■第一階層 -光届かぬ世界へ 大規模探索。そして『黒い卵』が発見された。 遺跡へ足を踏み入れると、微かに耳へと入ってくる「音」の存在に最初に気づく。 それは岩と岩との間に風が通る音のようにも、水滴が地面に落下する音のようにも聞こえる。ひとつの音それぞれは、途切れることなく飛び込んでくるという。 遺跡の中には点在する擦れた壁画。ほとんど形は残っていないが、階段のようなものがあった。 壁画や階段のようなものは勿論、「大規模遺跡」と呼ぶに相応しい規模の洞窟‥‥この遺跡が、暗号文が発見される現在まで知られることなく眠っていた点に疑問が湧いてくる事だろう。 そして壁には。まだ新しい、だが、遺跡が発見されてからの時間を考えると古すぎる、『獣人』の爪の跡があった。 遺跡の最奥ではないことを示すもの。 まだ暗く、不穏な空気をかもし出す、下へ下へと続いていく道が存在した。暗く開いたその道への入り口は、踏み込むのを躊躇わせるような、そんな気配を放っていた。 -下層への道程 大規模探索より日を経て、再び。 風雨で磨耗した石造りの階段を降りれば。入り口からの光は遠く、そこは一寸の闇である。 湿った土と所々に突き出した岩、壁には古い壁画が認められ、明らかに人の手が加えられた石材が見受けられた。 壁画。その数から洞窟に何らかの文明があった事が伺える。 壁沿いに少し歩けば、やがて壁面に暗い穴がぱっくりと口を開けている。穴もまた、明らかに人の手が加わったものであった。 天井部は歪な形だが、側面はなだらかに研磨され、地面は階段状の段差が下へと続いている。 時おり流れてくる風――それは奥が行き止まりでない事を意味していた。 通路は真っ直ぐではなく、下りつつ曲がっている。横幅は人三人が並んでも余裕があるが、天井は飛び回るには低い。 途中、長虫NWに遭遇するも、通路の終わりに到達する。 下層から吹き込む風。それは低く――まるで地底から唸る様に――響くのだった‥‥。