを出発。親子三人、しあわせー! な時間を過ごすはずだった。
それが一人の人間さんの登場によって一変した。
あっという間だった。
そのゆっくりできない人間さんは、公園内をゆっくり歩いていたお母さんとお姉ちゃんを持ち上げ、連れ去ってしまった。
まりしゃだけが無事だった。ちょうちょうさんを追いかけていたまりしゃは二人から離れた所にいたので、気付かれなかったらしい。
お母さんの「あんまりはなれたらあぶないよ!」という言いつけを守らなかった事が、皮肉にもまりしゃの身の安全に繋がったのだ。
どこかへ連れて行かれる二人を見て泡を食ったまりしゃは、それでも「どこにいきゅのじぇええ!?」と声を上げるのを我慢しながら、そろーりそろーりと人間さんの後をつけた。
そして今の、このゆっくりできない状況に至る。
「やべ……やべでぐだざいいいいっ!! ゆべっ! もうゆるじでええええええっ!! ゆっぐりざぜでぐだざいいいいいっ!!」
「ゆんやあああああ!! おかあしゃんをいじめないでえええええっ!!」
まりしゃは困った。
今すぐ植え込みから飛び出して、「やめてあげちぇなのじぇ! おかあしゃんとおねえちゃんがいやがっちぇいるのじぇ!」と人間さんに言い放つことは容易い。
しかしそれが何になるのか。
人間さんはまりしゃにも酷いことをするだろう。お母さんやお姉ちゃんを助けるどころか、まりしゃも人間さんの手にかかってしまうだけだ。
「こまっちゃのじぇ……。まりしゃは……まりしゃはどうすればいいのぜ……?」
人間さんの背中を睨みつけながら、まりしゃは集中した。日ごろからお母さんやお姉ちゃんに「のんびりやさんだね!」と言われるまりしゃの、ゆん生初の集中だ。
だからだろう。
「……おい。おまえ、こんな所で何やってるんだ?」
自分に接近していた存在に気付けなかった。
腰を屈め、まりしゃに覆いかぶさるように、別の人間さんがそこにいた。
「ゆ……むっ……!?」
人間さんのおててが、まりしゃのお口を塞ぐ。
思わず大きな悲鳴を上げかけたまりしゃだったが、それは人間さんによって阻止された。
まりしゃは恐怖し、しかし次の瞬間はっとした。
ここで大声を出そうものなら、お母さんとお姉ちゃんに酷いことをしている人間さんに見つかっていただろう。
まりしゃは命拾いしたのだ。この人間さんに助けてもらったのだ。
「ゆわあああっ!! おちびちゃんにてをだざないでええええ!! おちびちゃんは……おぢびちゃんは、まだおちびちゃんなんでずううううっ!!」
「いだいよおおおおお!! いだいよおおおおおっ!! ゆっぐぢでぎないよおおおおおっ!!」
「……あそこで虐められているのは、おまえの友達? いや、大きさ的には家族か?」
お母さんとお姉ちゃんの悲鳴を聞いて、人間さんが小さな声で言った。
「むう! むう!」
お口を塞がれているので話せないまりしゃは、力いっぱい、こくこくと頷いてみせた。
「なるほど。で、おまえは家族をどうにかしたいんだな?」
「むうっ! むうっ!」こくこくと体をゆする。
「でも自分が出て行った所でまったくの無意味だと、つまりおまえはこう考えていたわけだ」
「むううう! むううう!」こくこく。
「なるほど。――よし、俺に任せろ」
人間さん――お兄さんがまりしゃのお口からおててを離した。
「俺があいつにビシっと言ってやるよ。おまえの代わりにな」
お兄さんは小声で、しかし力強くそう言ってくれた。
「あ、ありがちょうなのじぇ! おにいしゃん、ありがちょうなのじぇ! ゆっくちしていっちぇにぇ!」
まりしゃは涙と、少量のうれしーしーを流しながらお兄さんにお礼を言った。もちろん、いつもよりずっと小さな声で。
