「デモゼロ-07」(2008/12/14 (日) 19:40:07) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
馬鹿力のルイズ
その左手に刻まれしルーンはガンダールヴ
しかし、ルイズはそれを知らない
そして、たとえ、そのルーンが刻まれている事を知ったとしても
…ガンダールヴ、それは神の左手
ありとあらゆる武器を使いこなす
魔法には全く関係ない
相変わらず、ルイズは魔法を使えないまま
それでも、一生懸命練習し
…見事に、固定化の魔法がかかった壁を、ぶち壊してしまった
……ルイズが壁を壊した直後、現れた巨大な土のゴーレム
その姿はまるで…
「まさか…土くれのフーケ!?」
ま、まさか!
まさか、魔法学院にまで現れるだなんて!?
巨大な土ゴーレムは、ルイズが壊してしまった壁に、そのぶっとい腕を伸ばし、さらに壁を破壊していく
「……っきゃああ!?」
「!!シエスタ、ツェルスプトー!!」
恐らく、ゴーレムに悪気はないのだろうけれど
壊した壁の残骸はがらがらと崩れ落ちあたりに散らばっていく
残骸とはいえ、一つ一つのパーツが大きい
その一部が…呆然としていたキュルケとシエスタに、降りかかる
…逃げるのが、間に合わない
ば!とキュルケはとっさに、シエスタを庇うような体勢をとった
が…このままでは、二人とも潰されてしまう!
(……助けなきゃ!!)
そう考えるよりも先に、体が動いた
地を蹴り、ルイズは二人に向かって駆け出す
左手のルーンが光を放ち、ルイズに力を与えていく
早く
早く早く早く早く早く
もっと速く、私の脚!!
……潰される
キュルケは、そう思った
迫ってくる壁の残骸の動きが、スローモーションのように瞳に映りこむ
すぐ傍には、恐怖で固まっているシエスタの姿
…自分だけ、逃げる訳にはいかない
そもそも、自分だって…恐怖のせいなのか、脚が動かない
せめて、シエスタを護ろうと彼女を庇うように、その体に覆い被さったが、多分意味はない
一緒に潰されてしまう
次に来る衝撃を覚悟して、キュルケは目を閉じた
………
…………
……………
「…え?」
衝撃は、こない
恐る恐る、目を開き……その瞳は、驚愕で見開かれる
「ヴァリエール!?」
ルイズが
その小さな体で、目一杯腕を伸ばし、その残骸を支えていた
ぱらぱら、小さな粉末があたりに散らばる
「く……!」
ぎり、と歯を食いしばり、ルイズはそれをぽい、と放り投げた
…いや、ぽい、なんて可愛らしい擬音は似合わない
……ぶん!!とでも言うべきだろうか
それは、ゴーレムに当たって粉々に砕けた
ゴーレムはそんなものものともせずに、壁の向こう側に手を伸ばしている
「あそこは…確か、宝物庫……!」
恐らく、あのゴーレムは土くれのフーケが作り出した物
…宝物庫の宝を盗み出すつもりか!
咄嗟に杖を取り出し…しかし、キュルケは考えた
こんな、巨大なゴーレム…自分たちだけでは、太刀打ちできる相手ではない
誰か、人を呼んでこないと
教師の増援を呼ばないと
「ヴァリエール、ここは一旦引いて…」
「…………も」
「…ヴァリエール?」
き、とゴーレムを睨みつけているルイズ
その表情に浮かんでいるのは、怒り
様々な、ルイズの怒りの表情を見てきたキュルケだったが…見た事もないくらい、その表情は怒り一色で染められていた
「よくも……っ!!二人を、危険な目に合わせたわね!!」
叫び、キュルケとシエスタをおいて、駆け出した
よくも
よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも
二人を、危険な目に!!
感情が、怒り一色で染め上げられる
友…と呼んでもいいであろう者が命の危険に晒された事で、ルイズは我を忘れていた
その癖して、どこか冷静な、妙な感覚
「相棒!っちょ、無理だろ、流石に!相手デカすぎるっての、引いた方が………って、みぎゃあ!?」
がっし!
