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    <title>本編</title>
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    <title>平穏願うプレリュード</title>
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    <description>
      　正直、怖かった。
　ナニカ、ではなく、ナニモカモが。
　フェンリルはとても怖かった。

　移動しながら、これからどうなってしまうのだろうと、フェンリルは考えた。
　あの時、血塗れの雨が降る戦場跡で、祈祷は言った。

『生きろ』

　単純明快で、問題ですらない、含みすらない単純な答え。
　――純粋な意思。

　それはフェンリルには楔のように打ち込まれていた。
　形は関わらず、あらゆる場所に、生きろというその言葉があらゆる意味で磔になっていた。
　その楔は、脆いフェンリルの衣を簡単にはがしてしまう。

　たとえばそれは決意であったり。
　たとえばそれは後悔であったり。

　たとえばそれは――不安であったり。

　多種多様。
　その姿は一つどころか、両手の指を使っても足りない。
　強いて言えばどれもこれもが、混在しあっていること。
　相反するものすらフェンリルには存在すること。
　その結果が、募り募っていること。

　これから先の、不安が彼女にのしかかっているのだ。


　そしてそれは、思考を負へと向かわせる。


　最初は単純に、死にたくないと言う感情だった。
　誰もが持つ一過性のようなもの。
　事実、フェンリルはそれを耐えた、自分自身であるが故に、他者を、他者に向ける感情を傷つけるには至らなかった。
　けれどもそれは次を読んだ。
　負は連鎖する。
　負から不へ、不から無へ、絶望にも似た何かを背負って、証明する。

　やがてフェンリルは祈祷の死を考えた。
　そして、今だ死しているかどうかが不明瞭な、自身の仲間達を考えた。

　まだ、壊れない。
　フェンリルは耐えている。
　生きると決意したのだから生きなくてはいけない。

　祈祷にかけてもらった一つのフード。
　抱えるように持つソードカトラス。
　自分のものであり、祈祷のもの。

　それがある限り少なくとも、フェンリルは皮をはげなかった。

　だと言うのに、自分の思考はさらに悪化する。

　考えてしまった。
　絶対に考えてはいけないのに。
　絶対に大丈夫だと思っていないとダメなのに。

　タクミ・エンジュ。

　彼女のもう一つの支柱。
　とてもとても大好きな、最愛の人。

　もし、彼が死んでしまったら。


　ジブンハイッタイドウスレバイイノダロウ。


　答えなど、絶対に見つからない。
　それはそこで何とかストッパーが働いたからか、それとも。

　目の前に、タクミの姿が見えたからか。


　――


　全員で帰る。
　全員で救う。

　タクミはいった。
　ならば、その中に自分は一体含まれているのだろうか。
　含まれている。
　当然だ、自惚れではなく、タクミ惚れ。

　確信している。
　フェンリルの一番大好きなタクミ・エンジュという人間は、そう言う人間だ。

　だからだろう、フェンリルは座り込んだ。
　歩きつかれたからか、緊張が解けたからか。
　見晴らしのいい草原の、丁度岩陰になっている部分、別の場所からは死角になるそこで、足を休めていた。
　ずっと抱え込んでいたソードカトラスを地面において。

「ふぅ……疲れまし、た」

　大きく息を吐き出しながら、目の前に座るタクミを見る。
　今までと何も変わらない、人の好いような、そんな笑みを向けてくれる。

「大丈夫ですか？　もう直ぐ放送ですし、大分時間も経っていますからね……疲れたでしょう？」

　様子を伺うようなタクミの言葉に、フェンリルは素直に頷いた。
　否定も、拒絶も今はしないほうがいい。
　彼に頼ってしまった方が、体を休めるには丁度いい。

「そうですか……ゆっくり休みましょう。
　多分、まだ先は長いですから」

　そういって、タクミは水を取り出す。
　――どのデイパックにもはいっている基本的な支給品の内のひとつだ。
　倣って、フェンリルも同じように水のはいったペットボトルを外気にさらす。

「…………いきなきゃって、思ってるんです」

「……それ、は？」

「――大切な人が、死んじゃったんですよ。
　簡単に、当たり前みたいにぼろぼろになって。
　その人が言ったんです。
　生きろ、って」

　沈黙して、タクミは聞く。
　恐らく、誰だと聞きたかったのだろう。
　フェンリルの大切なその人は、多分タクミにとっても近しいはずだから。
　けれど、だからこそ、聞かなかった。
　聞け、なかった。

　ただ沈黙の末、それを破り、一言。

「がんばりましたね」

　フェンリルを褒めた。
　つらかっただろう。
　悲しかっただろう。
　不安だっただろう。

　だからこそ、タクミは自分の意思をかき回す。
　目の前の少女のために

「……怖かったです。
　苦しかったです。
　すごく、すごく悲しかったです。
　でも、いきなきゃって、生きないと、ダメなんだって。
　あの人は、確かに生きて、死んだから！」

　その不安は、恐らくタクミと出会わなければ、フェンリルを押しつぶしていただろう。
　そうでなくとも負荷を書け、自分自身を危ういところへさらしてしまうものだっただろう。
　だけれども、目の前にタクミがいる。
　フェンリルを慰めてくれる、最強の味方がそこにいる。


　――ニコリと、いつものように笑っている。


「もう、大丈夫ですよ」


　それだけでもう、フェンリルは限界だった。
　ただ無言で、タクミにすがりついた。


　――

 
 

「ここからもう少し進めば、ここでであった仲間がいます。
　恐らく、かなり頼りになるはずですよ」

　いくらかの時間が立った。
　どれほどのそれかは解らなかったが、タクミはやっと、無言の沈黙を破る。
　そういって、たちあがる。
　少し影に大われ、タクミの姿がフェンリルからはぼやけて見える。

　手を伸ばし、タクミはニコリと微笑みかける。
　残念ながらそれはフェンリルに伝わっていなかったが。
　とかく、フェンリルは右手を伸ばす。
　タクミの下へ、自分を吸い寄せるかのように。

　しかしそれは、叶わない。


　唐突に襲い掛かってきた爆風。
　大地を切り裂いて余りある体を可笑しくしてしまいそうな暴音


　原因は、日陰になっていた岩の塊が、破壊したことによるものだ。


　――


　一つ、ゴーヤはにやりと笑う。
　訳は何も考えない、自然と出たから、自然と笑う。当然だ。理由を後付けるなら幾らでもできる。だが今は目の前を見る。
　……そもそもそれが恐らく、ゴーヤが笑むわけなのだろうが。

　敵は二つ。
　すぐさま対応し、立ち上がり警戒する男が一人。
　少し反応が遅れたものの、それでも十分及第な速度で身構える女が一人。
　どちらも多少は戦闘慣れしているだろう。先ほどの戦闘と比べるとどちらが上質か、問うとなれば疑問だが、どちらも恐らく換わらないだろう。

　ゴーヤは最上の結果を、最上の行動で得る。
　それによっていま、ここにいる。


　――


　どちらの掛け声があるわけでもなく、両者の戦闘は開始された。
　強いて始動を上げるなら、思わせぶりなゴーヤの構えに、思わずタクミたちが反応したと言ったところか。

　言うまでもなく、まず動いたのはタクミだった。
　どこからか取り出した淡い水色の警棒。
　一度扇げば風を起こし、二度仰げばタクミによって風刃へ変わる。

　無色の一撃はそのままゴーヤへと迫り、場違いな得物に驚愕に似たものを覚えていたゴーヤへ突き刺さる。肩と膝、きっちり二発、ゴーヤを切り裂いた。

「何……？」

　多少、眉をひそめるゴーヤ、次へ備えつつ、ならば接近しながらと考える。
　続けざま、迫るクナイのような形をとった氷の刃。
　二個、三個と出来うる限り回避の困難な隙間でもって接近する。
　それをゴーヤは意味もなく金棒を振るって弾き落とす。　
　とはいえそれで隙を作るゴーヤではないが。

　続けざま、二度三度、タクミが警棒を振るいながら接近する。
　今度は速度もたいしたことはない、人間のそれ、だが恐らく本命は……考えて合点がいく。
　タクミの力、どういった前提のものかはともかく、それは間違いなく風だ。