「あのゆっくちできないにんげんしゃんに、『やめてあげちぇなのじぇ! おかあしゃんとおねえちゃんがいやがっちぇいるのじぇ!』っていってあげちぇなのじぇ!」
「ああ、いいぞ。悲鳴を聞くだけでも痛そうだもんな」
「そうなのじぇ! まりしゃたちだっていきているのじぇ! いたいいたいはいやなのじぇ! ゆっくち! ゆっくち!」
何だか興奮してきた。まりしゃは小さな体に溜め込んでいた恐怖や怒りを追い出すかのようにお口を動かした。
「あんなゆっくちできにゃいにんげんしゃんは、まりしゃ、だいっきらいなのじぇ!! だいっきらいなのじぇ!!」
「なるほど。おまえの気持ちはよくわかった」
そう言って微笑むお兄さんは、とても頼もしく見える。
自分では無理だが、このお兄さんならばお母さんとお姉ちゃんを助けてくれるはずだ。お兄さんはあのゆっくりできない人間さんよりずっと体が大きく、強そうに見える。
「やべでっ! やべでぐだざいっ!! やるなられいぶをやっでぐだざいいいいっ!! れいびはがまんじばずがらああああっ!! がばんじでがばんじばずがらああああっ!!」
「もうやじゃあああああ!! ゆびゃっ! ゆびゃっ! れいみゅ……おうぢがえるううううううっ!!」
「よし!」お兄さんは勢いよく腰を上げた。
そしてゆっくりできない人間さんに向かって叫ぶ。
「てめえ! この野郎!」
まりしゃが植え込みの陰からこっそり覗くと、ゆっくりできない人間さんがびくっと体を強張らせるのが見えた。
「いいか、よく聞け……。その親子が嫌がってるじゃねえか! やめてやれよ!」
「そ、そうなのじぇ!」
その言葉にまりしゃは頷き、小声で言った。
お兄さんはさらに続ける。
「その親子だって! ゆっくりだって! 日々を面白おかしく生きているんだ! それをお前のような奴が踏みにじっていいのか!? いや、いい訳がねえ!! 何でそんな酷いことができる!? ――ああ、そうさ! それはお前がクソ野郎だからだ! わかったか、このクソ野郎!」
「なのじぇ! なのじぇ!」
「――という趣旨のことをだな」
いきなりの浮遊感がまりしゃを襲った。「おしょらをとんでいるみちゃいなのじぇ!」
「生意気にもこのまりさが言ってたよ。――だよな、まりさ?」
「ゆっ?」
何が起こったのか。まりしゃの脳ミソの回転が追いつかない。
植え込みの陰からお兄さんに持ち上げられ、ゆっくりできない人間さんの前に突き出されている自分自身。
何だかよくわからないが、今この場では、それだけわかれば十分だった。
「ゆえええええええっ!? どぼちてなのじぇええええっ!?」
「じゃあコレ、ここ置いとくんで。あとはよろしく」
お兄さんは楽しげにそう言うと、まりしゃを地面に下ろし、おててをひらひらさせながら去っていってしまった。
「おおおおおっ、おにいしゃん!? どこにいくのじぇ!? どこにいくのじぇ!?」
慌ててお兄さんを追おうとするまりしゃの前に、大きなあんよが立ちはだかった。
恐る恐る見上げると、そこには――
「おぢびぢゃん……!! にげでええええええっ!! ゆっぐりじないでにげでえええええっ!!」
「ゆええええええん! まりしゃあああああ!! ゆっぐぢ! ゆっぐぢ!」
お母さんとお姉さんのそんな声が、どこか遠くに聞こえる。
まりしゃのおめめは、意識は、全神経は、頭上のゆっくりできない笑顔に向いていた。
(了)
作:藪あき
「ゆえーん! ゆえーん!」
公園の奥。れいむお母さんとれいむお姉ちゃんの悲鳴が響いた。
「ゆうう……。おかあしゃん、おねえちゃあん……」
まりしゃは植え込みの陰に隠れ、目をぎゅっとつむった。体の震えが止まらない。
「どぼじでこんなこどずるのおおおお!? れいぶ……れいぶ、なにぼじでないのにいいいいっ!!」
「ゆえーん! おがあじゃああああんっ!」
