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-<p><font size=
-"2">５時間目開始のチャイムが鳴る授業は体育だ、しかも誰もが嫌がるマラソン。<br>
-
-当たり前のように屋上でサッボっている水銀燈がいる、隣には右腕に抱きついて<br>
-
-眠っている薔薇水晶。<br>
-水銀『どうしてすぐ眠れるのかしらぁ?』<br>
-屋上に来たのはついさっきまだ１０分も経っていないだろう<br>
-
-ちょっと苦笑しながらも愛おしそうに薔薇水晶を見つめている<br>
-
-薔薇乙女の姉妹達の中で薔薇水晶は水銀燈にとって特別な存在だ、それは『家族』<br>
-
-『姉妹』『親友』などではなく明らかに『好き』しかも『愛している』ほうの『好き』だ。<br>
-
-<br>
-初めて知った薔薇水晶に対しての自分の感情は無理やり理性で<br>
-
-押さえつけている、おそらく自分以外まだ、誰も知らないはずだ。<br>
-
-そして誰にも知られたくない<br>
-もちろん薔薇水晶にも<br>
-<br>
-水銀『知られたくないわぁ』<br>
-薔薇『．．．何が？』<br>
-水銀『ばッ薔薇水晶!!起きてたのぉ？』<br>
-薔薇『．．．(コクコク)・・・銀姉さま』<br>
-水銀『なぁに？』<br>
-<br>
-<br>
+<p><font size="2"><br>
 世界は廻り、人は生きる、その一瞬の思い出のために。<br>
 <br>
 ある日の夕暮れ、水銀燈の家のポストに一つの手紙が投函されていた。<br>
 
 手紙なんて珍しい、そう思い手紙の宛名を見て水銀燈は驚愕する。<br>
 
 <br>
 水「この名字って…」<br>
 <br>
 その名は水銀燈にとって見覚えがありとても懐かしいものだった。<br>
 
 <br>
 水「どうして今頃こんな手紙出すのよ……めぐ…っ」<br>
 <br>
 震える手で手紙を持って自分の部屋へと戻る。<br>
 おぼつかない手で封筒を切り手紙を広げる。<br>
 <br>
 めぐからの手紙…。<br>
 水銀燈の胸は言い知れぬ期待と不安で一杯になり心臓を握られているかのようだった。<br>
 
 呼吸も苦しく肺に鉛が落ちたかのように思える。<br>
 読むのが躊躇われた、この手紙には何か、何か今の生活を崩すそんな力を感じる。<br>
 
 <br>
 水「それでも…読まなきゃ…」<br>
 <br>
 水銀燈へ<br>
 お元気ですか、私は相変わらず病弱なままです。<br>
 今更こんな手紙を出されても迷惑なのはわかってます。<br>
 でも私は貴女に謝らなくちゃならない。<br>
 あの日、貴女に何も言わずに引っ越してしまったことあれは貴女にとっては裏切りに思えたでしょう。<br>
 
