01-610 名前:名無しさん@ピンキー :09/01/30 00:56:40 ID:EJwyVkZA
私は体を売っていた。
別にお金に困っていた訳でもないし、お金のかかる趣味があるわけでもない。
かと言ってセックスが大好き、というほどでもなかった。
ただお金はあって困るものではない、という理由だけで、だ。

///

薄汚いホテルの一室で、私を組み敷いた中年の男が私を貪っている。
「あんっ……あぅ……ん……」
「ハァッ……ハァ。いいよ、舞の中……ハッ……ハッ……」
脂ぎって緩んだ体が私の体に覆い被さり、私をベッドに埋め込む。
私の足は男の体によって割り開かれ、膣は男の醜い肉棒で抉られていた。
男が私の上で上下し、私はそれに反応する。
両手首を押さえつけられている為、逃げることは出来ない。
「ハァ……ハァ……。ねぇ、舞……、舞、俺のチンポ気持ちいいか?」
こういうことを聞いてくるのは、中年特有のイヤらしさだと思う。
正直言ってあまり良くない、そしてキモい。
しかし、この男の金払いはなかなか良いのだ。
ここは機嫌を取っておくべきだろう、と判断した。
「うぁん……!気持ちいいっ!あんっ!おじさんのおちんぽ気持ちいいのぉっ!」
ついでにサービスで、足を男の腰に巻き付け、少し膣を締め付ける。
男はうっ、と気持ちの悪い声を出し動きを鈍らせ、そして突然唇を塞いできた。
男の舌が私の口の中に入り込んでくる。
最低な気分になりながらも、それを振り払えない私。
両手首は押さえられているし、足は割り開かれ、体には中年太りの体が乗っている。
私自慢のたわわに実った胸は、男の脂肪を纏った胸板で押し潰され、勃ち上がった先端が男の胸板で踊る。
男の動きが再び加速し始めた。
「……んちゅっ、ちゅぼっ……ぐちゅ、ちゅっ」
重なった口からは粘った水音が漏れ、男はそれに興奮したかのように速度を上げ……。
「う、あっ、で、出るっ!!」
「―――――っ!ひぁあああっ!」
男の肉が、私の中で弾けた。

///

「はい。金」
「ありがとう」
「しかし、いつも舞の体はいいな」
性欲処理が終わり、お金を受け取る。
1、2……。相変わらず金払いの良い男だ。
「ねぇ、いつも言ってるけどさ、舞。俺の女になりなよ」
そしてこの勘違いも相変わらず。
そんな容姿でよく言えたものだ、と思う。
若い頃ならいざ知らず、今では嫌悪感しかないイヤらしい笑顔で言ってくる。
「それはいつもお断りしているでしょう」
表面上は苦笑いしながら、いつも通り返す私。

01-611 名前:名無しさん@ピンキー :09/01/30 00:57:32 ID:EJwyVkZA
私には自分の容姿と体を十分に理解している。
男の視線を惹き付ける大きな胸。
コルセットを着けているような、細く締まった腰。
意外なほど肉付きの良い尻と、同性にも羨まれる細く長い、しかし貧相には見えない量感のある足。
そして、その辺の女優になど負けない顔。
相手には困らなかった。

///

ぐちゅ……ぐちゅ……ぐちゅ……。
多人数が相手だったことも、しばしばあった。
私は男の腹の上で腰を振り、両手は二本の肉棒を。
口は正面の男のモノをくわえこみ、胸はアナルを貫いている背後の男の玩具にされていた。
「うぁ、やべ、すげぇぞ、中。もう出そう」
「マジで?いいな、次は口かなと思ってたけど、そっちもいいな」
「いや、口も上手すぎるぜ、この女」
「ケツも締まってやべえって。抜けねーかも」
ゲラゲラ、と下品な笑い声を立てる男達。
カラオケでもいかない?と下心満載の声を掛けてきた男達だ。
カラオケを一頻り楽しんだところで酒を飲ませようとしてきたから、こっちから誘ったのだ。
お酒にお金を出すより、私に出したほうがいいでしょう?と言ったら、直ぐにホテルに連れていかれた。
元々体目当てだったのだろう。
代わりに、お金ちょうだいね、と言うと1も2もなく承諾した。
「やべぇ、この喉。たまんねえ」
そう言って、私の頭をわしづかみにして腰を使い出した正面の男。
私の両手で肉棒をしごかれている二人は、中出しすんじゃねーぞ、なんて、私の2つの穴を責めている男達に言っている。
こういう時の為に避妊対策はしているし、直腸の掃除もしているので、出されても特に困らないのだけど。
「なぁ、次はこのやらしー乳で挟んでくれよ」
後ろ男が耳元で囁く。
固くしこった先端を強く摘ままれ思わず体が反応する。
「あんっ、は、あっ!」
「いきなり締まっ、くあっ。……出ちまった。なんてことだ」
おいおいふざけんなよ、とか早漏が、なんて言われている。
仕方ねーだろ、なんて悪態をつきながら私の下からどき、男たちはそれぞれ私を蹂躙するために動く。
私を仰向けにすると、一人は私の背後からアナルを貫き、一人は膣に挿入する。
「あー、ホント良い具合だわ」
「な、中が詰まってる感じ」
残りの男達は私の胸を肉棒で虐めだした。
「どけよ、お前ら。俺が挟んでもらう約束なんだって」
「いいじゃん、こんなやらしいおっぱい、お前だけには勿体無い」
と二人が言った。
さっき私に中出しした男は、精液のついたものを私の顔になすりつけてくる。
「この女エロすぎだろ……。萎える気配がない。空っぽになるまでやってやんよ」
夜はまだ長い。

