通常戦を2勝で終え、D-BR杯の出場権を手にした島田真北。そしてあとは出場者が4人揃うのを待つのみ。
「さて、注目の第437試合、勝つのはチュチュネズミか、それとも怪傑播磨王か、両者とも切符は残り1枚、現在チュチュネズミは6勝、そして播磨王は4勝、勝ち星をのばすか、それとも先にD-BR杯で待つことになるのか」
試合開始、試合は早くからチュチュネズミのペースに、自慢の快足を生かした攻撃で播磨王をノックアウト。しかし、チュチュネズミなら勝てるはずの一般ファイターに痛恨の一撃を喰らい、劣勢に立たされる。そしてもう一人の一般男子とどめを刺され、場外に投げ出され、敗退。これでD-BR杯に出場する4人が出そろった。
一方観客席では
「チュチュネズミってやっぱ強いなぁ」
「てか米坂って誰よ」
「やっぱりチュチュネズミが勝つのかな」
相本、上山、成田の三人が話をしている。
そして場内アナウンスが鳴り響く。
「あと5分ほどで第1087回D-BR杯が始まります。しばらくお待ち下さい。」
そして5分後
「まもなく第1087回D-BR杯が始まります!青コーナー、野洲の怪物、米坂和人!」
放送と共に、米坂が舞台に上がる。
「赤コーナー、播磨の帝王、怪傑播磨王!」
続いて播磨王も舞台に上がる。
「黄コーナー、大津の新星、島田真北!」
そして真北の入場。相本たちが声援を送る。
「そして緑コーナー、守山ネズミ王国の誇るスーパースター、チュチュネズミ!!」
チュチュネズミ、この後世世界では彼は守山ネズミ王国のメインキャラクターであり、あの浦安の某遊園地の鼠にも匹敵するほどの人気を誇っている。運動神経抜群でサッカー、野球、ドッジボールなどの球技はもちろんのこと、バトロイでも常にトップファイターの座を堅持している。チュチュネズミが入場すると、場内に大歓声がわき上がる。スタンドの7割がチュチュネズミのサポーターで、彼らはチュチュネズミのテーマソングを歌う。
「僕らの愉快なチュチュネズミ〜ネズミ〜ネズミ〜チュチュネズミ〜」
そう、あの某浦安鼠の譜で、あの元阪神タイガースのとある選手のヒッティングマーチのダンスをしながら、みんなが歌い出しているのである。
すると真北は
「なにこれ、残りの3割もチュチュネズミのサポーターだったら宗教だぞ、怖い、仮に自分がチュチュネズミを倒したらサポーターから卵だの中身入りの缶だの靴だの投げられたりするから怖い。」
「おーい!チュチュネズミ!島田とかいう言う甲斐無い野郎をぶっ潰せ!」
一人のサポーターが叫ぶ。
「島田さーん!がんばってーっ!」
負けじと相本も叫ぶ。
そうこうしているうちに、試合は始まろうとしている。
審判がファイター4人の態勢を整えさせ、試合開始の合図を出す。
試合開始
「それっ!」と、まずは米坂の先制パンチ。しかし真北は冷静にこれを受け止める。
「たあっ!」今度は播磨王が真北を襲う。しかし真北はこれをガードする。
そしていよいよチュチュネズミが最初の一撃を加える。喰らったのは米坂、しかし軽妙なダメージ。すると米坂は反撃、チュチュネズミは素早くかわす。敏捷性に定評のあるチュチュネズミのようだ。
真北は得意の空手で播磨王を攻める。播磨王はかわしきれず、ことごとくダメージを喰らう。播磨王は後ろに下がって真北の隙を狙うが、なかなかチャンスがつかめない。「くそっ、こんなやつにこの俺が」播磨王は徐々に冷静さを欠いていく。
ここでチュチュネズミが会心の一撃。
バコォーン!
必殺技チュチュパンチが米坂に炸裂。米坂は場外へ飛ばされ、最初の脱落者に。
さて残りは三人、真北、チュチュネズミに空手を仕掛ける。しかしチュチュネズミは得意の快足でそれを当てさせようともしない。真北がチュチュネズミに固執している隙を播磨王が狙う。そして播磨王は強烈なキックで真北の背中をアタック。
バコォーーン!
「失敗った」
真北はバランスを崩し、前に倒された。そしてチュチュネズミも倒れている真北を襲う。二人がかりでの集中攻撃に対して真北は立ち上がれない。
そしてチュチュネズミは高く跳び上がり、空転して真北に強烈な一撃を与える。
バコォーン!
真北は大ダメージを被る。当然、立ち上がることもできず、播磨王が真北を背負い、そのまま場外へと放り投げた。
この瞬間、島田真北の敗退が決まった。観客席の相本は唖然とした。ブラックアイヌ団を倒したあの真北が、そう簡単にやられるのを予期せずにいた。
「そんな・・・・死んでないよね」
「死ぬなんてありえないさ。」
すると場外に投げ出された真北はようやく立ち上がった。彼は敢えて全力を出さなかった。むしろ全力を出したら間違いなく死人が出たであろう。背中に擦り傷を負っただけで済んでいる。
その日の夕方、真北はD-BR杯出場ボーナスの1万円で3人をごちそうに連れて行った。
「応援してくれたお礼だ」
「ありがとうございます」
「でも、チュチュネズミが結局優勝でしたけど」
「うん、チュチュネズミは強いね、まいったよ」
「島田さん、もうちょっと本気出したらよかったのに、もしかして手を抜いていたのでは?」と、相本が訊く。
「そりゃそうよ、本気出したら俺は今頃殺人容疑で逮捕さ、力のコントロールって難しいよ」
「ははははははは」四人は一斉に笑う。
するとそこに一人の男が現れた。
「島田真北さんですか」男は尋ねる。
「はい」真北は答える。
「やはりそうでしたか、私は怪傑播磨王の中の人です」
そう、あの怪傑播磨王に扮していた男がやってきた。
「見事なファイティングでしたよ」
「あなたこそ」
「今度こそはチュチュネズミを倒しましょう」
「はい」
と、二人は握手を交わす。
「さて、記念撮影でもしましょうか」相本は言う。
「よし、やろうか」
左から、上山、成田、播磨王、真北の順に並んで、写真を撮る。相本はセルフタイマーのスイッチを入れ、シャッターを押し、そのまま真北の隣に並ぶ。
カシャッ 見事な一枚ができあがった。みんなが笑顔という、最高の写真である。
第3部完
第4部へ続く
最終更新:2008年12月21日 21:11