平盛25年12月24日早朝、2日間の非番をもらった真北。
「ああ、いよいよ行くんだね」と、母
「大丈夫、今度は確実に生きて帰ってくるんだ」と、真北。今度は戦争じゃなくてただの鉄道旅行。
「でも気をつけて行ってくるんだよ」
と、真北は家を出て、大津駅から初発の電車に乗った。
電車に揺られること2時間半、名古屋は熱田に到着。そこから10分歩けば名鉄神宮前駅にたどりつく。
右手には熱田神宮が見えるが、左手にはシャッター通りと化した商店街が広がる。
そして神宮前に到着。真北は通路を抜け、改札へ、さすがは特急停車駅だけあって賑わいがあるが、名古屋や金山と比べれば劣る。
真北、いよいよその2DAYフリーきっぷを改札機に通す。今回の旅の本編開始である。が、名古屋に来る前、真北の携帯に一通のメールが届いていたのである。
From:江藤小百合
神宮前で待ってね
「ああ、これか」
と、コンコースで待つこと5分、乗務員詰め所に通じる扉が開いた。そこに現れたのは江藤だった。
「おはよう、お久しぶり」と、真北は声をかける
「お久しぶり」と、江藤も返事する。
「いつ見ても名鉄の制服には軍靴の足音が聞こえるね」
「そんなこと言わないの」
「で、なぜ待たせておいた?」
「はい、これが指令書」と、江藤は紙を手渡す。
「し、指令書?そんなもんあんのかよ」と、真北はそれに目を通す。
まず、次の駅に降りて駅名標を撮ってきてください。
須ヶ口、津島、佐屋、弥富、森上、名鉄一宮、玉ノ井、笠松、
羽島市役所前、新羽島、名鉄岐阜、三柿野、新鵜沼、犬山、新可児、
御嵩、小牧、上飯田、岩倉、豊橋、国府、豊川稲荷、新安城、
吉良吉田、蒲郡、刈谷、碧南、知立、猿投、豊田市、赤池、尾張瀬戸、
栄町、金山、大江、東名古屋港、太田川、常滑、中部国際空港、
知多半田、河和、富貴、内海、
「こんだけの駅を二日間でか?」と、真北は驚きをあらわにする。
「ちゃんと回れますよ、私もやりましたし」
「なんとか回れそう」
現在時刻9時
「じゃぁ、そろそろ乗務の時間なので」と、江藤は真北の元を去った。
さて、いよいよ真北はホームに降り立つ。
「まずは須ヶ口だな」
真北、岐阜方面の電車を待つ。須ヶ口へは急行が一番速い。そういえば『電車でGO!名古屋鉄道編』で初心者向けとして新名古屋(現:名鉄名古屋)から須ヶ口までの急行のステージがあった。
「まもなく、2番線に電車が参ります。黄色い線までお下がりください。名古屋方面の一宮行き急行です。
案内放送を聞いた真北はほっとした。これでまずは須ヶ口まで一直線。真北、来た赤い電車に乗る。3R初期型でロングシート車である。この車両の特徴は停車駅案内のほかに電光式の案内表示にスピードメーターが表示される。が、それに登場する車両がなぜかパノラマスーパーである。
金山に停車後、名古屋へと向かう。そして地下に潜る。
「さて、名鉄名古屋が楽しみだ」と、真北、一番前の車両の乗務員室の真後ろに立つ。
やがて外界は真っ暗になり、蛍光灯の明かりが目立つようになった。そして名古屋に到着。乗客の大半が入れ替わり、空いた席に座る。
再び地下から地上へと出ると、程なくして栄生に到着。名鉄病院がすぐ隣にあり、名鉄グループの社員はここで検診を受けているという。
「(ここで星川や江藤が検診を受けているんだな)」
栄生の次は東枇杷島を通過して、名古屋本線と犬山線の分岐点・枇杷島分岐点へ、ここにさしかかると列車のスピードは鈍くなる。
やがて分岐点を通過し、西枇杷島へ。2面4線だが、ホームが非常に狭いので、停車列車が来る直前までホームに上がらせてもらえない。しかも各駅停車しか止まらず、その各駅停車も1時間に2本しか来ない。通過列車のほうが圧倒的に多いのである。
「(もしここを無人駅にしたら、グモが多発するのも当然だ)」
西枇杷島を通過して、二ツ杁へと向かう。2面2線だが、通過線がある。その通過線を通過し、新川橋へ、新川橋も西枇杷島同様、各駅停車しか停まらない。
新川橋を過ぎると、いよいよ須ヶ口に到着。比較的規模が大きく、隣には新川検車区がある。扉が開き、ホームに降り立った真北。早速デジカメで駅名標を撮る。
「まず一駅クリア」
ついでに乗った電車も撮る真北、そして隣の佐屋行きに乗り込む。車両は6500系、「鉄仮面」と呼ばれる前面と奇抜な集団離反式セミクロスシートが特徴である。
「さて、これで次は津島だな」
しばらくして佐屋行きの電車の扉が閉まり、動き出す。真北は鉄仮面の奇抜なセミクロスシートに腰をかける。バスの座席のように背もたれが低い。
まず最初の駅は甚目寺。利用者数は隣の須ヶ口よりも多い。かつてのJR高山本線直通気動車特急の給油もここで行われた。
甚目寺を過ぎ、七宝へ、「しっぽう」と読む。続いて木田、青塚、勝幡、藤浪、と過ぎ、そして津島に到着。
津島は高架駅で、尾西線との乗換駅である。とはいえ、津島線方面から来る列車の大半は佐屋もしくは弥富まで乗り入れる。
津島に着いた電車はすぐに発車し、日比野を過ぎ、佐屋に到着。昔は宿場町で、東海道には名古屋から三重県の桑名まで船旅で行く「七里の渡し」というものがあったが、しばしば海難事故が起こり、これを避けて佐屋を経由する旅人もいた。
真北、佐屋駅の駅名標を撮る。ここから弥富までは単線で、交換設備もないため、本数が激減する。真北、次の弥富行きの電車を待つ。
「あー、それにしても退屈だ。」と、つぶやく。
10分後、弥富行きの電車が到着。真北はそれに乗り込む。車両は6000系、貫通扉が特徴で、ブルーリボン賞を受賞したことのある通勤形車両。
「(これが星川曰く『トマト』か)」
扉閉まり、発車。穏やかな速度で弥富の一駅手前、五ノ三へと動く。
「(五ノ三って、何か小学校のクラスみたいだな)」
五ノ三に到着。あっという間に開いた扉は閉まり、終点弥富へ。弥富はほぼJRが支配しているかのようで、名鉄の領域は乗り場1線分しかない。駅舎にも名鉄の「め」の字もなく、名鉄のプリペイドカードも使えない。
弥富に着いた真北。駅名標を写真に収め、折り返しの電車に乗り、津島へと引き返す。
続く
<予告編>
「えーっ!?」
発車標に浮かぶ「遅れ」の文字を見て唖然とする真北。
「あかん、金太の大冒険を思い出す」
橋梁を渡る電車の中で
「糞しながらいびる」と、つぶやく真北。
果たして、今後も真北の行方は?
最終更新:2009年04月16日 21:21