t02-138 名前:登場人物 :08/06/14 04:56:01 ID:MTj3DD44
蓮台寺結衣
教職員。絵に描いたような才色兼備、だが油断のならないくせ者。
家柄があり、高学歴、高身長、生徒からの高評価と、他の教師から手が出せない孤高の存在。
人の心を食べるのが大好きな、妖怪みたいな趣向を持つ。
将棋部顧問。

姫川ハルキ
生徒。双子の兄であり、気さくで人を選ばない社交的な性格。
訳あって弟を溺愛するブラコンだが、普段はおくびにも出さないで接する。
親は離婚して父のみの家庭。
料理の腕は一級品。

姫川アキト
双子の弟。成績はトップクラス。
兄とは違い、友人を選ぶタイプで不器用な方。
将棋部部長で全国レベルの腕前。

平岩葵
一人暮らしをするOL。妹の茜がハルキとの交際があった。

t02-139 名前:土曜日 :08/06/14 05:00:15 ID:MTj3DD44
********************

「しっかしお前もアホだね、ノートを忘れるなんて。
だいたい課題くらい、わざわざ暗い校舎へ取りに行かなくてもいいだろ」
「あ~うるさい。月曜の朝からどたばたするのが嫌なんだよ」

そろそろ紅葉も見えはじめる時期、日が沈めばだいぶ気温が下がる。
そんな中、暗い夜道を歩きながら会話する二人組みがいた。
話の内容からも読み取れるように、まだ学生とわかる年恰好だった。
二人を見ればすぐにわかる共通点がある。
普通ではありえないほど顔が似ている。
双子であった。


学校内ではすこぶる有名な二人であった。
単純に双子だというのもそうだが、人目を引き付けずにはいられない魅力的な容貌が二つ並ぶのはなかなか見られない光景だ。
兄は気さくで嫌味のない明るさを振りまき、同性異性とわず親しまれる愛嬌の良さがあったし、
対称的に弟は比較的物静な文化系であり、そのギャップもまた話題の一つだった。
両者の特徴が良い風に中和されるのも、ある意味敵をつくらず友好関係を築きやすい要因の一つでもあった。
そういう事もあり二枚目特有の近寄りがたさは無く、人望の多さはかなりのものがあり、
異性からの告白も少なからずあった。


「んで、あの、ラブレターどうするの」

双子の兄、ハルキは噛んで含めるようにゆっくりと話す。
口調に興味とわずかな揶揄が含まれていた。

「正直お前にまかせたいぐらいだ。断ってきてほしいよ」

弟のアキトは兄に向かってお前呼ばわりするが、
呼ばれたほうは気にした風もなかった。
いつもの事だった。

「もらったのはアキトなんだから、筋ってものがあるだろ」
「正論ありがとう。わかってはいるけど、色々と難しいしめんどくさいよね、本当にこういうのはさ」
「はぁ~、別に知らない女子ではないんだろ」
「そうだけど、こういうのはよくわからない。それほど好みではないと思うし」
「お前の好みねぇ、たとえばどんな?」
「んん………」

熟考する弟を怪訝に伺う。

t02-140 名前:土曜日 :08/06/14 05:02:34 ID:MTj3DD44
「たとえば……たとえばの話だけど、蓮台寺先生みたいな」
「ほっほー、結衣ドン先生ねぇ。たしかに結衣ドンが恋人ならそりゃ最高だろうね」
「誰が広めたのか知らないけど、そのドンって付けるのはやめろよな……」

少なからぬ思慕の念があるのだろう、兄が言った呼び名に不満げな声を上げる。

蓮台寺結衣その人は女性にしては比較的背が高いため、裏では通称結衣ドンと呼ばれていた。
だが何もそれだけが要因ではなく、色々絡んで定着の感があるほど親しまれた呼び名になっていった。

「ははは、別に悪口ではないって。むしろ褒め言葉に近いね。
あの存在感は何と言うか、とにかく絶対無視できない何かがあるだろ、あの人はさ。
美人で可愛いけど、それだけじゃあ出ない魅力って言うか、とにかく人を引き付ける何かがあるもんな。
結衣先生が涙ながらにお願いしたら、なにがなんでもかなえてやりたい、
いっそこの人のためなら死ねる、とか言い出す奴もいそうなくらい。
それに教師連中の中でも、結衣ドンには下手に逆らえないらしいぜ。
イイトコの出だって話だしね、おまけに一流大学の出身、
頭の良さと関係あるか知らんけど、
将棋部顧問になってお前をめっためたにしたと聞いたときは爆笑ものだったぜ」

ぺらぺらと話す兄にくらべ、弟のほうは適当に聞き流しながら相槌を打つ。


弟のアキトは一年生の時にはすでに将棋部副部長を任され、
先輩が引退した二年生の今は文句なしに部長だった。
今年新任に入った笹川結衣が副顧問になった時、見かけ、さらには女性というから判断して、
部員全員がたいした事はないだろうとふんでいたそうだった。
だが実際対局するとことごとく生徒側の全敗、その時に結構な話題となり全校に知れ渡っていた。
それというのも、この学校は全国でも有数の強豪校だからである。

t02-141 名前:土曜日 :08/06/14 05:04:47 ID:MTj3DD44
「あぁ、そういえば課題、結衣先生の教科だもんな。
なんで週末のこんな時間、ノートを取りに行くなんて言い出したのか不思議だったんだ」
「いまさら気付く鈍感さに完敗です」
「どちらかと言うと、お前の健気さに乾杯したいけどね……。
今日のメシといい、ラブレターといいお前は不器用だよな。
まあそんなことはいいや、さっさと入ろう」

夜の帳が落ちる中、校門から入ろうと辺りを窺うが、すでに鍵は閉められていた。
迂回して職員玄関へ向かうと扉は開いており、そこから入っていく。

「うお、思ったより怖いな」
「さっさと行こうぜ。なんだかんだ言っても、誰かに見つかると色々面倒だし」

真っ暗な廊下を忍び足で歩く。
少なくともまだ誰か、宿直が残っている可能性が高い。
非常用の赤いランプに内心驚きながら、目的地まで到着する。
先行したハルキが教室の戸を開ける時、ギギッと予想以上に大きな音が鳴り響いた。

「おい」
「大丈夫だって。ほらさっさとノートを持って帰ろうぜ」

下手に明かりを点けられないため、机の中を手探りであさり、目的の物を眼を凝らして確かめる。
間違いないのを確認して、早々に立ち去ることにした。

「ちょっとまってくれ……」

兄の方が静かに声を出す。

「なに?」
「悪い、トイレに行きたいんだが」
「しょうがないな、見つかる前に早く行けよ」
「それはそうなんだがね、……一緒に来てくれ」
「…………」

少しの間が空く。
微妙な雰囲気が漂う中、アキトがため息をついた後、しぶしぶ同行した。

「いや、ほらね、結構怖いだろ」
「まあな」
「それに漏れるよりましだろ」
「まあな」

トイレに入るハルキを冷ややかに眺めながら適当に返事をする。

「うう、寒い」

待ってる時間は長く感じられ、思ったよりも冷えた。

t02-142 名前:土曜日 :08/06/14 05:07:03 ID:MTj3DD44
********************

「あら?」

戸締りを始める矢先、先ほどから物音がするのを聞きとがめ、
不審者の可能性を考え慎重に音源を探っていた。
話し声を聞いてみると、どうやら生徒が忘れ物を取りに来たようだった。
このまま出るようなら見逃そうかと思ったが、
トイレへと入っていったため、とりあえず事情を聞くことにする。

********************

「わっ、せ、先生」

トイレの入り口で待つ弟は、近づかれるまで人の気配を感じなかったため、
まるでSFかホラーのように、暗闇の中から突然現れた教師に心底驚く。

「はい、こんな時間に何をしているのアキト君」

しかも、もしかしたらこの場で一番出会いたくない蓮台寺結衣先生その人だった。
女性ながら、男子平均身長やや上のアキトよりも上背のため、
この場面においての威圧感はさらなるものがあった。

「あっ、これは……その」

突然の出現にしどろもどろになっていると、
トイレから兄のほうが用を足して出てくるところだった。

「あぁ、結衣先生こんばんわ」
「こんばんわ、ハルキ君。わざわざ土曜日のこんな時間に校舎へ何のよう?」
「あー、それはですね、こいつが課題で使うノートを忘れたんですよ。
それでどうしてもって事で取りに来たんです。騒がせてすみません。
ほらお前も何か言えよ」
「すみません……」

うなだれたように言葉少なく謝る。

t02-143 名前:土曜日 :08/06/14 05:09:21 ID:MTj3DD44
「まあそんなにしゅんとしなくてもいいわよ。大丈夫、別にこれくらい何も問題にならないわよ」
「はい、本当にすみません」
「そうだっ!」

弟と、弟の憧れと思われる教師を見て、ハルキは何か気付き、唐突に手を叩いて声をあげた。
両者の視線が集まるが、大して気にした風もなくまくしたてはじめる。

「こいつ、取りに来た課題って先生の教科なんだよね。
どうせなら教えてくれないかな、先生もこのまま宿直するだけなら暇だろうからさ」
「宿直といっても、見回りの後、警備システムをセットしたら帰るから、学園に泊まるわけではないのよ。
だけど、……まあそれくらい別にかまわないかな……。あとひとつ、もう遅いのだし親御さんの同意が無ければダメよ」
「えっ、いいですよ。先生も都合があるでしょうし。それに自分で解いてこそ意味があるものだろうし」
「ばか。お前ちょっと……」

ハルキは強引にアキトをヘッドロックして耳元でぼそぼそ呟いた。

「これは少しでもお近づきになれるチャンスだぞ」
「そ、そうかぁ?」
「そうだって、なかなか無いぞ。こういう状況は」
「でも親父にはどう言うの」
「そんなもん適当でいいだろ。別にやましいことするわけじゃあないんだし」
「動機は充分やましいかと思うけど……」

うぅと唸りながら、少しの考慮のすえにうなずいたアキトを確認して離す。

「はい、お願いします」
「それじゃあ親御さんに連絡しなさい。持ってなければ携帯貸すわよ」
「どうも、お借りします」

アキトは内心喜びながら電話するハルキを見ていた。
無事親から了承をえられ、三人は宿直室へと向かった。
余談だがハルキは親に、教師はクラスの担任、つまり男だと伝えていた。

t02-144 名前:土曜日 :08/06/14 05:13:25 ID:MTj3DD44
********************

暖房によって暖められた部屋へと入る。
畳張りにテレビと簡易な台所、ちゃぶ台かと見まごうテーブルと昭和の香りがする造りだ。
だが一角にパソコンと警報装置の制御盤と思われるパネル、
多機能な電話とハイテクな機器が集まっているため、そんなレトロな香りもたちまち霧散する。

「夕食は食べてきた?」
「はい、おかまいなく」
「それじゃあお茶くらい出すわ、待っててね」

暖かい烏龍茶だったが、飲むと身体が温まる感じになる。
一息ついて明かりの元で結衣を見上げると、ずいぶんとラフな姿をしていることに気付く。
ノースリーブのブラウスに膝上までのジーパン調スカートにサンダル履き、
アクセントとして腰にラップスカートのような物を巻いて引き締めている。
見た目には学生の普段着にすら見えるその姿は、
似合っており格好も良いが、もう今の季節には寒そうに見えた。
むき出しの肩に何か掛けてやりたい。

「先生、その格好寒くない?」
「さっきね、シャワー浴びてたのよ。外は少し寒かったけど身体は温まってたからそれほどではないわ、
ほらほら、ノートと教科書を広げて、わからない所があったら気軽に聞いてね」
「お前はどうするの? 何も持ってきてないだろうし」
「先生を相手にトークとか」
「はいはい、ハルキくんには私の教科書貸してあげるから、一緒に勉強しなさい」
「うっ」

ハルキは教科書を手渡され、思わず唸る。
腕にかかる重みがこれから先の困難を表していた。

「うむむ、しかたない。ルーズリーフ少しくれ」

かくして二人とも、熱心に課題に取り組むという方法でしかアピールできなくなっていた。
しばらくカリカリとシャープペンシルの音が鳴る。
今この時においては、なかなかにして模範的な生徒と言え、そんな二人を結衣はじっと見ていた。
テーブルに両腕を重ね、そこに上半身を乗り出すようにあずける。
ほんのり上気した肌、たわわな胸が盛り上がり隙間から深い谷間が見えた。
それほど大きくないテーブルなため、手を伸ばせば届く距離にある。

「ねえ」
「はい?」

結衣はくすくすと、さも子供のように微笑む。
二人は気のせいか、甘い匂いを感じる。

「さっきから全然進んでないわよ」
「あっ……」
「いや……」
「ふふ、そういうお年頃なのはわかるけど、人の胸をちらちらと見てはだめよ」

t02-145 名前:土曜日 :08/06/14 05:16:24 ID:MTj3DD44
赤面しながら二人は気を取り直し課題へと勤しむが、明らかに集中できていないことがわかる。
ノートと分の悪いにらめっこが続くが、やがてハルキは両手をあげる。

「だめだ、降参。悪いけど付き合いきれん、一抜けだ!」
「お前と言うやつは……」
「あはは、まあまあ、ここまでつき合わせてきたんだから怒らない」

結衣はおかしそうに笑いながら、なだめるように言い聞かせると、
兄に向けた気分もどこかへと霧散していく。
どうにも逆らえないと言ったのは、あながち外れではなかった。

「……いや、別に怒ってはいませんけど」
「というわけで先生、本来の目的、俺とトークをしましょう」

お調子者の口調で軽口を叩くと、結衣はにっこりと微笑む。
だが出てくる言葉は、
「だめよ、アキト君の邪魔になるから、やる気がないなら帰りなさい」
と、拒絶の意だった。

「うへ~、しかたない、見たいテレビもあるし俺は帰るわ」

ハルキはばつが悪そうに頭をかきながら立ち上がる。

「ぅえ、おい」

アキトは内心、言いだしっぺのお前が真っ先に帰るのはないだろと思い眼を合わせると、
まるで見透かしたように相手は片目を瞑る。
ハルキの微妙に面白がる表情を作りながらするウインクを見て、全てを悟った。
良い意味で解釈すれば、気を利かせたと言いたいところだろうが、
これからアキトが二人きりになる状況を明らかに面白がり楽しんでる。

「あら、冗談なのに、気を悪くしたらごめんね。別に居てくれてもいいいのよ」
「いえいえお構いなく。俺はこれでも優等生ですから大丈夫ですよ」

などと兄の成績をおおよそ知る弟にしてみれば、世迷い事をぬかしながらそそくさと退出していった。

「ふふ、いいお兄さんね」

それは明らかに誤解だったと思うが、訂正するのは気が引けた。
なんだかんだ言っても、少し嬉しかったのである。

その後も勉強は続いていった。

t02-146 名前:土曜日 :08/06/14 05:19:01 ID:MTj3DD44
やがて課題も後半に移ると、さすがに難しくなったのか手が止まる場面が増えていく。

「どう、わからない?」

結衣が向かいにあるノートをのぞきこむと、自然と胸元が谷間まで見える。
アキトはその深さをこっそり盗み見するが、それだけで眩暈がしそうだった。
集中しようと意識するが、ほのかなシャンプーの香りに心はたやすく乱される。

「アキト君、聞いてる?」
「えっ、あ、スミマセン。ぼーしてしまいまして」
「もう、ちゃんと聞いてくれないとダメ。ここは重要なんだから」

結衣は立ち上がって、すたすたとテーブルを迂回して歩く。
迂回などと言うには大げさな時間と距離だが、
アキトは一歩近づくごとに増すプレッシャーに、周りの風景がスローモーションになるほどだった。
たかだか三歩ほどだっただろうが、隣に腰を下ろす瞬間までに心拍数は跳ね上がっていた。

「うんうん、充分いいじゃない。基本が出来て、次は応用ね」
「は、はい」

体力気力根性、そして理性を総動員して集中する。
見えない苦闘も肩と肩が触れてしまえばあえなく崩れ去る。
物理的距離がゼロという状態は、きわめて危険だった。
暖かく柔らかい感触に、男の生理現象が否応無しに発揮される。

そんな葛藤も知ってか知らずか、結衣は体を寄せる。
もしかしたら、書きとめてるノートが見にくかったのかもしれないが、
もはやアキトにとって課題より、時折二の腕に当たる胸に意識が集中する。
熱くなった下半身が行動は勿論のこと、思考も阻害した。

「――だから……、アキト君?」
「……えっ……あっ、あれ?」
「ふ~ん、先生はマジメな話をしているんだけど」

結衣はそう言ってさらに身を寄せる。
すでに当たると言うレベルではなく、押されていた。

「……今、思ったんだけど聞いていいかな?」
「は、はい?」

アキトは自分の邪な考えが暴露し、告発され被告席に立つ気分だった。
そして十三階段から断頭台まで、そう遠くない距離を一本道。

t02-147 名前:土曜日 :08/06/14 05:22:39 ID:MTj3DD44
「アキト君てさ、あんまり女性に慣れてないの?」

慣れる? 女性に?
いったいどういう意味だろう。
そもそも女性に慣れるとはどういう状態を言うのだろうか。
アキトは予想外の質問に戸惑った。

「なんだかとたんに集中できないで、意識がこちらに向いてるみたいだからね、なんとなくそう思ったのよ。
だけど私、本当の事を言うと、なんだか遊んでる女泣かせなイメージがあったのよね、アキト君てさ」
「あ、あの~、それはないですよ」
「あらあらごめんなさい。わざわざ夜にノートを取りにくるくらい真面目だものね」

それには裏の理由があったのだが、特に説明する必要もなかった。

「それに俺、女子と付き合ったことなんて一度もないですよ」
「そうなの。……でもそれは、ちょっと嬉しいかな」
「はあ」

意図のわからない相手の喜びに、気の抜けた返事をした。

「少し噂を小耳にはさんだのよね。さっきみたいな事、まあ女泣かせ? 遊び人と言うかな」
「んん? そうなんですか」

アキトは首をかしげる。
噂など当事者の耳にも多少なりとも入ってくるものだと思うが、
今回に関して言えば、初耳だった。
アキトは同性愛者でもないのに女子の告白を全て断っていたため、
難攻不落という噂が立ち、かえって硬派と言われていた。
実態はそこまでではなくとも、結果として出来上がったイメージは思いの他評判が良い。
本人もその評判に多少なり自負するところがあるため、結衣の話に意外な気持ちも強かった。
しかし、かすかだが別の推測で、胸に引っかかる部分もあった。
もしかしたら兄だろうか?