　面倒、だがそれ以外はない。
　見えないのならば、見えない状態で戦えばいい。
　非常にごく単純で、簡単な思考。だと言うのに、まるで天才軍師の策を破ったときのような、そんな笑みをゴーヤは浮かべる。
　単純にゴーヤがそれを意識しているか意識していないか、それに関わらず戦闘を、笑んだまま彼は続行させる。

　先行して喰らいつく風の一薙ぎ、それを金棒で軽く振るい落とす。
　原理は単純で突風に、それ以上の威力で返しただけである。
　それを感じ取ったのか、タクミが表情を険しくさせる。
　読み取ってみれば、風自体はあくまで密度を上げただけであるが、速度は人間の出せるものの数倍である。それを軽々と薙いだことに、驚愕を隠せないらしい。

　バカバカしい。

　当然じゃないか、考えつつ。
　さらに迫るタクミの警棒を、丸ごと金棒で押し返す。
　剣のような風を纏った警棒に対し、そもそも大きさからして桁が違う金棒。
　せめぎ会えと言うほうが無理だというもの。
　ならば、とそれを補助すべく、フェンリルが動く。

　生成したのは一つの礫、先ほどの刃と同じく鋭くとがった一本槍。
　両手で抱えてから、一気に解き放つ。

　それは一瞬の交錯を行い、タクミを吹き飛ばそうとしていたゴーヤの元へ、弧を描きながら迫って来る。狙うは片足、その足場だ。
　一瞬、目の前に集中していたがために気がつかなかったが、それでもすぐさま凶弾に気がつく。
　流石に放置は不味いと判断したか、一歩退いて、金棒を構えなおす。

　再び交錯するタクミとゴーヤ、どちらにとっても、ここからが本命。

　一瞬の交錯。
　タクミは普段であれば笑みで細めるその両目を、敵意でもって鋭くしながら。
　ゴーヤは戦場には幾らか場違いな風貌でもって笑みを湛え。

　激突する。
 
　耳を割っていくかのような轟音。
　主はゴーヤだ。一つ一つが大地にどうしようもない亀裂を与える一撃、生身で受ければどうしようもなく、タクミ自身、ギリギリでせき止めるので精一杯だ。
　そも、ゴーヤはこの状況を楽しんでいるように見える。
　じわりじわりとタクミを追い詰める。
　それにゴーヤは愉しみをえている。

　そこだ、そこを狙うしかない。

　目の前の存在は恐らく自分たちよりも数倍上手、こうして打ち合うことも二対一であること――それも、連携を手馴れているタクミとフェンリルだからこそだろう。
　コレがもし、即席のコンビであるとしたら、ゴーヤにいとも簡単と、捻り潰されてしまっていただろう。

　相性の問題もある。
　タクミたちの見たところ、ゴーヤは直線的な近接型。
　比べると、タクミもフェンリルも中衛に位置する人間だ。
　もしコレが前衛の人間であるとしたら――
　少し、まだ学園にいるであろう同じ風を扱う能力者を、タクミは思い浮かべた。

　なんにしても、結局、自分に出来ることは単純に、一つしかない。
　下手に動けばあの金棒の餌食になりかねない。
　ならばこうしているしかない、時間稼ぎしか、出来る方法はない。
　むしろキーはタクミではなく……


　そう考えたときだった、膠着していた戦闘が、一気に終息へ加速する。


　ゴーヤが“それ”に気がついたのは偶然だった。
　時間稼ぎにも限界を向かえ、後は押し切るのみだと、力を込めたとき、ゴーヤはある種の違和感を覚えた。それは感覚に訴えるものだ。
　そして、それを理解する。

　この違和感、可笑しな感覚、それは凍えだ。

　最初に抱いたのは、驚きだった。疑問と言い換えてもいい。
　それが一体なんなのか、興味がなかったというのは、流石に嘘が酷い。

　結論から言えば、それは文字通り――というのも少し可笑しいが、冷気だった。
　足元に漂う薄い氷の幕のようなもの。
　だが、原因まではわからない。
　何故か、何故だ。ふざけているのか。
　何度か意思を確認し、ゴーヤは果たして、それに気がつく。

（氷がない……だと？）

　フェンリルが放った妨害用の氷、たしかゴーヤの足元に突き刺さり、そのままだったはずだ。
　と、いうことは――


　気がついた時にはもう遅い、ゴーヤの全てが、そうして凍りついた。


　足元が凍りつき、身動きが取れなくなる。
　段々とそこから氷がゴーヤを絡めとり始める。
　ゆっくりと、しかし確実にゴーヤを蝕んでくる。

「ぐっ！」

　流石にそれは、苦悶の表情を浮かべ、ゴーヤも対処する。
　段々と凍え、動けなくなるからだ。
　魔術のような力を使おうにも、言葉自体が回らない。

　ならばとそのまま体を回して――全力でタクミに殴りかかる。

　一瞬の事だ、構えたまま、彼を守る風の刃ごと、彼を吹き飛ばし、死に至らしめるだろう。
　――けれども、そこにいるのはタクミだけではない。
　そもそも、コレの原因はもう一人――


　跳ねるような銃声があたりに響く。


　――フェンリルのものだ。
　ソードカトラスを怯えたように構え、ゴーヤを打ち貫く。

「ごぅっ！」

　うまく回らない舌が、ギリギリでそんな声を上げる。

（うそ――だろ？）

　あせったように、表情を変える。
　ゴーヤは何とか態勢を元に戻しながら、しかし自身の失敗を悟。

　既に、タクミは次の一撃を構え終わっている。

「これは――余り人には使いたくはなかったのですが。
　だからこそ、貴方へとこれを使いましょう――！」

　例えるなら、テニスのバックハンドのように構えられたタクミと警棒。
　存分なタメを持って、それは放たれる。

「風が風を呼び、必殺へ至らしめる。
　もと来た道に、逃げ帰りなさい――！」

　風が風を生み、それが刃とばり、ゴーヤを傷つける。
　最後には、再び風を生み、そして――


（ち、ッくしょおおおおおおおおおおおおお！）


　声にすらならないゴーヤの叫びが、こだました。


　――

　フェンリルの元へ向かい、倒れこむようにタクミは腰を降ろした。
　それに駆け寄ってくるフェンリルを抑え、一度大きく息を吐く。

　ふと、ずっと警棒を握り続けていたらしい手を見ると、赤く腫れたようになり、少し汗が滲んでいた。

　緊張――もしくは緊迫。
　なんにしても変わらない。
　それはおそらく、恐怖も混じっていただろう。

　何だか、実感もない。
　こうすることに違和感も、義務感も、嫌悪感もない。
　ただやるべきことをやっただけ。
　守ったのだ、フェンリルを。

　――助け合ったのだ、お互いが。

　まだ、探さなくてはいけない仲間がたくさんいる。
　だったら、休憩などしてられない。

　どうだろう、まずはあの二人と合流すべきか。
　ならば――と考える。


　その時だった。


　タクミは、非常に嫌な違和感を、ふと覚えた。


　――


　――ゴーヤには非常に強力な壁のようなものがある。
　これは単純には突破できるものではなく、強者に制限がかかるこのゲームでも変わらない。
　対処法は、精々レベルを上げて物理でなぐるか、そもそもダメージ以外の方法で倒すしかない。

　たとえば今回、フェンリルはゴーヤそのものを凍らせてしまうべきだったのだ。
　倒れた後も、氷を張りなおし、身動きが取れなくするべきだった。

　ゴーヤ自身そうなるものと思っていたのだ。
　けれども、タクミの詰めが甘かったか、それとも性格的に甘かったか、そのおかげでゴーヤは窮地に一生を得た。
　これは単純な幸運。
　戦闘の決着をタクミがフェンリルに任せていればどうなっていたか解らない。

　だが、ゴーヤはこうして立っている。
　不死身のように、立ち上がる。


　――


　最初、ナニが何だかわからなかった。

　フェンリルはへたりこみ、硬直している。
　動くことは、ままならない。

　ドウシテ？

　ナニガドウナッテイルノ？

　メノマエニアルノハナニ？

　ナンデ？

　ナンデアイツハタッテイルノ？

　ナンデ？

　ナンデ？

　ナンデアイツハ。
　ナンデタチアガッタノ。
　ナンデホノオヲウッテクルノ。
　ナンデウゴケナイノ。
　ナンデシンジャウの。
　ナンデゴメンもイエなイノ。
　ナンデタクミサンはこッチにキテイルノ。
　ナンデ私のマエにタッてイるの。
　ナンデ私をカバうヨウにしていルノ。
　ナンデ両手を広ゲテ守ろうとシテいルの。
　ナンデ死にそうナノを喰ラッテたトウとしているの。
　ナンデ。
　ナンで。
　ナんで。
　なんで。
　なんで。
　なんで。


