真北の大冒険 > 第52話 因幡のお転婆娘

強姦に遭い、ショック受けて軍を去ろうとした高城麗奈を何とかして残留させた真北たち日本人民軍の仲間達。その前話から翌日の射撃訓練で、元気の良い高城が戻ってきた。
「撃てっ!」と上官が叫ぶ。
バンッ!
この間まで、的の中心どころか、的にすら当てることもできなかった高城が、10発を全て中心に当てたのである。
「よくやったな、今までの最高点」と、上官が高城に話す。
その日の夕食後、星川、竹取、相本、高城の4人が円卓を囲んで話している。
「いやあ、後方支援隊は波に乗ってきたよ」と、星川が語る。
「全て高城さんのおかげですよ」と、竹取が言う。
「いいえ、私なんて」高城、照れながら言う。
「でも影響は大きいと思いますよ」と、相本
「後方支援隊長も大絶賛でいらっしゃるらしいし」
高城の評判は他の兵たちの間でも急上昇。

しかし、新たなる問題が浮上した。そう、電信隊2人の追放したため、欠員が生じたのである。そこで天知は、入隊試験に惜しくも落第した者のリストから2人補充することにした。1人は見つかったが、もう1人がなかなか見つからない。するとリストの中からある1人の女性の名を見つけた。彼女は運動こそはできていたものの、試験当日は体調不良もあって不合格となってしまったのである。
「でも、彼女じゃ問題ないな」
そこで教官たちにも是非を問いにいった。
「というわけで、君たちの意見を聞きたい」
と、真北をはじめとする教官達は慎重に議論しあった。全員が賛成という結論となったのである。
「そうだ、島田よ、よかったら彼女のいる鳥取まで行ってきてくれないか」
「鳥取ですか」

こうして3日後、真北はその女性の住む鳥取・智頭へと向かった。
「さすがは鳥取だ、地味な場所に来てしまったぜ」
真北はタクシーで女性の住む家へと向かう。15分後、その付近に着いた。周りは田圃と森林、田舎の典型である。真北はそこから歩く、すると
「あの、日本人民軍の島田さんですか」と、誰かが話しかけてきた。
「よくご存じで」と、真北は言葉を返した。
「私、一関智子の母の敏恵と申します」
「ああ、一関さんの親御さんですか」
そう、リストの中の1人の女性の名は一関智子だという。
「よかったらお上がり下さい」
と、真北は敏恵に招かれる。一関家は農家で、2階建ての住居の周りには畑が広がっていた。真北、一関家におじゃまする。
「なぜ、智子さんは日本人民軍に入れなかったのでしょうか」と、敏恵は訊く。
「調子が悪かったんですねぇ」
「ちなみにご本人は」真北は訊く。
「ああ、今祖父と一緒に畑へ」
「どうやら農作業の手伝いでしょうか」
「ご案内しましょうか」
と、真北は敏恵に案内され、一関家の畑へ。春を迎えつつある畑には2人の男女がいた。

「おじいちゃん、あの人誰?」と、畑にいる一人の少女が老年の男性に訊く。
「島田さんじゃ、島田真北じゃ」
「えっ!?」
「一関智子さぁーん」と、真北は呼びかけると、その少女は真北のほうへと近寄っていった。
「またお会いできてうれしいです。でも何の用でしょうか」
「実は、日本人民軍に欠員が生じまして」
「ええっ、欠員?」
「そうです。ニュースをご覧になりましたらご存じのはずでしょう」
「ああ、あの暴行事件のことです」
「はい、その加害者は電信隊に属していて、クビになりました。で、繰り上げで落第者から編入することになり、あなたが候補に挙がったのです」
「ほ、本当ですか?」
「然様でございます」
「や、やったわぁっ!私、日本人民軍に入隊できるんだ!」
「ところで一関さん、あなたの実力を見せていただけませんか」
「実力・・・ですか」
と、真北と智子は一関家の庭へと移動した。

「結構広いねぇ」真北、一関家の庭の広さを見てつぶやく。
「はい、うちは広いですよ」
すると真北は風船を10個ふくらませ、庭に分散させるように固定した。
「よし、まずその風船10個を割ってみい」
「はい」
すると智子は素早い動きで次々と風船を割っていった。
「速い」真北、智子の動きの速さに驚かされる。
同様のテストを他の兵士にもやらせてみたが、彼女は速い。一部の兵士よりもタイムは上回っていた。
「こいつはすごいや」真北、手が震えている。
「どうでしょう」と、風船を全部割り終えた智子。
「日頃運動してるのかな」真北は訊く
「はい、幼い頃から川遊びや木登りで遊んでました」
「さすがは田舎育ち、喘息が多い都会の人間とは環境が違う、よし、入隊許可を出してもらおう」
「ええ、ありがとうございます」智子は笑みを浮かべる。
「でも、君はかわいいし、結構危なっかしい行為もしたのでは」
「そうですね、私、一度木から落ちて骨折したことあるんです」
「ほほう、やはりおてんばな一面もあるんだ」

その日の晩、真北はしばらくの間一関家に泊めてもらうことにした。真北は携帯で天知に連絡を入れる。
「ほほう、それは有望だ」と、天知
「早速入隊許可の手続きをお願いします」
「よし」

そして1週間後、日本人民軍の基地に戻ってきた真北、もう一人も一緒にやってきた。その日の夕方、兵全員がグラウンドに呼び出された。壇上に立つのは天知。
「新兵を紹介する」
すると新兵の2人は壇上に上がる。
「中原誠です、よろしくお願いします。」
中原誠、あの中原脩の弟である。
「一関智子です、よろしくお願いします。」
2人は紹介を終えると、隊員全員は大きな拍手を送った。
何はともあれ、人数は埋まった日本人民軍、果たして、この先の行方は。

続く
最終更新:2009年03月25日 21:55
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