「「クロス・ライン」室町翼編②」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「クロス・ライン」室町翼編② - (2011/04/01 (金) 19:01:23) の1つ前との変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
<p><翼編2><br />
チャイムが鳴る。昼休みが終わりを告げる。<br /><br /><br />
———それどころじゃ無いもんね<br /><br /><br />
と、翼は自分に言い聞かせた。<br />
真面目故、何をするにも理由と言う名の言い訳をしないといけない性分なのだ。<br /><br /><br />
まず翼が向かったのはトイレだった。<br />
別にもよおさずとも結衣はよくトイレに行くことがあって<br />
あまりもトイレに向かうので<br />
「頻尿なの?結衣、あんた頻尿なの?」<br />
と聞いたところ<br />
「いや、なんか個室はいると落ち着くんだよね」<br />
という、小学校時代からの付き合い故の理由だった。<br /><br /><br />
トイレの扉を開ける。<br />
そこは、入り口付近に手洗いがあり、その奥に用具入れが1つ、その向こうに個室が5つある平均的な女子トイレだった。<br />
もしかしたら結衣以外の人がいるという可能性を考えて<br />
申し訳なさそうに呼びかける<br /><br /><br />
「結衣ー・・・いるのー?」<br /><br /><br />
トイレ独特の空気に翼の声が溶けていくが、翼が求めている声は返ってこなかった<br /><br /><br />
———いや、ただ単にからかってるだけかも<br /><br /><br />
そう思った翼はトイレの鍵を確認する。<br />
色は全て青。オールグリーンならぬオールブルー。<br /><br /><br />
「入り口側から開けてくわよー?」<br /><br /><br />
ガチャッ<br />
ガチャッ<br /><br /><br />
———やっぱりいないのかな<br /><br /><br />
ガチャッ<br />
ガチャッ<br />
ガチャッ<br /><br /><br />
「・・・あ」<br />
「・・・え?」<br /><br /><br />
最後の扉、つまり、窓に一番近い個室の扉を開くとそこには<br />
真っ黒な髪をして、毛先がウェーブしているいわゆるソバージュヘアーの生徒が<br />
便器に座り、膝の上にPCを置いてこちらを向いていた。<br /><br /><br />
「あ、ご、ごめんなさいっ!!!!」<br />
そう言って扉を閉めようとすると<br />
「・・・別に大丈夫。お花は摘んでない」<br />
「え?あ?」<br />
よく見ると、蓋を閉じた便器に座っている。<br />
単純に便器を椅子として利用していたようだ<br /><br /><br />
「え、いや、でも」<br />
「謝らなくても大丈夫・・・室町さん、だっけ」<br />
「え?何で知って・・・」<br />
「・・・一応、クラスメートだから・・・」<br /><br /><br />
そう言われ、自分のクラスメートの顔を思い出していく。<br />
———こんな子いたっけ?えーっと・・・<br /><br /><br />
「姫崎ひより」<br />
「ご、ごめんなさい・・・」<br />
「別に。あまり、私クラスで目立たないから・・・」<br />
「そ、そう?」<br /><br /><br />
実際、翼が覚えてないのだからそうなのだろう。<br />
———でも、こんな存在感そう無いよ・・・<br />
そう思ったが、よくよく現在の状況を振り返ってみて<br />
———あ、トイレ開けてPC持った人がいたらそりゃ驚くか<br />
と結論に至って早々に存在感の項目を、頭の中の会議から外した<br /><br /><br />
「ところで、天羽さん、探してるの?」<br />
「え、何でそれを・・・」<br />
「さっき「結衣ー」って言ってた」<br />
「・・・なるほど」<br />
「天羽さんなら」<br />
「知ってるの?」<br />
「どこに行ったかはしらない。けれど、さっきまで隣の個室にいた」<br />
「本当に?」<br />
「本当」<br />
「どこ行ったかわからない?」<br />
「それはわからない」<br />
「そっか・・・」<br />
「でも」<br />
「でも?」<br />
「今思えば、本当にあれは天羽さんだったのかな、って」<br />
「・・・どうして?」<br />
「入ってきた時は、確かに天羽さんだった。姿は見てないけれど<br />
『おっはなっをつっみにー』って、あんなの歌うの天羽さんぐらい」<br />
「・・・あのバカ・・・」<br />
「その辺はさておいて、入ってきたのは確かに天羽さん。でも、出て行く時は<br />
どう考えても天羽さんじゃなかった」<br />
「え?」<br />
「だって、声も違った。普段の天羽さんよりもっと甘かった。ハニートーストを砂糖の山に突っ込んだ感じ」<br />
「・・・ふむ」<br />
「それに、笑い方も違った」<br />
「笑い方?」<br />
「うん。『きゃははは』って感じで笑ってた。あれは子どもかな」<br />
「・・・子ども・・・あ」<br />
「どうしたの」<br />
「いや、何でも無い。ありがとね」<br />
「いえいえ」<br />
「ところで、授業は?」<br />
「あなたも。そしてそれは聞かないお約束」<br /><br /><br />
バタン。<br />
ひよりが、少し腰を浮かせて扉に手をかけ、静かに閉めた。<br /><br /><br />
———子ども?まさかね・・・<br /><br /><br />
翼の脳裏には、ふたつの可能性が浮かんでいた。<br /><br /><br />
1:純粋に結衣がふざけている可能性。<br />
2:本当に消えた<br /><br /><br />
まずは1の可能性について考える。<br />
こればっかりは否定出来ない。気まぐれな結衣のことだ、何とかしてふっと消えて<br />
勝手に幼女を捜しているという可能性。<br />
そして2の可能性について考える。<br />
「消えた」というのがどのように消えたかにもよるが<br />
いくらか人のいる廊下で、いきなり消えるというのはあまりにも非科学的だし<br />
そして何より一番おかしいのは「消えた」ことを翼に言われるまで誰も認識していないという点だった。</p>