　ナンデ、タクミさんは笑っているの？


「――もう、大丈夫ですよ」


　右手を伸ばして、立ち上がらせようと。
　救おうと。
　守ろうと。

　だったら、だったら、どうして、届かない。

　目の前にいる人の右手が、やがて、ゆっくりと――


　――

 
　愉快。

　痛快。

　爽快。

　幾ら言葉を並べても足りない。

　最高だ。

　目の前の茶番を、ゴーヤは素直にそう思った。

「ハ――ハハ――ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

　やがて大声をあげ、笑い出す。
　目の前の存在全てを、生きる全てを無様だと切り捨てるように。

「バカだ！　最高のバカやろうだ！　自分が守れなかったってのに背を向けて、守った気になって死んでいきやがった！　さいっこうのクズやろうだ！」

　その声は、以上に響いた。
　フェンリルに、だけではない。
　辺り全て、嫌に響き渡るそれを、ゴーヤはにやりと笑う。

　視線の先。
　ゆっくりと崩れ落ちる、一人の死。
　ただ、フェンリルはそれを無言で待つしかない。

「嘘だって言いたいのか？　残念だなぁ！　現実なんだよ！　目の前でくそみてぇな無駄死にさらしてくれたバカやろうも、それをぶっ殺してやった俺っちも、俺っちに嬲り殺されるおめぇも」

　全部。
　全て。
　一切。

「幻想なんかじゃ、ねぇんだよぉ！」

　気がついた時には、ゴーヤはすでにそこにいた。
　目と鼻の先、フェンリルの真正面で、その顔を笑みにゆがめている。
　聞くに堪えない、嫌な音。
　ゴーヤの右腕が容赦なくフェンリルを痛めつける。

「……ぁぐ」

　思わず漏れる声。
　けれども、意思はどこにもない。
　それを悟ったゴーヤはにやりとその笑みをさらに深める。

　一瞬の間。

　一時停止のビデオのように止まっていたそれが動き出す。
　倒れこむようになるフェンリルの鳩尾を、ゴーヤは一切のためらいなく、踏みつけるようにけりこむ。

「悔しいか?　だったら恨んじまえよ」

「が、あぐぅぅぅ」

　一つ一つ、教え込むように、ゴーヤはフェンリルを踏みつける。
　容赦なく、そもそも、感情すらなく。

「恐ろしいか?　だったら怯えてみろよ」

　繰り返す。
　お決まりの文句のように、何度も、何度も。

「殺したいか?　だったら――」

　より一層、ゴーヤは振り上げる足を持ち上げる。


「死んじまえよ!」


　すさまじい衝撃。
　耐え難い、苦痛。

「あ、くぁアアアアアアアアアアアアァアアアアぁああああああああああああああ!!!」

　何かが折れる、音がした。


　――その時、だった。


　一瞬にして、ゴーヤは吹き飛ばされた。


　――

 
　何があったのか、その瞬間は理解できなかった。
　それを理解したのは地面を二、三度バウンドしながら地面を転げまわった後の事。
　今まさに、自分を覆う、激痛。

　正体は――そう、水晶だった。

　広い広い草原の、異質とかした戦場跡から、ゆっくりとゴーヤを覗く影がある。

　シェルロッタ、クリスタルのように、ただ佇んでいる。

「――無様といえばいいかな、それともざまあないと貶めるべきか、さて」

　それははっきりと、ゴーヤの元へ聞こえてきた。

「な……んだよ、おめえは!」

「名乗る意味があるのかな？　私が、お前に」

　――ふざけるな。
　ふと、そう考えた。
　よぎったと、言っていい。

　それが、彼の非常に脆い防波堤を決壊させた。


「ふ、っざけんじゃねぇぞォぉぉォオオオオオオオォオオオオオ!!!」


　一瞬の業熱。
　その後に、ゆっくりと、“それ”が顔を見せる。

　“それ”は太陽だった。
　紅く滾り、大地を照らし、空を晴らす。

　紛れもなく真紅のような、赤い紅い炎の塊りだ。

　人であれば命はなく、一瞬で炭へと姿を変えてしまうだろう。
　――明らかなオーバーキル。
　容赦のない、殺戮の一撃。

「オレっちは負けねぇんだよぉぉ！　おめえらみてえな奴がでぇきれぇなんだ！　だから！　打ち殺してやる！　ぶちころして――」

　そこまでだった。


　上空、その一撃は、太陽すらも飲込んで、一つの罪へと叩きつけられる。


　――審判「ラストジャッジメント」――――それが、その罪深き裁判の名だ。
　青白くひかり、ゴーヤを飲み込むそれだ。

　ありえない。
　ありえない。

　何故だ。

　何故死ななくちゃいけない。

　何故こんな痛みを覚えなくてはいけない。

　オレっちは――

「ぶ、ちころ――ブチコロ、ブチ……コロ――ブチコロブチコロブチコロブチコロブチコロブチコロブチコロブチコロブチコロブチコロ――ッッ!!!」


　そして、それは終わりを告げた。


　――


「判決、地獄行き、誰も救えないその命、一度地獄で洗い流してくるがよろしいでしょう」

　四季映姫・ヤマザナドゥはその声を確りと張らせ、有無を言わせぬ口ぶりで、それ“だったもの”に告げる。

　――ゴーヤは跡形すら残さず消滅した。
　だからこそ、映姫はこうして消えた先へ、言葉を残す。

「――絶望ではありません、希望を、貴方はそうするべきなのでしょう」

　そして続けた、区切りの後の言葉。
　振り返り、誰へともなくそれを告げた。

&amp;color(red){【タクミ・エンジュ＠ＨＡ　死亡】｝
&amp;color(red){【ゴーヤ＠コロッケ　死亡】｝

【場所・時間帯】B5、橋の手前、昼前

【名前・出展者】フェンリル＠Heroes Academy
【状態】精神的ダメージ大　体の各所に打撲のダメージ
【装備】ソードカトラス＠BLACK LAGOON
【所持品】基本支給品一式、不明支給品一品、祈祷のデイパック｛基本支給品一式、おたま＠現実、替えの弾薬｝
【思考】基本：生きて帰る。殺し合いには乗らない
１：――どうして。
２：絶対に生きて帰る
３：出来たら他の生徒達と合流したい
※武器は持っていますが、殺し合いに乗るつもりはありません
※描写しませんでしたが、タクミ達と一緒に北上して水色エリアに行くつもりです

【名前・出展者】シェルロッタ＠FINAL FANTASY CRYSTAL CHRONICLES Echoes of Time
【状態】健康
【装備】なし
【所持品】基本支給品一式、不明支給品×1～×3（確認済みかと思われますのでお任せします）
【思考】基本：殺し合いには乗らない
１：……
２：北上して水色エリアに行く

【名前・出展者】四季映姫＠東方project
【状態】健康
【装備】なし
【所持品】基本支給品一式、不明支給品×1～×3（確認済みかと思われますのでお任せします）
【思考】基本：殺し合いには乗らない。もし乗っている者が居れば説教する
１：今は、誰も絶望すべきではないのでしょう。
２：北上して水色エリアに行く


――

 
前の話
|048|[[同じ場所に居たクラスメイト]]|

次の話
|050|[[第一回放送]]|    </description>
    <dc:date>2011-06-12T11:46:18+09:00</dc:date>
    <utime>1307846778</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/64.html">
    <title>無法無駄地帯</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/64.html</link>
    <description>
      　彼は、だからこそ何も出来なかった。
　目の前にあるのは一つの凶器。
　戦いのために振るわれる拳と。
　殺しのために振るわれる銃と。
　それらは今、何の力も持たない彼を簡単に追い詰める。