「俺は、女性を泣かせるような事は……してませんよ」

一部に嘘があったため、少し言葉に詰まる。
実際は告白を断るときに、相手に泣かれた事があったが、
これはノーカウントと心の中で付け加えた。
アキトはふと、今日は心にしまっていく思考が多い日だと考える。

「そう? この前屋上で女の子と対面してる時、
その子、涙を流してるように見えた気がしたんだけどね」
「えっ、それは……」

なるべく人目につかない時間と場所を選んでいただけに、指摘された事実に驚いた。

「そ、その……ラブレター渡されたり告白されたりした事があってそれで、えっと、
で、でもその、ちゃんと失礼の無いように断ってますよ。
それで泣かれてもしかたないじゃないですか」

あまりにあたふたするアキトの様子に、結衣は吹きだしてしまった。

「とにかく、そういう訳ですから。少なくとも先生が思ってるようなことではないですよ」

憮然と答えを締めくくる。

t02-148 名前:土曜日 :08/06/14 05:25:44 ID:MTj3DD44
「ごめんなさい。でも何で断ってるの? 私が知ってる限りでも、結構な数よ。
こんな事言うと不謹慎だけど、まるで選り取りみどりだよね」
「えっと、それは……」

実に答えにくい質問だった。
まさかこの場であなたが好きだからとは言えまい。
加えて相反するように、
どうにも告白してくる相手には良い印象を持てないでいる自分がいた。


恋に恋する乙女が、自分の事をよくも知りもしないで告白しているものだと思っていた。
端的に言って、アキトは自分はツマラナイ人間だという自嘲に近い念がある。
趣味といえば将棋一筋で、あとは成績が二重丸もらえる程度にしかとりえがなく、
気の利いたおしゃべりや遊びなど、とても縁遠い物だと。
結婚相手としては良いだろうが、恋人としてはデートもまともに出来ない最低な相手だろうと、
年齢不相応な達観した評価をアキトは自分に下していた。

だからこそか、余計に結衣の存在は衝撃的だった。
優しくほがらかで茶目っ気も親しみもある美人が、将棋においては自分より強い。
おそらく学生時代においては、成績のよさでも負けていただろう。
ツマラナイ人間なりに持っていた自負が、完全に叩き潰されていた。
初めて対局したその日、閉校時間間際まで何度も勝負して全敗が決まった瞬間、
もう恋に落ちる運命だったと言いきれるほど、悔しさより先にときめきを感じていた。


答えあぐねて視線を泳がせると、当たり前に横にいる結衣に目が止まった。
さらさらの長い黒髪、小顔に理知的でたおやかな目、長いまつ毛が瞬きとともに舞う。
微笑を湛えた美貌が、可愛らしく組む両手の上に預け、今一身にアキトへ向いている。
自然のままでも艶やかに朱をおびた唇に触れたかった。
意識を逸らそうとすればするほど、返って意識してしまう。

「それは?」

人肌のぬくもりは、青い衝動を呼び起こすのに充分な効力があった。
へたすれば、目の前の人を押し倒しかねない。
隠してはいるが、先ほどから完全に勃起して、布地に擦れるだけでも射精しそうだった。
加速度的に勢いを増す嵐の中、かすかな理性を総動員して、熱暴走しそうな頭で計算する。

「お手洗いに行ってきます!」

三十六計逃げるに如かず、であった。

t02-149 名前:土曜日 :08/06/14 05:30:16 ID:MTj3DD44
*********************************

宿直室から出て、一番手短なトイレに明かりを点けて入る。
夜の校舎がかもしだす特有の恐怖など一片も感じなかった。
すぐさまズボンを下ろし洋式の便座に座り、自慰を始める。
どうせ誰もいない、羞恥心などこの場では不要だ。

映像や写真ではない、すぐ近くに居る女性を性のはけ口にするのは気が引けたが、
始めてみるとむしろ、何故今まで行わなかったのか不思議なくらいスムーズに、そしていつもより興奮した。

アキトは想像の中で結衣を犯し始めた。
手をつないだりキスや愛撫など、愛情表現の段階を全て吹き飛ばし、
ただただ服を剥ぎ取り、全裸で交合する情景を思い浮かべた。
病み付きになりそうなほど甘美な快楽、たとえ想像の中だけでもここまでいけるものだろうか。
時間が許す限り味わいたかったが、待たせているためそうもいかない。
第一そんな精神的余裕などなかった。
目を閉じ、一心不乱に想像を膨らませていく。

「はあはあぁ、先生、はあ、はあ」
「ねえ、大丈…………、ごめん、ね」

アキトは自分の想像の結衣とは違う台詞に夢心地から引き戻される。
しかもその台詞はごく近く、頭上から聞こえた。

アキトはあまりの余裕のなさに、鍵を掛け忘れていた事に気付く。
いまだに自分は断頭台に上がったままだという立場を思い出した。
それどころかもはや手遅れであり、ギロチンは落とされ自分の首が転がっているのが見えるようだった。

「そのね、なんだか苦しそうな声が聞こえたし、ノックをしても反応が無かったから……。
でも、元気そうでよかったよ」

客観的事実を見れば、まったくもって結衣の言うとおりだった。

「こんな所でオナニーしてはダメだけど、
……本当にすごく元気、苦しそうだし助けてあげる、ね」
「えっ」

結衣は屈んでビクビクと血流の増した男根を握る。
さらにはそれを擦り、息を吹きかけた。
それだけでもアキトは果てそうになった。

「けど無条件はだめ。答えればこんなところでオナニーしてたこと許してあげるよ。ほら」
「くぅぁ、な、何を、ですか?」

先端からは汁が溢れ、イキたくてもいけない苦痛は拷問の域に達している

t02-150 名前:土曜日 :08/06/14 05:33:22 ID:MTj3DD44
「トイレに入る前に言った質問。ふふ、なぜアキト君は恋人をつくらないの?」
「それは……別に付き合いたいと思う女性がいなかっただけ」
「ふ~ん、そうなんだ」

結衣は小悪魔的な表情を浮かべ、怒張を再び手でしごき、慰める。
まるで全てを見透かすような目に、アキトは自分の考えが知られる恐怖より、
なぜか気恥ずかしさ、羞恥の方が勝った。

「アキト君て、嘘つくとすぐわかる。今のもさ、事実だけど、真実じゃない、みたいな。
ねえ、私に聞かせて。オナニーしてた時、何を考えてたの、誰を想像してたの?」

結衣は一言一句区切り、丁寧に言い聞かせる。

全てを読み取り、頭で理解していてもそれだけでは足りない。
声に表せば時系列に刻まれ、言葉は過去から未来へ影響を与える重りとなる。
欲しいのは、内に秘めるわかりきった真実ではなく、本人が発声にする事実だ。

肉体は精神の器にすぎないなどど良く言われるが、それは例外こそあるもののごく一部。
実際は精神など肉体によって容易く支配される。

「せ……」
「んん~、聞こえない」

結衣は陰茎に力を込めて握り、さらに親指で裏筋の部分をなぞる。

「あっ! せ、先生! 先生のことを想って、オナニーしてました」
「私、アキト君のオナペットにされてたんだ。ちょっと悲しいな」

さっと愁眉にかえる表情に、心に痛みを感じた。

「はあはあ、でも……おれ……おれ……」
「でも……なにかな。私、アキト君の弁解を聞きたいな。本当はそんな人じゃないよね」

途中で言いかけて止めるアキトに、結衣は優しい上目遣いで窺う。
自ら懺悔するのを静かに待つ聖女のように。
一層増した心の痛みが、肉の悦びと合わさり、強く精神を蝕む。

「っ、先生のことが好きだから、好きだから想像したんだ!
普段はそんなこと、とてもできないけど、今日は先生の近くに居られて嬉しかったから、つい。
そんな汚すようなまね、最初はだめだって思ったけど、始めてみるといつもよりすごく気持ちよくて」
「私のこと、好きなのね」
「うん、先生のことすごく好き」
「今まで、女の子の告白断っていたのもそのため?」
「そう、そうですよ、俺、先生のこと、大好きだから」
「すごい誠意、ちょっと感動しちゃったよ。
うふふ、それなら私でオナニーしてたのも許してあげる」

アキトは霞む頭の中で、とりあえず嫌われなかったことに胸をなでおろした。

t02-151 名前:土曜日 :08/06/14 05:35:53 ID:MTj3DD44
「最後にもう一つ、想像の中で私とアキト君は何をしてたの?」
「はあはあ、セックス! セックス……してました」
「うん、ありがと。素直になってくれて嬉しい。お礼に口でして上げる」

アキトは肉棒に手とは違う、濡れたものが這う感触に震えるような快感が走る。
下から上へ、最後には先端の括れに絡ませ、口に含んで唇でしごく。
口を離して、手で握りながら鈴口を舌先で舐めた。

「ちゅう、ん、あぁ、アキト君の大きい。口に入りきらないかな。はむ、じゅ、んん」
「あっあっ、せっ、先生、うあぁ、そんなこと」
「先っぽ、しょっぱい汁がすごいよ。このまま我慢しないで、たくさん出して」

根元を両手で添えて、その先は唇と呼応して顔と手を上下する。
口内の熱い粘膜が、ぬるぬると亀頭のまわりに接触しては敏感に反応する、
暴れまわる陰茎を結衣はしっかりと押さえ込み、逃げ場を無くしては確実に追い詰めていく。

「ん、ん、じゅ、んむ、ぅぅっ、ず、んはぁ、ちゅ、んんぅ」
「あっ、ふああぁああぁぁぁ!!」

アキトが絶叫した瞬間、結衣は喉奥に熱い粘液を感じた。
手の中で肉茎がびくびく跳ねるたび、噴出する精液を舌で受け止める。
焦らされた分、射精は途切れることなく、あきれるくらい長かった。

「はあはあっ、はあぁ、はあ、先生……」

結衣はこれ以上出ない事を確かめ、
残った分も吸い出すよう、丁寧に唇をすぼめながら徐々に顔を下げた。

「んん……」

口から抜くとき、真一文字に固く結び、下唇に指を添え零さないよう離れる。
陰茎の先から口へ伝う銀の糸が名残惜しげに落ちた。
ゆっくりとそれを見届けた後、両手で器を作り、
そこへ愛らしい舌を案内として口腔に溜めた精液をもどす。
どれだけ出したのか、とろとろと白く長い糸、透明と白濁色で斑になった塊がしたたり落ちていった。
唾液と混ざった分があっても、量の多さに圧倒される。
赤い舌にも白い粘液が絡まってなかなか落ちない。
吐き出したりせず気を長く重力にまかせていたが、途中で諦め飲み下す。
アキトは罪悪感の中に、密かな喜悦を感じた。

「んん、アキト君、たくさん出したね、我慢してたからかな」

息苦しかったのか、白皙の頬を朱に染め、うっすらと見尻に涙をにじませる姿は、
今まで見た何よりも淫猥で美しかった。

t02-152 名前:土曜日 :08/06/14 05:39:02 ID:MTj3DD44
「ねえ、アキト君のこれ、どうしたらいいかな?」
「せ、先生、汚いですから」

アキトは気遣ってハンカチを出すが、結衣は受けとれない、受けとらない。

「ううん、ダメ。両手がふさがってるもの。質問をかえるね。
アキト君の出したの、どうして欲しい?」
「え」

一瞬頭に浮かんだ映像が脳裡に焼きつく。

「素直に言ってみて。私もうアキト君の気持ちわかってるから、
どんなことを言っても軽蔑しないよ」

手にもどしている途中、自分の密かに思った薄汚い感情が湧き上がる。
それは彼女が喉を鳴らした瞬間に、強く感じたものと背中合わせのものだ。

「あ、あの……」

アキトは一体自分はどんな顔をしてるのだろうか、疑問に思った。
恥ずかしさで人が死ぬなら、きっと自分は死んでいる。

「の……飲んで……欲しい」
「うん」

恐る恐る言った希望に対して、結衣は躊躇なく了承の返事をして、すぐに実行へ移した。
嫌がるそぶりなど見せず、両手いっぱいになった精液に口を付け、舌ですくい、嚥下していく。
むせ返るような性臭、まだ湯気が立ちそうなほど暖かい。

「んん……すごく濃いよ。舌に絡まって……」

だが慈しむように指の一本一本、手首にこぼれた分まで、
自分が彼女のために出した精液は、再び全て彼女のものになった。

「ねえ、戻ろうよ」

アキトは夢見心地をさまよいながら頷く。

「アキト君が想像していたものが手に入るよ、きっと全部」

今、夢と現実の境界はどこにあるのだろうか。

t02-153 名前:土曜日 :08/06/14 05:43:04 ID:MTj3DD44
****************************

宿直室の戸を開き、内履きを脱いで上がる。
結衣は手と口をゆすぐため、備え付けの簡易な台所へ向かう。
少々の時間の後、戻ってきた姿を見て絶句する。

「ねえ、アキト君てこういうの好きかな」

僅かな面積しか肌を隠していないその格好は、
ノーブラで下着のみの上にエプロンを羽織ったものだった。
腰に食い込む下着の紐、そして動きに合わせてひらひらと舞う結び目がひどくいやらしい。
アキトは自分の理性が引き千切れる音を感じた。

ふらふらと近寄って抱きつき、たわわな胸を揉みしだいては、
さらさらに梳られた髪を手ですくいあげ、後頭部を押さえて熱烈にキスをする。
本来ならとてもできないことも、二人だけに用意されたこの空間なら可能だった。

「んん、ちゅる、ぅん」

甘い吐息と重なるように結衣が舌を割り込ませ、歯茎をなぞって侵入を図った。
開いた口腔へと舌を深く入れ、絡み合いお互いの唾液の甘さを確認する。
飽きること無く長い間、舌なめずりと吸い付くような音、人の呼気が続く。

「ん、はあはあ、激しいね」
「だって、こんな、エッチな格好で、先生すごくいやらしいから」
「私のせい?」

アキトは赤面して頷く。
自分の劣情に対する羞恥、期待がないまぜになり、支離滅裂に近い事を自覚する。
子供じみた責任転嫁だが、客観的に見て、裸エプロンで誘惑されれば男に罪は無いだろう。
結衣は単に容姿が良いというだけではなく、
充分にウェストは絞られていながら、その分突出するところは申し分ないボリュームである。
おまけに、それに見合うほどの身長の高さが、均整の取れたスタイルの良さをさらに際立てる。
男なら平常心を保てるのは土台無理に近い。

「んちゅ、ん」

再び接吻をしながら腰にある蝶々結びの一端を引っ張り、ひらりと最後の一線を守る布が落ちる。
前掛けにより、肝心のところは見えそうで見えないのも、余計煽るものがある。
彼女と一つになりたい衝動に抗うすべは、すでに持ち合わせていなかった。
腰に腕をまわし、エプロンの上からすでに勃起した強張りを下半身に擦りつける。

「はあはあ、もう我慢できない!」
「私のせいだものね、アキト君」

お互いこの言葉が妙に急所らしく、結衣は面白がり、アキトはますます赤面する。
台所に手をつき、白い尻をアキトに向ける。
後背位で待ち受けながら、誘うように流し目を送った。
ズボンを下ろし、腰のくびれを掴むと、軽く脚を開き入れやすいよう妖しく誘う。
待ち望む性交へと大きく腰を進め、すでに蜜で濡れる割れ目を、亀頭で押し開き侵入する。
先っぽがつつまれるだけで背筋を快感が走り抜けて行く中、
歯を食いしばるように、蜜壷へと肉槍をすべて収めた。

t02-154 名前:土曜日 :08/06/14 05:59:19 ID:MTj3DD44
「んん、やっぱり、アキト君のってすごい……。奥までぴったりくるよ」
「あ、あぁ、先生の中、すごく気持ちいい」
「ねえ、私のこと好き?」

アキトは何度も首を縦に振る。

「それなら中にあるコレで……どれだけ好きか私に教えて欲しいの」
「先生、センセイ、おれ! あぁ!!」

壊れた人形のように、がくがくと突然動き始める。
我を忘れて暴走する腰の動きに、膣内で怒張が何度も往復してその激しさを伝え、
貫いたものが根元まで潜り込む度に肉襞が締め付ける。
初めて受ける肉の洗礼は、想像の時より甘く強烈な快楽をもたらした。

「アキト君すごい、私の体に、ずんずんって、響くよ」

エプロンを胸の谷間にはさみ、剥きだしになった乳房を五本の指で鷲掴みにして
、吸い付くような柔らかさに酔いしれる。
結衣は後ろを振り返り、舌をのばして口付けを催促した。
舌が触れ、唇が重なれば、すぐにディープキスへ移行し、互いに絡めあい唾液を交換する。
結合した下半身はその間も休み無く動いていた。
雄々しく猛る雄渾は最終目的地まで容易に到達して子宮を叩く。
長いストロークで矢継ぎ早に繰り返されるたび、
蹂躙を許す膣壁は蠕動して快楽の悦びを分かち合う。
粘膜の摩擦は次々と溢れ出る愛液によって加速する一方だった。

顔に似合わぬ剛直は存分に結衣の性器を責め抜き、悶えさせ、着実に最後の到達点へと昇る。
牡の生殖器官に呵責など無い。出してしまえばお終いだ。
アキトはセックスに溺れながらも、なけなしの理性で最後までコントロールを試みる。
結衣はスローダウンしたことに怪訝な表情をした。

「あ、はあはあ、どうしたの?」
「はあっはあっ、気持ちよすぎて、その、いきそうなんです。
けどその……出すのは外にしなくちゃって思って」
「可愛い声。ねえ、ぐって奥まで入れて」

t02-155 名前:土曜日 :08/06/14 06:02:07 ID:MTj3DD44
アキトは言われるまま、肉槍を押し進める。
密着して腰に当たる尻の柔らかさが心地よい。
言葉通り、すでに達しそうなのがわかる。肉棒は膣内でも脈打つたび跳ねていた。
先端に触れるものは魅惑の入り口。

「ほらぁ、わかる?
ここまでしか、アキト君の愛が伝わらないなんて、とっても残念な気持ち。、
どれだけ好きか私に教えて欲しいって言ったのに、アキト君たら最後まで教えてくれないんだから」

今度はアキトが怪訝な表情をする番だった。

「で、でも、それって」
「ねえ、このまま小刻みに動いて」

一方的にアキトの言葉を遮って要求する。
腰を少し引き、そして突き出す。
これだけでも気を抜くと達しかねない、間隔を置いて控えめに肉打つ音が鳴った。

「ああぁ、わかるよ、奥まで、ん、くる」

結衣はひたいを台所に付けるようにして後ろを振り返り、奥を刺激されるたびに喉を鳴らす。
逆さになった彼女の顔には、ありありと至福の表情が浮かんでいた。
高貴な存在が、頭を下に置く屈服した姿勢、
その蕩けた表情は、性行為のみによって見られるものだろう。

「ほらぁ、この先に、アキト君の気持ちが届きそうなのに、教えてくれないの?」
「はあっ、はあっ!」

ぴったりとお互いの性器を結合させたまま、白い尻に片手を添えくゆらす。
ずたずたにされた理性はまだかすかに残っていたが、それもどろりとした物質に流されていく。
洗い流された後に残るのは衝動的な本能だった。

「わかりました。どれだけ俺が、センセイのこと好きか、最後まで……教えてあげます!!」
「あっあぁ、そうよ! 最後まで、全部教えて!!」

より熱さを増した男根が、勢いと共に挿入した。
汗に光る裸身が艶かしくうねり、性の営みの激しさに荒い息を漏らす。
すでに準備の整う女の内部はたやすく受け入れ、たっぷりと粘膜で侵入者に歓喜を伝え、
さらにはぐいぐいと食いつく肉壷が離れることを許さない。

t02-156 名前:土曜日 :08/06/14 06:07:16 ID:MTj3DD44
離れがたい淫らな奉仕にも、牡の本能は本来の目的を忘れない。
一刻も早く解放の時を目指すが、すでにそれもままならなくなっていた。
時が経てば経つほど、快感などすでに生ぬるい風に過ぎず、
どろどろに溶けたマグマが五感を埋め尽くし、全身を灼く。
この灼熱をそのまま彼女に注ぎたい。

「あああぁぁぁ! はあっ、もう何も考えられない!」
「ああ、はあぁ、いいよ、私もいく! いっちゃうよ!
でもぉ、熱いの感じながらいきたいの!!
出して! 結衣の中で、早くぅ奥まで教えて!!」

最後の瞬間、がっしりと結衣の下半身を掴み、外れないよう固定する。
全身を灼くような熱が、子宮へと放出していった。

「くっ、先生わかる、気持ち良すぎてぇ、止まらない!」

脈動に合わせるようにしながら、腰を打ち付ける。
子宮口へ勢いを乗せた怒張が当たり、鈴口から無数の精子を含んだ白い粘液が迸る。
膣内射精の快楽に酔いしれながら、助走をつけて何度も子種を最奥まで注ぎ込んだ。

「ああぁぁ! アキト君が中にくる。どろどろの熱いのが、奥まで届いてる!!
中に出されながら、いかされるよぉ!!

