「2-055」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

2-055」(2005/11/13 (日) 21:36:44) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

055 戦う理由 「♂アルケミさんは……このゲームに乗る気ですか?」 傷の処置を終えて服を調えた♀クルセが、ふと真顔に戻って切り出す。 「あー……俺がその気だったら、まず無防備な君を殺してると思うがね」 「真面目に答えてください!」 ぴしゃりと言われ、♂アルケミはわしわしと髪をかき乱す。 彼とてこんな場所で死にたくはない。むろん冒険者としては何度も死線をくぐり抜けてきたが、 このゲームはそれとは根本的に異なっている。このゲームでの死者は「蘇生できない」 ――つまり、「本当に」死ぬ。生きたければ、勝ち残るしかないのだ。 「わからねぇな……どうするのがいいのか。むざむざ殺されるのはごめんだが、 奴らの思惑に乗るってのも癪だ」 それは彼のプライドの問題でもあったし、処刑された父への裏切りであるとも思った。 一瞬の沈黙の後、♀クルセが続ける。 「私は、さっきあの人に殺されそうになっても、何もできませんでした。どうしてこんな、  無理やり殺し合わなくちゃいけないんだろうって、そればかり考えて……」 膝に置かれた手が、ぎゅっと固く握られる。 「でも……ここは、そういうところなんですよね。戦わなければ、生き残れない――」 「じゃあ君は、ゲームに乗るってことか?」 声に決意を感じ、♂アルケミはわずかに腰を浮かせる。いつでも動きに対応できるように。 しかし♀クルセの答えは違っていた。 「いいえ……私は、やっぱり殺し合いなんてできません。  でもその代わり、守るための戦いをします」 「守るため?」 「はい。私のように、殺す側になれない人も大勢いると思うんです。そんな人が何もできず  殺されたりしないように。そんな人を守るためなら……戦える気がします」 彼女は♂ケミをまっすぐに見すえ、言った。 「我らの力を必要とするものに応えよ。それが、クルセイダーの教えですから」 「そうか……」 ♀クルセには、信仰という支えがある。それはある意味では逃げであるのかもしれないが、 ♂アルケミは素直にそれを羨ましいとも思った。自分には、揺るぎ無い信念をもたらすもの などあるだろうか? 世界の真理に至る錬金術の理念など、この場では何の意味もない。 とするならば、自分にとって拠り所たるのは―― (やれやれ……つくづく親父の影響から抜け出せないらしいな、俺は) ♂アルケミの顔に、苦笑が浮かぶ。 「俺はな……こんなゲームになんか、乗ってやらねえ」 自分に言い聞かせるように、その言葉を発する。 「俺が戦う相手は、このふざけたゲームを仕組んでる連中だ!」 青箱を開けると、がらがら、がちゃんと試験管や空きビンがあふれ出てきた。 錬金術師組合でも実験用に使っている特製のやつで、普通にぶつけたり落とした程度では 割れにくい。これでポーションでも作れればいいのだが、あいにくと今は材料がない。 それでも何かの役には立つだろう。どこかで材料を見つけられるかもしれないし。 それはそれとして、何か武器が欲しいところだ。もう1個を開ける。なにやら長いものが 出てきた。それは武器には違いなかったが……マイトスタッフだ。魔力を代償に 攻撃力を引き出すという代物だが、俺たちにはせいぜい棍棒みたいに使うしかない。 だがないよりはマシだろうと、これも持っていくことにする。 ビン類をかばんに詰め、マイトスタッフを腰にさす。 「で、本当に俺についてくるのか?」 「はい。あなただって、簡単に死なせるわけにはいきません。他にも守らないといけない人と  出会うまで、一緒に行かせてください。それに、本当に彼らと戦うつもりなら、仲間だって  大勢必要でしょう?」 「ありがとな……。じゃ、行くか!」 俺は俺のやり方で、徹底的に戦ってやる。敵はあまりに大きすぎて、 道半ばで倒れるかもしれない。戦っても、何も変わらないのかもしれない。 だが、親父を、俺たちを、否定した連中に何としても一泡吹かせてやる。それが、俺の戦いだ。 <♂アルケミ> 現在位置:海岸から森へ(D-3) 所持品:マイトスタッフ、割れにくい試験管・空きビン・ポーション瓶各10本 外見特徴:BSデフォ・青(csm:4j0g50k2) 備考:BRに反抗するためゲームからの脱出を図る、ファザコン気味?、半製造型 <♀クルセ> 現在位置:海岸から森へ(D-3) 所持品:レイピア、青箱(未開封) 外見特徴:剣士デフォロング・黒(csf:4j0270g2) 備考:守る対象を探す(今は♂ケミに同行)、左肩と左足に軽症・右脇腹に負傷(応急処置済み)、     献身Vitバランス型
