放課後、智はすぐさま教室を出て行ったよみの足取りを追おうとしていた。
よみー、逃げようったって無駄だぞ。絶対捕まえてやる。
しかし、そんな意気込んでいる智の襟首を突然つかんだ人間が現れた。神楽だ。
「こら、智!お前も今日掃除当番だろう、サボりなんて許さんぞ!」
神楽はそう言って、手に持っていた2本の箒のうち1本を智に渡した。
「なんだよ、神楽はマジメだな。掃除なんてたまにサボったっていいじゃん」
「智が不真面目なだけだ。ほら、掃除するぞ」
智は神楽に引っ張られ、しぶしぶ教室の掃除を始めた。
「くそー、何でこんな日に限って掃除当番なんだー」
智は箒をぐるぐる回しながら、早く済まそうと適当に掃除をした。
「智ちゃん、マジメに掃除しないとだめだよー」
と、ちよちゃんに注意されたが、よみを早く追いかけたい一心で気持ちが焦っていた智は
そんな注意など全く聞いていなかった。
こうして、ようやく掃除が終わると、智は一目散に学校を出た。
よみのことだ、もう家に帰っているだろう。よし、奇襲をかけてやる。
智は急いでよみの家まで走っていった。
10分ほどして、智はよみの家の前についた。
よみ~、もう逃げられないぞー。
智はそう思いながら、よみの家のインターホンを押した。
「はーい、あら…滝野さんいらっしゃい」
ドアを開けて出てきたのは、よみの母親だった。
「暦ならまだ帰って来てないわよ」
「えっ、そうなんですかぁ?」
智はそう言いつつも、母親がよみをかくまっていないか確認するため、玄関を見た。し
かし、よみのものらしき靴はなく、まだ帰って来ていないのは事実だと感じた。
くそっ、まだ帰っていないか。どこへ隠れたんだ?
「今日は一緒じゃなかったんだ?」
「ええ。私は今日、掃除当番だったもんで」
よみの母親の質問に智はそう切り返した。しかし、それは事実でもある。
「もうじき帰って来るとは思うけど、上がって待ってる?」
よみの母親はともに上がるように促した。しかし、智は自分が部屋で待ち構えていると、
仮によみが家に電話したときに自分がいることが分かって帰ってこないんじゃないかとい
う懸念が頭をよぎり、断るほうが得策のように思えた。
「そうですか、ちょっと宿題で分からないところがあったもんで…。また、後で来ます」
智はそれだけ言うと、よみの母親に一礼して、自分の家の方へと歩いていった。
む~、よみめー。どこへ隠れたんだ?
学校の図書室?いや、下駄箱には上靴しかなかったから、それはないか。ちよすけの家?
うーん、でもちよすけは今日一緒に掃除当番だったから、それもないか。
近所の公園かな?よし、ちょっと行ってみるか。
智はそう思うや、すぐさま公園へと走り出した。
よみめ~、今度こそ犯人の名前を暴露してやる~。
智はその執念に燃えながら公園にたどり着いたが、よみの姿はそこにはなかった。
うーん、ここにもいなかったか。こうなったら仕方ない。今夜よみの家に奇襲するまで
は自宅待機だ。勝負は今夜だ。ふっ、よみめ。それまで首を洗って待ってろ~。
智は不敵な笑みを浮かべて、自分の家へと向かった。
(続く)
最終更新:2007年10月27日 20:02