高らかに宣言した後、背筋が張り詰めさせ、びくびくと震えながらのけ反る。
快楽の果てに合わせ、いまだ刺激を受ける膣も収縮して精を搾り取る。
結衣の絶頂を感じながら腰を前後させ、要求に応えるように最後の一滴まで注ぎ込み、
万感の思いを込めて生殖行為を締めくくろうとした。

「んん……熱いのいっぱい届いてるよ。アキト君、本当に私のことが好きなんだね」

量や濃さ、勢いも全て二回目とは思えないほど、
アキトが陰茎を引き抜くと、引きずられるように白く泡だって溢れ出す。

「はあはあっ、そうです。ふうぅ……これで、俺の本気が先生に届いたんですね」
「ねえ、布団敷くから、今度はその上でもっと、もっと……アキト君を教えて……」


アキトは一つ思い出した。
まだ想像したものは全て手に入っていない。
全身がわななき、血が沸騰する。

************************

t02-157 名前:日曜日 :08/06/14 06:13:59 ID:MTj3DD44
************************

ようやく日が差し始めた早朝、結衣は目を覚まし、起き上がって台所で水を一杯飲む。
喉を潤し、運動と睡眠で失った水分を補給すると、意識が覚醒して神経が隅々まで行き届く。
本当に久しぶりな、爽やかな朝を全身で感じ取っていた。
満足と言うには足りないものがあるが、それでも澱んだものがさっぱりと無くなるようなこの気分。
布団に戻ると、まだアキトはすやすやと熟睡している。
寝顔の可愛らしさに、思わず頬にキスの一つでもしようかと思ったが、
起こしてしまっては忍びないと思いとどまる。
彼には充分な睡眠をとって、体力を回復してもらなければならない。

結衣はお手洗いへと向かった。

************************

「昨晩、結局アキトは帰ってこなかったけど、先生と一緒になにをしてたんですか」

着衣の乱れは無くとも、単に寝起きだけとは思えない髪の乱れ、
首筋にうっすら残るキスマーク、それに汗の混じって感じる独特のすえた匂い。
一晩たっても消えないとは、いったいどれだけ励んだのだろうか。
あくまで普通にいられるのが不思議なくらいだった。

突然の対面にも、結衣は悪びれた表情も見せずハルキを窺った。

「ふふ、ご想像にお任せするわ」

結衣は妖艶に微笑む。
およそ教師という職に似つかわしくない表情だが、
異常なほど違和感無く、淫らで自信に満ち溢れている。

ハルキは早朝にもかかわらず、宿直室近くの廊下で結衣を待っていた。

「昨日は帰ったと思ったけど?」
「はい、家に帰ってそのまま寝たんですが、朝早く起きてもアキトが帰っていなかったんで、
心配になって見に来たんですよ。それより先生、これからどこへ行くんですか」
「ちょっとお手洗いにね」
「オレもついて行きますよ」
「女子トイレに?」
「どうせこんな時間、誰もいないでしょうからね」
「そうね」

結衣は再び目的地へと向かう。
呆気にとられながらハルキは後ろを付いていった。

「それにしてもよく入ってこれたわね。鍵は閉めてあるし、警備システムも反応しなかったみたいだけど」
「……職員玄関、鍵かかってなかったですよ。警備システムも解除のままだと思います」
「あら? 私も最初は帰るつもりだったし、忘れていたのね」

照れているのか、髪を手櫛で整える。
ハルキはすたすたと女子トイレに入る結衣を見ながら、見えない壁がある空間へと足を踏み入れた。

t02-158 名前:日曜日 :08/06/14 06:18:06 ID:MTj3DD44
「私が用をたしてるところを見たいの?」
「……そんな趣味はないですね。でも鍵は開けておいてくださいよ」
「わかったわ」

ハルキは区画された壁に背を預けながら中の様子に耳をそばだてる。
衣擦れの音の後、水が跳ねる音が続く。
存外興奮する自分に、己は変態なのかもしれないと苦笑した。
音が止み流す音が続いた後、衣擦れの音が再開した。

「先生、入ってもいいですか」
「いいわよ」

扉を開け、中に入る。
狭い空間に二人きりだった。

「今度はハルキ君が用をたす番かしら? 私で……ね」
「先生はスカトロ趣味でもあるんですか?」
「ないわよ。好みは人それぞれだと思うけどね」
「俺はいちいち先生の目の前でしませんよ」
「うん? ふふ」」

ちぐはぐな会話を打ち切るよう、ハルキは呼吸を整える。
緊張もあったが、これからすることに心構えが必要だった。

「まさかあの堅物が朝帰りになるとは思わなかったよ。
先生に惚れこんでたのは知ってたけど、ここまでとはね。
昨日あれからどれくらいしたんですか?」
「あら、それは二人だけの秘密ってことよ」
「したことは否定しないんだ」

ハルキは結衣ににじり寄り、肩に手を掛ける。
間合いを詰められ、身体に触れられても、特段不快そうな表情は見せなかった。

「先生、それはまずいんじゃないかな」

次の台詞が大事だと言わんばかりに一呼吸置く。

「だって先生は生徒と関係を持ったわけだから」
「んん、これって……私もしかして脅迫されてるのかしら?」

鈍いのか、からかってるのか今ひとつ図りかねる表情だ。
考えが読めないのは、ハルキが人の気持ちを読む能力が足りない訳ではなく、
相手の、瑣末時事とでも言わんばかりの、意に介さない普段通り自然のままだからであった。
いらだつ自分を抑えながら、慎重に話を続けた。

「そうですよ。それは、いくら何でもまずいですよね」
「あら、そうかしら?」

返答よりも先に、肩に置いた手を滑らかな肌を徐々に下へ這わせ、
成熟した女性を主張する豊かな双球へ触り始めた。

「んん……」
「先生の身体、これで誘惑したんですか」
「あっ……だめ、だよ」

t02-159 名前:日曜日 :08/06/14 06:24:06 ID:MTj3DD44
ようやく初めて見せる拒絶にも、一度膨れ上がった欲望に歯止めがかかるわけではない。
むしろここに入ってからよく最初に襲いかからなかったものだと、
年頃の青年にしては感心して良いくらいだった。
どの道、こうなる事は同伴してから確定していたようなものなのだから。

今の反応もすでに織り込み済みだった。
一応とはいえ、形だけでも拒否めいた言動だが、実際はOKしているようなものだ。
行動も大胆に、結衣の肉体をまさぐりはじめる。

「すっげえ……、他のやつらと比べ物にならない」、
「あっ、ん、ふふ、色々な女の子の胸を揉んできたのね」
「それはご想像におまかせしますよ」
「遊び人なのね、あなたは」

頂点にある蕾が硬く突き出してくる。
なかなか達者な手つきに、吐息も甘く切なく昂ぶる。

「これならパイズリできそうだね。先生やってよ」

ズボンを下げ、すでにそそり立つ肉棒をさらけ出す。
便座に座って位置的に丁度良い、結衣の胸の谷間に宛がった。

「そんなの、押し付けないで……」
「ダメだよ。ばらされたら先生困るだろ。ほら、覚悟をきめてさ」

やがてゆっくりと結衣は上着を脱いで、こぼれんばかりの美乳を見せた。
大きいだけではなく、つんと上向きの形の良い乳房は芸術的でありながら、
吸い付きむしゃぶりたいと男なら誰しも思う妖しさを秘める。

「うん、そうね。私、アキト君とエッチしたのをばらされたら困るもの」

そう言って、おずおずと肉棒を胸に挟む。
豊満で張りのある乳房を手でさらに寄せ上げ、包みこうむよう上下にしごき始める。
竿から亀頭にくるまれる刺激に、自然とハルキは腰を浮かす。

「あぁ、こういうの初めてだけどいいね。アキトにもしてやったの」
「そんな事……言わせないで」

ハルキは乳首の先を軽く摘まんで、親指の腹で擦る。
敏感な刺激に動きを止めた結衣に対し、
乳房にうずめられた男根を口元近くまで突き上げた。
まるで性器を犯すように何度も前後すると、
先走りの汁が溢れ、喉元から谷間へと糸を引いてぬらぬらと輝く。

「自分の立場わかってるます? 今の先生に黙秘権なんて認められないんだから」

さらには愛撫をしていた乳首に力を込める。

「あん……うんん、昨日はしなかった……最初は口だったよ」
「へえ、それも羨ましい。それならそのまま舐めてよ、昨日みたいにさ」
「ん……」

t02-160 名前:日曜日 :08/06/14 06:26:52 ID:MTj3DD44
先っぽに舌を伸ばして唾液を絡めるように舐める。
美乳から卑猥な音を立てながら肉棒に奉仕して、
口に咥えながら、時折裏筋から鈴口へと舌先でつつく。

「あっ、あぁ、それすげーいい」
「んっ、んんっ、れろ、気持ちいい?」
「すごく」
「嬉しい」

これ以上ないほど明快に喜ぶ結衣に対して、
ハルキは主導権の単語を思い浮かべ妙な気分になったが、すぐさま快楽の波に押し流される。

美人教師が丹念に生徒の怒張を慰める図は、およそ健全とは言いがたい屈折した淫猥さだ。
技巧においても充分すぎるほどのものを持ち、なぜこんなにも手馴れているのか考える余裕もない。
すでに達するまでに、そう時間は必要ではないほどの昂ぶりがきていた

「あっ、はあはあ、そろそろいく。このまま……そのきれいな顔に出してやるよ」
「出すの、出しちゃうの? 精液、私の顔に出すんだ」
「くぅっっっっ!!」

意味もなく歯を食いしばって我慢をしてみるも、すでに無駄な抵抗であった。
翻弄される肉棒から盛大に白濁とした液が飛び出していく。、
結衣は避けようともせず、精液は前髪から目元、鼻、口と端麗な容姿を汚していく。

「ああぁ、すごい量……。この匂いも、こびり付きそうだわ」

どくどくと駄々っ子のように長々と欲望を吐き出す。
ハルキは当初の目的を果たしたものの、いいように弄ばれいかされた敗北感に駆られた。

「っあぁ、はあはあ。そのまま中に残ってるものも口で後始末して」
「わかったわ」

ようやく勢いも止まった頃に、先端を咥えて再び愛撫する。
敏感になった亀頭からの刺激に、ハルキは呻くように声を上げて震えた。

「うあぁぁ……」
「んっ、ちゅ、ちゅう、んぐ」

せり上がるものに加え、尿道に残る残滓も吸い取っていき、
最後には唇まで滴り落ちるものを、赤い舌が舐め取って逡巡もせず嚥下する。
まるで地に足が着かない浮遊感の中、喉を鳴らす生々しい音に現へと引き戻された。
普段は排泄処理するくらいにしか意味のない自分の精液を、彼女は胃に納めたのだ。

「喉にからまって飲みにくいわ。若いってすばらしいね」
「はあはあ、はあぁ……」
「んん、アキト君のと味、ちょっと違うね」
「そんなの、比べるなよ」

妙な恥ずかしさに、口調もぶっきらぼうになる。

t02-161 名前:四時五時 ◆P7woR/uQWc :08/06/14 06:34:57 ID:MTj3DD44
「顔、赤いよ。アキト君もね、私に飲んで欲しいって言った時、
すごく赤面して恥ずかしそうだった。
やっぱり似てないようですごく似てるよ、二人とも」

結衣は特に揶揄するつもりで言ったのではなく、
率直な感想を述べたのだが、ハルキの表情に一瞬影をさしたのが見て取れた。
だが束の間、落ち着きを取り戻したように振る舞う。

「ふぅ、先生いい格好だねぇ」
「ありがとう、満足した?」
「いいや、これからが本番だよ。先生のここもさ……」

ハルキは腰を下ろして、座ったまま動かない結衣の股に入り覗きこむ。
可愛らしい白いレースの下着にうっすらと滲みが見えた。
指でひっかけ脇にずらして、すでに濡れているのを舌先で確かめると、
結衣は熱い吐息を漏らしながらハルキの後頭部を押さえる。
割れ目にそって舐め上げると、ほころぶように開きながら唾液とは違う液が滲み出る。
眼前では女性器がすでに待ちきれないようにひくつく。

「あぁん、そんなところ……舐めないで」
「こんなに濡らしておいて、説得力ないよ」

秘裂を親指で広げ、肉芽を舌先でくすぐる。
ひときわ高い声を上げ、押さえつける手が強い力になった。

「先生、気持ちいい?」
「……うん」
「もっと大きい声で言って」

敏感なクリトリスをねぶり、垂れてくる愛液に口をつけ啜る。
堪能した後、舌をすぼめて、孔に突き入れた。
たちまち異物の侵入に反応して、膣壁が締め付ける。
それでもねじ込むの止めず、肉襞を割って縦横に愛撫する。

「ああぁ! それ、そこ、気持ちいいよ!」
「いいんだね」

結衣は潤んだ瞳でこくんと頷く。

性的に堕とされたその表情は、欲情して襲いかかるっても
情状酌量を与えられるのではないかと思えるほどそそる。
事実ハルキも復活した一物が、一層硬直するのを感じた。
頃合を見計り、忍ばせていたコンドームを取り出して装着しようとする。

「……ハルキ君、普段から持ってるんだ。アキト君とは違って遊び人ね」
「そうですよ、遊びで女性に負担を掛けるのも嫌ですからね」

皮肉めいた台詞に対して、意識して柳に風がふくように受け流す。
ここで感情に波風が立つようでは、人として男として負けるような気分でいた。

「ふふ、でもね私……」

結衣は顔に付いた精液を拭い、その指をぺろりと舐める。
ハルキはどきりと硬直して、相手の次の言葉を待つはめになった。

「遊びではなくて、ハルキ君の本気が欲しいの」
「それって……」

t02-162 名前:日曜日 :08/06/14 06:36:39 ID:MTj3DD44
奇しくもアキトと同じ反応をする。
どういう意味と続けようとした矢先、結衣は下着に手を掛け、
するすると下ろし、片足を抜いてぷらぷらと引っ掛ける。

「アキト君はすごかったよ。『本気』で私を愛してくれたの」

座ったまま片膝を立てる。
高身長に見合う、長くすらりとした脚線美が優雅に折り畳まれた。
露わになった太腿の付け根に目が行くのは必然だ。
下着など外している、視線を遮る物は無い。
造形美を極めた肢体に、そこの一点に人の証である秘めやかな肉の花。
醜悪なようで神々しくもあった。

情景を思い浮かべるように、うっとりとした眼差しで宙をみつめながら自ら胸を揉み、秘所へと手を伸ばす。
中指を孔へ沈めていくと同時に息を吐く。
静かに喘ぎながら、指を動かして刺激を感じる。

「あんなに真面目で大人しいアキト君がね、別人みたいに激しく求めてきたわ。
だから余計に伝わったの、アキト君の本気」
「あいつ初めてだったからだろ。それに先生とできるならケダモノになるよ」

このままだと相手の術中に陥るようで、強引に目を逸らし、はき捨てるように言った。

「ハルキ君も?」
「俺は……童貞じゃないよ」
「ふふ、私とするとケダモノになるの?」
「………っん」

横目で見て、そのあられもない光景に生唾を飲みこむ。
幾人か女性と肉体関係を持ったハルキは、思わず今までの女と比べてしまう。
その格差は単に年齢の違いだけでは説明できない、
彼女らが仮にこれから成長したとしても、この差はうまるとは思えない。

「男の子はみんなオオカミ、女の子は食べられちゃう赤頭きん。
それともハルキ君は、アキト君と違って、女の子の前で紳士でいるのかな?」
「くっ、ああそうさ。俺は紳士でいるよ」

自分でも随分と支離滅裂な言い草だと感じる。
そもそも事の始めは、どう考えても紳士的ではない。
何をいまさらと結衣はくすりと微笑むが、
ハルキはそれを自分が強がりを見せてるのが可笑しいのだと思いむきになっていた。

「ねえ、それじゃあさ……」
「?」
「もう一度最初から……優しくキスから始めて欲しいの」
「……はあ?」

もじもじと恥ずかしげに何を言うかと思えば、まるで場違いな発言に毒気が抜かれる。
結衣はそのまま上向きに顔を上げ、目を閉じて口付けを待つ体勢になった。
暫しの逡巡の後、自分で言った手前、腹を決めて優しく口付けしようとする。
一旦ズボンを上げ、顔を近づけたが、
優しい雰囲気にそぐわない、先ほど自分が出した精液が気になった。

「先にちょっと」
「ん……」

ハンカチを取り出し、結衣の顔を拭う。
目を閉じたままじっとする彼女の顔を丹念に綺麗にしていく。
曲がりなりにも美しさを磨く施しに、ちょっとした陶酔感があった。

t02-163 名前:日曜日 :08/06/14 06:39:35 ID:MTj3DD44
「これでいい」
「ありがとうね」
「……もう一度、目を閉じて」
「ん……」

今度は何事も無いように、キスをする。
唇が触れるだけの、親愛をこめた優しい接吻。
至近距離で見る、普段と違う可愛らしさにどぎまぎしながら続けた。
僅かな時のようで、だいぶ長い間のようでもあった。