　一瞬、その油断だけで、彼は窮地へと陥った。

　それ故に、死の瞬間すらも一瞬だった。

　タクト・エトミヤの一生はあっという間すらなく幕を閉じる。


　――


　ネゥ・トロワロゥは憤慨していた。
　ここは死の戦場。
　殺せるものは殺し、抗うものは抗う。
　その中には絶対の有利不利があると少なくとも彼女は思う。
　そして尚且つ、それがいい。
　彼女は有利不利を楽しむ存在であるし、そのためならば自身を傷つけることすらしよう。

　だからこそ、許せなかった。

　彼女の力に制限が掛かっている。
　その事に、直ぐに気がついた。
　そして、それ故の憤怒。

　ネゥは許さなかった。

　対等などありえない殺し合いに対等を持ち込んだことを。
　だから決めた、全て殺す。
　不利である有利である状況を作り出す。

　そのために彼女は、このゲームの主催者すら殺す決断をした。


　――


「運命ってわかるかしら？　偶然とか必然とか」

「なんだぁ、なにを唐突に」

「暇なのよ。人間もいないし悪魔もいない、ここにいるのは狂人だけよ？」

「おめぇそれ全部賄えるじゃねぇかよ」

「自家発電よ」

「…………」

「サキュバスって知ってる？」

「脱線」

「運命って何？　それを決める必然ってなに？」

「ベリィィィイイメロンだ。それ以外にはありえねぇ」

「つまり、そう言うことよ」

「なるほどなぁ……て、ぉぉおおおおおおい、流石の俺もそれには賛同できんぞぉおおお！」

「そう言うことなのよね」

「私にとってベリィメロンは即ち全てだ！　運命などと言うただ一単語で語れるものかぁぁぁぁあ！」

「そう言うことなのよ」

　繰り返す。
　レミリア＝スカーレットは何度でも繰り返す。
　無言で、無音で、無法で、それだけは幾度となく繰り返す。
　そもそも繰り返すどころの話じゃあない、レミリアも人が悪い、解りきったことをまるで空気のように言うのだ。
　それほど暇だったのだろう。

「運命とはつまりそう言うことよ、全て、全てなのよ。
　誰かと会話をするのは運命であるし、誰かを憎むのはつまり運命。
　わかるかしらね、つまり――」

　構える。
　たったそれだけだった。
　紅を持つ血。
　それが一つ、世界から抜け出る。
　しかしそれは抜け出ないまま、当然のように、雪山の、その場所へ叩き込まれる。

「が、ぎゃがぁああああああああああああ!!」

　中村栄一、隠れることを選んだ人間の末路は、酷く単純なものだった。

「こういうこと、なのよね」

　それをビクトリームとウーは酷く不思議そうに見ていた。


　――


　ネゥの手元にあったのは銃とラジオ。
　どちらも彼女からしてみればすさまじく技術の必要な代物だった。
　それに彼女は、どうしようもない有利を感じたのだ。
　優越。悦に浸ると言っていい。

　そうしてだからこそ、彼女は圧倒的な状況で敵を圧倒していた。

　相手は杖のような枝のような、言うなればヤドリギとでも言うべき木から、力を放つ。
　能力を使用しない、銃というのも使用には慣れず、あくまで近距離の専門であったネゥからしてみれば不利な話だ。

　シェルシア・ダーク。

　この殺し合いに巻き込まれた、単純な姉妹の姉である。

「……おつよい、ですわね」

　それでも、ネゥはシェルシアを圧倒していた。
　それは単純な年の功か、それとも技術の問題か。

　幾多かの魔法を操る少女の、手腕を持ってなお、舞い続けるネゥには届かない。

「貴方もよくわからない方ですね。一人では苦戦をするのは当然のはず。
　だったら何故戦ったの？　貴方は強すぎはしないですが、一人前とはいえたはず」

「……愚問ですわね」

　ヤドリギを、少女は構える。
　ネゥという敵を持って。
　それを迎え撃つ為に、あくまでそのためだけに。


「それが、人生ですの！　わたくし、シェルシア・ダーク、たった一人の！」


　そこから迸る、幾重の雷。
　速度を知らない電光石化！

　けれどもそれを。

「……納得、不利な人間だったんですね」

　ネゥはただ一度、軽く飛ぶだけで、回避した。
　そうして、今まで遣うことのなかった殺傷能力を、そうしてから解き放つ。


「大好きですよ、そう言う人」


　どうしようもなかった事だ。
　目の前で、悪意を込めて、人が殺されて。
　飛び出さないと言う選択肢は、なかったのだ。



【場所・時間帯】Ｆ７　寒村　昼前

【名前・出展者】ネゥ＠トロワロゥ＠戦争系
【状態】健康
【装備】拳銃（種類は不明）
【所持品】ラジオ＠某テイルズ　基本一式×３　不明支給品×２
【思考】
基本：有利不利を余すところなく堪能し、全部殺す。
１、イイカンジですよ。
２、さて、どうしようかしら。

【ラジオ＠某テイルズ】
ナナカが始めて弄った機械。
超性能、ただしここでは何の意味もないためただの工具箱。
－ドライバーは紛失中。
 
 

　――


「つまり、ね」

　もう一度、レミリアは構える。
　終わりではなかった、一つではない。
　運命とは、一度変わってもまた替わる。

「ぁぁぁああああああああああ!!」

「こうやって、誰かを殺すことも、運命なのよ」

　目の前に、少女が飛び出してくる。
　レイン・ダーク。
　その行動原理は、皮肉にも自身の姉とまったく同じだった。

「神槍「スピア・ザ・グングニル」――――」

　紅く放たれる宣言。

「意味は、必ず穿つ」

　まるで、一つの運命のように。

　そうしてもう一度、紅は舞った。


&amp;color(red){【タクト・エトミヤ＠Knight Turtle&#039;s Story　死亡】}
&amp;color(red){【中村栄一＠列車　死亡】}
&amp;color(red){【シェルシア・ダーク＠三つ巴の世界　死亡】}
&amp;color(red){【レイン・ダーク＠三つ巴の世界　死亡】}

【場所・時間帯】青色エリア・F6・雪の中・昼前

【名前・出展者】レミリア・スカーレット＠東方project
【状態】健康　ちょっと魔力消費
【装備】ロベルタの傘＠BLACK LAGOON、ビクトリームの魔本＠金色のガッシュ！！
【所持品】基本支給品一式、ほんやくコンニャク＠ドラえもん(使用済)、不明所持品１品
【思考】基本：ウーを利用しつつ、ゲームに乗り優勝する。ウーは使えなくなったら殺す
１：暇ねぇ、暇そうねぇ。
２：こいつ等、どう利用してやろうかしら
※雨は無理だけど、雪ならセーフのようです
※ウーの言葉が分かるのは、ほんやくコンニャクを食べたからです


【名前・出展者】ウー・クリストファ＠いぬ
【状態】健康
【装備】ソーディアン・アトワイト＠テイルズオブデスティニー
【所持品】基本支給品一式、ベリーメロン＠金色のガッシュ！！、不明所持品１品
【思考】基本：レミリアについていく。レミリアには信用しきっている。ビクトリームは遊び相手
１：うー♪
２：ビクトリームって、おもしろいなぁ


【名前・出展者】ソーディアン・アトワイト＠テイルズオブデスティニー 
【思考】１：い、一体なんなの……？
２：で、彼女達は何を喋ってるのよ
基本：出来る限り助言はする。また、もし持ち主が殺し合いに乗ったらなんとか説得する 
※ロワ内では誰でもソーディアンの声を聞くことができます 
※また、威力は落ちるもののソーディアンさえ持てば誰でも晶術を扱えます 

※相変わらず状況が把握できていません。

【名前・出展者】ビクトリーム＠金色のガッシュ！！
【状態】尻と股間にダメージ小
【装備】無し
【所持品】基本支給品一式、不明支給品１～２品
【思考】基本：優勝する
１：ベリー・シィィィィット！！
２：なるほど、わからん。
３：今はレミリアに従う
４：どうにか魔本を取り返す

前の話
|041|[[もち巾着っておいしいよね]]|

次の話
|043|[[アロハ悪魔]]|    </description>
    <dc:date>2011-06-12T11:40:29+09:00</dc:date>
    <utime>1307846429</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/51.html">
    <title>混戦模様 ―朝方森の雫の中で―(2)</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/51.html</link>
    <description>
      　木暮は昂騰する意識を何とか落ち着かせようとしていた。
　あの化物みたいな少女を追いかけるためにもぐっていった先は戦場で、しかし少女の姿は無い。
　とかく、何とか戦場の様子を見ようと伺ったところ、丁度いい所に的があった。
　ゴールがあったからシュートした、そんな単純な感覚である。

