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「天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 八強、集う」(2011/03/11 (金) 19:18:59) の最新版変更点
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~八強、集う~
『さあ、会場の皆さん!二回戦の全試合が終了し、これにて本日の闘いが全て終了しました!』
未だ興奮のざわめきが収まらぬ中、それに負けぬ勢いで響く実況。
『あんな試合、こんな試合、色々ありましたね!…え?ほとんど見た覚えがない?それは気のCeuiよ。とにかく本日
の全24試合を終え、遂に準々決勝に8名が駒を進めました!』
「ふむ…確かにここまで長い道のりでしたね」
実況に同意し、妖夢も感慨深げに頷く。
「ほんの数時間の事でありながら、まるで半年ぐらいかかったような…」
全く妖夢は、何を言っているのか。
ほんの数時間の間の出来事を書くのに半年以上もかかるだなんて、そんなバカな話があるわけない。
ないったらないのだ。
「いやいや、構いませんよ。何せ私は<未来放浪ガルディーン>の続きを今なお待ってるくらい気の長い女ですから。
どうぞ、気楽にやってください」
「…あの、誰と話してるんですか?」
ちょっと薄気味悪げに、ヴァンプ様が尋ねる。
「天におわす、この世界を産み出せしオタク野郎とです」
「はあ…いるんですか、そんな人が」
「おや、信じておられない?まあ、行数を稼ぐために無意味な楽屋ネタを入れるような仕事ぶりでは、奴を信じろと
いう方が無理な話かもしれませんが」
ふう、っと溜息を吐く。
「ま、その辺は彼も反省してるし、大目に見てあげましょう。きっとこれからはギャグなど一切入る余地のない本格
シリアスバトルストーリーになっていくはずですから」
「いつもいつも、そんな事ばかり言って…何を考えて生きてるんですか、貴女」
「フッ…知れたこと」
呆れて物も言えない、といった風情のジローに対し、妖夢はBに近いCカップといった、控えめながらも<女性>
としての存在を主張する二つの柔らかくて男なら誰でも大好きな俗に言う所のおっぱいを反り返らせて答えた。
「私は何時如何なる時も、読者の皆様を萌えさせるためだけに生きております。↑の一文もそのためです」
「妖夢さんに萌えてる方は相当の少数派だと見ますが」
「何を仰る。バキスレの萌えキャラといえばこの妖夢か小札か、でなくばふら~りさんではありませんか」
「彼女らと比べたら貴女のコールド負けじゃないですか。怖れながら言わせていただきますが、当SSに寄せられた
感想で、貴女を好きだという意見をほとんど見た事がない。ヴァンプ将軍の方がまだ勝負になります」
「え、そんな事ないですよ。私なんてただのオジサンですよ、ははは」
頬を真っ赤にしてテレテレなヴァンプ様である。
萌える。
そんな彼をライバル意識むき出しの目で睨み、妖夢が反論する。
「いいえ、私の隠れファンも結構いるはずですよ?私が何年、薄い本業界で活躍してると思ってますか。萌えさせる
ためなら、脱ぐ事も厭わぬプロ根性!幽々子様との百合百合でイヤーンなカラミだってこなしますとも!」
「そんな必死だから皆さん、貴女に萌えてくれないんだと思います」
「ぬう…難しいものです。そもそも<萌え>って何なんでしょうか…」
哲学的だった。
ジローは答えられない。つーか、考えたくないという顔だった。
「ここは魔法少女属性をつけてみましょうか。実は最近スカウトを受けたんですよ。白くて可愛いマスコットと契約
して魔法少女になれば願いが一つ叶うそうですよ。タイトルも<魔法少女ようむ☆マギカ>にしてもらえると」
「止めはしませんが嫌な予感がするので、断っておきなさい」
「では何か口癖を考えてみましょうか。<うぐぅ>だとか<あうー>はどうでしょう。或いは<はちみつくまさん>
に<~~だおー>とか言ってみるのもいいかもしれませんね。これは一時代築けますよ」
「その時代は、かなり昔に終わっていますよ…」
「そんなこと言う人、嫌いです!」
―――と、綺麗に落ちた所で。
『さあ。では登場してもらいましょう。見事ベスト8に名を連ねた人間・妖怪・吸血鬼・鬼・風神・大悪霊・魔界神
―――そしてヒーロー!皆さん、盛大な拍手をどうぞ!」
まず現れたのは、紅白を基調とした巫女服に身を包んだ少女。
<人間>博麗霊夢。
続いて、二本の巨大な角を備えた小柄な童女。
<鬼>伊吹萃香。
白皙の肌と血のように紅い瞳。
<吸血鬼>レミリア・スカーレット。
巨大な注連縄を背負った、蒼い髪の少女。
<風神>八坂神奈子。
風に揺れる白銀の髪と、漆黒の六枚翼。
<魔界神>神綺。
