- 01-457 :名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 22:36:48 ID:obHp3Jt0
- 会えば笑顔で話してくれる佐倉だけど、俺がどれだけ必死に時間を合わせても、
進展は何も無い。
けど佐倉への思いは、日に日に強くなっていく。
穏やかな佐倉はいつも聞き役で、俺のくだらない話も、笑いながらよく聞いてくれる。
いつもはイジられキャラの俺も、佐倉の前ではやたら喋る。
バカな新任教師の勘違いで責められ、でも反論も出来ず教室の隅で
涙を堪えているのを見て以来、俺はあいつが気になって仕方が無かった。
沢山笑顔にしてやりたかったし、佐倉の笑顔を見ると最高に幸せな気持ちになる。
俺は少しでも長く一緒に居たくて、歩くのが遅い佐倉に合わせてゆっくり歩いたり、
「今日はこっちに用があるから」と佐倉の帰り道に合わせて遠回りしてみたりした。
思い切って「もう暗いし、家まで送るよ」と言った時は、「ありがとう。でも大丈夫だよ。」と
笑顔でかわされた。
そんな日々が1ヵ月続いた。
来月には夏休みに入る。
休みに入ったら、さすがに帰り道合わせる事は出来ない。
高1の夏休み、佐倉と一緒に過ごしたい。
本当は毎日でも一緒にいたい位だ。
いつもの帰り道、俺は勇気を出して「今度映画に行かない?」と誘ってみた。
俺にしては大きな進歩で、とても勇気のいる事だった。
でも佐倉は戸惑った表情になって、返事はよりによって「えっ・・・どうして?」だった。
俺は黙って自転車を漕ぎだし、佐倉を置いてその場を去った。
立ち漕ぎで、まるでその場から一秒でも早く逃げないと
死ぬんじゃないかっていうくらい、バカみたいに飛ばした。
一緒に帰ってる位で、舞い上がって俺は本当にバカだ。
長く片思いして大事にしてた気持ちも、壊れるのは一瞬だな。
俺はそれ以来、電車の佐倉を待たなくなった。
もうちょっとタイミングを見てうまく誘えば良かったと後悔したり、
いや佐倉は最初からその気なんて無かったんだと思い直したり。
友達と騒いでも、部活に打ち込んでみても、気持ちは晴れなかった。
- 01-458 :名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 22:48:57 ID:obHp3Jt0
- 期末テストも史上最悪の出来で、面談では担任と母親にフルボッコされた。
何もかも上手くいかねえ。
最悪な気分だった土曜日、ひっくり返って寝ていると、中学の時同じクラスだった
谷口から電話があった。
「今みんな香織のうちに遊びに来てるんだけど、山本もおいでよ」
谷口は別の学校だけど、たまに駅で会う。
顔は可愛いけどちょっとヤンキーっぽいのと色黒で、大人しくて色白の佐倉とは
全然違うタイプだ。
でも悪いヤツじゃない。
いつも明るく声を掛けてきてくれて、ギャーギャーうるさいけど面白いヤツだ。
クラスでも目立つ方で、みんなと仲が良かった。
香織とかいうやつの家に行って騒ぐほど親しくはなかったし、何より全然気が進まないので
断っても、谷口はしつこかった。
「ゆりちゃんも来てるよ。みんな久しぶりに山本に会いたがってるんだから、来ればいいじゃん。」
中学時代、佐倉はみんなにゆりちゃんって呼ばれてた。
俺は呼べなかったけど。
谷口は俺の気持ちに気付いてるのか。
俺と佐倉が一緒に歩いている時に、何人かの中学の友達と出くわした。
友達がニヤニヤしながら噂になってるぜと教えてくれた。
佐倉とは随分会ってない。
気まずくてもそれでも会いたくなった俺は、行くことにして香織の家を教えてもらう。
もしかしたら佐倉も何か言いたいことがあって、俺に会いたいのかもしれない。
最終更新:2010年07月07日 10:59