　けれども、彼は非常に昂騰していた。
　訳は彼自身よく解らない。
　けれど彼の中でそれは芽生え始めているのだろう。

「うしし――」

　悪戯っぽく少年は笑って。


　横合いからの衝撃で吹き飛ばされた。


　木暮の意識はここで途切れる。


　その頃、ハスタ、シーナ、朱里の戦場を回るようにルビカンテと悟プリニーは戦闘を続けていた。
　正確には悟とプリニーがせわしなく逃げ回り、ルビカンテはそれを追っていた。
　単純にルビカンテがファイアを連打し、その衝撃で悟たちを追い詰めていると言ったところだ。

「しつこい男は……嫌われるぞ!」

　息を切らせながら無駄口を叩く悟。
　相当切羽詰っているはずなのだがそれでも自然と言葉が出るのは彼ゆえか。

　対するルビカンテは大分余裕があるのか、笑いながらそれを返す。

「私も男の尻は追いかけたくないものだな!」

「だったら退けよ!」

　即答で返しながら、しかしルビカンテの「断る!」という宣言を聞くまでもなく、悟は逃走する。
　これまで、飛行し、木々を利用しながら逃げ回っている。
　……のだが向こうはあろうことかその木々を全部ぶち抜いてコチラに進軍している。
　これではどうしようもない。
　疲労も馬鹿に出来なくなってきた。
　ジリ貧……という事もないだろうが、しかし向こうに限界の様子は見えなかった。

　ならば、と業を煮やした悟が隣で必死に追いすがってくるプリニーに声をかける。

「なぁ!　何とかならないのか!」

「む、無理言わないで欲しいッス!」

　とはいえそのプリニーも相当無理をしていた。
　彼はそこまで足が速いわけではない。
　直線であればダッシュできるがここは森、非常に入り組んでいて足場も悪い。
　飛行可能な悟と比べるとどうしようもなく移動しにくい。
　そんな中でプリニーは悟についてきているのだ。

「だ、だったらここを何とかしたら何かおごってやる。
　頼む、力を貸してくれ」

　悟はそれを知りながら、頼み込む。　
　殆ど思わず出たような言葉だ。
　しかしそれがプリニーには響いたようで、

「マ、マジッスか?　だったらオレがんばるッスよ?」

　ああ、とプリニーの問いに悟が肯定。
　するとプリニーは振り返り、飛び上がる。
　浮遊の時間は一瞬、木々の合間から、プリニーはルビカンテに狙いをつける。

　そしてそのまま、ひたすら連打。
　どこから飛び出してくるのやら、プリニー特有の連射攻撃がルビカンテに襲い掛かる。

「ぬ、ぉぉおおおお!」

　今までオプションとしか思っていなかった気ぐるみが突然動いたかと思えばコレだ。
　思わずルビカンテは驚愕する。
　全てが直撃……とはいかないまでも大分足止めされてしまう。
　その間に悟は大きく上へ飛び上がる。

「あぁばよ!」

　そんな叫び声を残して、どこかへ消えていった。

「あっ!　逃げる気ッスかー!?」

　思わずプリニーがそちらに叫ぶ。
　その瞬間、思い切り隙が生まれた。

「ぬぅん!」

　ルビカンテはすぐさまファイアでプリニーに狙いを運命、放つ。
　完全に無防備だったプリニーは回避すら出来ずそれを諸に浴び、黒焦げになって地面に激突する。
　ピクピクと痙攣するそれは、生きているようにも死んでいるようにも見えた。


その頃、ハスタ、ソウル、朱里の戦場。
　結局、やってみれば二対一から抜け出すのは簡単だった。
　ソウルの方へ踵をむけ、踊りかかる。
　武器はないが、何とか翼で猛攻に耐えつつ、そこへハスタが襲い掛かってきて、何とか奥へ抜けることに成功した。
　後は戦闘を始めた両者に牽制のように翼を放ちつつ、距離をとればよかった。

　面倒な話だが、複雑ではなかった。
　意識の話と肉体の話だ、その違いは当然のものか。

　その状態は結局、少し遠くから男の声が聞こえてくるまで続いた。

「ハスタ!　敵に逃げられた!　私も離脱する!」

　声の主は恐らくハスタと呼ばれた男と共にいた敵だろう。
　悟が相手をしていたはずだが、なるほど逃げたか。
　とはいえ目的地はわかっているから急げば出会えないことはないだろう。
　少し気になることはあるが、今はここを離脱するべき。

　朱里はそう考えると、すぐさま敵方へ背を向けた。

　それを誰かが気づくことは、終ぞなかった。


　後に残るはハスタとソウル。
　両者の優劣は歴然としていた。
　朱里の横合いがあったときはまだ少しやりようがあったが、今現在は完全に優位をハスタに持っていかれてしまっていた。

　渾身の大技もことごとく回避、もしくは当たっても直ぐに立ち上がられ、無駄になる。
　そして、コレならばいっそ……と考えたソウルは、大鎌を構える。
　しかしその時には、ハスタの姿は無かった。
　集中力が途切れてしまっていたらしい。

　殺人鬼がどこへ消えたかは解らない。
　先ほどの声に従ったか、それともソウルに止めを刺すために消えたか。
　どちらであろうと、油断してはいけなかった。
　だが、

「……あは♪」

　少女は油断した。
　勝ち誇ったような、よく見れば少しの安堵が見れる表情。
　それは場数を踏んでいないが故の慢心か、

　本来なら、相手は間違いなく格上であったはずなのに、

　ソウルは見誤っていた。

　ハスタが殺さずに入られないわけがない。
　殺人鬼は息をするよりも多く人を殺す、そういうものだ。


　――上空、木の上からハスタが現れる。


「あーああー」

　情けないような声でもって、思い切りよくハスタは箒を振り下ろす。

「なっ!」

　気がついた時にはもう遅い。
　その一撃は脳天を大きく揺さぶり、致命傷を呼ぶ。
　身動きの取れなくなったソウルは、もはやネギをしょった鴨にしか、見えなかった。

「お前、馬鹿を見るなら馬鹿にしたほうがいいぞ。
　なんてノン」

　ハスタは思い切り箒を溜めて、構える。
　それは本来ならば槍を得物とするハスタがもっとも得意とする、突きの構えだった。

においに誘われてそこへやってきてみると、先ほどまでそこは戦場だったらしい。
　あたしの周りには死体と、まだ死体になっていない生きた人間、そしてよくわからない気ぐるみが墜ちている。
　どれにも対して興味はないが、見覚えのある顔が一つ。
　名前は知らないが、現代に暮らしているであろううそつきの少年だ。

　後は銃で撃たれたらしい女の子と、その近くで気絶する切り傷だらけの女の子。
　それと少し遠くで仰向けに倒れる打撲の後が酷い子。
　どれもが戦場で敗北したんだね。
　正直興味はないけど。

　……特に助けるつもりはないので無視をする。　
　というか、様子を見に来るだけのつもりだったのでこのまま帰ろうと私は戦場に背を向けた。

　……その時だった。

　見に覚えのある気配が一つ。
　誰もが放つ、覚えやすいそれはつまり、殺気だ。

　振り返ってその主を確認する。
　打撲痕だらけの少女だった。

　恐らく一度は意識を失っていたと思うんだけど、無理をして立ち上がって。
　新たな客人であるあたしを見据えている。
　主を取って代わられても、まだ主の真似事を続けようとするか。

「は……あは、あはははははははは!　生きてるじゃないの!　生きてるじゃないの!」

　狂ったように笑い出す少女は、自身の得物であると思われる鎌を構えて、あたしを挑発する。

「殺せるじゃない!　丁度いいわ、刈り取ってあげる!」

「六銭文は必要かな?　キミのそれじゃああたしはころせないよ」

「ふ、っざけんじゃないわよ!　私は、私は!」

「わっからないなぁ、無駄骨は、嫌いなんだけど」

　少女はさらに激昂して、私はさらに呆れさせられる。
　そして、返す言葉を少女が口にしたのが、合図だった。


「暴走乱劇!!!」


　あたりの風圧が乱れるのを感じた。
　風を操るのかと、少し身構える。

　少しの間が空いて、躍り出たのは舞踏会の演劇か。
　風が踊り、舞い、そして歌う。
　そのどれもがどれもを作り上げ、一つは全てを成し、全ては一つを成す。
　暴走し、乱れてなお、それは踊り狂う。
　狂って狂って、回るそのさまは、ある雛人形を思い出す。