 傍目から見ても裏切りには違いありません、でもあれは仕方なかったんです。<br>
 
 引っ越す前のある日から私の体は急速に衰退してもう学校へ行くことも叶わなくなりました。<br>
 
 私は悲しかった、でも、悲しい以上のことに貴女のことで頭が一杯になってました。<br>
 
 貴女は普段は強がって意地を張ってるけど本当は凄く優しく友達想いだわ。<br>
 
 皆は病弱な私を置いて行くけど貴女だけは違った、こんな私でも本当によく一緒に遊んでくれた。<br>
 
 私はそれだけで満たされていたけれど、その代わり貴女は他の子ともロクに遊べなかった。<br>
 
 何時しか貴女は私と同じで孤立してしまっていた。私はそれが後ろめたかった。<br>
 
 満たされた気持の中で時折、冷水を浴びせられたように一抹の不安を感じた。<br>
 
 その時、私はもう学校へも行けない体になってしまった。<br>
 
 私は怖かった、貴女のことだからきっと今まで以上に私と一緒に居ようとする。<br>
 
 そして貴女自身は今まで築き上げた自分の居場所を一層犠牲にすることになってしまうのではないか？<br>
 
 私にはそれが堪えられなかった、水銀燈が私と同じ孤独を味わうことが。<br>
 
 それで私は逃げるように貴女の許を去った。<br>
 ごめんなさい、それで貴女の心が傷つかないと思った訳ではなかった。<br>
 
 それでも、きっと貴女にはその傷を癒してくれる新しい人が現れる。<br>
 
 そうやって自分を納得させるしかなかった。<br>
 本当にごめんなさい、結局これは全部私のエゴ、偽善、自己満足です。<br>
 
 私はもうそんなに長くないと医師に宣告されました。最期に貴女に謝罪をしたくて<br>
 
 この手紙を書きました。<br>
 最期まで自分勝手でごめんなさい、そしてありがとう。貴女のことは死んでも忘れません。<br>
 
 さようなら　　　　　　　　　　たった一人の親友へ、めぐより<br>
 
 <br>
 水銀燈の目には涙が溢れていた。めぐが自分を想ってくれていたこと、そしてめぐがもう長くないこと。<br>
 
 嬉しさと悲しさ、一度に多くの感情が水銀燈の心の中で渦巻き、坩堝となる。<br>
 
 <br>
 水「めぐったら…本当にお馬鹿さぁん……っ<br>
 　　こんな、こんな…こと…なんであの時言ってくれなかったのよぉ…っ」<br>
 
 <br>
 水銀燈は先刻切った封筒を見る、幸い住所は書かれていた。<br>
 
 しかし其処は非常に遠く一日でましてや軽い気持で行けるようなところではなかった。<br>
 
 めぐに会いたい、想いは募り沈殿して行き思考は廻る。<br>
 <br>
 水「めぐ…貴女を孤独（ひとり）では逝かせない…」<br>
 <br>
 水銀燈の目には迷いはなく、強い決意があった。<br>
 風が吹き、日は沈み行き、時は流れ、人の想いは巡る…。<br>
 
 <br>
 今日も薔薇水晶は水銀燈の家へ泊まりに来た。<br>
 そして夜、最近では毎日のようになっている交わりへと入る。<br>
 
 <br>
 薔薇「銀姉さま……っ」<br>
 <br>
 自らの唇を舌で湿らせ水銀燈の唇を薔薇水晶は啄ばむ。<br>
 幾度となく繰り返しながら二人は飽くことなくしてはその甘美さに理性が麻痺する。<br>
 
 <br>
 水「今日は一段と甘え上手なのねぇ…」<br>
 <br>
 水銀燈も薔薇水晶の首筋へと頭を近付け愛撫する。<br>
 生暖かい舌の感触に薔薇水晶は思わず声を漏らし水銀燈の肩を強く抱く。<br>
 
 <br>
 薔薇「銀姉さまぁ………んぅ…っ…はぁ…はぁ…」<br>
 水「あらあらぁ…貴女ひょっとしてもう濡れてるんじゃないのぉ…」<br>
 
 <br>
 何時しか水銀燈の手は薔薇水晶の下腹部より下を弄（まさぐ）っている。<br>
 
 見ないでぇ…と言って薔薇水晶は紅潮した顔を背ける。<br>
 水銀燈もわざと薔薇水晶の弱点を突かずにじわじわと弱点の周りを指で優しく愛撫する。<br>
 
 <br>
 水「ふぅ～ん……じゃあ止めちゃってもいいのかしらぁ…？」<br>
 
 <br>
 今まで散々弄んでいた指を止める。<br>
 <br>
 薔薇「あ…駄目…っ…焦らしちゃ…嫌ぁ…(///)」<br>
 <br>
 顔も体も真っ赤にしながら薔薇水晶は水銀燈の手を取り自らの下腹部に当てる。<br>
 
 <br>
 水「うふふ…じゃあ言ってごらんなさぁい…自分をどうして欲しいのか。」<br>
 
 薔薇「あ……ぅ…(///)」<br>
 <br>
 水銀燈は意地悪く哂い、薔薇水晶を試す。<br>
 <br>
 薔薇「わ、私のこと……滅茶苦茶に壊して…銀姉さまの好きなだけ…(///)」<br>
 
 水「うふふ、よぉ～く出来ました、お馬鹿さぁん…」<br>
 <br>
 先ほどの意地の悪い哂いではなく妖艶に美しくワラう。<br>
 そのワラいには一抹の美しさもあった。<br>
 <br>
 <br>
 交わりも終わり二人は肌と肌で抱き合い、お互いの温もりを感じ合っていた。<br>
 
