そう

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そう - (2012/10/16 (火) 00:45:12) のソース

*そう
【人物】[[【講釈師】]]

そうは[[外町]]の[[曖昧団地]]に暮らす達磨男。左腕を肩口から、両脚を膝下から
失っている。身の回りの世話をする少年[[照]]を初め、訪れる者に奇異國に潜
む[[【絡繰】]]を実しやかに解き明かす。

**「或る友人の話をしよう。うそのような、ほんとうの話だ。」
そうが語るは嘘の反対。かと言えどもその言葉、唯の真実に非ず。朱塗りの鉈豆キセルに腕一本きりで器用に種火をつけて、右頬まで裂かれた口からくゆらす煙と共に爛れた歯茎(しけい)から漏れ出るは訪れる者が尤も望まぬ真相。そうはいつも多くを語らず、また物見高い供連れの聴衆も相手にはしない。重々しい語り口の昔話をたわ言と一笑に付するのは易しいが、妙に事実と符号する玄妙な語りに聞き手は怪にして異なる[[【奇譚】]]の内へと引きずり込まれる。

**「そうだ、友人の話だとも。何もかもを失って、またとない知己を得た。」
香を焚き染めた四畳半の庵で彼が三人称として語る「友人」は、玄武を象った不細工な三脚香炉を挟んで差し向かう者に不可思議な既視感をもたらす。それは四肢が健在五体満足であった頃のそうの姿であるとも、かつて彼の居室を訪れた惑いし者の影絵であるとも、聞き手そのものを映し出す鏡であるとも。彼は朝晩に包帯を巻き替え、食餌の世話を焼く照にすら自身の過去を決して語りはしない。あるいは既に、語りつくした後(のち)なのかもしれない。
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