　けれども、甘い。

　あたしが抜き身の霧雨を抜く。


　たったそれだけで、全部終わった。


　風は絶たれ、割れた海のように、辺りへ散って消えていく。
　少女は呆けたように、息を漏らす。

「なん……で?」

「限界なんだよ、あたしがどうしようにも、キミは限界。
　もう無理だね」

　いいながら、少女の次より早くあたしは接近する。
　一瞬、あたしとこの子の視線が合う。
　そこに在るのは一抹の恐怖、人間らしい、いい感情だ。

「あ……ぁ…………」

「今まで、たくさんの人間を殺してきたのでしょう?
　だったら知るべきなんだ、その恐怖を」

　辺りには誰もいない。
　これは狂気だ、人間が得体の知れない何かに感じる狂気。
　殆どが妖怪であるあたし自身、それに当てられているのだろう。
　だから、自制は効くけど、今はしない。

　この少女はもう動くことすら出来ないだろう。
　介抱しても助からない、恐らく臓器がいくつかやられている。
　それでも動くのは驚きだが、今の暴走で破滅は決定的。

　だったらもう、終わらせてしまったほうがいいじゃないか。

　そう考えて、少女の首へ剣を振り下ろす。


「――人間を知れ!」


　まぁ、いいわけだけど。

――悟は無言で飛行していた。
　戦闘を行ったことによる疲れと、今後に感じる多少の不安。
　けれどもそれは、誰にも表することはなかった。


　表せる人が、いなかった。


【場所・時間帯】Ｆ３　上空　朝

【名前・出展者】謳方悟＠魔王武器職人専門学校
【状態】疲労中
【装備】剣
【所持品】剣・フランスパン・基本支給品一式
【思考】
基本：殺し合いとか今ンとこはその他だその他
１：早く見つけないと……
２：なんかヤバそうだなぁ
３：さて、どうするかなぁ

　――朱里は森の中を駆けていた。
　手元にはもう、何もない。
　不安は少ししかない、けれどそれがどうしても、引っかかってしまっていた。


　朱里には今、何もない。


【場所・時間帯】Ｆ３　森　朝

【名前・出展者】唄方朱里＠魔王武器職人専門学校
【状態】健康
【装備】黒いボールペン
【所持品】黒いボールペン・基本支給品一式
【思考】
基本：殺し合いとか今ンとこはその他だその他
１：何とか探そう。
２：これからどうしよう……


　――ハスタとルビカンテは移動していた。
　向かう先は特に決めていない、がこのまま行けば川の方にでるだろう。
　そこからどこを目指すか、彼らはそれを語り合おうとはしない。


　二人とも、両者が戦う際のシミュレーションを行っていたのだ。


【場所・時間帯】Ｆ２　荒野　朝

【名前・出展者】ハスタ・エクステルミ＠テイルズシリーズ
【状態】正常
【装備】霧雨製の箒＠東方project
【所持品】不明支給品×１　基本一式
【思考】
基本：皆殺しだりゅん♪
１、とりあえずは一緒にころす。間違って殺す。
２、移動するんだー
３、（脳内バトル中）

【名前・出展者】ルビカンテ＠ファイナルファンタジーシリーズ
【状態】魔力消費小～大
【装備】なし
【所持品】不明支給品×２　基本一式
【思考】
基本：強者と戦い、優勝する。
１、まずはハスタとの共同戦線。
２、さて、どこへ行こうか。
３、（脳内バトル中）
※魔力消費の量は次の書き手さんに任せます。

【霧雨製の箒＠東方project】
霧雨魔理沙が飛行に使う箒、
とはいえ本人はイメージ的な理由で使ってるので素人では飛べない。
ただし普通のものと比べると非常に頑丈でカビゴンが載っても壊れない。


　――春夏は、血を能力で流し取りながら、ゆっくりと移動していた。
　能力を使って、若干のけだるさを覚える。
　何か制限でも掛かっているのかと、当てのない移動を続けていた。


　手の中には、血をふき取ったばかりの首輪が収まっていた。


【場所・時間帯】Ｄ３　森の中　朝

【名前・出展者】秋冬春夏＠東方二次幻想
【状態】疲労小～中
【装備】霧雨の剣＠東方project
【所持品】銀製の箱　首輪（ソウルのもの）　基本支給品一式
【思考】
基本・まずは様子見、とりあえずは殺さない。
１、まずはルーミアを探そう
２、-ドライバーってどこにあるのかな。
３、飛んだりすると危ないからよしておこう。
※特に行き先は決めてませんが他人とは接触を絶つ方向です。


　――

　ここは既に何もない戦場。
　意識あるもの、命あるものは絶えている。
　誰もいない名もなき墓標。

「……なに、これ」


　そこに、ライラック・エルは足を踏み込んでいた。

&amp;color(red){【ソウル＝クレイシア＠三つ巴の世界　死亡】}
&amp;color(red){【プリニー＠魔界戦記ディスガイア　生死不明】}
&amp;color(red){【シーナ＝クレイル＠三つ巴の世界　死亡】}

　※プリニーが復活するか、そのままかはこの後の書き手さんに任せます。

【場所・時間帯】E3・朝・森の中

【名前・出展者】ライラック・エル＠星屑の幻想
【状態】正常
【装備】ソーディアン・シャルティエ＠テイルズオブデスティニー
【所持品】基本支給品一式、不明支給品×1～2
【思考】
基本：殺し合いはしたくない・コバルトさんを探す
１：なに……これ。
２：木に登ったらコバルトさん見つかるかな……
※ライラックが木暮に気がつくかは次の書き手さんにお任せします。

【名前・出展者】ソーディアン・シャルティエ＠テイルズオブデスティニー
【思考】
１：……あれ?　坊ちゃんは?
２：この子誰?
※ロワ内では誰でもソーディアンの声を聞くことが出来ます
※また、威力は落ちるものの晶術の使用も可能です

【名前・出展者】レミリィ＝ライフィルア＠三つ巴の世界
【状態】全身に切り傷。気絶。
【装備】杖
【所持品】杖、基本支給品一式
【思考】基本　とりあえず生き延びよー。
　　　　１．…………。

【名前・出展者】木暮夕弥＠イナズマイレブン
【状態】吹っ飛ばされた　気絶中
【装備】ワルサーP5＠現実
【所持品】基本支給品一式、予備の弾薬＠現実、奇跡の指輪＠ムシキング～ザックの冒険編～、立向居のデイパック(支給品未確認)
【思考】
基本：優勝して「ありえなかった未来」を現実にする
１：………………
２：「女性」が望む通り疑心暗鬼をばらまく
３：場合によってはヒロトも殺害する
※吹っ飛ばされた木暮の容態は次の書き手さんにお任せします。



前の話
|030|[[新しい目的地]]|

次の話
|032|[[温泉と三人]]|    </description>
    <dc:date>2011-06-12T11:27:26+09:00</dc:date>
    <utime>1307845646</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/50.html">
    <title>混戦模様 ―朝方森の雫の中で―(1)</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/50.html</link>
    <description>
      　というわけで。
　どいういわけで?
　あたしはよくわからないうちに森を目指しているのだった!