お母さんとお姉ちゃんが何をされているのかはわからない。いや、わかりたくない。
人間さんが振りかぶる棒切れが見えたが――あれが何を意味しているのかなど考えたくもない。考えようとするだけで、おそろしーしーが漏れてしまう。すでに数滴漏れた。
まりしゃは思い返す。
今日は以前から約束していた、公園内でのピクニックの日だった。とても楽しい、ゆっくりとしたイベント。元気におうちを出発。親子三人、しあわせー! な時間を過ごすはずだった。
それが一人の人間さんの登場によって一変した。
あっという間だった。
そのゆっくりできない人間さんは、公園内をゆっくり歩いていたお母さんとお姉ちゃんを持ち上げ、連れ去ってしまった。
まりしゃだけが無事だった。ちょうちょうさんを追いかけていたまりしゃは二人から離れた所にいたので、気付かれなかったらしい。
お母さんの「あんまりはなれたらあぶないよ!」という言いつけを守らなかった事が、皮肉にもまりしゃの身の安全に繋がったのだ。
どこかへ連れて行かれる二人を見て泡を食ったまりしゃは、それでも「どこにいきゅのじぇええ!?」と声を上げるのを我慢しながら、そろーりそろーりと人間さんの後をつけた。
そして今の、このゆっくりできない状況に至る。
「やべ……やべでぐだざいいいいっ!! ゆべっ! もうゆるじでええええええっ!! ゆっぐりざぜでぐだざいいいいいっ!!」
「ゆんやあああああ!! おかあしゃんをいじめないでえええええっ!!」
まりしゃは困った。
今すぐ植え込みから飛び出して、「やめてあげちぇなのじぇ! おかあしゃんとおねえちゃんがいやがっちぇいるのじぇ!」と人間さんに言い放つことは容易い。
しかしそれが何になるのか。
人間さんはまりしゃにも酷いことをするだろう。お母さんやお姉ちゃんを助けるどころか、まりしゃも人間さんの手にかかってしまうだけだ。
「こまっちゃのじぇ……。まりしゃは……まりしゃはどうすればいいのぜ……?」
人間さんの背中を睨みつけながら、まりしゃは集中した。日ごろからお母さんやお姉ちゃんに「のんびりやさんだね!」と言われるまりしゃの、ゆん生初の集中だ。
だからだろう。
「……おい。おまえ、こんな所で何やってるんだ?」
自分に接近していた存在に気付けなかった。
腰を屈め、まりしゃに覆いかぶさるように、別の人間さんがそこにいた。
「ゆ……むっ……!?」
人間さんのおててが、まりしゃのお口を塞ぐ。
思わず大きな悲鳴を上げかけたまりしゃだったが、それは人間さんによって阻止された。
まりしゃは恐怖し、しかし次の瞬間はっとした。
ここで大声を出そうものなら、お母さんとお姉ちゃんに酷いことをしている人間さんに見つかっていただろう。
まりしゃは命拾いしたのだ。この人間さんに助けてもらったのだ。
「ゆわあああっ!! おちびちゃんにてをだざないでええええ!! おちびちゃんは……おぢびちゃんは、まだおちびちゃんなんでずううううっ!!」
「いだいよおおおおお!! いだいよおおおおおっ!! ゆっぐぢでぎないよおおおおおっ!!」
「……あそこで虐められているのは、おまえの友達? いや、大きさ的には家族か?」
お母さんとお姉ちゃんの悲鳴を聞いて、人間さんが小さな声で言った。
「むう! むう!」
お口を塞がれているので話せないまりしゃは、力いっぱい、こくこくと頷いてみせた。
「なるほど。で、おまえは家族をどうにかしたいんだな?」
「むうっ! むうっ!」こくこくと体をゆする。
「でも自分が出て行った所でまったくの無意味だと、つまりおまえはこう考えていたわけだ」
「むううう! むううう!」こくこく。
「なるほど。――よし、俺に任せろ」
人間さん――お兄さんがまりしゃのお口からおててを離した。