叫ぶデルフリンガーを、むんずと掴んだルイズ
…やっぱり、デルフを掴んだ方が体が軽い
これなら…いける!!
「痛いっ!折れる、折れるぅぅぅう!!俺、折れちゃうっ!!……って、え?相棒の、心が震えて…?」
デルフを手に、ルイズは駆ける
目指すは、巨大な土のゴーレム
両手でデルフを構え、真っ直ぐに睨みつける
許さない
許してなんてやるものか!!
ゴーレムは、ルイズの様子など気にも止めず、宝物庫の中を漁っているようだ
それがまた、ルイズの怒りを刺激する
…私なんて、相手にするまでもない、という事?
ふざけないで!!
目前に迫ってきた、ゴーレムの太い足
それに向かって…横なぎに、ルイズは斬り付ける
通常ならば、こんな錆びた剣など、はじかれておしまいのはず
巨大なゴーレムの脚を、切り裂けるはずなどない
……ない、の、だが
(……いける!!)
ルイズは、確信していた
何故だろう、わかるのだ
体中に、力が湧きあがってきている
ちりちり、少し、左手の甲が熱い気がした
「おぉぉ……!わかる、わかるぜ、相棒。相棒の心が震えてやがる……!これなら、いけるぜ!!」
デルフが、歓喜の声をあげた
……っがり!
耳障りな音をたてて、デルフの刀身が土ゴーレムの脚に食い込んでいった
がり、がりがり!!
脚を、ちょうど半分くらい切り裂いてきたところで…一旦、刀身が止まりそうになった
が、止めてなるものか
このまま、脚を切り裂いてやる!
そうすれば、バランスを崩して倒れるはず!!
ルイズの中に溢れる力が、強くなる
ざわり、ルイズの毛が逆立ってきて……そして、爪がざわざわ、伸び始めた
そんな自身の変化に気づかず…ルイズは、渾身の力を込める!
「っやぁあああああ!!!」
ざん……っ!と
気合の声と共に、デルフを振り抜く
ありえないはずの光景が、そこにはあった
小柄な少女が、大きな剣を横なぎに薙ぎ払い……ゴーレムの片脚を、両断する
ありえないはずのその光景は、しかし、現実だった
ぐらり、バランスを崩し、倒れそうになるゴーレム
が、すんでのところで片手をつき、倒れる事なく、両断された片脚を再生し始める
そして、ぶぅん……と、腕を振りかぶり始めた
「やばっ!?来るぞ相棒!」
「……来なさいよ!」
そんな攻撃、受け止めてやる!
怒りに支配されているルイズに、恐怖などなかった
攻撃してこようと、受け止めてみせる
…今の自分には、それができる!
そう、確信していた
来るべき攻撃に備え、デルフを構えようとした、その時
上空から降り注いだ氷の槍が、ルイズに向かって振り下ろされようとしたゴーレムの腕に突き刺さり
反対側からは炎の球が飛んできて、ゴーレムの動きを鈍らせる
「…タバサ!?それに、キュルケも……」
ばさり
ゴーレムの頭上を飛ぶ風竜
キュルケは、背後にシエスタを庇うような体勢で、き、とゴーレムを睨みつけ、杖を構えていた
……ぼろり
ルイズへの攻撃が叶わなかったゴーレムの体が、崩れ始める
「や……ったの?」
「いや、多分、術者が逃げたんじゃねぇか?」
デルフの言うとおりなのだろう
ぼろぼろと、ゴーレムが土くれへと戻っていった後には…誰も、いなかった
ゴーレムを操っていたはずのフーケの姿はどこにもない
「…逃げられた…!」
悔しい
悔しい、悔しい
シエスタとキュルケを、あんな目にあわせた相手を逃がしてしまった
悔しい!!