///

そう。相手には困らなかったし、相手が誰でも良かったのだ。
彼に会うまでは。

01-612 名前:名無しさん@ピンキー :09/01/30 00:58:10 ID:EJwyVkZA
彼の名前は池上達人。
中肉中背の、取り立ててカッコいいわけでもない、何処にでもいるような人だった。
合コンの最初で「人数合わせで来た」と言い放つ神経はちょっとどうかと思うけど。
他の男が舐め回すように私を見、下心だけで構成された声を掛けてくるなか、彼は適当に飲み食いをし、私以外の女の子に適当喋っていた。
数合わせ、と言った割にはキチンと気を配り、私だけに集中する話題に飽き始めていた女の子たちに話題を振っていたのだ。
だから私は彼に興味を持った。
他の男達に「他の子にも話題を振らないと!」と追い払い、彼に近付く。
しかし、私が声を掛けても適当に返事をする。
私が擦り寄っても特に反応を示さない。
私が、私だけに目を向けさせようとしても、何気無く避け、話題から外れ気味な女の子に声を掛ける。
正直、最初は頭に来た。
ここまであしらわれたことは、過去には無かったのだ。
ちやほやされていないと気が済まない訳ではない。
私は容姿を鼻にかけ、女王様気分で振る舞っているわけではないのだ。
女の子同士の付き合いもきちんとしているし、自分で言うのも何だが、人望もある。
容姿は金払いの良い男を引っ掛けるのに便利、というくらいなものなのだ。
高慢にならないよう意識していたハズだ。
しかし、あしらわれた、という事実は、私のプライドを些か傷付けた。

///

これが私と彼の馴れ初め。
私は彼を夢中にさせようと躍起になり、彼に好かれようとした。
彼が大きな胸が嫌いでは無いとわかると胸を撫で下ろし、彼がポニーテール好きと言ったから、肩までだった黒髪を伸ばして結わえた。
ミイラ取りがミイラになってしまった。
私の方が彼に夢中になってしまったのだ。

///

「ねぇ、私って魅力がない?」
彼に夢中になっていった私は、彼が私を求めないことに不安になり、ある時勇気を出して聞いてみた。
自分に自信を持っていたはずなのに、こんなことを聞くなんて。
「どうしたんだ、いきなり」
彼が苦笑いしている。
「お前は美人だし……その、言わなくてもわかるだろ?」
少し赤くなりながら、そう言葉を濁す彼。
当然だったはずのことが不安になる。
しかし、私はそれを笑うことが出来なかった。
私はきっと彼が好きなんだ。
素直にそう思えた。
初恋と言って良いかもしれない、と意識したら止まれなかった。
「だって部屋に誘っても中々来てくれないし」
「ちゃんと家までは送ってってやってるだろ」
と、呆れたような彼。
「じゃ、今度は部屋に入ってお茶も飲んでいってよ」
「バカ。送り狼に気を付けるべきだな、お前は」
「……いいのよ?」
そう言った途端、苦笑いしていた彼の表情が、苦いものになる。
マズイ、と思った。
「……あのな、もうちょっと自分を大事にしろ。そもそも俺達は恋人同士じゃないんだから」
その言葉にショックを受けた。
そうだ、まだ恋人ではなかったのだ。
「だから……」と、何か続けようとした彼に、体当たりするように抱き付いて言った。
「好き!達人が好きなんだ!」