「こういうのもいいよね」
「あ、ああ」
「ね、次は……」

また目を閉じ顔を上向きにして待つ。
次は何か、特に言われなくともわかる気がした。
不思議と心が通じ合う。

「ん……」

しっとりとした感触を味わいながら、少しずつ唇を開き、舌をのばす。
お互いの舌先が触れ、くっついては離れ、次第に絡み合っていく。
舌から伝るのは唾液だけではなく、優しい心遣いからくる暖かさがあった。
ハルキは肩に手を置き、抱き寄せる。

「ん…ちゅ……ん、ちゅぅ、ぅん」
「んん……はあはあ、ふうぅ」

口が離れると、つうっと唾液が滴り落ちた。

「キス……とってもよかったよ」
「それは光栄。次は何がお望み?」

紳士な台詞とは裏腹に、下半身は欲望に猛る。
だがそんな素振りを表に出さず、心の棚に投げいれる。
茶番にすぎないが、だからこそむきになる傾向がハルキにはあった。

結衣がそっと立ち上がると、自然と狭くなり密着してしまう。
今度はハルキが少し上を向く番だった。
腰と背中に腕をまわし、抱擁するのだが少しさまにならないのを自覚する。
三度目のキス、舌をはべらせ、乳房を揉んで、手が全身を這い回る。

「ああん……ん、そこ」

口を外して喉をそらして喘ぐ、その無防備な首筋にキスする。
舌でくすぐりながら徐々に下がり、乳房まで到達する。
硬くしこる乳首に吸い付き、愛撫した後、口いっぱいに広げその豊かさを頬張る。

「んん……はあぁぁ」

手をそっと、スカートの内側へ持ってくる。

「そこ……敏感なところだから……優しく」

こそばゆい囁きで耳もとをくすぐられる。
性急になりがちな動作を押し止め、情感を込めて楽曲を奏でるように熱く熟れた秘唇をなぞる。
静かに中指を潤いに探り当て、その蜜を乗せて肉芽へも撫で付ける。
多彩な音の高鳴りに比例するようにして、指による愛撫も熱を帯びる。

t02-164 名前:日曜日 :08/06/14 06:42:23 ID:MTj3DD44
「ん……っあぁ、はあはぁ」
「先生のここ、もうすごいことになってる」

手を抜いて、そのねばりを確かめるように指を開く。
水かきのように広がるかと思ったが、思いのほかさらりと垂れていく。
勿体ないと思って舐めると、視線を感じてふと目が合わさった。

「やあ、そんなの舐めないでよ……」
「さっきのお返し」

視線を逸らして、顔を赤らめる結衣の表情は、
清純と同一の属性を持ち、恥じらいと憂い、喜びが混じり初々しさに満ちていた。
同じくしてハルキの心には、満たされるような初々しいときめきを感じていた。
薄々彼女の術中にはまる、まずいやりとりだと分かっていながら、心地良い瞬間から逃れられない。
首筋にうっすら残るキスマークに接吻しながら、さっさと終止符を打たなければと思いとどまる。
どうせ毒を食わなければならないなら、早めの方が影響も少ないはずだ。

「もう、先生としたい」
「私と?」
「そう」

この人はなぜ当然の事を聞くのだろうと思った。
もしかしたら、ダメなのだろうか?
胸が高鳴り、不安に足が崩れ落ちそうになる。

「……うん、ハルキ君が望むなら、いいよ」
「あ、あぁ」

痛みなら我慢できるだろう、涙ならこらえる事もできるだろう、
だけど胸のうちから湧き上がる暖かいもの、喜びは抑えることが出来ない。
この感情はどこからくるのだろう、
当初の目的は何か、ハルキは思い出さずにはいられなかったが、今や遠い過去の出来事。
多幸感に包まれながら、これからする行為に幾ばくかの罪悪感が湧く。

「あっ、でも、もう優しくなんて出来ないかもしれない」
「ん……私、ハルキ君になら……傷付けられてもいいの。だから……」

美しさは罪ではなく、力だ。圧倒的な圧力によって毒が瞬く間に回る。
だがとても素晴らしく甘美で柔らかいに違いない。

「……いいよ。きて」

ハルキは体を入れ替え、結衣の背中を扉に押し付ける。
鍵はかけてあるが、二人分の体重が掛かりギシリと軋む。
唇を重ねながら右手の手首を握り、動けないよう壁へ押さえつけた。

「んん……ちゅる、ぅん、はあぁ」

片手で太腿を抱え、スカートがめくれて見える秘裂へと、猛る男根を押し付ける。
挿入しようとしたが、割れ目の上をすべり肉芽へと当たった。
結衣はびくんと反応する。

「ねえ、そんなに焦らなくても大丈夫」
「ご、ごめん」

t02-165 名前:日曜日 :08/06/14 06:45:34 ID:MTj3DD44
ハルキは自分は童貞か、と自己嫌悪にかられた。
今度はしっかりとあてがい、腰を進め、濡れそぼる蜜壷へとわけ入る。
挿入した後、最初に付けようとした避妊具を忘れていた事に気付く。
だが今更といった感じがした上、初めて直に触れ合う良さもあった。
このまま挿抜を繰り返し、己の一物でもって結衣を標本のように扉へ縫いとめる。
突き上げるたびに軋む扉の音も、セックスを彩る協和音だ。

「あん、あっ、あぁっ、激しいよぉ」
「はあはあ、あっ、ごめん」

いつの間にか我を忘れて、相手を痛めつけていたことに気付く。
動作を止め、荒い吐息が両者を行き来する。
結衣ははにかむような微笑を浮かべ、ハルキをじっと見つめた。

「ふふ、でも男の子なんだから、しかたないよね」
「ごめん……本当は優しくしたいんだ」

優しくしようとする心、快楽を貪ろうとする体、微妙に相反するが、
ハルキは上手く折り合いがつけられる自信が多少あったのかもしれない。
最初は隘路を再び馴染ませるように挿入して律動する。
上下に波打つ乳房を掌で覆いながら、屹立とした乳首をこねる。
ああっ、と結衣が呻き声を上げ、漆黒の長い髪が光彩を放ち感情を表現する。
愛撫と波状するように陰茎をぎりぎりまで抜き、一気に突き入れる。
歯を食いしばり、長いストロークで何度も膣奥まで責める。

「くぅん、んぁああ、はあ」
「はあはあっ、先生の中……気持ちよすぎる」

奥と亀頭が出会うたびに、走り抜けるような快楽が襲う。
このまま味わいたくて、最奥まで差し込んだまま捻り、抉りこんだ。
子宮口が吸い付くように膣全体が蠢き、中にあるものに追従して悦ぶ。
ハルキは少しでも長く持たせようと口付けをする。
せめて結衣を先にいかせるのが、普段器用な彼の不器用な優しさだった。

「ん、ちゅっ、んん! はあはあ、ふあ、どう、先生も気持ちいい?」
「いいよぉ。ハルキ君のが、奥まで届いたままぐりぐりくるの最高だよ!」

散々に愛撫を受け、少しの中断によって焦らされた肉体は、
営みによって火照りを取り戻し、更に高みへ昇りつめる。

「そこぉ、くる、ハルキ君のが欲しいって」
「先生いきそう?」
「うん、いいよ、いくのぉ!」
「はあはあ、嬉しい。俺でいってくれるんだ。
ああぁ、こんな時に……言うのもなんだけど……俺、きっと先生のことが好きだ。
だから、だからっ、すごく嬉しい!」
「私のこと、好きだなんて……結衣も嬉しいよぉ」

身体を小刻みに震えさせる結衣に対し、壁が軋むほどの勢いで腰を叩きつける。
肉打つ音が鳴るたびに、熱く潤む膣壁が歓喜にわななき、存分に牡の蹂躙を抱きとめる。

「ああっ、先生、俺、オレ!」

臀部に手をまわして、ぐっと下半身を密着させる。
結衣は身体全体をハルキに預け、首に腕を絡ませ頬ずりするほどくっついた。
匂いというものは五感の中でもっとも野生的なものなのかもしれない。
接近して濃密になる、汗に混じって香る髪の良い匂い、微かな香水、
発情した女がかもすフェロモンは欲情の火を加速させる。
真に濃厚な時間の始まりだった。

t02-166 名前:日曜日 :08/06/14 06:48:13 ID:MTj3DD44
手と腰に挟まれ、逃れられない胎内に何度も牡の生殖器が押し込まれる。
一突き毎に潤みきったトバ口から淫らな液を浴びせ、床に滴り落ちた。
結衣は大胆に脚を開き、自ら抱え上げてより深い結合を求める。
すでに拒むものは無く、子宮の入り口まで男根は存在を主張し、
次に段階への布石として、先走りの汁を分泌して己の道行きを馴染ませる。
女芯はどろどろに蕩け、牡に絶対の忠誠を誓い、隷属し、支配され、そして搾取する。
怒張は子種を搾取する柔襞の濃密な愛撫になぶられていた。

「やあぁっ、はんっ! あああぁ、いい、もう!」

結衣は一線を越え、全身を張り詰めさせた後、びくびくと震えだす。
アキトは最後のところで男根を抜き、すぐさま白濁とした精液を噴出させる。
ビュクビュクと音が聞こえそうなほど勢いよく出ては、
結衣の胸から腹へと降りかかっていった。

「ふあぁ、熱いよ」

結衣はとろんとした目で、自分の体に付く粘液の熱さを感じていた。
付着したそれは女体にしがみ付くように凝固してゼリー状になる。
段々と勢いを失うものの、先から固形状に盛り上がる様子はある種壮観だった。
若い生命の原動力を感じさせる。

「本当に、とっても良かったよ。……ん」

結衣が被さるように唇を重ねると、
ハルキはもたれ掛かられ、押されるように後退する。
全力を出し切ったためか、足に便座が当たった時、そのままへたりと座った。

「……ねえ、今度は私がハルキ君を気持ち良くしてあげる番」
「えっ、せ、先生」

最初と立ち位置が逆転したことに、ハルキは今更ながら気付いた。
結衣は屈んで、自分のために尽くした陰茎を慈しむよう手を添える。
まだ柔らかいそれを、舌先でそっと舐め上げる。

「うっ、ふあぁ」

感度の良さにハルキは思わず声を上げた。
愛液と精液でべとべとの男根が、舌での愛撫によって綺麗にされる。
次第に本来の姿を取り戻し、硬度が多少復活したことで、手で握り竿を擦って強める。

「回復するのが早いね。やっぱりこういうのって若いからなのかな?」

片手で髪をかき上げ、男の一物に奉仕する姿は絶品の色っぽさだ。

「ここもね……」

陰茎の付け根に下がる袋を、指で優しくくすぐる。
前立腺を走る刺激に、更にも増して屹立と起き上がる。

「うん、ゆっくり上下に動いてる。ハルキ君が今、たくさん精子つくってるのがわかるよ」

結衣はある程度には復活した肉棒をうっとりと眺めた。

「うふふ、今度はぁ、私が我慢できない」
「えっ、ちょっと、待って」
「ダメ、待てない」

t02-167 名前:日曜日 :08/06/14 06:51:50 ID:MTj3DD44
にっこり妖艶に微笑み、爽やかに宣告を下す。
肉棒を握ったままハルキの上へ跨り、自分の淫唇にそっとあてがう。
スカートで隠れて見えないが、今にも腰を落とされそうなのがわかった。

「うぁ、ちょ、ちょっと待って」
「ふふ、あん」

結衣はゆっくりと腰を落として、肉棒を飲み込んでいく。

「あっ、あっ、ああぁ、はあ、はああぁ!」

まだ敏感な亀頭が肉襞を分け入り、性器が奥まで結合する間中、声を上げ続けた。
しっかり咥えこんだ後、結衣は腰をひねり、抜いては降ろし、まだ回復途中の男根を責める。
有無を言わせぬまま、徐々に内側で大きさ、硬度が増していく。

「うんん……私、ハルキ君を無理矢理犯してる」
「せ、先生! やぁっ」
「ほらぁ見てよ。私がハルキ君をレイプしてるところをさ。
最初に脅迫なんかして、しようとしてたこと、やられてみてどう?」

結衣は自らスカートの両端を手に取り、結合部をさらけだす。
薄い陰毛の下、がっしりと膣が陰茎を挟み込み、ずるずる引き抜かれ姿を見せていく。
照り輝く肉棒は怒り狂ったように青筋を浮き立たせ、びくんびくんと脈動していた。
はしたなく淫猥この上ない情景だからこそ、目が離せない。
類い稀な美貌と肢体の持ち主が、自らの一番大切なところで男性器に奉仕する。
髪を振り乱し、一心に踊り、男は動くことも必要なしにただただ身を委ねるだけで快感を貪る。
王侯貴族でしか味わえないような退廃的な贅沢。
結衣は下半身を密着させてグラインドする。
根元まで埋め込まれた肉棒も、内側でピッタリと吸いつけられたまま様々な角度から粘膜の摩擦を受ける。
白い尻、肌と肌がしっとりと体温を分かち合うように、
性器も互いに快感を譲り受け、螺旋階段のように駆け上がる。
結衣の膣は恐ろしいほど肉の悦びに満ちて、貪欲に精を吸い上げようとしていた。
いまだに受け取れないのは、ただ相手に弾の準備が出来てないにすぎなかった。

「んん~。ハルキ君、苦しそう」
「くぁああ、はあはあ、かぁ!」
「でもこれは罰なんだからぁ、苦しくて当然だよ。
ほらぁ、こんなにプルプルの濃いザーメン、外に出しちゃって、ダメだよ。
だから、先生、お仕置きするの」
「ご、ごめん。服と体、汚して、あぁ、ご、ごめんなさい。
別のところに出せばよかったんだけど、気持ち良すぎて、ぎりぎりまでやめられなかったんだ」
「どこに出せばよかったかわかるよね?」
「手でも、トイレットペパーとかにでも……」
「ふふ、ハルキ君、それってさあ……」

結衣は笑顔を浮かべる、
喜びに怒り、楽しさ、全てが混じったように複雑で凄惨な。

t02-168 名前:日曜日 :08/06/14 06:54:22 ID:MTj3DD44
「もっときついお仕置きが欲しいって、言ってるんだよね?」
「ええ!? せ、せんせい?」
「私、本当はわかってるよ、ハルキ君の気持ち。本当はハルキ君、根はとっても優しいよね。
だけど奥底は、こんなにイジワルだなんて予想外だったわぁ」
「いやっ! ちょっと、まっ、って!!」

結衣はハルキの両肩を押さえながら、腰を上下させて締めつける。
陰茎が根元から引き抜かれそうなほどの食いつき、
生々しい音がたっぷりと蜜に潤う肉襞によって絡まり、官能に奏でられる。
イニシアチブを完全に握られているため、小休止など許されない。
神経が過負荷を訴え終局を迎えるよう指令を出すが、身体のほうが用意できていないため、
終わりを許されないまま強制的にセックスさせられていた。
すでに本能だけは何回も子宮へ向け射精しているようなさま。
脳髄に直接流し込まれる出口のない快楽は、まさに正常な意識を破壊する拷問だった。

「わかるよ、ハルキ君の気持ち。
好きな女の子にイジワルしたいって、よく言うもんね」

ハルキは天を仰ぎ、荒い息を吐きかける。
天国と地獄の境目を行ったり来たりしている状態だった。

「でも今はダメ。ねえ百戦錬磨なハルキ君なら、私の気持ちがわかるでしょ。
そんなに焦らすとぉ、もっともっとイジメちゃうよ」

ハルキは結衣が何を言って欲しいかわかっていた。
だがしかし、理解できない、わからない。
けれど今は彼女の望むように言う以外、この責め苦から逃れるすべは無かった。

「ゆ、結衣先生の……中に出したい……」
「んん~、私の中、それってお口で飲んで欲しいってこと?
それとも、このままオマンコに中出ししたいのかな、
それともそれとも、アブノーマルに後ろの穴?」

教職の身でありながら、聞くに堪えない猥褻な台詞。
あまりにもストレートで、だからこそ誤魔化しが許されないことを悟らされる。

「はあっはあ、このまま……先生のオマンコの中で、出したい」
「あっはぁ、すっごくいいよ、その顔、その表情……」

結衣はハルキに身を寄せ、うっとりと耳元で呟く。

「ホントに? 本当に、中出ししたいの?」

ハルキは虫の息のままうなずく。

t02-169 名前:日曜日 :08/06/14 07:01:13 ID:MTj3DD44
「あぁ、ハルキ君のおっきいの咥えてるだけでも気持ちいいのに、
このまま熱い精液注がれるなんて……若いんだしきっと量もすごいのよ。
それにとってもねばねばして、膣から子宮までピトッてくっついて離れないわ。
そこからじわじわって来るあの感触、這い上がってくるの。
ハルキ君がまだ射精しながら、硬いので突いてくるから、押し込まれて上がっていくんだわ。
私がいっても止めなくて……ううん違う、そんなのハルキ君には関係ないもの。
そうよ、私がいくいかないなんて、もうどうだっていいんだから、
その時は子宮の奥まで……一面に精液を注いで、遺伝子をばら撒くのが目的なんだもの。
陰嚢に溜まった精子、一つ一つが卵子を追い求めるし、
みんなとっても元気がいいのに、数もたくさんあるから、隠れててもすぐに捕まえるのよ。
お互い何も問題ない健康的な男と女だし、簡単に受精するはずよ。
ああぁ、そうなのよ、私、ハルキ君に孕まされるのね。
はあぁぁ……、こんな立派なもので、何度も奥まで犯られてるもの、
私の体が、もう、もうハルキ君に膝間付いてるし、
きっと子宮の入り口も、通るの邪魔しないように広くなってるのよ。
止めるものなんて何も無いの。わかるでしょ、何も無いのよ。
今更私が妊娠するからやめて、って言っても止めてくれないの。
ハルキ君を止めるものなんて何も無いから。
……うふふ、あはは、優しくて、女の子のことを良くわかってるハルキ君。
さっきは私を先にいかせてから、外に出すなんて、胸の中は罪悪感で一杯になったわ。
我慢させたんだって。
そんな行為の後のお願い、言葉として重みがあるのよ。
だから今はもう逆らえないの、ハルキ君のそのお願い。
もう一度言うけど、ハルキ君を止めるものなんて何も無いから。
何も無いから、止める必要なんて無いのよ。
……ああ、すごいわ。本当に私はもう逃れられないの。
我慢してきたんだから、きっと一回だけで満足なんてしないはずよ。
このまま何回も中出しされるの。
出した後も無理矢理口で奉仕させられて、硬くなったらまた下の口に入れられるんだわ。
もう私が耐えられなくなってやめて、と言ってもハルキ君はやめないのよ。
だって私は逆らえないし、逃れられないから。
そうやって子宮に入りきらなくなるまで何度も注がれて、
器から溢れてくるのを見届けたら、やっと満足するんだわ。その頃にはきっと私はもう…………」

耳朶をくすぐる妖しい吐息、そして悪魔の囁きは頭蓋に渦巻き連鎖する。
結衣は話しながらも腰をゆっくりとくねらしていた。
大腿の付け根、陰毛から性器まで擦れる刺激はゆるやかながらも、
快楽の水位が上昇するには充分だった。

