銀「さあ、あんたら!なんとしても真紅を見つけ出すのよ!! 辺りの物は薙ぎ払い、どんなわずかな隙間も見逃すんじゃないわよ!!」 マ「やめて下さい。」 銀「いえ、いっそ火を点けていぶし出せば・・・」 マ「絶対にやめて下さい。」 銀「最優先事項は真紅の捕獲よ、誰一人邪魔はさせない!」 雪「世界中、噂になる位やりますか?」 薔「しかし・・・いたずらに場をかき回せば・・・真紅はそれに乗じるでしょう・・・。 探す範囲もかなり限られた今・・・決して得策とは言えない・・・違いますか?」 銀「むっ、一理あるわね。まあいいわ!どんなやり方でも良いから真紅だけは見つけるのよ!!」 それまでの我関せずといった態度から豹変した水銀燈が陣頭指揮を執る。 翠「我が身に危険が迫ったからとはいえ、極端から極端へと突っ走る奴ですねえ。」 蒼「ああなったら止めるには真紅を見つけるのがベストかもね。」 マ「破壊活動へ移行する前にそうしよう。」 薔「残りの・・・時間は・・・?」 マ「10分を切った。」 金「残っているのが真紅と雛苺なら、一人当たり大体5分で見つければいいのよね。 水銀燈もやる気だし、この人数ならなんとかなりそうかしら!」 翠「そうですね、怪しいところを当たっていけば浅知恵のおチビなんて特にすぐですよ。」 蒼「油断は出来ないけどね。特に真紅は。」 雪「怪しいところって、例えばあんなのですかね?」 マ「ん?・・・うっ!」 雪華綺晶が示した方にはこんもりとしたお花。 それも良く見るとテープで布にくっつけられたものらしい。 そしてそれは何かを覆っている様だ。 そう、丁度ちっちゃな女の子が一人入る位・・・。 蒼「あれは・・・。」 金「怪しさがクライマックスよ!」 薔「確かに・・・怪しい・・・。」 翠「ですが怪し過ぎます!」 銀「どうせめくったら、またさっきみたいに何か危険発生なんでしょ?」 薔「・・・すみません。」 マ「まあそれは今は置いとくとして、アレを放って置く訳にもいかないし・・・。」 雪「ですね。時間稼ぎが目的で、中は『誰も居ないじゃないですか』という可能性もありますし。」 銀「羽根を撃ち込んで炎上させちゃう?」 蒼「なんでそう攻撃的で物騒なのさ。」 マ「もう少し、こう、何と言うか、手心というか、穏便かつ慎重な方法を考えようよ。」 薔「何か・・・いい方策は・・・。」 その場で六人が顔を見合わせる。 金「そんなんじゃカナの目はごまかせないわよ!出て来いかしらーーー!!」 「「「「「「「えぇーーー!?」」」」」」」 いつの間にやら、花の塊に接近していた金糸雀が豪快に布をまくった。 雛「うゆーー!見つかったのーー!!」 金「やっぱり雛苺はまだまだね、策士金糸雀様の前にそんな迷彩は通用しないわよ!!」 雛「むう、金糸雀に見つかるとは思ってなかったの。」 金「えっへん、カナ以外の皆はスルーしちゃいそうだったのよ? 私のお手柄なんだから!」 金糸雀が誇らしげに胸を張る。 マ「ある意味その通りだから否定はしないけどさ。」 蒼「なんだろう・・・この気持ちは。」 銀「少なくとも、敗北感ではないと思うけど・・・。」 翠「でもなんか釈然としませんね。」 金「ちゃんと褒めてかしら!!」 マ「うん、偉い偉い。」 金「もっと愛を込めて!」 マ「わー感動ー、蝶サイコー!なでなで・・・」 金「ふふん、どんなものかしら。」 マ「満足していただけて何よりです。」 蒼「甘やかし過ぎじゃない?勘違いして調子に乗っちゃうと本人の為にもならないよ。」 雪「金糸雀お姉様は凄い方ですね。」 薔「確かに・・・そうそう・・・真似は出来ない・・・。」 マ「と、とにかく!金糸雀のおかげで時間短縮には成功したぞ!後は真紅だけだ!!」 雛「ふうん、真紅はやっぱすごいの。あとどの位なの?」 マ「えーと・・・7、8分は残ってる。」 金「カナのファインプレーが輝いたかしら!」 蒼「え?・・・うん、おかげでなんとかなるかもね。」 銀「なんとかするのよ!」 雛「ふふふ、みんな楽しそうなの。」 薔「必ずしも・・・楽しくは・・・。」 雪「なんだかんだで切羽詰ってますしね。」 雛「ヒナもみんなとご一緒するのー♪しーんくー♪」 翠「お前は見つかったというのによくもそんなにヘラヘラしていますね。」 銀「はっ!まさか真紅の罠!?そうね、そうなのね!!」 金「内側からカナ達を崩壊させるトロイ雛苺!!」 翠「トロい?」 蒼「二人とも落ち着きなよ。こんな時だからこそ冷静に、ね。」 金「そして疑心暗鬼に駆られた皆は互いに互いを傷つけあい、果てはバットや鉈での殺し合い!!」 雪「カナ?カナ?って奴ですね。」 金「後に残るのは酒池肉林の地獄絵図!!」 蒼「落ち着こうか。」 金「く、くるひぃ・・・タップ、タップ!」 そんな様子を笑顔で見ていた雛苺が口を開く。 雛「そうじゃないの、ヒナ本当はかくれんぼなんかしたくなかったの。」 マ「どうして?」 金「カナ達と遊ぶのが嫌だったの?」 マ「え、遊びって空気でしたっけ?」 蒼「違う気もするけれど・・・そうだったのかい?」 