01-613 名前:名無しさん@ピンキー :09/01/30 00:58:48 ID:EJwyVkZA
それからまた暫くは、幸せな日々。
彼は私の告白を受け入れてくれた。
恋人同士になっても、私達の関係はあまり変わらず、肉体関係もなかったが、私は幸せだった。

///

ある時、彼の部屋で寛いでいると、彼が小さな小箱を持ってきた。
「な、舞。これあげる。」
そう言って差し出した小箱には銀のネックレスがあった。
「え、どうしたのこれ」
「いや、その……」
贈り物など、体を売っていた頃に沢山貰っていた。
中には驚くほど高価なものもあった。
縛られるのが嫌だった私は、あまりに高すぎるものは受け取らなかったが、このネックレスの三倍、四倍の物は割と頻繁に貰っていた。
というより、このネックレス程度の値段の贈り物はなかったのだけれど。
「いや、あんまり良いものじゃないと思うけど、似合うかな、と思ってさ」
「……うん」
「あれ、今良いものじゃないって所肯定した?」
「うん」
「……うお、やっぱりか。若干凹むわ。
まあ、お前ほどの美人なら、もっと良いもの貰ったことあるわな。
正直すまんかった」
と、少し暗い表情の彼。
でも、箱を引っ込めようとした彼の手を取った。
「でも、値段なんか関係ない。達人が私の為に買ってくれただけで、今までの値段だけ高い物よりずっと嬉しいよ。
だから、受け取ってあげる。……いや、受け取らせてください」
そう。今までの贈り物は、私の気を惹くためのもの。
私はその男達に興味がなかったから、どうでもよかったのだ。
しかし、これは違う。私はが本当に好きな人から貰った、初めてのものだ。
「……本当に嬉しい。顔が弛むのが止められないよ。
……あ、ちょっと、達人見ないで!」
ニヤニヤが抑えられない。
今絶対変な顔になってるのに。
「でも、なんでいきなり?」
でも、突然ネックレスを贈ってくれた理由がわからなかった。
それが少し気になる。
「……ん、と。その、不安にさせちゃいけないかと思って」
「……何が?」
「いや、恋人になる前に聞いてきたことがあったろう」
「ああ。何で私を抱かないか、ってやつ。そういえばそういうこともあったわね」
そういえばそういう時もあったな、なんて強がりだけど。
本当は怖かったのだ。
彼が苦いだけの表情をしたことが。
「今は不安じゃないよ。達人は私を好きでいてくれるじゃない」
「そういうことは真顔で言うんじゃねーよ。恥ずかしいだろ」
正直言って逃げたかった。
「あの、な。俺さ、前付き合っていた彼女がな……俺に、な」
彼は顔をしかめて言った。
「彼女が、俺に隠れて体を売っていたんだ」
以前「恋人同士じゃないんだから」と、彼は言った。
彼の中では、いや、一般常識では、普通赤の他人と肉体関係を結んだりはしない。
「理由を聞いたら、なんとなく、だって。……それ以来ちょっと怖くてさ。
女の子と親しくなったりがさ。だからこれはお詫びというか……舞?」
過去に戻れるのなら、なんとなく、なんて理由で体を売っていた自分を潰してやりたい気分だった。

01-614 名前:名無しさん@ピンキー :09/01/30 00:59:31 ID:EJwyVkZA
「そうか。そんなことがね……」
「……どうした?」
「何が?」
「いや、何でもない……」
何とか平静を装えたと思うけど、本当は目の前が真っ暗になった気がした。

///

それから私は徹底的に過去を消そうとした。
幸か不幸か、彼と出会ってから体を売っていない。
お金は余っていたし、お金のかかる趣味がなったことも幸いした。
ほとんどの男は私の連絡先すら知らないし、携帯も変え時だ。
機種変更の時に番号も変えてしまえば、私の携帯番号を知っていた、極少数の男とも切れる。
髪型や服の趣味も彼の好みと合わせて変えているので、以前男を引っ掛けるために通っていた猥雑な繁華街に行かなければ会うことは無いだろう。
彼との生活が壊れることだけは、何としてでも避けたい。
それだけが怖かった。

