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雨には二つの音がある。そう元彼がいっていたのを、英語の模試の過去門を解きながら思い出した。「rain」という単語について、発音の記号問題がでてきたからである。 そういえば、とおもって外の風景を眺めてみた。来たときとはまったくといっていいほどにまで正反対な雨模様であった。土砂降りである。ガラスのすぐ向こうにある花や草が強くうたれているのが見える。音楽を聴きながら勉強をしていたので気が付かなかった。耳元ではPeopleInTheBoxのヴォーカル、波多野さんの残酷でやさしい声が響いている。ちょうど「月曜日/無菌室」のあの静かなところであった。 今日はさすがに雨は降らないだろうと、タカをくくって自転車で外へとくりだしたことに後悔した。きっとわたしの自転車も、あの花や草と同じように雨に打たれているのであろう。 ため息をださずにはいられない。「はぁ」と力なく息となにかが、わたしの内側から飛び出て行った。元彼が「ため息というものはつらいときにでるのだから、きっとあの幸せが逃げるというのが嘘で、本当はつらい成分がでているのだ」なんて理由つけてため息ばっかりついていたっけか。そのくせわたしがため息をつけば「かわいくないからやめてくれ」なんて自分勝手なことをいっていた。 雨の日にわかれば話をしかけたからか、雨の日には元彼のことをよくおもいだす。
雨には二つの音がある。そう元彼がいっていたのを、英語の模試の過去門を解きながら思い出した。「rain」という単語について、発音の記号問題がでてきたからである。 そういえば、とおもって外の風景を眺めてみた。来たときとはまったくといっていいほどにまで正反対な雨模様であった。土砂降りである。ガラスのすぐ向こうにある花や草が強くうたれているのが見える。音楽を聴きながら勉強をしていたので気が付かなかった。耳元ではPeopleInTheBoxのヴォーカル、波多野さんの残酷でやさしい声が響いている。ちょうど「月曜日/無菌室」の、女優の消えたという、あの静かなシーンであった。 今日はさすがに雨は降らないだろうと、タカをくくって自転車で外へとくりだしたことに後悔した。きっとわたしの自転車も、あの花や草と同じように雨に打たれているのであろう。かわいそうに。 ため息をださずにはいられない。「はぁ」と力なく息となにかが、わたしの内側から飛び出て行った。元彼が「ため息というものはつらいときにでるのだから、きっとあの幸せが逃げるというのが嘘で、本当はつらい成分がでているのだ」なんて理由つけてため息ばっかりついていたっけか。そのくせわたしがため息をつけば「かわいくないからやめてくれ」なんて自分勝手なことをいっていた。 雨の日に別れ話をしかけたからか、雨の日には元彼のことをよくおもいだす。よくよく考えればデートの日はほとんどが雨であった。動物園にいく予定が、水族館へといくことになったりと、割と印象に残っている。 ああ、だめだ。元彼のことをひとつおもいだすと、次から次へと思いでがあふれ出てくる。 模試の問題は解けそうにない。 わたしはノートを閉じ、雨がやむのを待つことにした。とりあえず音楽でも聞いておこう、というわけでアジカンの曲をシャッフルで聞くことにした。「迷子犬と雨のビート」が一曲目だった。 雨の音は三つだとおもう、というわたしの意見を聞いた彼は怪訝そうな顔をしていたのがおもしろかった。「なんで?」なんてありきたりな質問を聞いてくるもんだから、おもしろがって答えなかったけど。 あの答えは「雨がつぶされる音だよ」と、彼に伝えることはなく縁は切れてしまった。まぁ今縁が切れていようと切れていなかろうと伝える気はないし。というか伝えられないし。 おもしろい彼氏ではあったともう。死んじゃったけど。自分で「はやく死ぬ人間ほどすごい人間なんだよ。フジファブリックの志村さんだって急になくなっちゃっただろ。そんなかんじだよ。だから今売れてるバンドのヴォーカルは死ぬね。サカナらへんがあやしい」なんてクソ失礼なことをいっていた。死ぬことについて軽々しく口にしやがったから、顔をグーで殴ったのは爽快だった。メガネがきれいに飛ぶこと飛ぶこと。あれは良い思い出。 今わたしが勉強をしている場所、県のコンサート会場になったり展覧会がおこなわれたりするこの万能施設、六階のカフェめいた場所で彼といっしょに勉強もよくした。テスト前なんかだと「おしえてくれー」とメールがきた。学校が違うのにテスト勉強をいっしょにやるってのは、なかなか無理がったけど、いっしょにやってあげた。 彼はよく世界について考えたりする変態であった。そのわりには勉強にはやる気をみせることはなく「帰りたい」をよく連呼していたものであった。「呼んでおいてその態度はなんだんだきさま」と喝をいれて勉強したっけか。テストの範囲が違うもんだからわたしがならっていない場所も教えなきゃいけないとかいう意味不明なことになったことがあるからか、それが予習となり、わたしの学力はみるみるあがっていた。それなのに彼の成績は変わることなく、平均をすこしだけ下回る点数をいつもとって帰ってきていた。彼のテストが終わると、わたしはいつも彼の電話をして「何点だった」と聞くたびに、彼は申し訳なさそうに点数をいっていた。なんだかその時だけ、母親になった気分であった。 そういった子供っぽいところとかもあったが、やっぱり変な人だったとおもう。とにかく変な人。机の上にモノがあるから勉強が進まないんだとか、人間は贅沢をしすぎているーだとか。

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