 薔薇水晶は相変わらず水銀燈の豊かな果実に顔を埋めている。<br>
 
 <br>
 水「ねぇ…薔薇水晶。」<br>
 薔薇「…何…銀姉さま…」<br>
 水「あのね…少し前にめぐから手紙が来たの。」<br>
 薔薇「うん…」<br>
 水「それでね…私…めぐの所に行こうと思うの。」<br>
 薔薇「え………」<br>
 水「もう向こうで住む家も決めたし、三日後には引っ越すわぁ…」<br>
 
 薔薇「いや………」<br>
 <br>
 薔薇水晶は目に涙を浮かべる。<br>
 <br>
 水「薔薇水晶…」<br>
 薔薇「いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ！！離れたくない！<br>
 
 変わりたくない！！姉さまが…ずっと一緒に居てって…言ってくれたのに…どうして！？」<br>
 
 <br>
 涙が溢れ、一層水銀燈を強く抱きしめる。<br>
 この温もりを、想いを、自己証明を手放すまいと。<br>
 <br>
 水「お願い、わかって薔薇水晶…私には貴女が居てくれた、けれどめぐには誰も居なかったわ。<br>
 
 　　めぐは今、自分自身に救われないまま命を散らそうとしてるの。私にはそんなことできない。<br>
 
 　　友達と言ってくれためぐを、孤独と絶望のなか死なすことしたくないの！！」<br>
 
 <br>
 水銀燈は薔薇水晶の肩を掴み、自分から引き剥がす。<br>
 初めてのあからさまな拒絶に、薔薇水晶は我を忘れてしまった。<br>
 
 <br>
 薔薇「わからない！わかりたくない！！銀姉さまのことなんて、わかりたくもない！！」<br>
 
 水「薔薇水晶！！」<br>
 <br>
 薔薇水晶は自分の服を掴み、水銀燈の家を出て行った。<br>
 <br>
 水「めぐも…同じ気持だったのかしら…私も…お馬鹿さん…」<br>
 
 <br>
 本当は傷つけたくなかった。なのにどうしてこうなってしまうのだろう。<br>
 
 自嘲の笑いと共に水銀燈は声を押し殺して布団の中で泣いた。<br>
 
 <br>
 翌日、水銀燈は学校に転校することを告げる。<br>
 突然の転校に騒然とするクラスの渦中には薔薇水晶の姿はなかった。<br>
 
 残りの二日間は水銀燈にとっては有意義であった。普段から仲の良かった<br>
 
 ジュン達と買い物に行ったりカラオケに行ったり。<br>
 だがやはり其処には一番居て欲しい少女の姿は無かった。<br>
 
 そしてもう水銀燈が引っ越す日になる。<br>
 一方薔薇水晶の屋敷では薔薇水晶が三日前から部屋に閉じこもっていた。<br>
 
 執事のラプラスの魔は薔薇水晶の部屋をノックする。<br>
 <br>
 兎「お嬢様、今日も学校を休みましたね？」<br>
 薔薇「ほっといて…」<br>
 兎「もうこれで三日連続になりますよ？」<br>
 薔薇「水銀燈のいなくなる学校なんて行きたくない…」<br>
 <br>
 ラプラスの魔は溜息をつく。三日前から同じことを言い続けているのだ。<br>
 
 <br>
 兎「水銀燈様に最後に挨拶に行かれるのが友人の道理だと思いますが？」<br>
 
 薔薇「………でも、私…水銀燈に酷いこと言っちゃった…やっぱり、別れは辛いけど、会いたくない…」<br>
 
 <br>
 ベッドの上で体育座りをしながら薔薇水晶は泣き出した。<br>
 
 兎「お嬢様、出会いがあれば別れがあるのは物事の道理、逆を言えば別れなくして<br>
 
 出会いは有り得ないのです。」<br>
 薔薇「……でも…」<br>
 兎「お嬢様の言いたいこともわかります。変わりたくない、けれども自分を嘲笑うように世界は廻る。<br>
 
 　　世界は変わり、何時しか自分も変わってしまう。それでもね、<br>
 
 変わらないものというのはあるものなのです。」<br>
 薔薇「………変わらないもの…？」<br>
 兎「『想い』ですよ、『想い』。お嬢様の水銀燈様への『想い』です。」<br>
 