「……ハルキ君のものになっちゃうのかな」

t02-171 名前:170差し替え、冒頭抜け落ち :08/06/14 07:09:37 ID:MTj3DD44
結衣の一言に、ハルキは冷水を浴びたように思考回路がクリアになり、
ずたずたにされた神経が手を取り合って意識を呼び覚ます。

「先生のこと好きだけど、……別に先生を俺のものにしたいわけじゃない……」
「言うと思ったわ。最初に似合わない脅迫までして身体を要求したのは、
アキト君を奪われたと思った意趣返しかしら?」

ハルキはどきりと胸を突かれる。
内心をこうも見透かされるのは、心臓に悪いどころか返って不気味ですらあった。

「そんなに驚かなくてもね。アキト君とあなた、二人は双子なのに性格は随分違う。
けれど、それはもっと深い底で強いつながりがあるからなのかしら。
でも……難しいことは言いっこなし、こんなの無粋だわぁ。私が言いたいことはひとつよ。
ふふ、昨日アキト君で満足できなかった分を、お兄さんのハルキ君が責任とってほしいのよ。
んふ、ちゅ……ずる、ちゅるる……ん」
「んん~、ちゅ、ん、じゅ、ふぁ、ちゅる」

激しい接吻に舌が互いに口腔を這い回り、音を立てるたびに二人の間では味覚を快楽に染める。
ハルキは頬を両手で挟まれ、唾液を流し込まれる。
舌先を伝う暖かいものを飲み込み、そのまま絡め捕らえ、今度はハルキが唾液を返す。

「ぁん、ちゅる、じゅるる、んんぅ、はああぁ……。
いいわぁ、すごくいいのよ。もっともっと剥き出しのハルキ君を見たいの、味わいたいのよ!
けどもうそろそろアキト君も起きるから時間よね、残念だわ」
「そうっすね。さすがにこの場でアキトと合うのは本意ではないです。だから……」

結衣の太腿を抱え、そのまま二の腕で持ち上げるように乗せる。
突然地に足が付かなくなるったため、バランスを崩すようにしなだれかかる。
掌を密着した尻に割り込むと、軽々とはいかないまでも持ち上げて肉壷をかき回すように腰をくねらせる。
浮遊感に意識が結合部に向かれ、いつもより感じがよく思えた。
これは結衣も同様だったらしく、甘い声をあげて肉棒への締りのよさが増す。
さらには引き上げて降ろす際には中の物を突き上げる。

「きゃっ、ああぁ!」

などと可愛い声を上げられれば、俄然張り切らずにはおられない。
じりじりとくすぶり続けたものが、いっせいに発火して燃え広がる。

「やられっぱなしは、それはそれで美味しいけど、やっぱりお返ししないと」
「やあぁ、深いの!」

結衣は自重に加えて貫かれ、されるがままに責められる。
こつこつと突き当たる怒張は、申し分ない硬度を具えて柔襞を抉り、深部まで蹂躙をくらわせる。
お楽しみを続けていた結衣は、子宮まで押し上げられる激しい行為にたちまち昇り詰める。

t02-172 名前:日曜日 :08/06/14 07:11:38 ID:MTj3DD44
「せ、先生エロいよ。堪んない!」
「はあはあ、ハルキ君のこれでぇ、結衣はエッチにされてるの。ああぁ!」

汗と体液の匂い、髪を振り乱し揺れる乳房は男を惑わす極上の媚薬だ。
肉打つ音に粘液が弾ける音、嬌声に重なって如実に現れる肉体の昂ぶりは狭い空間に響く。
本能からくる快楽の指令を忠実に遂行し、剛直でもって締め上げる肉の隘路を何度も切り開き、突き上げる。
粘膜どうしが生む、愛液にまみれた摩擦は脳髄を蕩かす気持ちよさだった。

「いく! ぐっ、出る! 先生の中に……出すよ!!」

果て無き欲望の井戸を満たすように、牡の愛と情欲が迸る。
睾丸から子宮奥まで怒涛のように走り抜けるエクスタシーに身体を震わせた。

「ああぁあああ、出てる! 奥に当たってるよぉ! どくんどくんってハルキ君の精液!!」
「先生! せんせいが……吸い取ってくる!」
「ああん、腰が、エッチが止まらないの!」

結衣は膣内射精を受けながら、快感のあまり止まったハルキの動きを受け継ぐべく、
肉襞の内、跳ねまわる男根を慰撫するように腰をひねり、縦横に動かした。
すでに何度も達している結衣は、さらに貪欲に絡めとリ、牡の憤りを味わう。

「あぁ! き、気持いい……」
「はあ、はあぁ……もう、終わりですよ」

結衣は勢いの無くしたハルキを感じ、ゆっくりと腰を上げる。
一仕事終えた肉棒が抜け、つつっと糸を引いた先は、出したばかりの精液が内股を伝っていた。
ハルキは本当に自分が出したんだと実感した。
きっと奥まで入りきらなかったものが、こぼれ落ちたのだ。
彼女の身体、奥底まで自分の存在がある。

「ふふ、ん……、良かったよ、ハルキ君。悪いけど先に行くわ」
「あ、ああ、はい。俺は少し休んでから行きます。アキトには……何も言わないでくださいね」
「わかってるわ。これでお互い秘密が出来て、紳士淑女協定成立かな。
そうそう、ちゃんとアキト君は家に帰すから、心配しないでね」

ハルキは今になって、結衣に秘密をばらされたくなければ、っと脅したことを思い出した。
これこそ茶番の始まりだったのだ。
――そもそもハルキには、アキトを巻き込み、不幸になるようなまねを出来る訳が無かった。

t02-173 名前:日曜日 :08/06/14 07:16:43 ID:MTj3DD44
********************

アキトはいつもより寝坊気味に起きた後、
気恥ずかしさの中、結衣に家前まで送ってもらった。
その後というもの、帰ってきてから始終何も手が付かなかった。
ぼうっとしているといつの間にか良い匂いが漂っている。
すでに時計は夕飯の時刻を指していた。
よくよく考えると、朝からほとんど何も口にしてないことに気付く。
早めに食事にありつきたい思いもあり、手伝いに食卓へと降りていった。
少しふらつく足取りで階段を踏みしめる。

「父さん、手伝うよ」
「おお、ありがとう。皿を並べててもらえるか。おわんに小皿と魚皿がひとつずつ」


一家は父子家庭で、家族は父と双子三人だけだった。
ハルキとアキトが低学年だった頃に、両親は離婚してそれきり。
家事もそれぞれが分担し、食事の用意は曜日によって持ち回りをしている。
ハルキが月水金、アキトが火木土、
父は普段仕事もあるため、日曜のみ、もしくは外食といった割りふりだった。


魚を焼いている匂いがする。
パチパチとグリルから脂がはぜる音がしていた。

「了解。今日のメニューは……サンマ?」
「いいやアジだ、いいのが釣れたから美味いぞう。そうだ、皿は二人前でいいぞ」

アキトは皿を並べる手を止めた。
 
「父さん、出かけるの」
「いや、ハルキから電話があってな、今日は友達のところで一緒に食べるそうだ
遅くなったら泊まるかもしれない、だと」

胸にちくりとささる痛みがあった。
もしかしたら、避けられてるのではと思った。
結局は無断外泊になってしまった訳である。
今何も言ってこないが、昨晩は父に対してフォローに四苦八苦しただろう。

「先にほうれん草の胡麻和えを盛り付けてくれ。そろそろ魚も焼きあがる」

父は手際よく炊き上がったご飯と味噌汁を盛り付ける。
準備が整うと、エプロンを外して食卓に着いた。
アキトはいただきますと宣言した後、飯をかきこむ。
父は料理が得意とはいえないが、素朴で素材の良さがよく出ており、美味かった。
これとは反対に、凝った料理をするのがハルキだった。
時折聞いたこともない名前の料理を作っては、試食まがいの夕食になる時もあった。
だが失敗作はほとんど無く、どれも一流のシェフの腕並み拝見とばかり美味く、
和洋中、なんでもこなす腕前とレパートリーの広さは唖然とさせられる。

対してアキトはどうにも不器用で、手料理などとても出来ず、
前日のあまり物と出来合いの食材を用意するのがせいぜいだった。
最近ではハルキのほうが気を利かし、最低一品は二日分作り置きできるメニューを仕立てていた。
料理の腕を父を十とした場合、ハルキは二十も三十もあるだろうが、アキトは五、六が良いところだ。
かわりに家計簿担当がアキトだった。
日用品のために作った家族共用の財布に、レシートと合わせてパソコンに打ち込み、残金の確認をする。
ハルキのたまに買う高級食材は頭が痛くなりながらも、食卓を彩る美味い料理には承諾せざるをえない。

t02-174 名前:日曜日 :08/06/14 07:18:16 ID:MTj3DD44
食べ終わった皿を洗い場へ運ぶ。
アキトは居間でソファーに座りながらニュースを聞き、将棋雑誌を読みふける。
背後からカチャカチャと食器を洗う音にも、一抹の寂しさを感じた。
足が二本の椅子はそもそも成り立たないが、それに似た不安定な気分。
我が家のコメンテーターはどこへ行ったのやら、アキトはそう思わずにはいられなかった。

「アキト、終わったら一局指そう」
「うん、いいよ」

テーブルに将棋盤と駒を用意して待つ。
アキトは地区強豪である父より、幼少のころから将棋の薫陶を受けていた。


すでに白髪が見える父はの老いを一番感じるのは、皮肉にも将棋からだった。
父の読みの深さ、広さを知ったとき、アキトはすでに勝てるようになっていた。
今や片手間の読みでも、充分互角に戦える。
向かいに座り指し始めるが、アキトは将棋とは別のことを考える。
それは昨晩の行為についてだった。
あれは本当の出来事だったのか、今でも疑問に思えてならない。
夢のような、と言えば確かにそうだが、それより現実味を薄くしているのは、
たとえて言うなら階段を上り始めたらいきなり最上階まで来ている突拍子のなさだ。
だが現実を受け止められないほど自分は子供ではないし、記憶力を疑うほど耄碌していない。
五感の全てが覚えてる。
とても気持ちよかった、あの瞬間は幸せだった。

局面は中盤を迎える。
駒組みは両者とも順調だが、上手い妨害にアキトが一歩もたついてる。
ここで落ち着いて指せれば優位は確立できるが、今の父にはそれができない。
遊びの対局と言ってしまえばそれまでだが、相手が見せた隙を、エサを我慢強く辛抱できない。
アキトは年配の人と指すことは何度もあるが、
不思議と年を取ると、性格とは反対に将棋は落ち着き、
そして我慢、辛抱といった忍耐強さが失われていく気がしていた。
粘り強さ、柔軟性が無くなっていくのだろうか。手短な勝利の誘惑に、耐えられなくなるからだろうか。
父の飛車が相手陣地へ成りこむ。
自陣にわずかな隙を残したままであることが、けしてわからない腕前ではないはずなのに。

この相手陣地に切り込む瞬間は瞬間は幸せだろう。
だがアキトにとって多少の駒の損失はどうでも良く、竜の攻めを封じ、
退路を断って働きを失わせれば、先ほどまで飛車よって防がれていた攻め筋が見える。
ここからが反撃の狼煙をあげる時だった。
アキトは落ち着いて着実に自駒を、父の王将へと寄せていく。

あの瞬間は幸せだった。
だが、最上階に上ってしまい、自分の立ち位置が見えない。
好きだと言えた、キスもしてセックスもした。
その先が見えない。あの時我慢していれば良かった気がする。
引き返す道も無い。もっとも仮に過去へ返っても、また同じ結末だろう。
次の一手が見えなかった。

「うむぅ……負けた。防げなかったかぁ」

この対局はアキトの勝ちになった。

t02-175 名前:日曜日 :08/06/14 07:22:36 ID:MTj3DD44
********************

ハルキは夕食の食材を買出しに、スーパーへ繰り出していた。
片手にはぶら下がるように、女性が腕を巻きつけている。
主に主婦が行き交う中、妙に馴れ馴れしい二人の空間があった。

「あの、ちょっと離れませんか」
「またハルキ君の手料理が食べられるなんて思わなかったわ」
「まあそれくらい、泊めてくれるお礼に……もう、いいですよ」

明らかに離れる気の無い彼女の態度にハルキは諦める。
残った片手で、目的の品の鮮度、質を見定める。
充分合格点の物を、彼女の持つかごへ入れた。

「ふ~ん、私にはどれも同じに見えるけどな」
「葵さん。せめて消費期限くらい見てください。生ものは最低限、腐ってないかくらいは……」

適当にトマトを取って眺めてる葵に、
ハルキは聞き入れてもらえないことをわかりながらも優しく忠告する。

t02-176 名前:日曜日 :08/06/14 07:26:58 ID:MTj3DD44
********************

葵はハルキが昔付き合っていた同級生、名前は茜と言う、の姉である。
キャリアウーマンで一人暮らしをしているのだが、
たまたま茜の母が風邪で寝込んだときに、見舞いで実家へ戻っていたのがハルキとの出会いだった。
ハルキが父子家庭で料理もできると知っており、茜は夕食を手伝ってもらおうと呼んだのだ。
家庭科の授業でしか包丁を握ったことのない茜が、
ちょっと彼氏にいいとこを見せようと一夜漬けで復習したのがそもそも間違いだった。
料理の腕に関しては家庭の内情からくることもあり、得意げに自慢することでもないとハルキは常々思っている。
普段なら陽気に進んで話のたねにするような性格だから、茜が相手の実力を見誤るのは無理もない話しだった。

最初は手伝う気だけだったハルキだが、段取りのまずさ、危なっかしい包丁さばき、調味料の匙加減は適当と、
見るに見かねたが、一から指導するには時間もなかったため、ほとんど全て作るはめになった。

豚肉とキャベツをさっと炒め、塩味しかしない野菜炒めを一緒くたにして、
甘味噌と豆板醤をいつもより少し多めに入れて味を調えた後、片栗粉でとろみをつけてホイコーローに再利用する。
水加減を失敗して、芯の残るご飯を病人に食べさせるなど、虐待もいいところだ。
勝手に拝借したホタテの缶詰をほぐし、適度な大きさに切った白菜と冷蔵庫にあったエビとともに、
鶏がらスープに塩味をきかせてご飯を煮立て中華風お粥を作る。
味が濃すぎた味噌汁は調整が難しく、汁物としてお粥とすこしかぶる所があったため素直に諦める、
残った豆腐で、今日の味付けはいくらか濃い目だと思い、さっぱりと卸したショウガを乗せて冷奴にする。
付け合せの醤油に少々の柚子、といきたいところだが無いのでレモンで代用する。
ハルキはあともう一品が欲しかったが、食材も時間も無かったことを悔むが致し方なかった。

一部始終を心配そうに見ていた茜の家族は、出来上がってくるものに戦々恐々していたが、
思いのほか食欲をそそる香りに、いつもとは違う料理ながら予想以上にまともな見た目に驚く。

「どうですか。お口に合うかどうか」

全員がおそるおそる蓮華を口に運ぶが、コクのある味わいに舌鼓を打つ。

「うん、美味しいよ。いやはや茜の様子があれだっただけに驚きだよ」
「お父さん、一言余計よ」
「これなら最初からハルキ君に任せたほうが良かったわよね」
「だいたい茜姉ちゃんに任せるなんて、最初から無謀だって言っただろ。本当にハルキさんには感謝します!」

葵は茜をからかい半分、ハルキへの賞賛半分で追い討ちをかけ、気難しい弟の碧はあっさり懐く。

もう一人、食事の準備が出来たことで母親が寝室からおりる。
体調は良いそうで、娘のお客という手前、挨拶がてらに食卓にきたそうだった。
ハルキは本心、いらぬ気をつかわせたようでばつが悪かった。
せめてもの罪滅ぼしと思い、てごろな果物を用意する。

「りんごもむきますね。風邪ならお粥と果物がいいですよね」

と言って、するするとボウルの上でりんごの皮をむく。
食べながら全員が思うことは、異常に上手にむくハルキに対する驚きだった。
たかがりんごの皮むきにすぎないが、
するするとボウルに途切れることなく流れる薄い皮には時の重みがあった。
最後にはきれいに切り分けて皿に盛って、母の前に出す。

t02-177 名前:日曜日 :08/06/14 07:28:49 ID:MTj3DD44
「すごいわ、ほんと茜にも見習わせたいわ」

にこにこしながら母親は感想を述べる。

「りんごはすり卸しましょうか?」
「いえいえ、だいぶ良くなりましたし、そこまでお客さんにお手間とらせてはいけませんわ」
「お粥、熱いですから」

そう言ってハルキは新たに器に盛ったお粥を手に取る。
蓮華で一口掬い取り、自らフーっと息を吹きつけ冷まして母の口元へ差し出す。
妙に甲斐甲斐しい世話の焼き方に、両親は顔を見合わせる。
普通に考えれば、少し行過ぎて奇矯な感じがするが、
せっかくの好意を無下にするわけにいかず、受け取ることにする。
茜からハルキの家庭環境を聞いていたため、もしかしたら母性への憧れだろうかと思い、
この行為にも、もの悲しさと一緒に同情の念を禁じえなかった。

「ん……、とってもおいしいわ」
「良かったです。たくさん食べて早く元気になってください」
「あらまあ、ありがとうね。もう大丈夫よ」

屈託なく、打算のないハルキの言葉は心に響くものがあった。
全てを知るものがいれば、感動的だったかもしれないが、
そんなことはどうでもいい人間がこの場には二人いた。

「ああ~ん、ハ・ル・キ・君! 私には? 私にもあ~んして欲しいな」
「お姉ちゃんなに寝言言ってるのよ! お母さんも素直に受け取らない!
なに顔赤くしてるのよもう~!!」
「おいおい茜。熱があるから、顔が赤いのも当然だろ」

ハルキにしてみれば、そもそも母が風邪のため呼ばれた経緯があったため、
当然の行動だと思っていたが、これが茜にはいたく不評だった。
そもそもハルキは何かにつけ固執しないところがあるため、
彼女にあれこれ言わないし、無理に付き添わせたり、連れまわしたりしなければ、
彼女の要求を少々無理してでもかなえるといった気概もそれほどなかった。
それが母に対して一種執着を見せるような振る舞いは、女のプライドを傷付けるには充分だった。
家族として、恋人としての両方の面目が形無しと相成った訳で、
結局茜と別れる原因になったのも、この日があったのだろう。
別れ際に、マザコンの一言が添えられていた。
『母がいないのにマザコンとは、これいかに』
言われた本人は、まずショックよりこう思った。

t02-178 名前:日曜日 :08/06/14 07:31:58 ID:MTj3DD44
*****************************

「本当、ハルキ君に番号教えておいて良かった」
「すみません。頼れるのは葵さんだけだったもので」
「いいわよ。こうして買い物に出かけて、ご馳走してくれるわけだし」

なぜあそこまで支離滅裂な行動をとったのか、
とにかく冷静になるためにも今日は家に戻りたくなかった。
アキトの顔を見るのも非常に気まずい。
だが頼めそうな者は友人知人の内、学園関係者を除くと葵以外いなかった。
ハルキは女性の一人暮らしに泊めてくれと頼むのは気が引けたが、
電話で頼んでみれば、あっさりOKをもらえたばかりか、
こうまで歓迎され懐かれるとは予想外だった。誤算と呼んでもいいかもしれない。
なぜなら葵には付き合ってる彼氏がいるはずだからだ。

