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「・・・でな、結局ダイスでどっちが強運の持ち主か決める事になって、それで俺が競り勝ったてわけだ。」  「あんた、いつも変なとこで運を使ってるな。」  ここは、ビギナーズ王国。若き藩王たくまが治める雪深き藩国である。時刻は夕暮れ時、 首都で働く多くの人々が一日の労働の疲れを癒すべく、思い思いの酒場に散ってゆく。 今、わたしの横で一人の若い男がしゃべっている。 この国の整備士が着用する深緑色の作業用つなぎ―この国で整備士の人気が無い理由の 一つらしい―を着込むこの男は名を、刻生・F・悠也という。本業がパイロットである ためその体は一寸のすきも無く鍛え上げられており、その姿は鍛え込まれた一振りの刃 を思わせる。しかし、そう思わせるのは何も体つきのせいだけではないだろう。その、 鋭い目付き、どこか近寄りがたい雰囲気、それらもその一因となっているに違いない。 #ref(http://atpaint.jp/beginnerskingdom/src/1168249775003.jpg) 「はっはっは、今日から俺のことは幸運の男と呼んでくれ。」  「・・・それ、なんてヒーロー?」 ・・・口を閉じていればだが。なんとゆうかぶちこわしだった。  「それで?何の任務だったんだ?パイロットが一人でいったい何を?」 そうなのだ。この間の根元種族?とかゆう奴等からの敗走で現在我が国にはパイロット が乗れるようなアイドレスは一つも残ってないのであった。いま我が国が誇る腕利きの 技師たちにより新たな機体の開発が行なわれているとの噂もあったが真相は定かでない。  「うむ、ジャン・タクマ学園の大書庫にかつて伝説となったある探偵の残した調査記 録があるらしく、それを探すよう命じられた。」  「!・・・地下大書庫か。単なる噂かと思っていたが・・・。」 初代藩王の名を冠するこの学園はこの国で最大の規模を誇る教育施設である。当然その 図書館も国内最大の規模を誇り、また地下には数十フロアに渡る大書庫が存在しそれら は広く国民に解放されている。まさにこの国の知の泉としての機能を果たしていたのである。 しかし、いつからかこんな都市伝説がまことしやかにささやかれるようになった。 曰く、その大書庫のさらに奥深くには国の支配者層の中でも一部のものしか入ることの 出来ない機密文書の宝庫が存在し、そこには侵入者を撃退する多くの罠が仕掛けられている。 曰く、かつて本好きの少女が何かの拍子にその進入禁止区域に迷い込んでしまい、死後 も出口を探してさまよっている・・・・・・などなど。 確かにこの男ならば並の兵士よりずっと強い。上層部がこの男を選んだのもうなづけ る。忠誠心の強いこの男なら機密文書を悪用することも無いと考えられたのであろう。 また、根元種族とやらの詳細もほとんど分かっていないのが現状であった。情報を得る ため、星見司のいないこの国の上層部にとっては藁にもすがる思いであったのだろう。 しかし、いいのかそんな機密っぽい話をここでして・・・。  「で、行ってきたってわけだ。どうせ今はあの学校ほとんど人がいないしな。問題の 場所まで行くのはそう難しくなかったさ。」  「それで?」  「進入禁止エリアの入り口は巧妙に隠されていたが事前に場所を聞いてあったからそ れはすぐ見つかった。だがロックが掛かっていてな。そこで俺は自慢の工具で、」  「見事ロックを解除したってか、さすがだね。」  「いや、だめだった。」  「へ?」思わず間の抜けた声が出てしまう。  「ついむしゃくしゃしてスパナで殴った。そしたら鍵が壊れて開いた。」  「あんたって人は・・・」  「悪気は無かった。今は反省している。」 どこの容疑者だあんたは。 #ref(http://atpaint.jp/beginnerskingdom/src/1168249814637.jpg)  「ま、それはともかく無事侵入に成功した俺は、問題の文書を探してやたら背の高い 本棚の群れを見て回っていた。