ウラジーミル・ボゴダビッチという男に会うためにマレンコフとその友人の通訳に案内される島田真北。
3人が乗った列車は草原を進んでいく。人口密度の少ないサハリンそのものが田舎のようなものである。
朝の9時にユジノサハリンスクを出て、ポロナイスクまでは7時間かかる。
16時、ポロナイスクに到着。するとそこで待ち受けていたのは、青いジャンパーの男だった。
マレンコフはすぐにその男がボゴダビッチだとわかった。
「ボゴダビッチ、連れてきたぞ」
「おお、ようやく来たか」
ボゴダビッチは真北の方に視線を合わせる。
「はじめまして」
真北は挨拶する。
「こちらこそはじめまして」
ボゴダビッチも返す。
「では、俺はここで失礼」
マレンコフとはここでお別れ。真北と通訳はボゴダビッチの車に乗せられ、郊外にあるボゴダビッチの自宅へと向かう。
「島田真北、君の噂は聞いたぞ、どうやらあのジャイアント東京を豚箱送りにさせたようだな」
「はい」
「で、自衛隊をやめてサハリンまで修行をしにきたってわけか」
「そうですね」
「でも言っておくけど俺の修行は厳しいぞ、これまで何人の男が一週間持たずに挫折したものか、中にはスペツナズ並の戦闘力を持った者もいる」
「はい、覚悟しております」
真北はボゴダビッチに忠告されながらも、余裕の様子。
こうしているうちにボゴダビッチの自宅に到着。時刻はサハリン時間1900
辺り一面は草原だのタイガだの、近所には誰も住んでなさそうだ。
するとボゴダビッチは真北に言う
「島田、さっそく君に課題を与える。」
「何ですか」
「まず、このあたりの木で刀を作れ、長さは1メートルまでだ。そして刀が出来たら俺と手合わせだ」
「わかりました」
真北は森林に入り、刀が作れそうな木の枝を拾いにいく
「この木か、いや、こっちのほうが丈夫そうだな」
10分後、木の枝を拾って戻ってきた。しかし、刀を作るための工具がない。
「あれ、工具は?」
真北は訊く。
「工具、ないね。」
どうやら工具は用意されておらず、代用品を探すか手で削るかしかなかった。
「うそっ!?そんなバカな?」
真北は刃物の代わりになりそうな物を探す、すると道ばたに薄い銅板のようなものを見つけた。しかし切れ味が悪い。だが工具がないから仕方がない。
そして加工に時間がかかる。真北が木の枝を削っているうちに夜が更けていく。
するとそこにボゴダビッチがやってきて、見本となる刀を持ってきた。
「これと似ている刀を作るんだな、そして俺が認めたら手合わせしてやろう。」
「はい」
「それに今日はもう遅いさ、また翌朝やればいいさ、早く寝たまえ」
「はい」
真北は寝室に入る。ボゴダビッチはハバロブスクで生まれた46歳独身、3年前に妻と離婚して以来、この家に住んでいる。
サハリンは寒い。夜は常にストーブがついていないと凍えそうである。
真北はベッドに入り、就寝。
翌朝、0600
朝食を終えた真北はさっそく木刀作りに取りかかる。
0800、ついに木刀が完成。
「ついにできましたーっ!」
と、真北が言うと、ボゴダビッチはさっそくチェックに入る。
結果は合格。そして3人は近くの森林の中に入り、いよいよ手合わせが始まる。その前に、ボゴダビッチがルールを説明する
「ルールは日本の剣道と似ている。相手の面、小手、胴に当てた方が勝ちだ。どんな戦法でもいい、とりあえず俺に勝て」
「はい!」
すると通訳が手信号で始めの合図送った。
「てっ!」
ボゴダビッチは威勢の良い声を上げ、真北に斬りかかる。しかし真北は難なくかわす。
そして真北は反撃、しかしボゴダビッチもかわす。
斬りかかってはかわし、斬りかかってはかわす、しばらくはその繰り返しである。
すると真北は
「いくぜ!ブンブン丸!」
真北はプロペラのように刀をブンブン回していった。ボゴダビッチも真北の気迫に若干ひるみがち。
だがしかしボゴダビッチは勢いよく刀を前に出した。すると真北の刀ははじき飛ばされた!
「失敗った」
そして真北は刀を取りに行こうとするがボゴダビッチにあっさりと面を打たれてしまった。
真北は負けたのである。
「まだまだ修行が足りん、こんな二日目で俺に勝とうなんて考えないほうがよかろう。」
「だめか」
「なら次の課題を言う、アイススクウェアに駐留するブラックアイヌ団を叩きのめにしてこい」
「ブ、ブラックアイヌ団を!?」
「ああ、そしたら俺に勝てるだろう」
果たして、ブラックアイヌ団とはどういうものなのか
続く
最終更新:2008年12月13日 17:00