電話する際にも、その件が問題だったが、逆にお願いしやすい要因でもあった。
ただ泊めてほしいだけで、勘違いされたくはなかったからだ。
今の喜びようを見ると、一言釘を刺したくもあったが、
同時に水も注すことが目に見えたため、やめておくことにするしかない。
今更あるじの機嫌を損ねて追い出されるのは困る。

「葵さんは、苦手な食べ物とかありましたか?」
「うんん、特にないよ。強いて言えば、カリフラワーかな。
あのぼろぼろした食感と、よくわからない味が苦手だよ~」

ハルキは葵の子供っぽい口調に苦笑する。
そもそも葵はヒールの付いたブーツを履いても、まだ頭がハルキの肩に届くかどうかくらいである。
これでオフィスレディとしてスーツ姿に身を固め働いてるとは、なかなか想像できないでいる。
だが買い物を終えマンションに戻ると、やはり給料をもらう身であることを実感し感心してしまう。
椅子やテーブルは言うに及ばず、カーテンや小物、調度品それぞれが部屋に気品を添える。
見事なまでにシックなアンティーク調の家具で統一され、
趣味の良さは居心地良く、住む者を落ち着かせ癒しをもたらす。

「はー、これは……」
「どうしたのハルキ君」

葵の一言に、ハルキは自分が女性の部屋を不仕付けに見ていたことを反省する。

「こういうところで食べるなら、もう少しメニューを考えれば良かったかなと思って。
前みたいに、家庭的な雰囲気を考えてましたから、今日は大衆的な料理……」
「くっ、ぷぷ……あはははぁ~、くく」

葵は突然笑い出す。

「いやごめんね。別にハルキ君を馬鹿にした訳ではないのよ。なんだか目の付け所が違うと言うかさ。
たぶんね、女性の部屋に入って一番にそんなこと言うのは、ハルキ君以外にいないよ。
色々見渡して言う感想がそれなに? あは、あはははぁ。
実にハルキ君らしいんだろうけどさ。一人暮らしの女性の部屋に招かれてそれってさ。
前に実家に来たときもそうだけど、本当にもう大物だよ」

褒めてるのか貶されてるのかわかりかねるが、特に不快に感じることもなかった。
ハルキにしてみれば、どれも率直に思った行動であり言動だったからだ。
自分自身に対して偽ることなく暮らせることは、充分に誇れる美徳だった。

t02-179 名前:日曜日 :08/06/14 07:39:04 ID:MTj3DD44
「それじゃお願いね。台所にあるもの、自由に使っていいから。
私はお風呂の準備して、くつろいでるわ」
「はい、できるまでゆっくりしてください」

一軒家である家のキッチンより狭いかと思ったが、さほど変わりはなかった。
ハルキは特別なものを作ろうなどそんな気はさらさら無く、
ご飯にアジとサケのフライ、付け合せにキャベツの千切り、
コーンスープにトマトと、前言した通りシンプルで普通の料理だ。
手早く仕立てては皿に盛り付け、テーブルに並べていく。
それでもいくらか、ハルキなりのこだわりと手間が随所にかかってる。
全て並べ終わり、ソファーでくつろぎながらテレビを見る葵を呼ぶ。
葵は椅子に座り、目を輝かせていただきますをした後、真贋を見極めるように凝視して口に運ぶ。

「うんうん、美味しい美味しい!
それにしても、ちゃんとお魚を三枚に下ろせるなんてすごいわね」
「はあ、そんなもんですかね」
「そんなものよ。きちんと小骨も取り除いてあるし。
このタルタルソースも美味しいわ。一から作ったのよね?」
「いえ、別に。卵をゆでて、スライサーで縦横に細かく切った後、
マヨネーズを主にみじん切りした玉ねぎ、パセリと混ぜて出来上がりです。
あと……たまにレモン汁とかピクルスも入れますけど」
「一から作ってるじゃない」
「マヨネーズは市販ですよ」
「……もしかして普段はマヨネーズも作ってるの?」
「えっ……作らないんですか?」

葵は呆れた風に肩をすくめる。

「あ~あ、茜も馬鹿なことしたものね。ハルキ君をふるなんて信じられないわ」
「そうですかね」
「そうよ! この際言わせてもらうけど、あなた自分の価値を全然わかってないわよ。
イケメンで背はそこそこ高い、そのくせ妙に偉ぶったり気取ったりしない。
おまけに自然体で優しいのよね、だけど嫌味なんてないし、押し付けがましくもない。
今日みたいにおいしい手料理で恩返しする義理堅さなんか、なかなかお目にかかれないわよ」
「うんと……そうではなくて、やっぱり相性が大事だと思うんですよ。
葵さんは俺のこと褒めてくれますけど、相性が悪ければそんなこと、どうでもよくなりますよ」
「あらら、意外にドライな意見ね」
「えっと、生意気なこと言ってすみません」

この場でようやく見せたハルキの焦りと言うべきか、
少し言い過ぎたことに対する、こんなつもりではなかったと思う表情に、
葵は僅かながら意地の悪い喜びを見出す。

「ふっふっふ、まあいいわよ」

にこやかに笑って流し、食事に専念する。
泊めてあげるという立場である自分の優位を確認して、
それをどう活かすか考えながらの中、とても美味しくいただけた。

t02-180 名前:日曜日 :08/06/14 07:40:51 ID:MTj3DD44
「……ん、ご馳走さま、たいへん美味しゅうございました」
「お粗末さまでした。俺、食器を片付けますから」
「よろしく~。私お風呂に入るから」
「ええ、わかりました」
「ハルキく~ん」

葵は振り返って小悪魔的な表情を浮かべた。

「はい?」
「覗いてもいいのよん」
「遠慮しておきます」

心の底からハルキはお断りをしたが、
皿洗いをしながらシャワーの音が聞こえると鼻歌でも歌いたい気分になる。
それは性的な意味合いではなく、
好ましい人物のためになる嬉しさ、
人としての触れあいの暖かさからだった。
とはいえ、これでアキトが居ればと少し感じたのも、また事実だった。

「ちゃんとメシ食ってるかな。まあ親父の当番なら最低限大丈夫だろうけど……」

洗い終わった皿を拭いて、乾かすため食器入れに置く。
することも無くなったので、ソファーに腰を沈めながらコンポに入っていたCDを聞く。
ゆったり流れるどこか聴いたことのあるクラシックのメロディ。
どこか気を張っていたのは否めないらしく、ハルキはうとうとしながらどこからか意識を放棄した。
そういえば、昨日から寝不足気味だ。


音楽がかかってるためか、浅い眠りの中、情景が浮かぶ。
まだ両親がそろって、そしてハルキも、アキトも小さいころの――
――ああ、これは夢だ――



両親が離婚した原因は、はっきりしたことは伝えられてない。
推測ならいくつもできるが、性格の違いがあるのは確かだった。
父は朴訥とした堅実で実直な人、対照的に母は子供心にも美麗な容姿に奔放で社交的だった。
ことあるごとにめかしこみ、外出する母を父はあまりよく思ってなかった。
だが夫婦仲は悪くなかった、と言うよりも良かったように見えた。

離婚する一つ前の季節、ハルキは夜に起きて喉の渇きに台所へ向かう。
まだ明かりが点いてることに訝ると、話し声が聞こえた。
土曜日の夜、晩酌をしたまま寝室に来ない父を母が呼びにきたらしい。
今ならわかるが、これはきっと夫婦の営みがある日だったのだろう。
聞き耳を立てるつもりは無かったが、喉を潤したい気持ちと、
邪魔をしてはいけない気持ちから迷っていると結果的に盗み聴きすることになった。

「ねえ、そろそろ……一緒に寝ませんか」
「いや、まだ……」
「はぁ……」

t02-181 名前:日曜日 :08/06/14 07:47:19 ID:MTj3DD44
母も軽くグラスを呷り、溜め息をついた。

「本当にその気が無いんですね」
「ん……その……別にお前に不満が有る訳ではないんだ」
「それなら、双子なんて、産まなければよかったわ」

ハルキは母の言葉を聞いて、頭を殴られるような衝撃を受けた。
言葉の意味はわかったが、なぜそういう結論が出たのか理解ができず混乱する。

「天から授かったのだから、そんな風に思ってはいけないよ」
「でも私、まだ子供は欲しいですし……それに……」

そこから先はとても聞けず、寝室へ引き返す。
扉を開き、アキトの姿を見るまで震えは止まらなかった。
何事も無いように寝息を立てていることに安心する。
あの会話を聞いて、アキトは死んでいるとか、
存在という火が消えてしまってるのではないかという不安に塗りつぶされていた。
アキトの手を取り、胸にしまうようにして眠りについた。
子供心に、兄としてアキトを守ると固い決意を胸にしながら。

二人の会話は経済的事情から子作りを拒んだということなんだろと、
そう理解できたのは高校生に入学した頃、
離婚する数年前から、不況のあおりで経済的に苦しかったことを父はぽつりと漏らした。
兄弟の成長を見ながら感慨深く言うのに反比例して、ハルキの内で心が冷えていくのを感じた。
自分を、アキトの存在を否定された理由が、そんなものだったのかと。



「……――ハルキ君、はいはい起きてね」
「……えっ……、ああぁ、夢か……だよな」
「お取り込み中悪いけど、お風呂すいたわ。なんだかあまり良い夢じゃなかったみたいだけど?」

ハルキは目を覚ました後、今しがた見ていた夢を思い出す。
確かに良い夢ではなかった。
座った姿勢で眠っていた所為か、体が凝り固まっている。

「そうですね。起こしてくれてありがとうございます」
「はい、それよりも着代え渡すわ」

手渡された物を見て、ハルキは途方に暮る。
ゆったりして着られるのは間違いないが、どう見ても女物の寝巻きである。
チャイナドレス風の可愛らしさ抜群の代物。

「あの、このまま寝ます」
「ちなみにどこで寝るつもり?」
「ソファーですけど……」
「はい、ぶっぶー」

葵は腕をクロスしてバツ印を作り、クイズ番組よろしくハズレのブザーをまねた。
人差し指を奥にあるもう一部屋にさす

「正解はあそこの部屋のベッドよ」
「……」
「そういう訳で、一日中着たままの服で寝ることは許されないのよ。わかった」
「…………」
「感激して声も出ないってことよね」
「そうですね。お風呂お借りします」
「あ、それと下着は洗濯しておくから籠に入れておいて」
「はい」

t02-182 名前:日曜日 :08/06/14 07:50:20 ID:MTj3DD44
ハルキはまな板の上にのった鯉、努めて冷静というより、返って意識することがなくなった。
こだわりの無さができる境地だった。人はこれを自棄、やけと言う。
脱衣場で裸になり、下着をかごに入れるが、これこそ代えがないことに気付く。
ここまできて引き返すわけに行かず、バスルームに入りシャワーを浴びる。
体を洗って湯船につかると、脱衣場に葵が入って来た。
曇りガラス戸の向こう側だからお互い見えることはない。

「湯加減はどう?」
「丁度良いですよ。それよりも俺、代えの下着が無いので、洗わなくていいですよ」
「乾燥機あるから、明日までには乾くわよ」
「いや……それでも今日は……」
「別にいらないでしょ。わぉ、これがハルキ君のトランクス~、んん、匂いかいじゃおうかしら」

ハルキは頭痛が起こりそうな気分だった。
肌着も付けず寝巻きを着用してもかまわないということだろうか。
下手に突き詰めると、女物の下着まではかせられかねないので黙っておくのが懸命策だった。
いっそのこと自分が変態なら、今の状況は極楽そのものだろう。
ああ、まともな自分がにくい。

風呂から上がり、バスタオルで体を拭いて、少しの逡巡の後に用意された服を着る。
テーブルでワイン片手に待っていた葵は、ハルキの姿を見て目を輝かせる。
この時になって前から疑問に思っていた、女性がわざわざきわどい姿をしていながら、
エロオヤジの視線が嫌だという気持ちを身をもって知った。これはきっと理屈ではないのだと。

「よく似合ってるわよ。まあ一杯付き合いなさいって」
「未成年に……いえ、頂きます」

それなりの値段なのか、丁寧にワイングラスに全体の三分程注がれる。
ハルキは台座近くを摘むように持ち、軽く揺らして香りと共に一口味わう。
堂に入った楽しみ方に、葵は興味津々の目で眺める。

「その、親父が飲ませるんです。
もし料理人になるなら、ワインと日本酒くらい知っとけって、晩酌にちょくちょく」
「へ~、ハルキ君、料理人になるの?」
「そこまで決めてませんよ。今のところ趣味みたいなものです」
「いける口?」

ハルキはあくびを噛殺す。

t02-183 名前:日曜日 :08/06/14 07:52:29 ID:MTj3DD44
「ぅ……全然。アルコールの匂い嗅いだだけでフラッと来るくらい弱いです。
本当に一杯が限度なんですよ。
……ん、それより、今日はもう寝たいですけど、いいですか」
「えっ、もう! まだ心の準備がちょっと……で、でもハルキ君がそんなに積極的だなんて……。
本当のこと言っちゃうと、少し酔わしたほうがいいかなって思ってたぐらいだし。
弱いなら飲みすぎるとダメよね。後々楽しめなくなるもの」

寝酒も入って、夢うつつのまま聞き流す。
今度は先ほど我慢したあくびがでる。

「ふはああ……わがまま言ってすみません。今日起きるの早くて、それに明日朝食の準備しますから……」
「う、うん、そうね、ありがとう。
さあ、こっちよ。わあぁ、何だかどきどきする……」

葵はあまりにも落ち着いた彼の様子に、自分がお姉さんであることも忘れそうだった。
せめて年上の格を見せようと、ハルキの手を握って部屋まで先導する。
明かりを点けてみれば、普段の寝室まで違った物に思えた。

「ここよ……電気はどうする」
「ええっと、できれば消してもらえれば」
「うん、いいよ」

優しく気が利いて、若くかなりの男前の持ち主。
茜が言うには女性経験が豊富らしく、別れた後を察するに後腐れのなさも特筆に価する。
およそ遊びをするに、これほど適した男はいない。
葵は広がる妄想と言う名のパラダイスに浸る。

(ああ、でも私の魅力に取り付かれたらどうしよう。
『葵さんは理想的で最高の女性です』、とか言われたら、
ちゃんと私にはお付き合いしてる彼がいるって言わなくちゃ。
あの時一夜だけがあなたの恋人だったのよって。
うんうん大丈夫、ハルキ君ならいい相手が見つかるよ。
でも逆に私が彼の魅力に……って、そうなったら……。
茜があっちも優しくて上手って言ってたもの。
ううん、ダメよ葵。今日、今日だけなんだから溺れちゃダメ。)

葵は電気を消して、ベッドにもぐり込む。
ぬくい体温を分かち合う暖かみ、すぐ隣には呼吸音が聞こえるほど接近している。
だが待てど暮らせど、ハルキは葵の身体に手を伸ばすどころかキスの一つもしない。
訝りながら様子を窺うと、そこにはすやすやと心安らかに眠る彼の姿だった。

朝から根こそぎ吸い取られた所為もあるかもしれないが、
そもそもハルキには最初からそんな気はなかった。
こうして方法は違えど、姉妹とも同じ男によって女のプライドを砕かれたのであった。

t02-184 名前:日曜日 :08/06/14 07:58:28 ID:MTj3DD44
********************

夜遅く、ハルキはベッドに入って昨夜の行為を思い出す。
鮮明に残る記憶は、触感や匂いを逐一刺激して呼び覚ます。
昨日あれだけしておきながら、己の分身がいきり立つのを抑えられない。
勃起した男根を握り前後にしごいて、場面を思い出しながら自慰をする。

********************

結衣は布団を出して敷き始める。
ほとんど全裸に近い格好で、目のやり場に困る中アキトは手伝う。
たいしてすることが無いとは言え、気持ちだけでも汲んで欲しかった。

「アキト君、私だけなんてずるいよ」
「えっ?」
「ほらほらぁ、私が脱がしてあげる」
「い、いいですよ」

などと言っても、止めるような人ではない。
結局は全て脱がされ、お互い産まれたままの姿になる。
抱き合うようにして柔らかな布団の上へと転げ落ちる。
キスをしながら下の秘唇へと愛撫するように指でなぞる。
結衣もお返しとばかりアキトの男根を握り、ゆっくりと擦り始める。
静かに屹立とそそりたつ存在感を確かめながら、体の芯が火照り熱を帯びる。

「んはぁ、ちゅる、ああっ」

敏感な肉芽を擦られて、結衣はかるく仰け反る。
指に滴る蜜を、さらに探索するように二本の指で秘所を開いては差し込む。
膣の内側をくすぐり、縦横にかきまわす。
結衣も男根を両手で包み、丁寧に捕らえたまま撫で回す。

「やあぁ……そんなところ」
「はあはあ、ん、先生!」

弛緩して力の抜けた結衣を仰向けにして、その上に覆いかぶさる。
それでも結衣は肉棒から手を放さないまま、刀を納める鞘のようにきゅっと握り締める。

「こんなに逞しいの……」

結衣は脚をM字に開きながら、秘所を隠そうともせず向かい合う。
握り締める男根の先10センチ程には、待ちわびるように肉壺が濡れていた。
アキトは挿入したくて堪らないとばかりにそこを凝視していた。
しかし急所を握られ、押すことも引くこともままならなかった。

「じっと見つめて……目だけで、犯されてるみたい」
「くぅ、先生……手を放して。入れさせて欲しい」
「入れるだけ?」
「入れたら……動いて先生を気持ちよくさせたいんだ!
「アキト君の逞しいので、私が気持ちよくなるのね。でも、それだけで終わりじゃないよね」
「そうです。今度は先生に……出して、思いを伝えます」

抱き合いながらも下半身は別個の生き物のように動き回る。
深々と貫き、女芯を抉り、掘削して蜜の源泉を探る。
怒張によって押し広げられた膣は、充分に潤う果肉で優しく淫らに迎え入れた。
子宮まで叩かれるような激しい律動、貪るような牡の性行為に結衣は忘我のまま受け入れる。

t02-185 名前:日曜日 :08/06/14 08:02:15 ID:MTj3DD44
「あっ、ああ! すごいよぉ。私の体も、アキト君とセックスしてるって、悦んでるの、
わかる、わかるよね。もう奥までいっぱい……届いてるから、感じる、隅々まで感じるよ」