大きなトンガリ帽子に青いローブ、悪霊だから足はない。
<大悪霊>魅魔。
相変わらず、胡散臭い笑顔を浮かべた少女。
<妖怪>八雲紫。
最後に溝ノ口からやってきた、真っ赤なチンピラ。
<ヒーロー>天体戦士サンレッド。
『―――以上8名!いずれも劣らぬ猛者ばかりです!それでは、御一人ずつにこれからの闘いへの意気込みを語って
いただきましょう!インタビュアーは不肖ながら私、射命丸文が務めさせていただきます!』
文の背中から黒い羽が広がり、同時に実況席からその姿が消える。
次の瞬間には、既に彼女は8人の眼前に立っていた。
その速度に、レッドは少々ながら驚いた。
「…そんなスピードがあんなら、出場してりゃよかったんじゃねーか?」
「いやいや、レッドさん。私はこれで結構長生きでして、この歳になると自分で参加するより、誰かが盛り上がって
いるのを見物することに楽しみを見出すようになるので御座います」
「そういうもんか」
「そういうもんです。いやーしかしレッドさん。こうして並ぶとあなただけ浮いてますねー、色んな意味で。正直に
言わせてもらうと、もうギャグの領域ですよ(笑)」
「ほっとけ!」
「おお、怖い怖い…ではまずは博麗の巫女・博麗霊夢さん、どうぞ!」
「そうね…私が言いたいのは、一つだけ」
霊夢は、巫女に相応しい神秘的な雰囲気を醸し出し、厳かに言った。
「観客、多いわね」
「ええ、幻想郷中から集まってますから」
「そう…多いはずよね…でも、何で…」
ビキッ。突如、その額に、青筋が浮かんだ。
「―――何だってこんなトコには集まるくせして、ウチの神社には集まらないのよ!ええっ!?舐めてんのあんたら
ねえ、舐めてんのぉ!?」
「ちょ、ちょっと、霊夢さん…」
「あんたらのうち十人に一人でもウチに来て、一人十円でも賽銭箱に入れてくれれば、私だって…私だって貧乏巫女
なんて言われずに…すむのに…う、うっ…うううっ…!」
とうとう泣き出した。文は声をかけるべきかどうか迷い。
「…さあ、二人目にいきましょう!」
結局見なかった事にした。英断である。
「大悪霊・魅魔様!ここ数年、御姿が見えなかった貴女ですが、何処で何をしていたのか気になる所ですねー」
「ふふ。色々やってたのさ、あたしも…」
大人びた(年増などと言ってはいけない)美貌に影を落とし、彼女は言う。
「ほう、例えば?」
「搾乳モノのビデオに主演女優として」
「はいー!個人的には詳しく訊きたいけどお子様も見ているのでアウトー!では魅魔様、一言どうぞ!」
「そうだね…それじゃあ」
すっと顔を上げ、観客席の一点を見つめる。
その視線の先には、霧雨魔理沙の姿があった。
魅魔は顔を綻ばせて、大声を張り上げる。
「魔理沙ぁ~~~っ!見ててよ、お師匠様、頑張るからねぇ~~~っ!」
「師匠…?」
レッドは眉を持ち上げた―――マスクなのにどうやって、などと訊いてはいけない。
「あんた、あの白黒の…」
「ああ。あいつに魔法を教えたのは、何を隠そうこのあたしさ!」
「はあー…」
魔理沙はというと、必死に顔を伏せていた。
恥ずかしい師匠を見られて恥ずかしいという、見たままの有り様だ。
レッドさんは自分に置き換えて考えてみた。
―――大観衆の中、インタビューを受けるヴァンプ様が自分に向けて大きく手を振る。
「レッドさーーーん!私、頑張りますから、応援してくださいねーーー!」
(うわっ!こりゃ恥ずかしい!そしてウゼぇ!)
考えただけでヴァンプ様を殴りたくなってくる。
これが終わったら一発こづいてやろうと決心するのだった。
「え、えー…では次に魔界神・神綺様!魔界統治で忙しい中、よくぞ来て下さいました!」
「あら?そんなに忙しくないわよぉ」
左側で纏めたサイドテールの髪を靡かせながら、年若い少女のようにコロコロ笑う。
「難しい事は大概夢子ちゃんがやってくれるしぃ。あ、夢子ちゃんは私のメイドさんでとっても可愛い子でぇ」
「あ、あはは…そのお話も興味深いのですが、長くなりそうなので、一言でお願いします」
「え~…一言、というと…そうねぇ…」
すっと顔を上げ、観客席の一点を見つめる。
その視線の先には、アリス・マーガトロイドの姿があった。
神綺は顔を綻ばせて、大声を張り上げる。
「アリスちゃーーんっ!見ててよ、ママ、頑張るからねぇ~~~っ!」
「ママ…?」
レッドは眉を持ち上げた―――マスクなのにどうやって、などと(略
「あんた、あの人形女の…」
「うん。あの子を産んだのは私よぉー」
「はあー…」
アリスはというと、必死に顔を伏せていた。
恥ずかしい母親を見られて恥ずかしいという、見たままの有り様だ。
レッドさんは自分に置き換えて考えてみた。
―――大観衆の中、インタビューを受けるヴァンプ様が自分に向けて大きく手を振る。
「レッドさーーーん!私、頑張りますから、応援してくださいねーーー!」
(うわっ!こりゃ恥ずかしい!そして超ウゼぇ!)