悔しさに、歯を食いしばるルイズ
土へと戻ったゴーレムの残骸を、ただただ、悔しげに見つめる
…ひらり
残されたのは、紙切れ一枚
『悪魔の種、確かに頂戴いたしました 土くれのフーケ』
その紙切れを、初めに見つけた誰かさん
ちゅう、と困ったような声をあげたのだった
#navi(デモゼロ)
馬鹿力のルイズ
その左手に刻まれしルーンはガンダールヴ
しかし、ルイズはそれを知らない
そして、たとえ、そのルーンが刻まれている事を知ったとしても
…ガンダールヴ、それは神の左手
ありとあらゆる武器を使いこなす
魔法には全く関係ない
相変わらず、ルイズは魔法を使えないまま
それでも、一生懸命練習し
…見事に、固定化の魔法がかかった壁を、ぶち壊してしまった
……ルイズが壁を壊した直後、現れた巨大な土のゴーレム
その姿はまるで…
「まさか…土くれのフーケ!?」
ま、まさか!
まさか、魔法学院にまで現れるだなんて!?
巨大な土ゴーレムは、ルイズが壊してしまった壁に、そのぶっとい腕を伸ばし、さらに壁を破壊していく
「……っきゃああ!?」
「!!シエスタ、ツェルスプトー!!」
恐らく、ゴーレムに悪気はないのだろうけれど
壊した壁の残骸はがらがらと崩れ落ちあたりに散らばっていく
残骸とはいえ、一つ一つのパーツが大きい
その一部が…呆然としていたキュルケとシエスタに、降りかかる
…逃げるのが、間に合わない
ば!とキュルケはとっさに、シエスタを庇うような体勢をとった
が…このままでは、二人とも潰されてしまう!
(……助けなきゃ!!)
そう考えるよりも先に、体が動いた
地を蹴り、ルイズは二人に向かって駆け出す
左手のルーンが光を放ち、ルイズに力を与えていく
早く
早く早く早く早く早く
もっと速く、私の脚!!
……潰される
キュルケは、そう思った
迫ってくる壁の残骸の動きが、スローモーションのように瞳に映りこむ
すぐ傍には、恐怖で固まっているシエスタの姿
…自分だけ、逃げる訳にはいかない
そもそも、自分だって…恐怖のせいなのか、脚が動かない
せめて、シエスタを護ろうと彼女を庇うように、その体に覆い被さったが、多分意味はない
一緒に潰されてしまう
次に来る衝撃を覚悟して、キュルケは目を閉じた
………
…………
……………
「…え?」
衝撃は、こない
恐る恐る、目を開き……その瞳は、驚愕で見開かれる
「ヴァリエール!?」
ルイズが
その小さな体で、目一杯腕を伸ばし、その残骸を支えていた
ぱらぱら、小さな粉末があたりに散らばる
「く……!」
ぎり、と歯を食いしばり、ルイズはそれをぽい、と放り投げた
…いや、ぽい、なんて可愛らしい擬音は似合わない
……ぶん!!とでも言うべきだろうか
それは、ゴーレムに当たって粉々に砕けた
ゴーレムはそんなものものともせずに、壁の向こう側に手を伸ばしている
「あそこは…確か、宝物庫……!」
恐らく、あのゴーレムは土くれのフーケが作り出した物
…宝物庫の宝を盗み出すつもりか!
咄嗟に杖を取り出し…しかし、キュルケは考えた
こんな、巨大なゴーレム…自分たちだけでは、太刀打ちできる相手ではない
誰か、人を呼んでこないと
教師の増援を呼ばないと
「ヴァリエール、ここは一旦引いて…」
「…………も」
「…ヴァリエール?」
き、とゴーレムを睨みつけているルイズ
その表情に浮かんでいるのは、怒り
様々な、ルイズの怒りの表情を見てきたキュルケだったが…見た事もないくらい、その表情は怒り一色で染められていた
「よくも……っ!!二人を、危険な目に合わせたわね!!」
叫び、キュルケとシエスタをおいて、駆け出した
よくも
よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも
二人を、危険な目に!!
感情が、怒り一色で染め上げられる
友…と呼んでもいいであろう者が命の危険に晒された事で、ルイズは我を忘れていた
その癖して、どこか冷静な、妙な感覚
「相棒!っちょ、無理だろ、流石に!相手デカすぎるっての、引いた方が………って、みぎゃあ!?」
がっし!
