真北の大冒険 > 第25話 枦哲治の挑戦

中国の枦正一が暗殺されたが、その事件はデイン帝国の仕業であることをまだ知らない世界各国。
そしてデインは今、さらなる作戦に出ようとしている。

2005年2月16日
ここは、朝鮮半島北部のとある国。この国の首脳の誕生日で、それを祝う行事が華やかに行われていた。後世においてもこの国は一人の男が独裁を行っていた。名は釜正日(ブ・ジョンイル)、やはり前世と同じ天然パーマに眼鏡をかけ、小太りの様子でカーキ色の軍服をまとっている。
やがて人民らの「マンセー!マンセー!」の声が鳴り響き、彼は静かに手を振る。

祝賀行事を終えた後、釜正日は官邸に戻る。三日後に彼はデイン帝国の宰相を迎えて、首脳会談を開くこととなっているのである。後世北朝鮮とデイン帝国は同盟関係にあるという。この国は前世同様、ソ連崩壊以来苦しい経済状況が続いている。食糧難で何百万もの国民が餓死し、ついには食糧配給が優先されている軍人にまで栄養失調になっているという。釜はこの状況をどうにか打開すべく、デインに援助をお願いしようとしている。
実はもう一つ重大なことがあるという。そう、デイン帝国は枦正一暗殺で混乱に陥っている中国に北朝鮮軍を進駐させ、北朝鮮に中国の広大な土地で食料や天然資源を確保させようとしているのである。

三日後、デインと北朝鮮の首脳会談の様子が世界に伝えられた。デインによる北朝鮮への経済支援についての合意は報じられたが、中国進駐の件は一切隠されていた。
一方中国では、混乱が続いていた。枦正一の死に乗じて民主化デモが各地で勃発したが、いずれも弾圧されていった。しかし、治安は爆発的に悪くなった。北京や上海といった大都市では連日炎が燃え上がり、内陸の農村でもまた然りだった。そしてなによりもチベットと東トルキスタンの独立運動が活発化し、ついに人民解放軍では手に負えなくなった。
デインはまさにその時を狙っていた。アシュナードはあらかじめそのシナリオを描いていた。それが現実となったのだ。そして彼はいよいよ軍の出撃許可書に署名と捺印をし、デイン軍はついに中国へと向かった。同時に北朝鮮軍もいよいよ中国へと向かった。

混乱に追われる中国の軍隊・人民解放軍。デインと北朝鮮が攻めてくるとなると、もうどうしようもできなかった。200万人以上と世界最高を誇っていた兵力もろくに機能せず、民主化運動やチベット・東トルキスタンの独立運動、そしてデイン軍と北朝鮮軍と敵ばかりがいて、2月の終わりに、ついに人民解放軍はやられ、後世中華人民共和国は潰れた。
そして中国全土に北朝鮮の国旗が翻った。あらゆる漢字の看板はハングルに置き換えられ、後世中国創建者である毛沢束の銅像は北朝鮮の主席釜日成に変えられた。

天安門広場から北京を眺める釜正日、ようやく安心の様子。これで人民に食料がまともに配られる。でもその安心がつかの間であろうとは予期しなかっただろう。

3月8日、デインは中国から撤退したころ、とある軍の基地では
「あんな男がどうも気に食わん」
「ああ、俺もだ」
「今まで散々俺たちを苦しめやがって、おまけに俺の嫁さんと次男が餓死してしまったじゃないか」
どうやら400人ほどの軍人が食堂で釜正日に不満を漏らしているらしい。しかしそれをとがめる者もいない。彼らは完全に釜正日を裏切ろうとしているのである。
そして釜正日を裏切る人々は続々と出ている。旧北朝鮮で彼の圧政に苦しめられた軍人や彼の政権掌握に反対する旧中国の人々などがひそかに団結しよとしている。

中でもその立役者となる男がいた。その名も枦哲治。彼は北朝鮮軍のエリートだったが、釜正日に政権が渡って以来、内心不満に思い続けていた。彼はその鬱憤をはらすチャンスが近々くることを心待ちにしていた。
彼はずっと作戦を練っていた。全土の反釜正日派をどのようにまとめるか考えていた。

そして3月下旬、反釜派の人口は700万人(うち軍人と旧人民解放軍の残党が130万人)にて、ついに枦哲治はラジオ局をジャックして武装蜂起を呼びかけた。東は羅津から西は東トルキスタンまで、全ての反釜派が立ち上がった。3日後には北朝鮮軍を圧倒し、ついに金正日は失脚した。
まもなくして、彼は天安門の屋上に立ち、新国家「極東民主中華共和国」建国を宣言すると共に、チベット、東トルキスタン、台湾の独立を承認し、北朝鮮を韓国を割譲させ、朝鮮の南北統一を実現させた。
世界は枦哲治の業績を評価した。だが、この国だけは違った。そう、デイン帝国である。デインは裏切られのである。

4月、アシュナードはデインシティの大広場の前に立ち、国民に演説を行う。
「我々デイン帝国は、枦哲治とかいう一人の輩によって、ますます世界から見放されてしまった。あの中国進駐で我々は大恥をかいてしまった。だが、ご心配なく。我々には強い味方がいる。そう、ブラックアイヌ団だ。ブラックアイヌ団の司令長、ジェフ・アンダーソンはものすごい頭脳の持ち主で、とんでもない兵器を生み出す魔術師のような人である。」
そう、ブラックアイヌ団はいつの間にかデインに逃れていたのである。果たして、その後の世界情勢はどうなるのか。

続く
最終更新:2008年12月24日 11:06
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