考えただけでヴァンプ様を殴りたくなってくる。
これが終わったらさっきのも合わせて二発こづいてやろうと決心するのだった。
「では…次…」
あまりに身も蓋もないインタビューの連続にテンションが下がりつつ、文はやる気を奮い起こす。
「守矢神社の祭神が一柱・八坂加奈子様!外側の世界から此処に来て以来、殆どの異変が間接的にあんたらのせい
で引き起こされてると言っても過言じゃあないお騒がせ一家の家長!」
「酷い言われようだね、全く」
そう言いつつ、否定はしない。
「とにかく、ここまで来たからには目指すは優勝だけさ。ねえ、早苗、諏訪子!」
それに応えてか、観客席から黄色い声が上がる。
「ファイトです、八坂様!」
「神奈子ちゃーん、あたし達の分まで頑張ってぇー!」
長い髪の美少女と、ヘンテコな帽子を被った美幼女である。
この二人が<早苗>と<諏訪子>らしい。
「応よ、私に任せるがいい!優勝し、守矢神社の名声をこの幻想郷に響かせるのさ!その余勢を駆り、この幻想郷を、
守矢神社を頂点とする一大宗教国家に生まれ変わらせる…!ふふ―――そして我々はそれに乗じて可愛いマスコット
<モリヤくん>を発売。私達三人のブロマイドはリビドーの溜まった青少年諸君を中心にバカ売れ、その勢いに任せて
現世へ舞い戻り、無能な政治家共から政権を奪取し、鬼畜米英へと宣戦布告し、我々が世界を支配するのだ!」
「おいおいおい…」
レッドさんは呆れつつ、文に耳打ちする。
「なんかすげー野望がこんなトコで明らかにされちまったぞ…いいのか、これ」
「うーん…これはもう、誰かがあのアホ…もとい、邪神を倒してくれるのを祈るばかりです」
答えつつ、文は非常にうんざりしていた。
(こ、こいつらは…個人的な事以外、まるで話す気ないじゃないですか…何でだよ…何で幻想郷はこんな奴らばかり
なんだよ…こんなんじゃ私、実況をやりたくなくなっちまうよ…)
と、文が某異星人のように心中で愚痴っていると。
「貸しなさい」
レミリア・スカーレットが、マイクを奪うようにして引っ掴む。
「―――さて。もう何度も説明しているけれど、この大会の優勝者には、賢者イヴが遺した秘宝が贈られる」
その声の、なんと威厳に満ちた事か。
幼い姿に似つかわしくない厳粛な面持ちに、誰もが魅入る。
「賢者イヴ。この幻想郷において彼女を知る者は、残念ながらそう多くはないでしょう。されど、私は知っている。
彼女が如何に偉大か、如何に素晴らしい方であったか」
そして。
「その賢者の遺物ならば…手にすべきは、最も強く、高貴な存在であるべき」
月夜に向けて、その手を大きく突き上げた。
「宣言する。彼女の遺産はこのレミリア・スカーレットが必ずや、手にすると―――!」
「お、おお…!」
やっとこまともなコメントが出てきて、文はちょっと嬉し泣きしそうだった。
(パチパチパチ)
心中では、盛大に拍手してたりした。
(へー…あながち、ただのクソガキでもなかったか…)
その様子には、彼女と折り合いの悪いレッドでさえも感心させられるものがあった。
言葉の裏から滲み出すような強い決意を、感じずにはいられない。
文はマイクを受け取って、レッドに突き付けた。
「素晴らしい御言葉、ありがとうございました!では次、レッドさん行ってみましょう!」
「え、俺?」
「はい。皆さん、あなたには注目してますよ?新顔ながら星熊勇儀・風見幽香という強豪妖怪二人を倒して、堂々の
準々決勝進出ですからね。いいコメント、期待してますよ!」
「あー…」
マイクを貰い、何を言おうか迷いつつ。
「えっと。川崎でヒーローやってるサンレッドです。年は27です…あーいや、年は別にいいけど。何つーか、アレ。
俺には一人、吸血鬼のダチがいまして」
とりあえず、正直な気持ちを言う事にした。
「そいつは百年以上生きてるくせにはっきり言ってどーしよーもない奴でして。女の家に弟と一緒に転がり込んで、
その子に生活基盤全部を丸投げして、弟に対しては躾を通り越して虐待も飛び越えて日常的に拷問としか思えねー
暴力を振るうような奴で―――あ、この弟ってのもとんでもねーバカなんで、ブン殴りたくなる気持ちも正直分かると
いえば分かるんですが」
観客席から凄いメンチをきられてるのが分かったが、ポリポリと頭をかきながら続ける。
「まあでも、付き合ってみると割といい奴だし…そんで、その賢者イヴってのとも、色々あったらしくて、そんで…