アキトは豊満な美乳に顔をうずめてほおばる。
硬くしこる頂点に吸い付きながら、絶えず腰は律動する。

「ああ、そう、そのまま……おっぱいイジメたまま犯して!」

結衣はアキトの顔を抱きしめる。
幸福な窒息のまま、しっかりと彼女の望みをかなえてあげた。

「ああん! ぴったり、アキト君のでぴったりにされるよ。
アキトくんの、逞しいペニスでぇ、結衣のオマンコがぴったりにされちゃう。
何度もアキト君ので犯されて、離れられなくなっちゃうよ」

びくびくと時折のたうつ女体を押さえつけ、
肉槍によって秘唇を穿ち、奥底まで己の存在を誇示する。
重なる肌の密着感にも増して、媚粘膜の愉悦は脳髄を蕩けさせる気持ちよさだった。
すでに全身から、限界が近いことを悟る。

「ああぁ! 最後に、アキト君の精液でぇ、子宮までぴったりにされちゃう。
さっきのだけでいっぱいなのに、またアキト君が出す、射精するから、
入りきらないのにぴったり塞がれて、押しこまれるの」
「イク、いくから、中に出すから、受け止めて!!」

腰を引き付けるように押えながら、欲望の塊を解き放つ。
中心をひた走る膣内射精の快楽、子宮奥へ注入する生殖本能の歓喜。
結合部を通して押し寄せる牡の咆哮を、性器から子宮へ浴びながら結衣はたちまち達する。
どこかへ飛ぶ意識の中でも、より深い快楽と精を貪る。
膣壁が咥えこんだものに対して搾り取るように蠢き、腰を浮かして恥骨を擦りつける。
積極的な牝の受胎請いに、若者は射精しながらも小刻みに動いて、刺激により持続的な種付けを繰り返す。

「ふぁあ……アキト君の……止まらないよぉ」

量も濃さも、先ほどと比肩しうるほどのものを余すところなく受け止める。
思う存分に出し切ったことに満足したアキトは抜こうとするが、
結衣は脚を胴体に巻きつけて離れることを許さなかった。

「ダメ、抜かないでこのまま……」
「んっ……、はあはあ、せ、先生……わかりました」

白桃のような美乳に顔をうずめて乳首へ吸い付く。
早く回復するように、腰を緩やかに動かした。
絡みつく太腿の密着感に、中のものは否応なしに屹立し始める。
自分でも驚くほどの早さだった。

「はあはあ、もういけそうです」
「んん……、私はいつでもいいよ。アキト君の、好きにしていいんだし、ね」
「先生! 俺、嬉しい」

t02-186 名前:日曜日 :08/06/14 08:07:23 ID:MTj3DD44
アキトは緩やかながら律動を開始し、戯れのように接吻する。
身長の関係で、結合したままだと、腰を持ち上げるような形になる。
口を吸いながら二人の睦みあいの箇所が見えるとあって、興奮の度合いが増していく

「はあぁ、アキト君とセックスしてるところが見えるよ」

目をきらきらして見る結衣に、アキトは俄然張り切る。
力を込め垂直に、重力を友にしてリズミカルに突き降ろす。
美味しそうに蜜を垂らす孔は、とびきりのご馳走への期待にあふれていた。
亀頭は絡みつく柔襞に蕩け、竿からは追随するように締め付けられて一層屹立する。

「もっと見せますよ。先生のエッチなところ!」

そう宣言した後、結衣の両足首を掴んで引き離し、頭まで布団に押し付ける。
窮屈な姿勢のまま、肉と肉が打ち合い音が鳴る。
結衣は抱きつきながら、足りない物を埋め込まれる充足感に満足しながら、よりよい高みを目指す。

「あっ……すごい。んぁあ、私、止まらなくなっちゃう」
「先生のここ、俺も気持ち良すぎて、止まらない」
「ねえアキト君、結衣、んぁ、結衣って名前で言って」
「ゆ……結衣、結衣!」

身体全体で結衣を覆うような格好でセックスする。
大柄で見事な肉体が快楽に打ち震えるさまは征服感を煽り、
悦びの涙に濡れた顔は多幸感に包まれ、男冥利につきた。

「はん! ああん! 結衣のオマンコにずんずんくるの!
アキト君の精子たくさん子宮にあるのにまだ欲しいよぉ!」
「んっ! はあ! いい、もっともっと言ってください!」

結衣は自ら脚を抱えて、恍惚の表情で生殖器の交合を眺める。
そそり立つ一物が尻に吸い込まれるたび、子宮奥を通じて衝撃が走り抜ける
激しい腰の動き、怒張が武器なら止めを刺すために加速する。
男に捧げられた淫らな祭器を満たすのは、あと時間の問題だけだった。

「あう! やあぁ! 激しい!」
「ふん、ほら、もっといきます。エッチな結衣のために!」
「ああぁ! アキト君のおっきいオチンチンがぁ、結衣のために、オマンコ何度も出たり入ったりして、
気持ちよくさせてくれるの! 先生が生徒の咥えこんで、いやらしくいっちゃうの!!
「はっぐぁ!! ぁああおお……うぅ!!」

睾丸から込み上がる波、濃密な種は切そうに震える胎内へと噴出する。
最奥まで肉の鉄槌を打ち突け、子宮口は亀頭によって純情に開けられたまま、
鈴口から迸る精液を縦横に飛び散らせていく。
結衣は胎内へと漲る活力を受け、
膣全体がびくびくと貪るように吸い取り、余すところなく射精の悦楽を味わう。

「出てるぅぅ、熱いのがたくさん出てるよぉ……。
奥まで……届いてるの、濃いの中出しされてるぅ」

アキトは苦行の形相でのけ反りながら、結合部から感じる快楽に酔いしれていた。
美乳が甘い吐息と共に上下しながら倒れこむ男の顔を受けとめた。
瑞々しい女体に抱きつきながら、ずぷずぷと音をたてながら腰を動かした。
結衣は子宮深くまでうねるような噴流と、さらに奥に進もうとする怒張の進入に身体を震わせる。
成熟した牝の肉体が、若く荒々しい牡の行為によって屈服し、種付けされていた。
熱く新鮮な生命の源は、結衣の卵子との邂逅を目指し、膣奥から何度も投下される。
三度目となる膣内射精は妊娠から逃れられないと思われるほど、圧倒的な物量を誇っていた。

t02-187 名前:日曜日 :08/06/14 08:12:31 ID:MTj3DD44
「あっはあぁぁ……アキト君、抜いて抜いて」
「は、はい」

アキトは余韻も覚めやらぬまま、密着させていた腰を上げた。
すでに戦を終えた肉槍は、ぬらつく姿を見せる。

「すぐに、元気にさせてあげる」
「えっ、せ……うぁああ」
「んんん、ちゅ、まだ、んはぁ……まだ欲しいの」
「も、もう……くぅっ」

もう立つわけがないと思っていたアキトは、貪るように吸い付く口技におののく。
結衣は裏筋から舌先で突っつき、玉袋まで転がして催促した。
自分でもままならない精神とは裏腹に、身体はきっちりと反応を示す。
少しずつ鎌首をもたげる様子に結衣は悦びを隠さない。
いきなりディープスロートで喉奥まで咥えて濃厚な奉仕を始めた。

「はあ、はあ、はあ、だめ……です」
「ちゅるる、ん、ん、じゅずず、ちゅ……んんはぁ! もっとぉ」

微にいり細にいり、奉仕は続けられる。
出る物など無いと思われるが、それでも隆々と勃起していく。

「あうっ、ふぅぁっ……くぅ」
「うふふ、すごい立派だわ。もうこんなになってる」
「やぁぁ……」

女性のように喘ぐアキトに可愛らしさすら漂う。
攻守は逆転して、今度犯されるのは男の方だった。

「ん、ちゅる、んん。はあぁ……今度はまた上のお口に飲ませて」
「はあっ、はあっ、もう……」

根元まで強く吸い、戻しては敏感な溝を舐めてまた咥える。
間断のない奉仕に男根は弄ばれ、舌の上でびくびくと跳ねた。
もう終わりが近いと見え、今度は竿を握って前後に擦り、付け根にある陰嚢を舌先でくすぐる。

「せ、先生! もうダメ!!」

アキトは手でしごかれながら射精した。
亀頭の先で口を開けて待ち受ける結衣へと、白く濁った粘液を飛ばす。
何度目かわからない射精だったが量も勢いもあった。
「あぁん……ぅん、ふふ、さすがに色が薄いよ。だけど……」

ぺろりと容易く飲み込んだ。
挑発的な笑みが、美貌を淫靡なものに変える。

「美味しいよ。もっと……今度はまた」
「もっ、もう本当に……ダメだから、せ、先生!!」
「え、きゃっ!!」

上に乗りかかろうとする結衣を、強引に引き剥がして上下を入れ替える。
組み敷いて向かい合うが、アキトにはもうこれ以上何かをする気はなく、ただ止めさせたかっただけだ。

t02-188 名前:日曜日 :08/06/14 08:15:34 ID:MTj3DD44
「あ……ごめんなさい。ちょっと……我を忘れてたみたいね」

驚いたのは一瞬、その後更にほんの一瞬見せた表情をアキトは忘れることができなかった。
普段なら絶対見せない、拒絶され傷ついた表情だった。
だがすぐにかき消され、逆にいたわる台詞をかけられる。
己がとった行動を省みて、いたたまれない気持ちと自己嫌悪の晒される。
止めさせるにしても、もう少し、もう少しやりようがあったのではないか。

「このまま寝よっか」

結衣はアキトを優しく抱きしめ、耳元でこそばゆく囁いた。

「先生……」
「ん?」
「俺のほうこそ……ごめんなさ……ん」

軽く接吻してアキトの口を塞ぐ。
こんな形で謝られたくない結衣だったが、それはアキトも同様だった。

********************

「くうっ」

手の中で肉棒が跳ねて白い濁液を吐き出す。
思わずやってしまったという後悔の念と、自己嫌悪に苛まれる。
その感情は、丁度思い浮かべていた場面とほぼ一致していた。

「何やってるんだよ……俺は」

手と身体に付着した液体をふき取る。
ここまで最悪な気分になる自慰は初めてだった。
むなしい、寂しい。
それに一役買っているのは隣室の空虚さ、ハルキは帰宅せず外泊だろう。
記憶の限りでは、ありそうでない。離れて寝泊りすることはおそらく初めてだった。
アキトはベッドから抜け、スリッパを履き部屋を出る。
向かう先はすぐ隣り、ハルキの部屋だった。
ノックもせずに入る。

明かりを点けなくてもある程度配置がわかる。
ベッドに近づき、手を当てる。
当然もぬけの殻だが、それでも落胆にも似た気持ちを感じた。
もしかしたら、ハルキもこの気分を土曜日の夜に味わっていたのかもしれない。
遊びほうけた結果がこれかと思うと、恥ずかしくも悲しい。

半ば投げやりの気分でアキトはハルキのベッドにもぐりこむ。
もうここで寝ることに決めてしまう。
意外にも安らかなまま床につけたのは、ハルキの匂いがしたからだろう。
アキトは深い眠りに落ちていく。
夢を見ることもなかった。

t02-189 名前:月曜日 :08/06/14 08:31:15 ID:MTj3DD44
********************

何年ぶりか、それこそ数えるほどしかない少ない事例、アキトは通学路を一人登校する。
他の学生、社会人に混じって電車に乗りながら景色を眺める。
どうにも晴れない気持ちを抱え、黙りこくるのは精神衛生上よろしくなかった。
内に溜まったものは吐き出すのが一番良いが、肝心の話し相手はいなかった。
珍しく一人という事もあって、早めの電車にしてきた所為もあり、
まばらな人の中には友人も見当たらなかった。
そもそもいつもの時間帯よりスーツ姿の比率が高い。
それを見てアキトは心底うらやましく感じられた。
自分も今、社会人なら堂々と結衣に対してお付き合いして欲しいと言えるのに。
むしろ今日にも指輪を持っていき、プロポーズをしたいくらいだった。
懊悩を深めるのは、自分の力の無さと、一番の相談相手の不在だ。
アキトは自分には社会的、人格的、そして当事者以外は苦笑ものだろうが、
身体的に結衣との身の丈が合ってないことを自覚する。
彼女の心の広い大人としての態度が、かえって見えない線を引かれている気分だった。
難攻不落? の城砦を攻略するには、手持ちの武器が不足している。

もう一人の自称、心の広い大人はどこでなにをしているやら。

t02-190 名前:月曜日 :08/06/14 08:31:47 ID:MTj3DD44
********************

ハルキの朝は早く、葵が起きる前にさっさと自分の服へ着替え、朝食の仕度を始める。

「おはよ~」
「おはようございます」
「朝ごはんはなに?」
「ベーコントーストに梨、スクランブルエッグとヨーグルトサラダ、そのくらいですけど」

葵はあくびをしながら椅子に座って、コーヒーを飲みテレビを眺める。
自動的に出てくる朝の楽さには、自堕落な気分にさせられる。

「ハールーキー君」
「何ですか?」
「私にあ~ん・し・て」
「はい、どうぞ」

今更逆らう気も起きないハルキは、フォークに梨を刺して口元まで持っていく。
女性が無防備に口を開ける仕草はそこはかとなくエッチだ。

「どうですか」
「んむ……苦しゅうない、それよりよく眠れた?」
「はい」

葵は食べる手を止める。

「そうなの、よく眠れたのね。私なんかハルキ君が近くに居て、ドキドキで眠れなかったのにな~」

ハルキは地雷を踏んでしまったことに気付く。
自分から慰めの言葉をかける訳にもいかず、ただ苦笑する。


ずいぶんと長い休日だったと思う。
色々とあったが、昨日の一日で気持ちの整理をつけ、良い気分だった。
これから久しぶりと言えば大げさだが、
それでもアキトが何を考え、何を思っているか会うのが楽しみだった。
苦悩と喜び、この狭間にいるのは間違いない。
相手は風変わりな難敵だが、上手く行ってもらうため、労を惜しむつもりは無かった。
己はどんな時でも幸せになれる自信がある。だがアキトはそうではないはずだ。
こうなった以上アキトは是が非でも、結衣と結ばれて欲しい、
あのアキトが唯一強い好意を持った女性だから。
アキトには幸せになって、自分が生を受けた喜びを心底から謳歌してほしかった。

t02-191 名前:月曜日 :08/06/14 08:42:53 ID:MTj3DD44
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「よっ、おはよ。なんか久しぶりって気がするな」

アキトが思い悩んでいると、教室の入り口から知った声が聞こえた。
目を向けるまでもなく、兄のハルキだとわかった。
違うクラスだが、わざわざ足を運ぶところ見るに、多少悪びれた様子が窺い知れた。

「ん、おはよう。それより昨日はどうしたんだ」
「悪い悪い、遅くなったんでそのまま泊めてもらうことにしたんだ。
まあ代わりに今日はアキトが好きなエビチリでも作ってやるよ」
「それは嬉しいけど……」
「それよりもお前こそ土曜日の夜はどうだったんだ。ん? ん?」
「い、いや。それなりに仲良くなれたと……思う。気を利かしてくれてサンキュ」

アキトは自分の方こそヤブヘビだったと悔やんだ。
だが兄がそれ以上追求する気がないらしいことがわかり、ほっとする。

ハルキはハルキで、弟の反応を見て安心する。
性格からして言うわけないが、間違いなく弟と結衣はセックスしたはずである。
だが、それがどういう成り行きかまではわからなかった。
弟のほうから積極的に、というパターンはまず無いため、
結衣のほうから誘惑されたか、逆レイプされたか、どちらかだろう。
微妙に赤面してその台詞ならまず前者だろう。これは今後のことを考え好ましい方向だ。

よくよく自分との場面を冷静に分析すれば、トラウマを植えつけかねない後者はまず無いとも言える。
結衣は自分が気持ちよくなるため、相手の力を120%発揮させる状況を作る、
純粋で狡猾、本能に赴くまま理知的にそれは成されていく。
なんとなく将棋が上手いのもわかる気がする。
少しでも緩めれば詰まされるため、必ず限界まで攻めなければならない状況に、いつの間にかなっているのだ。

「なに言ってるんだよ。その分だと結構脈がありそうで良かったよ。
まあ、お互い色々難しい立場だろうけど、俺は協力するから何でも言ってくれ」
「おぉ、ありがとう。……そうだよな、色々難しいよな」

妙に積極的な兄の働きかけにアキトは驚いた。
いつもなら、ひとしきり笑った後に肩を叩くのが関の山だったはずだ。
真摯なほど気に掛ける上、協力をするとまで言われると、俄然心強く思える。
だが昨夜悩んでいたことがぶり返される。

「でさ、これからどうしたらいいか、全然わからなくて……」
「はあ? 普通にデートに誘ったりとか、とにかくもっとお近づきになるのが重要だろ」
「ああ、確かにそうだけど」
「お互いを良く知る。それが付き合う上での基本だろうしな」

兄の言ってることは真に正しいだけに、途方に暮れてしまう。
だが、アキトは顧問である結衣のことを色々良く知っていたし、
曲がりなりにもすでにお近づきになっていた。
どうも話が噛み合わないと思っていたら、第一に話の前提が違うのだ。
スタート地点が通常とは根本から違っている。

t02-192 名前:月曜日 :08/06/14 08:47:41 ID:MTj3DD44
「俺さ……」
「ん?」

アキトはいっそのこと、全部洗いざらい打ち明けるべきか悩む。
あまり兄との間に隠し事はしたくない性分でもあった。
だが、すんでのところで思いとどまる。
少なくとも内容が内容だけに、今は場所が悪い。

「いや、なんでもない。まあ少し考えるよ」
「こういうのは考えてもダメだって。
よけいなお世話かもしれないが、思い切って行動するのが大事だぞ。
結衣先生は待ってても意味はないし、遠まわしなアプローチをしてもダメなタイプだと思うぜ」
「あああぁ、わかったけど少し頭を冷やさせてくれ」

妙に知った風なお言葉に、アキトは苛立ちが募る。
そういえば結衣との会話で、ハルキが女性関係が色々あるらしいような推測をしたことを思い出す。
だが直接兄の口から、女の子と付き合ってる話は聞いたことはない。
確証も無いのに問いただす訳にいかないし、今この場ではあまり意味のないことだ。
なにより隠したいのかもしれないなら、話さなくてもそれはそれで良いはずである。
それだけの分別はアキトにもある。

こちらとしても逐一話す必要は無いはずだ。
自分と結衣の関係、それは前提を共有し話の方向性を定めるだけで充分なはず。
いささか情けないとは思うが、五里霧中の今は兄の協力は必要だった。

「……あのさあ、二人で話がしたいけどいいか?」
「それは、結衣先生のことだよな」

ハルキは、アキトの言った二人という言葉に本気を感じて、あえて確認する。

「勿論」
「それなら夕食の後でいいだろ。
休み時間は時間を気にしなくちゃならんし、
放課後は……アキは部活があるだろしな」

わざわざハルキは昔の愛称で弟を呼ぶ。
女の子っぽいと言うことで本人が嫌がり、いつの間にか自然消滅した呼び名だ。
口調からしてリラックスさせたい意図が見え、アキトは昔のように不快に感じることもなかった。