　いやまぁ、行く場所に困ったので剣を倒したらこっちになっただけなんだけど。
　それでもまぁ暑いよりは良いかと、『Ｅ３』に向かっているのだった。

　と、ここまでが状況説明だろうか。
　今の所誰かに出会うと言うこともないし、疲れや何かもない。
　あたしの体はこの程度で答えるほどやわではないのだ!
　まぁ、おかげで特筆することが何もないんだけど。

　そんなわけで森の中。
　あたりにぽつぽつと木が浮かんでいる。
　どうにも、道のようなものはなく、ただ歩いていれば迷ってしまいそうだ。
　まぁ、外の世界の人間なら……だけど。
　流石にあたしだって森の歩き方くらい心得ている。

　……で、目の前に人影。
　見る感じ“外”の子供っぽい。
　何だか目つきが悪そうな……悪がきって感じだろうか。
　もしただの子供なら、ゲームに反発しているかもしれない。

　わざわざ話しかける必要性はないかな……
　でも……

　いや、だからこそかな。
　ここは――話しかける。
　ルミャの事、このゲームに対する彼の事。あたし自身のこれからの事。
　結構悩みは尽きない。
　だったらいっそ、放しかけてしまうのも手か……

　彼と合流するつもりはないし、それに――


　彼、直ぐに死んじゃいそうだから。


　あはは、何考えてるのやら。
　まぁいいか。

　うん、どうでもいいや。

「ねぇ――」

　ぴくりと、彼は振り向いた。

「何さ」

　多少の緊張をもってか、それは受け入れられた。
　向こうは不遜と言うかなんと言うか、そんな視線を向けている。

「ちょっとあたしの知り合いを知らない?」

「頼みごとをする前に、名前くらい名乗ったほうがいいんじゃないの?」

「単純な話だからいいんだよ、あんたが殺し合いに乗ってなければ直ぐに済むはずだから」

　会話する気も、多分偶然だから、問題はないんじゃないかな。
　あるとしたらここで殺し合いを始めちゃうのは面倒ってくらいか。
　いや、あくまで精神的に……だけど。

「……まぁいいや。それで、どんな感じなの?」

　投げやりと言えば投げやり。
　彼はそんな感じの答えを出した。
　あたしはルミャの姿を思い浮かべながら、ある悪戯を思い浮かぶ。

「その子はね、金髪に白と黒の服を着てるの。スカートね?　黒が基調かな」

　少し思い出すように、彼は考えるしぐさを見せる。
　数秒ほど、ここまでの事を思い出しているのだろう。
　やがて答えが出たのか、顔を上げる。

「見たよ、うん、あの顔は忘れようがない、だって人を……殺してたから」

　何だか、凄い単純だ。
　まぁ、引っ掛けすら見せてなかったから仕方ないのかもしれないけど。

「……あ!　そうだ。その子さ、リボンをしてたんだよ、御札みたいなの、顔を見たなら忘れようがないと思うけど」

　だましてた。
　ごめんね、嘘はあたし、普通につくから。

「っ!　……てめぇ」

「だましたわけじゃないよ、言わなかっただけ。
　ただね?　もし普通に見てたんなら、普通に気がつくと思ったから」

　そもそも、その反応がダウトなんだよ。
　だって大分あいまいな説明したし、とぼけることも可能だったと思うからね。

「じゃあね。
　……鬼はうそが大嫌いなんだよ?　気をつけることだー」

　言って踵を返す。
　時間を無駄にしてしまったなぁ。
　早く別の場所に行こう。

　……背を向けるあたしの後ろで、何かカチャリと音がする。
　けれども、それ以上は動けないだろう。
　何せ常人が動けないような威圧を、こっちは行っているのだから。

 
　所変わって先ほどまで春夏がいた辺り。
　ほんの数分前までそこには人（モドキ）がいたのだ。
　そこに今いるのは二つの強者。
　片方はふざけたようなしぐさで箒を横なぎに振り回す。
　片方はそれを肉弾で受け止めながら軽くけりを放つ。

　箒を持つ者の名はハスタ・エクステルミ。
　対する徒手空拳はルビカンテ。

　であった途端にハスタが問答無用の投降勧告と言う名の襲撃を行ったのがそもそもの原因。
　とはいえルビカンテもそれなりに乗り気ではあったが、はっきり言ってこういったつぶしあいは好まない。
　相手は強者。
　だがその強者が多く入るとは限らない。
　今現在この戦いは拮抗――多少ハスタが押しているもの、切り替えしは十分可能だ――状態にあり、長く続けば消耗が激しい。

　ならば、とルビカンテは口を開いた。

「お前はメインディッシュというものをどう思う?」

　同時に押されている形であったハスタに反撃を仕掛ける。
　ハスタがルビカンテの攻撃を防いだところで、そこからファイアを放つ。
　打撃が勢いをもち、爆発する。

「ぐなななーん!」

　吹き飛ばされながら、ハスタはギリギリで着地する。
　ルビカンテは追撃をしようとはせず、代わりに後ろへ跳んだ。

「こう言い換えてもいいな。
　イチゴは一体いつ食べる?」

　両手でファイアを生み出しながら問いかける。
　向こうは狂人だ、これの意味を理解してもらえると助かるのだが。

　結果として、ハスタは箒を大きく自分ごと振り回しながら答えた。

「後から食べる、オレ、ケーキだいすきー」

　それを終えると箒を下ろし、振り上げてから肩に提げる。

「けってーい。オレがお前でお前がオレで、大作戦結構決行」

「まったく意味が解らんぞ」

　かくいうルビカンテも両手を握りつぶし、炎をかき消した。

　なんだかんだで凶悪な殺人コンビと言ったところか。
　武人と殺人鬼、目的が同じでも、随分と武人が有情に見えるが。


　そして――

　そこは戦場ではなく惨劇の生贄が移る祭壇だった。
　哀れな子羊が二つと、残酷な蛇が一つ。
　子羊の内一つは既に意識がなく、この状況であれば死は免れ得ない。

「…………う」

　意識を持つ子羊、シーナは思わず声を出す。
　思考の内から咄嗟に浮き出たような声。

「嘘!　いや!　レミリィ!　ねぇレミリィ!　起きてよ、おきておきて……」

　死にたくないと、シーナは言った。
　誰にでもなく願望として。
　当然それを、ソウルは否定する。

「嫌ねぇ、馬鹿みたい。
　生きるか死ぬか、貴方はそんな事を言える立場にないじゃない」

　せめてそのジャマなのをどこかへやってから言うべきだと、ソウルは笑った。
　笑って哂って、嗤った。

「そんな、む、無理ですよ。レミリィを見捨てるなんて、嫌。嫌。嫌!」

　気絶したレミリィを抱えたまま、シーナは後ずさりする。
　一歩、二歩、距離をとる。
　けれどそれはカタツムリと同じだ。ネズミと同じだ。
　踏み潰す側からしてみれば、鈍間な愚図にしか見えない。
　ソウルはひとしきり笑って、ずいっと顔を二人へ近づける。

　恐怖を大きく誘う笑顔。
　思わずシーナが悲鳴を上げた。
　息を呑むような小さなそれはソウルへ届く。

「それじゃあ、仲良く地べたを枕にすることね。
　安心なさい――冥府の扉は、貴方達を歓迎するわ」

　ゆっくりと顔を放し、絶対の余裕でソウルは語る。
　それはもはや決定した戦いの、強者ゆえの余裕。

　シーナは思わず目を瞑る。
　もうだめなのだと、息をのむ。

　いや、ソウルのそれは油断だった、と言うべきか。

　
「ど、ど、どいたー!」


　唐突に響いた少女の声。
　飛び込んでくる一つの塊。
　黒い羽と、どことなく平凡な少女。
　そして元気なハスタ氏。

　惨劇ののろしは、ゆっくりと消えようとしていた。

　事の発端と言うべきか。
　塔を目指そうとしていた朱里と悟（＋プリニー）の二人（以下略）は助けを求める叫びを聞いた少し後、先ほどコンビを組んだばかりのハスタルビカンテに襲撃を受けていた。
　まず最初にハスタが上から降ってきて朱里に襲い掛かってきた。
　朱里に加勢しようと悟が動いたところにルビカンテが襲撃、というのが大体の流れである。

　その後二人を囲んで戦闘開始と言ったところだったのだが、二人が飛び掛ってきたところでルビカンテが大技『ファイガ』を放った。
　コレにより朱里と悟プリニーは分断され、戦闘が一対一になった。

　ハスタとしても一人でゆっくり殺したほうがおいしかったので、この案は賛成である。
　こうして一対一になった……のだが朱里がそこで逃亡した。
　わざわざ戦う意味はないと踏んだのだ。