あー、イチイチ説明すんのはもうメンドくせえ!いいか、ジロー!何度も言うようだけどなあ!」
ビシッと。
観客席のジローに向けて、指を突き付けた。
「俺は相手が誰だろうとブチのめして、優勝して、賞品を持って帰ってやるから―――川崎に戻ったら、豪勢なメシ
でも食わせろよ!」
「…レッド」
ジローは相好を崩し、答える。
「何でも、好きなものを奢りましょう!」
そんな彼に、最愛の弟であるコタロウは囁く。
「兄者…今月は遅刻しすぎの罰でミミちゃんからお小遣い減らされてるのに、そんなこと言って大丈夫?」
「…交際費ということで、どうにか誤魔化しましょう」
汚い大人の社会を学ぶコタロウだった。
「―――いいね、いいね。友情というのは、とてもいい」
そこに割り込むように、幼い少女の声。
「友達は大事だ。とても大事だ。友達が隣りにいてくれるだけで、酒も旨いしメシも進む」
レッドが手にしていたマイクはいつの間にやら小さな手で奪い取られていた。
「だけど…その友情のためにわざと負ける…なんてことはしないよ。あんたもそんなの望まないだろうしね」
「テメエは…」
「酔いどれ幼女―――伊吹萃香ちゃんさ」
星熊勇儀と同じく、鬼族最強の四天王の一人―――
伊吹萃香。
「トーナメント表でいえば、次のあんたの対戦相手だね」
「…星熊の、敵討ちってとこか?」
「いやいや、そんなつもりはないね。あんたも勇儀も全力で闘り合った結果さ。そんなみみっちい事言ってたら、
私こそ勇儀に殴られちまうよ。私はただ、鬼の闘争本能のままに、あんたと闘うだけさね―――」
萃香は朗らかに―――それでいて、獰猛にも見える顔で笑う。
見た目そのままの少女のように。
見た目に似つかわしくない、猛獣のように。
「さ、私の言いたい事は以上だ。最後は…ほれ、紫。ビっと決めな」
マイクを無造作に放り投げる。それは明後日の方向に飛んでいったかと思えば、次の瞬間にはどういうわけか
八雲紫の掌に納まっていた。
「ま、特に言う事もないんだけど…そんなに皆、肩肘張らずにやりなさいな」
「楽しければいいの。面白ければいいの」
「混沌ならばそれでいい。混乱ならばそれもよし」
「踊るもよし、唄うもよし。それを見て阿呆と笑うのも、それで楽しいならよし」
「勝ち負けなんて関係なく、最後の最後、この祭りを一番楽しめた奴が勝ちよ」
「はい、私のインタビューは終わりよ。どうぞ」
にこやかに、それでいて胡散臭い笑顔で、紫は文にマイクを渡す。
「相変わらず、何が言いたいのか分かるような分からないような…結局、煙に巻かれたような」
「気にしたら負けよ。何も楽しめなくなるからね」
「はー…」
あんた絶対、自分でも何言ってんのか実は分かってねーだろ。
喉まで出かかった毒舌を引っ込め、声を張り上げる。
「では、これにて本日の全日程は終了です!準々決勝は五日後―――その組み合わせは!」
『準々決勝・第一試合―――サンレッドVS伊吹萃香!』
『準々決勝・第二試合―――レミリア・スカーレットVS博麗霊夢!』
『準々決勝・第三試合―――八坂神奈子VS神綺!』
『準々決勝・第四試合―――八雲紫VS魅魔!』
「―――それでは今日はさようなら!五日後の熱闘・死闘・大激闘をお楽しみに!―――え?ハードルを上げる
な?いえいえそんな。上げに上げたハードルならば、その下をくぐればいいだけですよね☆」
「解決策になってねー!」
「ははははは。それでは皆様、また会いましょう!」
―――五日後。
天体戦士サンレッドには、更なる激しい闘いが待ち受けている。
「クックック…しかし、その前に、やらねばならぬ事がある…」
「ヴァ…ヴァンプ、さん…?」
「ヴァンプ将軍…何を!」
「クックックックック…!」
―――悪の将軍ヴァンプは、不気味な笑いを浮かべる―――!
そのド迫力に、隣にいたコタロウは思わず唾を飲み込み、ジローは刀に手をかける。
「レッドさんの祝勝会ですよ、ねっ!私、腕によりをかけてゴチソウ作っちゃいますから!」
「わーい、ヴァンプさんのゴチソウー!ねえねえ、ケーキは!?ケーキも作る!?」
「うふふ、もっちろんだよー、コタロウくん」
「わーい!きっとゆゆちゃんも喜ぶよ。食いしん坊バンザーイ!」
「ははは、じゃあ幽々子さんのためにもたくさんゴチソウ作らないとね」
「…………」
ジローは、そっと刀から手を放すのだった。
さあ。
次回はバトルもお休みして、楽しい祝勝会!