ところがだ、その頃から何故か人の気配を感じていた。」  「・・・まさか幽霊?」  「まあ、話は最後まで聞け。俺が一つの本棚を調べ終え、隣に移動した瞬間、銃声が響いたんだ。」  「な、・・・。」  「気配を感じて警戒していた俺は、すんでの所で身をかわし銃弾は頬を掠めた。俺 は、反射的に本棚の影に逃げ込むと、銃弾の飛んできた方の様子をうかがった。すると、」  「すると?」  「その時は薄暗くてよく分からなかったが人影が見えた。そいつはこちらが飛び道具 を持っていないことを見抜いたのか、ゆっくりこちらに向かってきた。あの時はさすが にヤバイと思ったね。」  「それで、どうやって切り抜けたんだ?」  「ああ、それがだな・・・その人影はゆっくりこちらに歩を進め、俺の目前で止まった。 ところがその瞬間妙な音がした。」  「・・・?」 「こう、なんてゆうか、ポチッ、とかいう感じの。」  「ほう?」  「そしたら、その人影の両脇にあった本棚が一斉に傾き始めた。」  「・・・・・・その人、罠のスイッチを踏んだのか。それにしても罠、しょぼくない?」  「いや、そうでもないぞ。想像してみろ、5メートルの高さから脳天めがけて落下す る百科事典の角を。下手すりゃ死ぬぞ?その場にあるものを武器として使う見事なテク ニック、あれを作った人とはきっとうまい酒が飲めるに違いない。」  「オーケー、その人が書物を愛してないことは良く分かった。それで、どうなったの さ?その人影、死んじゃったのか?」  「いや、それが・・・思わず助けてしまった。」  「・・・え?」耳を疑った。  「いや、そいつの悲鳴を聞いたら考えるより先に体が動いていた。本棚の影から飛び 出してそいつを押し倒し、落下する本を背中で受けたわけだ。まあいくつか後頭部を直撃して意識が飛びそうになったが。」  「その甘さはいつか命取りになるぞ・・・しかしよく生きてたな。」  「頑丈に生んでくれた母親に感謝しないとな。ともかく、ようやく本の落下も止み、 その時やっとそいつの顔を拝めたんだ。そしたらな」  「そしたら?」  「・・・かわいかった。一目惚れだった。」 ・・・おかしいなあ、今日は酒の回りが速いようだ。ありもしない幻聴が聞こえる・・・。 #ref(http://atpaint.jp/beginnerskingdom/src/1168249838783.jpg)  「よく見たら体にフィットするボディースーツを着ていた。無駄の無い均整の取れた 体をしていたな。うん、あれはパイロットに間違いない。猫か犬かは・・・帽子を深くかぶ っててわからんかったが髪は長かったな、これがまた綺麗な、絹のような黒髪でな、そ して何よりその大きな瞳はまるで漆黒の宝石のようで・・・。」  「・・・・・・。」  「そいつは最初呆然として何が起こっていたか分からない様子だったが、やがて自分 が助けられたことに気付くと、頬がぱっと赤くなってだな、『・・・だ、誰も助けて欲しい だなんて頼んでないわよ?・・・でも、一応、その、・・・ありがと』なんて言いのこして走 り去ってしまったわけだ。途中何も無いとこで転んだりしてたが。」 ・・・どんだけおいしいシチュエーションだよ。 「・・・なんで追わなかったんだ?一目惚れだったんだろ?それにそいつ、どこか敵国のス パイだったかもしれないじゃないか。」  「いや、俺は確信した。俺と彼女の間には強い縁がある。そう遠くないうちにまた会えるさ。・・・どこかの戦場で。」  「・・・その言葉であんたの恋の難易度は跳ね上がったよ。」 そうして今日もビギナーズ王国の夜は更けてゆくのであった。なお、結局、目的の書物 は見つからず、藩王をはじめ、一同がっかりしていたが、彼だけが妙に幸せそうな顔をしていたのは言うまでも無い。

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