055 戦う理由 「♂アルケミさんは……このゲームに乗る気ですか?」 傷の処置を終えて服を調えた♀クルセが、ふと真顔に戻って切り出す。 「あー……俺がその気だったら、まず無防備な君を殺してると思うがね」 「真面目に答えてください!」 ぴしゃりと言われ、♂アルケミはわしわしと髪をかき乱す。 彼とてこんな場所で死にたくはない。むろん冒険者としては何度も死線をくぐり抜けてきたが、 このゲームはそれとは根本的に異なっている。このゲームでの死者は「蘇生できない」 ――つまり、「本当に」死ぬ。生きたければ、勝ち残るしかないのだ。 「わからねぇな……どうするのがいいのか。むざむざ殺されるのはごめんだが、 奴らの思惑に乗るってのも癪だ」 それは彼のプライドの問題でもあったし、処刑された父への裏切りであるとも思った。 一瞬の沈黙の後、♀クルセが続ける。 「私は、さっきあの人に殺されそうになっても、何もできませんでした。どうしてこんな、  無理やり殺し合わなくちゃいけないんだろうって、そればかり考えて……」 膝に置かれた手が、ぎゅっと固く握られる。 「でも……ここは、そういうところなんですよね。戦わなければ、生き残れない――」 「じゃあ君は、ゲームに乗るってことか?」 声に決意を感じ、♂アルケミはわずかに腰を浮かせる。いつでも動きに対応できるように。 しかし♀クルセの答えは違っていた。 「いいえ……私は、やっぱり殺し合いなんてできません。  でもその代わり、守るための戦いをします」 「守るため?」 「はい。私のように、殺す側になれない人も大勢いると思うんです。そんな人が何もできず  殺されたりしないように。そんな人を守るためなら……戦える気がします」 彼女は♂ケミをまっすぐに見すえ、言った。 「我らの力を必要とするものに応えよ。それが、クルセイダーの教えですから」 「そうか……」 ♀クルセには、信仰という支えがある。それはある意味では逃げであるのかもしれないが、 ♂アルケミは素直にそれを羨ましいとも思った。自分には、揺るぎ無い信念をもたらすもの などあるだろうか? 世界の真理に至る錬金術の理念など、この場では何の意味もない。 とするならば、自分にとって拠り所たるのは―― (やれやれ……つくづく親父の影響から抜け出せないらしいな、俺は) ♂アルケミの顔に、苦笑が浮かぶ。 「俺はな……こんなゲームになんか、乗ってやらねえ」 自分に言い聞かせるように、その言葉を発する。 「俺が戦う相手は、このふざけたゲームを仕組んでる連中だ!」 青箱を開けると、がらがら、がちゃんと試験管や空きビンがあふれ出てきた。 錬金術師組合でも実験用に使っている特製のやつで、普通にぶつけたり落とした程度では 割れにくい。これでポーションでも作れればいいのだが、あいにくと今は材料がない。 それでも何かの役には立つだろう。どこかで材料を見つけられるかもしれないし。 それはそれとして、何か武器が欲しいところだ。もう1個を開ける。なにやら長いものが 出てきた。それは武器には違いなかったが……マイトスタッフだ。魔力を代償に 攻撃力を引き出すという代物だが、俺たちにはせいぜい棍棒みたいに使うしかない。 だがないよりはマシだろうと、これも持っていくことにする。 ビン類をかばんに詰め、マイトスタッフを腰にさす。 「で、本当に俺についてくるのか?」 「はい。あなただって、簡単に死なせるわけにはいきません。他にも守らないといけない人と  出会うまで、一緒に行かせてください。それに、本当に彼らと戦うつもりなら、仲間だって  大勢必要でしょう?」 「ありがとな……。じゃ、行くか!」 俺は俺のやり方で、徹底的に戦ってやる。敵はあまりに大きすぎて、 道半ばで倒れるかもしれない。戦っても、何も変わらないのかもしれない。 だが、親父を、俺たちを、否定した連中に何としても一泡吹かせてやる。それが、俺の戦いだ。 <♂アルケミ> 現在位置:海岸から森へ(D-3) 所持品:マイトスタッフ、割れにくい試験管・空きビン・ポーション瓶各10本 外見特徴:BSデフォ・青(csm:4j0g50k2) 備考:BRに反抗するためゲームからの脱出を図る、ファザコン気味?、半製造型 <♀クルセ> 現在位置:海岸から森へ(D-3) 所持品:レイピア、青箱(未開封) 外見特徴:剣士デフォロング・黒(csf:4j0270g2) 備考:守る対象を探す(今は♂ケミに同行)、左肩と左足に軽症・右脇腹に負傷(応急処置済み)、     献身Vitバランス型 ---- | [[戻る>2-054]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-056]] |

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
目安箱バナー