しかし―――それがまさか、あのような惨劇になろうとは―――
正直な所、皆が薄々感づいていたのだった。
『さあ、会場の皆さん!二回戦の全試合が終了し、これにて本日の闘いが全て終了しました!』
未だ興奮のざわめきが収まらぬ中、それに負けぬ勢いで響く実況。
『あんな試合、こんな試合、色々ありましたね!…え?ほとんど見た覚えがない?それは気のCeuiよ。とにかく本日
の全24試合を終え、遂に準々決勝に8名が駒を進めました!』
「ふむ…確かにここまで長い道のりでしたね」
実況に同意し、妖夢も感慨深げに頷く。
「ほんの数時間の事でありながら、まるで半年ぐらいかかったような…」
全く妖夢は、何を言っているのか。
ほんの数時間の間の出来事を書くのに半年以上もかかるだなんて、そんなバカな話があるわけない。
ないったらないのだ。
「いやいや、構いませんよ。何せ私は<未来放浪ガルディーン>の続きを今なお待ってるくらい気の長い女ですから。
どうぞ、気楽にやってください」
「…あの、誰と話してるんですか?」
ちょっと薄気味悪げに、ヴァンプ様が尋ねる。
「天におわす、この世界を産み出せしオタク野郎とです」
「はあ…いるんですか、そんな人が」
「おや、信じておられない?まあ、行数を稼ぐために無意味な楽屋ネタを入れるような仕事ぶりでは、奴を信じろと
いう方が無理な話かもしれませんが」
ふう、っと溜息を吐く。
「ま、その辺は彼も反省してるし、大目に見てあげましょう。きっとこれからはギャグなど一切入る余地のない本格
シリアスバトルストーリーになっていくはずですから」
「いつもいつも、そんな事ばかり言って…何を考えて生きてるんですか、貴女」
「フッ…知れたこと」
呆れて物も言えない、といった風情のジローに対し、妖夢はBに近いCカップといった、控えめながらも<女性>
としての存在を主張する二つの柔らかくて男なら誰でも大好きな俗に言う所のおっぱいを反り返らせて答えた。
「私は何時如何なる時も、読者の皆様を萌えさせるためだけに生きております。↑の一文もそのためです」
「妖夢さんに萌えてる方は相当の少数派だと見ますが」
「何を仰る。バキスレの萌えキャラといえばこの妖夢か小札か、でなくばふら~りさんではありませんか」
「彼女らと比べたら貴女のコールド負けじゃないですか。怖れながら言わせていただきますが、当SSに寄せられた
感想で、貴女を好きだという意見をほとんど見た事がない。ヴァンプ将軍の方がまだ勝負になります」
「え、そんな事ないですよ。私なんてただのオジサンですよ、ははは」
頬を真っ赤にしてテレテレなヴァンプ様である。
萌える。
そんな彼をライバル意識むき出しの目で睨み、妖夢が反論する。
「いいえ、私の隠れファンも結構いるはずですよ?私が何年、薄い本業界で活躍してると思ってますか。萌えさせる
ためなら、脱ぐ事も厭わぬプロ根性!幽々子様との百合百合でイヤーンなカラミだってこなしますとも!」
「そんな必死だから皆さん、貴女に萌えてくれないんだと思います」
「ぬう…難しいものです。そもそも<萌え>って何なんでしょうか…」
哲学的だった。
ジローは答えられない。つーか、考えたくないという顔だった。
「ここは魔法少女属性をつけてみましょうか。実は最近スカウトを受けたんですよ。白くて可愛いマスコットと契約
して魔法少女になれば願いが一つ叶うそうですよ。タイトルも<魔法少女ようむ☆マギカ>にしてもらえると」
「止めはしませんが嫌な予感がするので、断っておきなさい」
「では何か口癖を考えてみましょうか。<うぐぅ>だとか<あうー>はどうでしょう。或いは<はちみつくまさん>
に<~~だおー>とか言ってみるのもいいかもしれませんね。これは一時代築けますよ」
「その時代は、かなり昔に終わっていますよ…」
「そんなこと言う人、嫌いです!」
―――と、綺麗に落ちた所で。
『さあ。では登場してもらいましょう。見事ベスト8に名を連ねた人間・妖怪・吸血鬼・鬼・風神・大悪霊・魔界神
―――そしてヒーロー!皆さん、盛大な拍手をどうぞ!」
まず現れたのは、紅白を基調とした巫女服に身を包んだ少女。
<人間>博麗霊夢。
続いて、二本の巨大な角を備えた小柄な童女。
<鬼>伊吹萃香。
白皙の肌と血のように紅い瞳。
<吸血鬼>レミリア・スカーレット。
巨大な注連縄を背負った、蒼い髪の少女。
<風神>八坂神奈子。
風に揺れる白銀の髪と、漆黒の六枚翼。
<魔界神>神綺。
大きなトンガリ帽子に青いローブ、悪霊だから足はない。
<大悪霊>魅魔。
相変わらず、胡散臭い笑顔を浮かべた少女。
<妖怪>八雲紫。
最後に溝ノ口からやってきた、真っ赤なチンピラ。