叫ぶデルフリンガーを、むんずと掴んだルイズ
…やっぱり、デルフを掴んだ方が体が軽い
これなら…いける!!
「痛いっ!折れる、折れるぅぅぅう!!俺、折れちゃうっ!!……って、え?相棒の、心が震えて…?」
デルフを手に、ルイズは駆ける
目指すは、巨大な土のゴーレム
両手でデルフを構え、真っ直ぐに睨みつける
許さない
許してなんてやるものか!!
ゴーレムは、ルイズの様子など気にも止めず、宝物庫の中を漁っているようだ
それがまた、ルイズの怒りを刺激する
…私なんて、相手にするまでもない、という事?
ふざけないで!!
目前に迫ってきた、ゴーレムの太い足
それに向かって…横なぎに、ルイズは斬り付ける
通常ならば、こんな錆びた剣など、はじかれておしまいのはず
巨大なゴーレムの脚を、切り裂けるはずなどない
……ない、の、だが
(……いける!!)
ルイズは、確信していた
何故だろう、わかるのだ
体中に、力が湧きあがってきている
ちりちり、少し、左手の甲が熱い気がした
「おぉぉ……!わかる、わかるぜ、相棒。相棒の心が震えてやがる……!これなら、いけるぜ!!」
デルフが、歓喜の声をあげた
……っがり!
耳障りな音をたてて、デルフの刀身が土ゴーレムの脚に食い込んでいった
がり、がりがり!!
脚を、ちょうど半分くらい切り裂いてきたところで…一旦、刀身が止まりそうになった
が、止めてなるものか
このまま、脚を切り裂いてやる!
そうすれば、バランスを崩して倒れるはず!!
ルイズの中に溢れる力が、強くなる
ざわり、ルイズの毛が逆立ってきて……そして、爪がざわざわ、伸び始めた
そんな自身の変化に気づかず…ルイズは、渾身の力を込める!
「っやぁあああああ!!!」
ざん……っ!と
気合の声と共に、デルフを振り抜く
ありえないはずの光景が、そこにはあった
小柄な少女が、大きな剣を横なぎに薙ぎ払い……ゴーレムの片脚を、両断する
ありえないはずのその光景は、しかし、現実だった
ぐらり、バランスを崩し、倒れそうになるゴーレム
が、すんでのところで片手をつき、倒れる事なく、両断された片脚を再生し始める
そして、ぶぅん……と、腕を振りかぶり始めた
「やばっ!?来るぞ相棒!」
「……来なさいよ!」
そんな攻撃、受け止めてやる!
怒りに支配されているルイズに、恐怖などなかった
攻撃してこようと、受け止めてみせる
…今の自分には、それができる!
そう、確信していた
来るべき攻撃に備え、デルフを構えようとした、その時
上空から降り注いだ氷の槍が、ルイズに向かって振り下ろされようとしたゴーレムの腕に突き刺さり
反対側からは炎の球が飛んできて、ゴーレムの動きを鈍らせる
「…タバサ!?それに、キュルケも……」
ばさり
ゴーレムの頭上を飛ぶ風竜
キュルケは、背後にシエスタを庇うような体勢で、き、とゴーレムを睨みつけ、杖を構えていた
……ぼろり
ルイズへの攻撃が叶わなかったゴーレムの体が、崩れ始める
「や……ったの?」
「いや、多分、術者が逃げたんじゃねぇか?」
デルフの言うとおりなのだろう
ぼろぼろと、ゴーレムが土くれへと戻っていった後には…誰も、いなかった
ゴーレムを操っていたはずのフーケの姿はどこにもない
「…逃げられた…!」
悔しい
悔しい、悔しい
シエスタとキュルケを、あんな目にあわせた相手を逃がしてしまった
悔しい!!
悔しさに、歯を食いしばるルイズ
土へと戻ったゴーレムの残骸を、ただただ、悔しげに見つめる
…ひらり
残されたのは、紙切れ一枚
『悪魔の種、確かに頂戴いたしました 土くれのフーケ』
その紙切れを、初めに見つけた誰かさん
ちゅう、と困ったような声をあげたのだった
#navi(デモゼロ)
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: