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無音世界で動物二人 - (2011/02/17 (木) 21:28:32) の編集履歴(バックアップ)


 人間なんて滅んでしまえばいい

 みんなみんな大っ嫌いだ 



 人なつっこい、とはよく人にいわれていたものだから、そういうことなんだろうとおもってた。けど、今になれば、あんがいそうでもないのかもしれない、とかおもわかなくもない。
「それはただの思い込みだよ」
 わたしの隣の猫は、そういった。
 だれもいない、無音な世界で。

 生まれたときから人が身近にいたから、「おまえは人がいないと、孤独すぎて死んでしまうんじゃないの?」などと、ご主人様にいわれたことがある。わたしは、この主人に命を助けてもらった。だから、この人についていくと心に決めた。だから、主人のいっていることは、全部ホントなんだとおもっていた。
 だからこそ、今世界が静まり返って、人がいないとなると困るのだ。なぜなら、孤独死してしまうから。
 わたしは、主人と毎朝散歩で歩いた街中を、ひとり(一匹、といったほうが正確だろうか?)あるいていた。わたしは「リード」という物につながられていたわけだが、今はそれがないので、自由になったわけだが、わたしは主人と歩いた道を通っていた。完全に無意識である。

「おや、こんなところにも生き残りが」
 でかい建物を横(なんちゃら21、だったとおもう)を歩いていたら、一匹の黒猫にはなしかけられた。
「あなたはだーれ?」
 猫はおかしそうに笑いながら、手で口をおさえた。
「おや、日本語が通じる生き物もいるものだね」
 わたしは日本語が喋れる。ノラ犬のころ、街ゆく人がなにをいっているかを一生懸命覚えた。やろうとおもえば、わりとできるのだからイキモノというのはすごいとおもう。
「そういうあなただって、喋ってるじゃないですか。というより普通は自分の名前をなのってください。失礼じゃないですか」
 猫はくすくすと笑いながら、受け答えた。
「ははは、実におもしろい言葉も知っているね。あと、実は名前はないんだ。なんだったら君がつけてくれたまえ」