<ヒーロー>天体戦士サンレッド。
『―――以上8名!いずれも劣らぬ猛者ばかりです!それでは、御一人ずつにこれからの闘いへの意気込みを語って
いただきましょう!インタビュアーは不肖ながら私、射命丸文が務めさせていただきます!』
文の背中から黒い羽が広がり、同時に実況席からその姿が消える。
次の瞬間には、既に彼女は8人の眼前に立っていた。
その速度に、レッドは少々ながら驚いた。
「…そんなスピードがあんなら、出場してりゃよかったんじゃねーか?」
「いやいや、レッドさん。私はこれで結構長生きでして、この歳になると自分で参加するより、誰かが盛り上がって
いるのを見物することに楽しみを見出すようになるので御座います」
「そういうもんか」
「そういうもんです。いやーしかしレッドさん。こうして並ぶとあなただけ浮いてますねー、色んな意味で。正直に
言わせてもらうと、もうギャグの領域ですよ(笑)」
「ほっとけ!」
「おお、怖い怖い…ではまずは博麗の巫女・博麗霊夢さん、どうぞ!」
「そうね…私が言いたいのは、一つだけ」
霊夢は、巫女に相応しい神秘的な雰囲気を醸し出し、厳かに言った。
「観客、多いわね」
「ええ、幻想郷中から集まってますから」
「そう…多いはずよね…でも、何で…」
ビキッ。突如、その額に、青筋が浮かんだ。
「―――何だってこんなトコには集まるくせして、ウチの神社には集まらないのよ!ええっ!?舐めてんのあんたら
ねえ、舐めてんのぉ!?」
「ちょ、ちょっと、霊夢さん…」
「あんたらのうち十人に一人でもウチに来て、一人十円でも賽銭箱に入れてくれれば、私だって…私だって貧乏巫女
なんて言われずに…すむのに…う、うっ…うううっ…!」
とうとう泣き出した。文は声をかけるべきかどうか迷い。
「…さあ、二人目にいきましょう!」
結局見なかった事にした。英断である。
「大悪霊・魅魔様!ここ数年、御姿が見えなかった貴女ですが、何処で何をしていたのか気になる所ですねー」
「ふふ。色々やってたのさ、あたしも…」
大人びた(年増などと言ってはいけない)美貌に影を落とし、彼女は言う。
「ほう、例えば?」
「搾乳モノのビデオに主演女優として」
「はいー!個人的には詳しく訊きたいけどお子様も見ているのでアウトー!では魅魔様、一言どうぞ!」
「そうだね…それじゃあ」
すっと顔を上げ、観客席の一点を見つめる。
その視線の先には、霧雨魔理沙の姿があった。
魅魔は顔を綻ばせて、大声を張り上げる。
「魔理沙ぁ~~~っ!見ててよ、お師匠様、頑張るからねぇ~~~っ!」
「師匠…?」
レッドは眉を持ち上げた―――マスクなのにどうやって、などと訊いてはいけない。
「あんた、あの白黒の…」
「ああ。あいつに魔法を教えたのは、何を隠そうこのあたしさ!」
「はあー…」
魔理沙はというと、必死に顔を伏せていた。
恥ずかしい師匠を見られて恥ずかしいという、見たままの有り様だ。
レッドさんは自分に置き換えて考えてみた。
―――大観衆の中、インタビューを受けるヴァンプ様が自分に向けて大きく手を振る。
「レッドさーーーん!私、頑張りますから、応援してくださいねーーー!」
(うわっ!こりゃ恥ずかしい!そしてウゼぇ!)
考えただけでヴァンプ様を殴りたくなってくる。
これが終わったら一発こづいてやろうと決心するのだった。
「え、えー…では次に魔界神・神綺様!魔界統治で忙しい中、よくぞ来て下さいました!」
「あら?そんなに忙しくないわよぉ」
左側で纏めたサイドテールの髪を靡かせながら、年若い少女のようにコロコロ笑う。
「難しい事は大概夢子ちゃんがやってくれるしぃ。あ、夢子ちゃんは私のメイドさんでとっても可愛い子でぇ」
「あ、あはは…そのお話も興味深いのですが、長くなりそうなので、一言でお願いします」
「え~…一言、というと…そうねぇ…」
すっと顔を上げ、観客席の一点を見つめる。
その視線の先には、アリス・マーガトロイドの姿があった。
神綺は顔を綻ばせて、大声を張り上げる。
「アリスちゃーーんっ!見ててよ、ママ、頑張るからねぇ~~~っ!」
「ママ…?」
レッドは眉を持ち上げた―――マスクなのにどうやって、などと(略
「あんた、あの人形女の…」
「うん。あの子を産んだのは私よぉー」
「はあー…」
アリスはというと、必死に顔を伏せていた。
恥ずかしい母親を見られて恥ずかしいという、見たままの有り様だ。
レッドさんは自分に置き換えて考えてみた。
―――大観衆の中、インタビューを受けるヴァンプ様が自分に向けて大きく手を振る。
「レッドさーーーん!私、頑張りますから、応援してくださいねーーー!」
(うわっ!こりゃ恥ずかしい!そして超ウゼぇ!)