 薔薇「水銀燈への…『想い』…。」<br>
 兎「そう、お嬢様の水銀燈様への愛は今でも変わっておられない。だからこそ此処で悩んでるのです。」<br>
 
 薔薇「私は…私は……っ」<br>
 <br>
 時計を見る、もう学校も終わりそろそろ水銀燈が電車に乗る頃だ。<br>
 
 薔薇水晶にもう迷いはなかった。上着を羽織り、屋敷を飛び出す。<br>
 
 外には既にラプラスの魔が車の用意をしていた。<br>
 <br>
 薔薇（私は……水銀燈が何処へ行っても水銀燈が………）<br>
 
 <br>
 　　　　　　　　　　　　　　　『大好き』<br>
 <br>
 駅ではプラットホームにいつもの面々がいた。<br>
 真紅、蒼星石、翠星石、雛苺、金糸雀、ジュン、更にベジータまで。<br>
 
 <br>
 雛苺「水銀燈ぉ…居なくなっちゃうなんて寂しいの…っ」<br>
 
 金糸雀「雛苺ったらお子様かしら、な、泣いてしまうなんてぇ…っ」<br>
 
 雛苺「か、金糸雀だって泣いてるのっ！」<br>
 蒼「元気で、絶対に手紙書くからね。」<br>
 翠「こ、これ持って行きやがれです！翠星石と蒼星石が今日のために作ってやったクッキーですぅ…。」<br>
 
 真紅「残念ね…貴女がいないと、私もなんだか張り合いがなくなるのだわ…。」<br>
 
 <br>
 いつも喧嘩ばかりしていた真紅と翠星石ですら来てくれた。翠星石なんて泣いてすらいる。<br>
 
 水銀燈の心はそれで大分満たされていた。でも…<br>
 <br>
 水（あの子は…やっぱり来てくれないのね…）<br>
 <br>
 考えに沈んでいると顔に何か冷たいものが当てられ驚く。<br>
 
 <br>
 ジュン「何考え込んでるんだよ。これ、ヤクルトだけど。」<br>
 
 水「あら、ジュンも気が利くわねぇ。」<br>
 べ「俺からは…」<br>
 水「ありがとうねぇ、皆。」<br>
 べ「orz」<br>
 水「もう、冗談よぉ。それでなぁに？ベジータ。」<br>
 べ「お、おう、その…めぐさんって人にこのお守りをって思ってな。」<br>
 
 翠「べ、ベジータの癖に妙に気が利くです…。」<br>
 水「ふふ、ありがとうベジータ。」<br>
 <br>
 丁度、電車がプラットホームに到着した。<br>
 電車の扉が開かれ、水銀燈は扉の前にいる。<br>
 <br>
 水（結局…薔薇水晶は来てくれなかったわねぇ…ふふ…めぐに言われた通りだわぁ…）<br>
 
 <br>
 知らず知らずのうちに目頭が熱くなる。<br>
 無情にも扉は閉まり、水銀燈と真紅達の空間は隔離される。<br>
 
 <br>
 <br>
 真紅達が何かを言っている。だがプラットホームのベルの音で何も聞こえない。<br>
 
 口の動きで理解しようと真紅達を見ると雛苺と金糸雀が何処かを指差していた。<br>
 
 指し示された方向を見ると、其処には一番此処に居て欲しかった人がいた。<br>
 
 <br>
 水「薔薇水晶！！」<br>
 <br>
 薔薇水晶が走って来る。走りながら、必死に何かを言っている。<br>
 
 だが電車はゆっくり進み出し、水銀燈は止まったままで皆から離れていく。<br>
 
 進みだしてからやっと薔薇水晶は近くまで来て、何かを言う。<br>
 
 涙を流しながら走り、何かを言う薔薇水晶に水銀燈も止まったまま涙を目に溜めながら彼女に応える。<br>
 
 やがて電車が二人を引き裂き、二人は離れ離れになる。<br>
 水銀燈は扉にもたれ掛かる姿で泣き崩れた。<br>
 先刻の薔薇水晶の言葉を思い出す、声は聞けねども、水銀燈には分っていた。<br>
 
 <br>
 　　　『水銀燈、大好き』<br>
 <br>
 水「私もよぉ…薔薇水晶…っ…私も…貴女がぁ…大好きぃ……っ」<br>
 
 <br>
 世界は廻り、変化する。変わらないことを望む人を嘲笑うように。<br>
 
 だけど、本当は明日を生きて欲しいから背中を押すだけ。<br>
 
 変わらない『想い』があれば、誰でも明日を生きて行けるから。<br>
 
 <br>
 兎「別れが永久になるか、一時になるか、それはお二人しだい…。」<br>
 
 <br>
-　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　The
-END<br></font></p>
+　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　TheEND<br></font></p>