「悪いな。俺ばっかり春が来る相談して」

ハルキがたまにする言葉遊びを少し真似て返す。
少し苦しいと思いつつ、お互い笑ってしまった。
ハルキの昔の愛称が、そのままハルだからだ。

「いいって、気にするな。俺よりもアキには幸せになってもらわなくちゃならんぜ」

アキトは微かな違和感を感じた。
いつもならこういう場面では口調に茶化しや強がり、冗談を含んでいるはずだが、
今の言葉にそんな要素がまったくなかったからだ。

t02-193 名前:月曜日 :08/06/14 08:50:20 ID:MTj3DD44

授業が始まり、アキトは勉強に集中する。
もともと県内で随一の進学校だが、その中でもアキトの成績は上位者である。
だがそんなことも、自分をつまらなくさせてる要素の一つに思えてならなかった。
その原因の最たる物が、兄のハルキの存在との対比だ。。
時々兄を疎ましくもあったが、本気で憎む時は一度足りもなかった。
単純に兄と居る時間が面白く、気をおけないからだ。
相手をリラックスさせる気遣い、安らぎをもたらす雰囲気、
楽しくさせる話術など、憎めない素質においては枚挙に暇がない。
そしてこれらの素質は成績の良さとは無縁だ。

なぜ今まで思い当たらなかったのだろうか。
自分ですら、何を勘違いしたのかラブレターを出す輩がいるくらいなのだから、
兄が女性にもてるのは当たり前だと、女性関係の一つや二つ、あって然るべきだと。

「結衣、先生と……ハルキならお似合いだろうにな……」

どうにも、あの夜の最後が頭から離れない。
我に返る結衣の悲しみに似た表情は、心の奥底に残る癒えない傷だった。
あんな顔をさせたくなかった。
そしてハルキならあんな顔をさせなかっただろうな、とも思った。

t02-194 名前:月曜日 :08/06/14 08:51:11 ID:MTj3DD44
ハルキはぼんやりと結衣のチョークの音を聞く。
ある程度学力によってクラス別けされてるのだが、
そのせいもあってか授業は比較的わかりやすい部類に入る。
ハルキの成績自体は、さして勉学に励んでいるわけではないが、下の上の位置をキープしていた。

黒板の数式をもとに行う結衣の解説を聞きながら、
アキトとお似合いの女性であるか、と考えをめぐらすが答えは否であった。
けれど、もともと結衣とお似合いの異性を想像するに、
少なくとも半径100km以内にはいないのではないかと思われた。
たいてい彼女を持て余すに決まっている。
美人でスタイル抜群、性格も良い、そこまでなら引く手あまただろうが、
推測を含むに、家柄、資産、卓越した頭脳、高学歴の上、身長の高さに、神のみぞ知る性欲、
結衣の持つ大樹のような風格が備わると、お付き合いするには高すぎる相手だった。
強引な前提だが似合いの人なんていないと思えば、困難も乗り越えられそうな愛情や、
ほぼ対等に相対することが可能な将棋など、アキトは全然ましな相手に違いない。
アキトの独り言とは反対に、ハルキは自分よりは見込みのある相手だと思った。
むしろ弟の物好きさに感心する、自分なら勘弁してもらいたい気もした。

「まっ、でもあの胸は反則だよな……」

白く凛としたシャツを押し上げる胸。
二つの頂点へ引き寄せられ皺の形状すら美しさを引き立たせる。
はち切れんばかりに谷間の生地を引っ張り、歩くと軽く上下する錯覚に襲われる豊かさ。
下に潜む形の美しさも知っているだけに、授業中にも関わらずいけない気分にさせられる。

「また、あのおっぱいに顔を埋めてみたいな……」

ぼうっと遠目で眺めながら、誰かに聞かれれば危険極まりない独り言を吐く。
ハルキはおっぱいこそが至上と思ってる男だった。

「は~い、ハルキ君」

独特の間延びした声を聞いて、呼ばれた者のみならずクラス全員に緊張が走る。

「は、はい」
「ぼ~としちゃダメだよ。わかった?」
「はい!」

はきはきとした返事を返すが、内心動揺が収まらない。
結衣先生が裏で結衣ドンなどと呼ばれるのは、
スパルタ式とも恐怖政治とも呼べそうな教育方針にもあった。
今ハルキになされたのは最後通告だった。二度目は無い。
昨日はどうかしてたとしか思えない、やはり勘弁してもらいたい相手だった。

t02-195 名前:月曜日 :08/06/14 08:53:13 ID:MTj3DD44
放課後に入ってハルキは教室を出る。
もとから部活に熱心なほうではないため、無所属で過ごしている。
家事に対して勤しむ義務と意義もあった。
念のため帰る前に、アキトへ一言かけようと教室へ向かった。
だが見渡せど目標は補足できず、まだ残っている人に聞こうとすると肩を叩かれる。

「はぁい、ハルキ君」
「なんだ、結衣先生か……」
「なんだとはずいぶんなお言葉ねぇ」

二人とも昨日の今日であっても、表向きは平然としたものだった。

「いや、別にそういう意味で言ったんじゃないです」
「わかってるわよ。あなたの麗しの君をお探しだろうけど、ここにはいないわ」

微妙に引っかかる言い回しだが、ハルキは反応する気も無かった。
相手が悪いのは重々承知だった。

「先生も部活に顔出すんですよね」
「ええ、職員会議が終わった後だけど」
「それならアキトに、今日は部活が終わったら直帰するよう伝言願えますか」
「うん、いいわよ。でも理由を聞いたら失礼かしら」

予想外な問いかけに、僅かながら躊躇いが生じる。
言わないのは変、しかし言うのもなにか引っ掛かりがある。

「ん~と、まあ久しぶりに家族団らんで夕食をするってことですね」
「はいはい、わかったわ。泣ける理由ねぇ~」
「……言ったそばからなんですが、先生に伝言お願いするのが不安です。
変に邪魔立てしないで素直に伝えてくださいよ」

結衣は笑って、何をご冗談を、という風に手をひらひらさせる。

「もう~、そんなことしないわよ。
そこまで言われたら、早めにでも帰させるわ」

ハルキは結衣の反応を見て、あまりに信用に欠ける発言を恥じ入る。
けして悪人ではないとわかる、だが良くも悪くも常識に囚われない人なのだと思う。
ある意味、漠然とした不信感が育まれる程度にはお互いを知り、仲が良いと言えた。

「まあハルキ君ブラコンだものね。けれど過保護なのは考えものよ」
「かほご……ですかねえ……」
「ふふ、ハルキ君優しいからね、背中を押したくなる気持ちもわかるけど。
でもね、あんまり自分を置いてけぼりにするのも良くないよ」
「はあ?」
「時には二匹のウサギさんを追ってみなさいってこと」
「……はあ」

何を言いたいのかさっぱりわからなかった。
だが自分が何を目指しているか、結衣には丸わかりのようで微妙な気分になる。
その上で止めず、あえて触れない点も余裕の表れに見えた。
先ほどした己の失言も、余裕の無さから来たと思えば格の違いを知らされたようなものだった。

結衣は必要なことは言ったとばかりにきびすを返し、職員室へ向かった。
後姿を見ながら、ハルキはため息を吐く。
彼女にとって自分やアキトはどういう位置付けにいるのだろうか。

t02-196 名前:月曜日 :08/06/14 08:57:04 ID:MTj3DD44
********************

ホワイトボードに、いかにも手作りといった感のあるマグネット式の駒を動かし、囲いや戦型の説明をしていく。
苦心の跡が窺えるが、見栄えもよく出来は悪くなかった。
これまで初心者お断りとも呼べる、体育会系文化部、それが将棋部だったが、
結衣にめった切りされたことと、アキトの個人的人気もあってか、
文字通り駒の動かし方も知らない女子がぼちぼち入部することになったのである。
まさか入部を断るわけにいかず、また顧問の結衣の意向も合って、初心者指導講座が設けられた。

今週はアキトの番とあって、マグネット駒を使い、いくつかの型を説明していく。
プロが行う普及活動の大変さが身にしみる思いだった。
ある程度のカリキュラムは顧問が考えてるとはいえ、中身は当番の裁量に一任される。
人に教えることの大変さは、実際にやってみないとわからないものだ。

「は~い、質問です。そこは銀で囲ってはダメですか」

初期の頃と随分違う質問内容に、
否応無しにこれまでの長い道のりを思い出してしまう。
普段なにげなくやっている将棋というものをいざ人に教えるとなると、
当たり前のルールが当たり前でないという事実を思い知らされた。

「基本的に金は守りに向いて、銀は攻めに向くと覚えておいてください。
金は動ける場所が広いが、攻めても成ることができない。
銀は動ける場所は金より狭いが、攻めて成ることができる。
もし取られても、金は金のままですが、成り銀は銀に戻るのもポイントです」

がらっと引き戸の音を鳴らし、結衣が部室に入る。
受講側の椅子に座り、楽しそうに笑顔で静聴していた。
講座も終わり、アキトは最後に総括をお願いすることにした。

「先生、何かありますか?」
「ううん、内容についてなら特に無いわ。
それよりみんな、家でお父さんとかお爺さんと指してみた?」
「はいはい、先週はお父さん相手にいいところまでいきましたよ」
「最近、弟に勝てるようになって、すっごい悔しがるんですよ。面白くて面白くて」

結衣は声を上げる女子生徒に対して、満足げにうなずく。

t02-197 名前:月曜日 :08/06/14 08:59:43 ID:MTj3DD44
「もう結構やってるみたいね。それじゃあみんなアキト君と指してみる?」
「えっ」
「きゃあ、せんせいっ話がわかるぅ~」

アキトの返事を待たず、黄色い歓声があがった。
部内一の実力のため、実際に対局する者は部員の一部と顧問ぐらいなもので、
一般のレベルの腕前から見れば、ある意味高嶺の花と呼べる存在だ。
だがアキトにしてみれば、結衣の仕打ちは時間の無駄とも思える行為であり不本意だった。

「ふふ、アキト君、そんな顔しない。やってみると、将棋を教えるのもいいものでしょ」
「まあ……結構面白いですが……」
「さっきハルキ君から伝言頼まれたんだけど、今日は早めに帰って欲しいそうよ。
そういう訳だから、これが終わったらそのまま帰りなさい」
「なにも先生に伝言なんて頼まなくても……」

わざわざ接触の機会を増やそうとする兄の気遣いに、
落ち着けよお前、と今ここにいない人間に言いたくなる。
それに早く帰れなどと言われても困ってしまい、不本意ながらその意向は無視したく思う。
部活動は充実したひと時であるとともに、貴重な結衣との接点でもある。

ハルキが思ってるよりアキトと結衣は確かに仲が良い。
だからこそ馴れ合う今の状況を困ってるのだが、それがハルキには想像の外だった。

「せめて先生と一局させてくださいよ」
「はいはい、ほらみんなを待たせない。……あと指導局の基本、わかってるわよね」
「は、はい」

それは初心者から脱し、ある程度の腕前になったら勝たせることである。
ハンデを付けるのは勿論のことだが、それでも勝ってしまうとやる気を失ってしまうものだ。
上手が無理矢理勝ちにいても良いことはない。

「では八枚落ちからやってみましょう」
「「「は~い」」」

かしましい声が部室内に響き、アキトは他の部員の目が突き刺さるのを感じた。
本を糺せば、部長たるアキトが結衣に負けたのが原因なのだ。
この状況を何とかしろと言いたいが、
とりあえず自分の実力は棚に上げておかざるをえない歯がゆさからの視線だった。
アキトは部の代表を自負しながらも、気持ちはわかるが無理だよ、と心の中で皆に謝った。

t02-198 名前:月曜日 :08/06/14 09:04:03 ID:MTj3DD44
********************

「ただいま~」

玄関から聞こえるのはアキトのものだった。
エビの殻を剥きながら時計を見て、いつもより早い時刻の帰宅だと思った。

「おっ、今日は早いな」

アキトは怪訝そうな顔をする。

「お前が早く帰って来いって言っただろうが」
「うん? いや言ってないが」

ハルキはさっと今日一日を振り返るが、やはり言ってないことを確認する。
だが結衣に言づてをお願いした時、ちょっとした経緯から早く帰らせることになったのを思い出した。

「ああそうか……すまんな。本当は寄り道しないでまっすぐ帰れってことだったんだが」
「それくらい、いつも通りなんだから、わざわざ先生に伝言しなくてもいいって。
なんだか、いちいち仲良くさせようと必死な気がするぞ」

ここでアキトはこの先を言うべきか迷ったが、
どうにもしっくりこない違和感から問うことにする。

「はっきり言って最近変だぜ。
ふらっとどこかへ行ったり、妙に俺のことで張り切るし、何かあったのか?」

意外に鋭い弟の指摘に内心驚く。

「ほらやっぱり」

顔に出さなくてもわかるのは、長年の付き合いだけではない。
世間が言う空気を読む、勘とも違う、目に見えない繋がりからくる波長みたいなもの。
アキトにとって確信を持つには充分だった。

「いや、別に無いって」

エビの殻を全て剥き終わり、料理の準備を一段落つける。
だが会話は膠着の様相を帯びていた。

「嘘だね……って言ったそばからなんだけど、
誰だって隠し事くらいあって当然だろうし、別に有るか無いかだのどうだっていいさ。
ただ今回に限っては、気になって仕方ないから理由を聞きたいんだ。
どうして普段から考えられないくらい気に掛けてるんだ?」
「……」

沈思するハルキは、自分でもいささか似合わないものだと自嘲気味に思った。

「ん……と、まあ不審がられるのも嫌だしな。
このさい言ってしまうとさ、実は俺……前にクラスの女子と付き合ってたことあって、
まあ、そのなんだ……お前さ、女子に対してあんまり良い感情持ってないだろ」

図星を突かれ、はたから見ても滑稽なほど顔に出して反応した。
双子でありながら、役者の違いが見て取れる。

t02-199 名前:月曜日 :08/06/14 09:05:11 ID:MTj3DD44
「だから黙ってたけどさ、やっぱり結構そういう経験も良かったって言うかさ、
だいたい食わず嫌いなところもあるんだろうから、付き合ってみればいいと思ったからが一つ。
二つ目は、お前が何にも女っ気ないと、どうも俺が卑しい気がしてちょっと負い目もあったんだ」

嘘をつくのにあえて本当のことを混ぜる。そうすれば真実味がます。
ハルキは自分の中で、卑しさを感じていたのは本当だった。


始まりは高校に上がって聞いた父の呟き、心が冷えた瞬間熱いものが欲しかった。
とにかく熱いものに焦がれ、満たされるよう渇望した。
供給に事欠かなかったのをこれ幸いとばかりに、言い寄る女子と何人も付き合った。
この歳で肌を重ねた女性が一人や二人ではないのは充分に異常な数。
だが得るものは一時的な快楽、それも泡沫のように弾けて消える。
彼女も彼が何を求めてるのかわからず、そしてそれが自分ではないとわかると別れていく。
そんな繰り返しだった。
ハルキは次第に汚れていく自分を自覚しながらも、アキトは清いままでいて欲しかった。
それは結衣に対して行った意趣返しの理由にほかならない。


「だけど相手が教師だってのはちょっと意外だったけどな。
まあ今のうちに色々仲良くして、本格的に付き合い始めるのは卒業してからがいいんじゃね」
「けど……」
「ん?」
「ハルキもさあ……結衣先生のこと好きなんだろ……」
「はぁ?」

アキトにしてみれば、これ意外に考えられない理由だったが、
問われた方は思いがけない台詞を聞かされ、開いた口がふさがらない状態だった。

「本当はそれが負い目で、わざわざ俺を先生と仲良くさせようとするんだろ」

こいつは何を勘違いしているんだろか、今まで何を聞いていたのかと呆れる。
やっかいなのはアキトが、まだ嘘をついていると思っていることだった。
思考が錯綜して、混乱の一歩手前の中で必死に計算する。
アキトの言っていることは全部がハズレという訳でもない。
好きか嫌いかと問われれば、後者ではないのは確かだ。だがアキトの誤解なのは間違いなかった。
この誤解を否定すれば、まだ何か嘘をついていると思われる可能性がある。
だが肯定するにはやぶさかではない。
誤魔化すように答えるぐらいしか思いつかなかった。

「い、いや、それはお前の考えすぎだ。
仮に、仮にだぞ、俺が結衣先生のこと好きだとしても、
アキトの方が百倍お似合いだし、先生もアキトの方が良いと思うはずだって」
「そうかぁ? 俺はハルキの方がずっと……」
「だあ!! お前はもっと自分に自信を持てよ、自信がないからそんな妄想じみた考えするんだぞ!!」

t02-200 名前:月曜日 :08/06/14 09:06:49 ID:MTj3DD44
さすがにこれにはアキトも閉口としたが、そんなことにかまっていられるほどハルキも冷静ではない。
玄関から戸が開く音が聞こえるのが、まさに救いの鐘だった。

「ただいま。おっ、どうした変な顔して」

アキトはまだ納得のいってない顔を見せているが、父が帰った以上この話題は打ち切られる。

「おかえり。別になんでもないよ。な、アキト」
「あ、ああ」
「ふむ。お、今日はエビチリか。久しぶりだな」
「ほらほら、ご飯炊けたし、父ちゃんも帰ってきたから席に着け。出来立て熱々食わしてやるから」

ハルキはわざとらしく中華鍋をお玉でカンカン鳴らして催促する。
渋々席に付くアキトだったが、心の中にあるわだかまりは当然解けることはなかった。
そして今日の夕飯はいつも以上に美味しかった。


アキトは食べ終わった後、風呂に入って自室に引きこもり予習復習を始める。
父が台所で晩酌をする中、ハルキは隣接する居間で、
葵から強制的に貸せられたクラシックのCDを聞きながら、テレビでサッカー観戦をする。

「ハルキ……今日、帰ってきてからアキトどうしたんだ」
「お年頃のお悩み相談……てところだね。内容は言えないけど」

父もその一言でおおよそのことがわかったのだろう、ははっと破顔一笑してぬる燗をちびりとやる。

「アキトもやるなあ」
「そうだ……ね」

何気なく聞き流すところだったが、アキトも、という台詞が気になった。

「二人とも顔立ちは母似だが、性格でみるとハルキは母に似て、
アキトは私に似てるかと思い、面白いものだと考えていたがな。
あれでなかなか侮れないところがあるもんだ。
まあ良きかな良きかな。それも青春だよ」

上機嫌な父は陽気に一杯ひっかける。
ハルキは自分たちを否定し、自分たちを捨てた母が嫌いだった。
成長し分別がつく今、それぞれの事情があることを考慮しても大嫌いだった。

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最終更新:2009年07月19日 18:28