考えただけでヴァンプ様を殴りたくなってくる。
これが終わったらさっきのも合わせて二発こづいてやろうと決心するのだった。
「では…次…」
あまりに身も蓋もないインタビューの連続にテンションが下がりつつ、文はやる気を奮い起こす。
「守矢神社の祭神が一柱・八坂加奈子様!外側の世界から此処に来て以来、殆どの異変が間接的にあんたらのせい
で引き起こされてると言っても過言じゃあないお騒がせ一家の家長!」
「酷い言われようだね、全く」
そう言いつつ、否定はしない。
「とにかく、ここまで来たからには目指すは優勝だけさ。ねえ、早苗、諏訪子!」
それに応えてか、観客席から黄色い声が上がる。
「ファイトです、八坂様!」
「神奈子ちゃーん、あたし達の分まで頑張ってぇー!」
長い髪の美少女と、ヘンテコな帽子を被った美幼女である。
この二人が<早苗>と<諏訪子>らしい。
「応よ、私に任せるがいい!優勝し、守矢神社の名声をこの幻想郷に響かせるのさ!その余勢を駆り、この幻想郷を、
守矢神社を頂点とする一大宗教国家に生まれ変わらせる…!ふふ―――そして我々はそれに乗じて可愛いマスコット
<モリヤくん>を発売。私達三人のブロマイドはリビドーの溜まった青少年諸君を中心にバカ売れ、その勢いに任せて
現世へ舞い戻り、無能な政治家共から政権を奪取し、鬼畜米英へと宣戦布告し、我々が世界を支配するのだ!」
「おいおいおい…」
レッドさんは呆れつつ、文に耳打ちする。
「なんかすげー野望がこんなトコで明らかにされちまったぞ…いいのか、これ」
「うーん…これはもう、誰かがあのアホ…もとい、邪神を倒してくれるのを祈るばかりです」
答えつつ、文は非常にうんざりしていた。
(こ、こいつらは…個人的な事以外、まるで話す気ないじゃないですか…何でだよ…何で幻想郷はこんな奴らばかり
なんだよ…こんなんじゃ私、実況をやりたくなくなっちまうよ…)
と、文が某異星人のように心中で愚痴っていると。
「貸しなさい」
レミリア・スカーレットが、マイクを奪うようにして引っ掴む。
「―――さて。もう何度も説明しているけれど、この大会の優勝者には、賢者イヴが遺した秘宝が贈られる」
その声の、なんと威厳に満ちた事か。
幼い姿に似つかわしくない厳粛な面持ちに、誰もが魅入る。
「賢者イヴ。この幻想郷において彼女を知る者は、残念ながらそう多くはないでしょう。されど、私は知っている。
彼女が如何に偉大か、如何に素晴らしい方であったか」
そして。
「その賢者の遺物ならば…手にすべきは、最も強く、高貴な存在であるべき」
月夜に向けて、その手を大きく突き上げた。
「宣言する。彼女の遺産はこのレミリア・スカーレットが必ずや、手にすると―――!」
「お、おお…!」
やっとこまともなコメントが出てきて、文はちょっと嬉し泣きしそうだった。
(パチパチパチ)
心中では、盛大に拍手してたりした。
(へー…あながち、ただのクソガキでもなかったか…)
その様子には、彼女と折り合いの悪いレッドでさえも感心させられるものがあった。
言葉の裏から滲み出すような強い決意を、感じずにはいられない。
文はマイクを受け取って、レッドに突き付けた。
「素晴らしい御言葉、ありがとうございました!では次、レッドさん行ってみましょう!」
「え、俺?」
「はい。皆さん、あなたには注目してますよ?新顔ながら星熊勇儀・風見幽香という強豪妖怪二人を倒して、堂々の
準々決勝進出ですからね。いいコメント、期待してますよ!」
「あー…」
マイクを貰い、何を言おうか迷いつつ。
「えっと。川崎でヒーローやってるサンレッドです。年は27です…あーいや、年は別にいいけど。何つーか、アレ。
俺には一人、吸血鬼のダチがいまして」
とりあえず、正直な気持ちを言う事にした。
「そいつは百年以上生きてるくせにはっきり言ってどーしよーもない奴でして。女の家に弟と一緒に転がり込んで、
その子に生活基盤全部を丸投げして、弟に対しては躾を通り越して虐待も飛び越えて日常的に拷問としか思えねー
暴力を振るうような奴で―――あ、この弟ってのもとんでもねーバカなんで、ブン殴りたくなる気持ちも正直分かると
いえば分かるんですが」
観客席から凄いメンチをきられてるのが分かったが、ポリポリと頭をかきながら続ける。
「まあでも、付き合ってみると割といい奴だし…そんで、その賢者イヴってのとも、色々あったらしくて、そんで…
あー、イチイチ説明すんのはもうメンドくせえ!いいか、ジロー!何度も言うようだけどなあ!」
ビシッと。