雛「ううん、みんなと遊ぶのは大好きよ。一緒に居るだけでも楽しかったの。」 蒼「じゃあ何故?」 雛「こわかったの。」 マ「怖かった?何が?」 雛「あのね、隠れる時に真紅にも言ったんだけど・・・」 銀「あなた真紅と一緒だったの!?」 雛「そうよ。」 薔「そう言えば・・・そうでしたね。」 雪「私も見ました。」 銀「じゃあその事も一緒に話しなさい!プロファイリングするから。」 金「真紅の発言もバッチリ思い出してかしら。」 雛「分かったの。あのね、隠れる前にね・・・」 真『あなた、さっきから私の後ろをついてきてるけど、隠れなくっていいの?』 雛『真紅と一緒に隠れるのー♪』 真『はぁ・・・あなたね、隠れたらもう能力も使わないで潜んでいるだけなのよ? 人数が増えても見つかりやすくなるだけじゃない。』 雛『でも真紅はいい隠れ場所を考えてあるんでしょ?』 真『・・・仮にそうだとしても、あなたと隠れる事は想定していないわ。』 雛『一緒に隠れるの!ヒナは真紅の家来だからずっと離れないの!!』 真『ふぅ・・・家来だというのなら主に迷惑を掛けないようにすべきでしょ? 私は紅い服を着ているけれど、別に金魚じゃなくってよ。』 雛『うー・・・だって、だってぇ・・・。』 真『もう、そんな顔をするのはおやめなさい、隠れ方くらい考えてあげるから。』 雛『そんなの・・・どうでもいいの。』 真『まったく困った子ね・・・・・・そうね、アレを使うといいのだわ。』 雛『アレ?』 真『一緒に来なさい。』 真『これを使いなさい。』 雛『これ?でもこれって・・・』 真『みんなで摘んだお花よ。』 雛『これでどうやって?』 真『こういう風に・・・こうやって布にでもつければ隠れ蓑に出来るのだわ。 後はそれを纏って庭でじっとして居なさい。花の中なら、遠目には分かりにくいはずよ。』 雛『でも・・・お外で一人なんて・・・心細いの・・・。』 真『あなたの気持ちも、少しは分かるつもりよ。』 雛『えっ?』 真『あなたは一人ではないわ。その花と、みんなと一緒に少しだけいい子にしていなさい。』 雛『だけど・・・』 真『きっとまたすぐに会えるわ。だって私達は姉妹であったり、もっと強い絆で繋がっているのよ。 家来だとかの主従関係じゃなく、お互いに相手の事を想った対等な関係でもね。』 雛『真紅・・・。』 真『こんなものかしら。結局、全部やらされてしまったわ。忙しいのにいい迷惑よ。』 雛『あ、ごめんなさいなの。』 真『さあ、そろそろ時間も無くなるわ、早く移動なさい。私にもまだ仕度があるのだわ。』 雛『・・・うん!』 薔「・・・でも・・・何故ここに?余計に・・・擬態どころか目立っていましたよ?」 雛「あのね、お外に出ようと思ったけどドアを開けられなかったの。 それで真紅と相談しようと思ったけれど、もう姿が無くって、探していたら時間が無くなったの。」 翠「まったく、せっかく真紅が悪知恵を提供してくれたというのにお前は・・・。」 蒼「悪知恵って・・・。」 雛「ううん、いいの。ヒナみんなが見つけてくれて嬉しいの。」 金「どうして?せっかくもうちょっとでラストまで見つからなかったのに。」 マ「さっき言っていた、怖かったってやつ?」 雛「そうなの。こわかったの。みんなみんな大好きなのに、お別れになっちゃったらって・・・こわかったの。 もしかしたら、またみんながヒナを残して居なくなっちゃって、また一人ぼっちになったら、って・・・。」 翠「そうでしたね、そう言えば・・・。」 雪「お姉様は、昔・・・。」 雛「だからこうしてまたみんなと会えて嬉しいの。だから真紅も見つけるの♪」 雛苺が心からの笑みでこちらを見上げる。 マ「うぅっ、そうか、そうだったんだ。大変だったね!」 雛「ううん、もう平気なの。」 マ「なんと健気な!大丈夫だよ、真紅を見つけたらまたみんなで楽しく過ごそうね!」 雛「うゆ!くるひいの・・・。」 薔「なんというハグ・・・。父性本能が・・・目覚めた?」 蒼「マスター、ほだされちゃってるよ。」 マ「はっ、そう言えば!・・・でもちょっと位ならいいさ。」 翠「さっきまでは頑なに出て行けと譲らなかったのに、しち面倒な性格ですね。」 雪「私知ってますよ。『北風と太陽』ってやつですよね。」 蒼「少し違わない?」 薔「いずれにせよ・・・真紅を見つけなくては・・・。」 銀「そうよ、時間は?」 マ「うん、まだ残りは3分も・・・3分!?」 翠「もう3分しかないんですか!」 マ「話に聞き入っていたから・・・。」 銀「もうプロファイルはいいから探すのよ!!」 雪「おおよそ200秒ですか、厳しいですね。」 薔「過ぎた時間は仕方ありません、急ぎましょう・・・。」 金「そうよ、キバっていくわよ!」 マ「全力全開で探そう!!」 蒼「うん、頑張ろう。翠星石、手伝ってくれる?」 翠「もちろんですよ。蒼星石の頼みを断る訳が無いじゃないですか。」 雛「がんばって探すのー♪」 皆に緊張感が走る中、場違いとも言える楽しそうな声が聞こえた気がした。 -残り時間:3分- 残ったドールは・・・真紅