「俺があいつにビシっと言ってやるよ。おまえの代わりにな」
お兄さんは小声で、しかし力強くそう言ってくれた。
「あ、ありがちょうなのじぇ! おにいしゃん、ありがちょうなのじぇ! ゆっくちしていっちぇにぇ!」
まりしゃは涙と、少量のうれしーしーを流しながらお兄さんにお礼を言った。もちろん、いつもよりずっと小さな声で。
「あのゆっくちできないにんげんしゃんに、『やめてあげちぇなのじぇ! おかあしゃんとおねえちゃんがいやがっちぇいるのじぇ!』っていってあげちぇなのじぇ!」
「ああ、いいぞ。悲鳴を聞くだけでも痛そうだもんな」
「そうなのじぇ! まりしゃたちだっていきているのじぇ! いたいいたいはいやなのじぇ! ゆっくち! ゆっくち!」
何だか興奮してきた。まりしゃは小さな体に溜め込んでいた恐怖や怒りを追い出すかのようにお口を動かした。
「あんなゆっくちできにゃいにんげんしゃんは、まりしゃ、だいっきらいなのじぇ!! だいっきらいなのじぇ!!」
「なるほど。おまえの気持ちはよくわかった」
そう言って微笑むお兄さんは、とても頼もしく見える。
自分では無理だが、このお兄さんならばお母さんとお姉ちゃんを助けてくれるはずだ。お兄さんはあのゆっくりできない人間さんよりずっと体が大きく、強そうに見える。
「やべでっ! やべでぐだざいっ!! やるなられいぶをやっでぐだざいいいいっ!! れいびはがまんじばずがらああああっ!! がばんじでがばんじばずがらああああっ!!」
「もうやじゃあああああ!! ゆびゃっ! ゆびゃっ! れいみゅ……おうぢがえるううううううっ!!」
「よし!」お兄さんは勢いよく腰を上げた。
そしてゆっくりできない人間さんに向かって叫ぶ。
「てめえ! この野郎!」
まりしゃが植え込みの陰からこっそり覗くと、ゆっくりできない人間さんがびくっと体を強張らせるのが見えた。
「いいか、よく聞け……。その親子が嫌がってるじゃねえか! やめてやれよ!」
「そ、そうなのじぇ!」
その言葉にまりしゃは頷き、小声で言った。
お兄さんはさらに続ける。
「その親子だって! ゆっくりだって! 日々を面白おかしく生きているんだ! それをお前のような奴が踏みにじっていいのか!? いや、いい訳がねえ!! 何でそんな酷いことができる!? ――ああ、そうさ! それはお前がクソ野郎だからだ! わかったか、このクソ野郎!」
「なのじぇ! なのじぇ!」
「――という趣旨のことをだな」
いきなりの浮遊感がまりしゃを襲った。「おしょらをとんでいるみちゃいなのじぇ!」
「生意気にもこのまりさが言ってたよ。――だよな、まりさ?」
「ゆっ?」
何が起こったのか。まりしゃの脳ミソの回転が追いつかない。
植え込みの陰からお兄さんに持ち上げられ、ゆっくりできない人間さんの前に突き出されている自分自身。
何だかよくわからないが、今この場では、それだけわかれば十分だった。
「ゆえええええええっ!? どぼちてなのじぇええええっ!?」
「じゃあコレ、ここ置いとくんで。あとはよろしく」
お兄さんは楽しげにそう言うと、まりしゃを地面に下ろし、おててをひらひらさせながら去っていってしまった。
「おおおおおっ、おにいしゃん!? どこにいくのじぇ!? どこにいくのじぇ!?」
慌ててお兄さんを追おうとするまりしゃの前に、大きなあんよが立ちはだかった。
恐る恐る見上げると、そこには――
「おぢびぢゃん……!! にげでええええええっ!! ゆっぐりじないでにげでえええええっ!!」
「ゆええええええん! まりしゃあああああ!! ゆっぐぢ! ゆっぐぢ!」
お母さんとお姉さんのそんな声が、どこか遠くに聞こえる。
まりしゃのおめめは、意識は、全神経は、頭上のゆっくりできない笑顔に向いていた。
(了)
作:藪あき