観客席のジローに向けて、指を突き付けた。
「俺は相手が誰だろうとブチのめして、優勝して、賞品を持って帰ってやるから―――川崎に戻ったら、豪勢なメシ
でも食わせろよ!」
「…レッド」
ジローは相好を崩し、答える。
「何でも、好きなものを奢りましょう!」
そんな彼に、最愛の弟であるコタロウは囁く。
「兄者…今月は遅刻しすぎの罰でミミちゃんからお小遣い減らされてるのに、そんなこと言って大丈夫?」
「…交際費ということで、どうにか誤魔化しましょう」
汚い大人の社会を学ぶコタロウだった。
「―――いいね、いいね。友情というのは、とてもいい」
そこに割り込むように、幼い少女の声。
「友達は大事だ。とても大事だ。友達が隣りにいてくれるだけで、酒も旨いしメシも進む」
レッドが手にしていたマイクはいつの間にやら小さな手で奪い取られていた。
「だけど…その友情のためにわざと負ける…なんてことはしないよ。あんたもそんなの望まないだろうしね」
「テメエは…」
「酔いどれ幼女―――伊吹萃香ちゃんさ」
星熊勇儀と同じく、鬼族最強の四天王の一人―――
伊吹萃香。
「トーナメント表でいえば、次のあんたの対戦相手だね」
「…星熊の、敵討ちってとこか?」
「いやいや、そんなつもりはないね。あんたも勇儀も全力で闘り合った結果さ。そんなみみっちい事言ってたら、
私こそ勇儀に殴られちまうよ。私はただ、鬼の闘争本能のままに、あんたと闘うだけさね―――」
萃香は朗らかに―――それでいて、獰猛にも見える顔で笑う。
見た目そのままの少女のように。
見た目に似つかわしくない、猛獣のように。
「さ、私の言いたい事は以上だ。最後は…ほれ、紫。ビっと決めな」
マイクを無造作に放り投げる。それは明後日の方向に飛んでいったかと思えば、次の瞬間にはどういうわけか
八雲紫の掌に納まっていた。
「ま、特に言う事もないんだけど…そんなに皆、肩肘張らずにやりなさいな」
「楽しければいいの。面白ければいいの」
「混沌ならばそれでいい。混乱ならばそれもよし」
「踊るもよし、唄うもよし。それを見て阿呆と笑うのも、それで楽しいならよし」
「勝ち負けなんて関係なく、最後の最後、この祭りを一番楽しめた奴が勝ちよ」
「はい、私のインタビューは終わりよ。どうぞ」
にこやかに、それでいて胡散臭い笑顔で、紫は文にマイクを渡す。
「相変わらず、何が言いたいのか分かるような分からないような…結局、煙に巻かれたような」
「気にしたら負けよ。何も楽しめなくなるからね」
「はー…」
あんた絶対、自分でも何言ってんのか実は分かってねーだろ。
喉まで出かかった毒舌を引っ込め、声を張り上げる。
「では、これにて本日の全日程は終了です!準々決勝は五日後―――その組み合わせは!」
『準々決勝・第一試合―――サンレッドVS伊吹萃香!』
『準々決勝・第二試合―――レミリア・スカーレットVS博麗霊夢!』
『準々決勝・第三試合―――八坂神奈子VS神綺!』
『準々決勝・第四試合―――八雲紫VS魅魔!』
「―――それでは今日はさようなら!五日後の熱闘・死闘・大激闘をお楽しみに!―――え?ハードルを上げる
な?いえいえそんな。上げに上げたハードルならば、その下をくぐればいいだけですよね☆」
「解決策になってねー!」
「ははははは。それでは皆様、また会いましょう!」
―――五日後。
天体戦士サンレッドには、更なる激しい闘いが待ち受けている。
「クックック…しかし、その前に、やらねばならぬ事がある…」
「ヴァ…ヴァンプ、さん…?」
「ヴァンプ将軍…何を!」
「クックックックック…!」
―――悪の将軍ヴァンプは、不気味な笑いを浮かべる―――!
そのド迫力に、隣にいたコタロウは思わず唾を飲み込み、ジローは刀に手をかける。
「レッドさんの祝勝会ですよ、ねっ!私、腕によりをかけてゴチソウ作っちゃいますから!」
「わーい、ヴァンプさんのゴチソウー!ねえねえ、ケーキは!?ケーキも作る!?」
「うふふ、もっちろんだよー、コタロウくん」
「わーい!きっとゆゆちゃんも喜ぶよ。食いしん坊バンザーイ!」
「ははは、じゃあ幽々子さんのためにもたくさんゴチソウ作らないとね」
「…………」
ジローは、そっと刀から手を放すのだった。
さあ。
次回はバトルもお休みして、楽しい祝勝会!
しかし―――それがまさか、あのような惨劇になろうとは―――
正直な所、皆が薄々感づいていたのだった。
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