///

努力の甲斐があってか、どうやら私の過去が彼にバレることはなかった、と、言う風にはならなかった。

///

二人で食事した帰り。
何だかんだで肉体関係はないままだったが、距離は随分近づいたように思う。
半年以上かけてだったが、初めてキスもした。
昔はあまり好きではなかったが、彼とのキスは天にも昇るような気分だった。
キスだけでイかされそうで、これでセックスなんかしたらどうなっちゃうんだろう、と処女みたいに不安になったりもした。
昔では考えられないほどゆっくりと関係を育んでいた。
だから、気が緩んでいたのかもしれない。
「おう、久しぶりだな、舞」
その声に振り向くと。
「金やるからホテル行こうぜ。そんな貧相な兄ちゃんの五倍は出してやるよ」
あの、勘違いした中年の男がいた。
「何ですか、あなたは。彼女は僕の恋人ですが」
彼が私を守るように前に出る。
が、私は目の前が真っ暗になり動くことが出来なかった。
「恋人ぉ?テメエみたいな貧相なガキがかぁ?はっ、笑わせんな。舞はな、俺の誘いを蹴ってたんだぜ?」
動くことが出来ない。
「……酔っぱらいか?あまりしつこいと、警察を呼びますよ。舞、行こう。……舞?」
動けない。
「……ほぉら、行きたくねえってさ。俺のが良いってことだ。な?」
「……何を……」
「そいつは昔、体を売ってたんだよ。少しばかり高かったが、具合の良い体でな、忘れらんねーんだよ」
彼の顔色が青ざめていくのがわかる。
違う、と叫びたかった。
人違いだ、と言いたかった。
「買う度に舞もよくよがってたぜ!最後なんか足まで絡めてくるんで、腹の中に何度もぶちまけたもんだぜ、なあ?」
「……とにかく、人違いです。これ以上騒ぐなら警察を呼びますよ」
「警察警察って鬱陶しいガキだな。おい、舞、ホテル行こうぜ。そんなガキなんか置いてよ」
男が近付いてくる。
が、何とか動き出せた。
声が出てくれた。
「……人違いです。寄らないで下さい。警察を呼びますよ」
男は私を睨み付けて、舌打ちをした。
「……ちっ、俺の事を忘れちまったのかい、この売女が。連絡つかねーようになったと思ったら男が出来たとはな。
ま、男がいるなら仕方ねえが、おい、兄ちゃん。そいつには気を付けるんだな。
そいつは金で誰にでも股を開くアバズレだぜ。案外あんたと会ってない日は他の男の腹の上で腰振ってるかもしれねーぞ」
イヤらしい口調で言い捨て、去っていく男。
そこからどう帰ったか、記憶にはない。

01-615 名前:名無しさん@ピンキー :09/01/30 01:00:04 ID:EJwyVkZA
「……舞。本当のところはどうなんだ?」
無言のまま家路につき、彼の部屋に招かれた。
逃げ出したかったが、それは最低の選択肢だろう。
「……」
「……」
沈黙が痛い。
「……」
「……あまり信じたくないけど、な」
「……違うの」
「何が違うんだ?」
「……っ」
彼は今にも死にそうな顔色をしていたが、無表情だった。
「……初めて会った時から、たまにそういう噂は聞いていたんだ。でも、金使いも荒くなかったし、他の男の影も無かったから質の悪い冗談だろう、と思っていたんだけど……」
彼と一緒に居られないなんて思いたくなかった。
でも、それは私のせいだ。
「……達人に会うまで、体を売っていたのは本当。でも、達人に会ってからは一回もないよ」
「それは信じるよ。だってお前俺にべったりだったもんな」
そう言って力なく笑う彼。
過去を懐かしんでいるようであった。
「お前と仲の良い女の子から「独り占めするな!」って文句をつけられたことがあったくらいだ」
「じゃぁ……」
「でも、何で体を売っていたんだ?お金に困っていたようには思えなかったけど」
「……」
「……なんとなく、ってやつか」
「……」
何も答えられなかった。
何を言っても言い訳にしかならない。
「……。なぁ、舞」
「……嫌、それだけは嫌」
「俺の恋人だったお前は何も悪くはない。だからこれは俺の我が儘だ。」
「お願いだから……」
「でも、俺は過去を過去と割り切れないんだ」
「それ以上言わないで!」
「悪いけど、別れてくれ」

///

それ以降、私の生活はモノクロの日々。
彼は私を責めなかったが、私など存在していないように振る舞った。
私が彼の側にいても、視線をこちらに向けることもなく、声を掛けてくれることもない。
でも、私は彼の側にいようと思う。
彼が私を見てくれるまで。

最終更新:2009年07月17日 13:55