　その結果、逃げる場所を特に考えなかった所為で彼女はソウルの独壇場に躍り出ることになる。

　こうして三人――ソウル、朱里、ハスタが一堂に介する。
　最初に動いたのは朱里。
　この場からいち早く離脱しようと、牽制の羽を放ち、同時に飛翔する。
　その標的となったソウルは一度レミリィとシーナに意識を移すが、動くことは出来ないだろうと、すぐさま意識を敵に移す。

　丁度いい、

「質より量。全部纏めて吹き飛ばせばいいわ」

　得物の大鎌を大きく振るう。
　すると波のように分散された風刃が飛び上がる。
　それは先行する羽を全ていとも簡単に薙ぐと、続けて朱里に切りかかる。

　朱里にはそれは見えない、しかしふと感じた嫌な予感と共に、彼女は自身の体に翼を纏う。
　進行は残念ながら急停止だ。

「ぶにゃーんと」

　翼を払った朱里に襲い掛かったのは上空から飛び掛るハスタだった。
　よく解らない掛け声と共に、箒で朱里を覆うように降りかかる。
　朱里は一瞬あたりに視線を這わせ、多少のスペースがある後ろへ跳んだ。

　着地するハスタ。
　そこに、勢いよくソウルの大鎌が降りかかる。

　当然のごとく木製の箒で受け止めるハスタ。
　ソウルからしてみれば纏めて切り抜くつもりだった。
　だのに、結局箒以上のものには切りかかれない。

　因みに、余談だがこの箒、説明書には『霧雨製の頑丈な箒です』と書かれていた。
　まぁハスタ氏が適当に鼻かみに使ってしまってもうないのだが。

「ららぁ!」

　そこへ、朱里が高速で羽を連射する。
　数は十とそこらだろうか、穿てばハスタをソウルの手で引導を渡させることくらいは出来そうだ。
　まぁ夢見は悪いだろうが……というか、死にそうにもないが。

　実際ハスタは大鎌を弾くと、一回転しながらソウルに切りかかる形になった。
　羽を纏めて薙ぐと、次いでソウルへ襲い掛かる。
　鎌を弾き飛ばされ、身動きの取れなくなっていたソウルは咄嗟に鎌を捨てると後ろへ飛ぶ。
　風を切る音と鎌が地に落ちる音は同時だった。

　一回転、後ろへ行くとそのまま立ち上がり、鎌を手にする。
　低い姿勢のまま一気に鎌を振り上げる。
　ハスタはそれを何のためもなくバック転して回避する。
　ついでに朱里の後ろへ回った。

　危険を感じた朱里はすぐさま翼で自分を覆う。
　するとそこへ衝撃があった。
　ハスタが思いきり箒で突いてきたらしい。
　大きく前に押し出される。
　けれど、これで大分ハスタと距離が開けた。

　次いで、羽を広げた途端に襲い掛かってくる何か。
　感じ取れはしないものの、すぐさまいくつかの羽を飛ばす。
　あてずっぽうの内一つが丁度よくクリーンヒットして、それは消え去ったようだ。
　随分と近かったが。

　なんにしても問題は多い。
　さし当たってはこの状況を何とかしないといけないだろう。
　状況的には先ほどのハスタと同じだ。
　そして朱里は実質二対一の状況に陥って、その両者を捌けるほど強くはない。

　この三人の中で恐らく最も強者なのはあの変なのだろう。

（あたしじゃあどうしても手数が足りないし、あっちは手数はあるようだけど技術と機動力が足りない）

　どうやったってこのままではただ飛び回るだけの朱里では打ち落とされてしまうだろう。
　ソウルの攻撃が不可視で、遠距離様のものだと言うのも些かまずい。
　ならばと考えるが、結局行きつく先は二対一を崩す以外に方法はなかった。

　少しでも判断をミスすればすぐさまこの世からおさらばごめん。
　殺されるのは嫌だし殺すのも嫌だ。
　ならば仕方ない、逃げるしか、朱里にはない。

 
シーナは唐突に惨劇の祭壇が激闘の戦場へ変わったことに、驚きを隠せないでいた。
　どういうことなのかと、木々の合間を縫って行われる戦闘を暫く目にしていた。
　が、そのうちそれは自分たちには関係のないことなのだと気がついた。

　そう気がついたら、やがてそれは喜びに変わった。
　死から逃れた歓喜。
　それはシーナにとって最高の清涼剤であった。

　死の漂うあの渦中、シーナはひたすら恐怖した。
　恐怖の中に一種の諦めのようなものも持ったりもした。
　何で自分が、と憎悪のように悔しがったりもした。
　どれもコレも事実であり、気絶してしまったレミリィを羨んだのもまた事実。

　けれど、もう大丈夫なのだと、戦場は語っていた。
　偶然の中に現れた奇跡。
　自分は、レミリィは助かったのだ。

　早くここから立ち去ろう。
　そうだ、それがいい。
　今はまだここには死が存在している。
　あの三人、だれが被害者なのかはわからないが、殺しあっているのは事実だ。

　だったら近寄りたくはない、出来れば今すぐ何処かへ行ってしまいたい。
　早くだれか頼れる人を見つけよう。

　シーナの抱いていたものは希望だった。

　紛れもない安堵、そこから沸いてくる希望の数。
　それはどうしようもなく冒しようがないし、純然としたものだ。

（帰ろう、居場所に帰ろう。
　大丈夫、レミリィもいる。
　そうだ――）

　恐怖も、憎悪も、何もかも。
　シーナはヘタレでここぞと言うときに何も出来ない。
　けど、それはこう考えればいい。
　今はここぞと言うときではない。
　そう考えて、余裕を持てば、

　考えていた。
　少なくともその瞬間は。

「起きて、レミリィ、私たちは、何も怖くないんですよ」

　声をかけて、その瞬間だった。


　タンッっと、シーナの心臓を黒い何かが通り過ぎた。


　アレ、何か。
　痛い?　紅い?
　血?　鉄のにおい。

　誰の?　熱い。

　自分の、血。

　血。血。血。

　あふれて、痛い。
　こぼれて、熱い。
　いやだ、熱いよ、痛いよ。


　熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。熱い。痛い。


　ああアアアああああああああああああああああァァァァァああああああぁああああああああああアアアアアァァァァああああアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああぁぁぁぁぁぁああああぁあぁあアアアアアッッッッ!!!!


　――


　――――


　――――――――と゛う゛し゛て゛こ゛う゛な゛っ゛ち゛ゃ゛た゛の゛か゛な゛あ゛。


　――――


　――



[[―――(2)へ&gt;混戦模様 ―朝方森の雫の中で―(2)]]    </description>
    <dc:date>2011-06-12T11:24:19+09:00</dc:date>
    <utime>1307845459</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/47.html">
    <title>ナナカと輪廻のバリバリ漫遊記</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/47.html</link>
    <description>
      　ナナカ＝コトハナ……どこにでもいる研究職の少女は非常に苛々していた。
　原因は単純、禁断症状である。
　仕事していないと、もしくは機械に触れていないと落ち着かないのだ。

　このくらいのナナカには良くある現象で、主に世界観が変わったりすると起こりやすい。
　殺し合いだなんだというのはどうでもいい。
　けれど問題は支給された品。
　一つは見たこともない拳銃。（因みにいわゆる２５オートと呼ばれる代物である）
　少し弄ってみたところ非常に高性能なようで、自分でもこれを一から作れと言えば数年は掛かる。
　複製程度なら機材があればなんとでもなる……

　が、その機材がない。
　そのうえもう一つの支給品は－ドライバー専用の螺子だ。
　コレを弄れれば多少は気持ちも晴れただろうが、残念なことにこの－ドライバーが街のどこにもなかったのだ。
　おかげで拳銃を弄りつくしてしまったナナカは鬱憤が溜まっている、というわけだ。

「ああもう殺し合いとかどうだっていい、私は機械がほしいんだよー!!」

　ナナカ心からの絶叫。
　だよー、だよー、だよー、と街中を響いて、駆け抜けていった。

「ううん、場所を移そうじゃないか。
　どこがいいかな……」

　肩に提げていたデイパックから必要なもの――地図を取り出す。
　見た感じ、村と雪の中がめぼしいところか。
　雪の奥にある村は気になるものの、今の自分の装備では不可能と判断する。
　今のだぼだぼスーツ（ぽい何か）だけで突破できるとは思えない。

　装備を探し回れば見つかるかもしれないが、一度ドライバーを探したときにチェックしている。
　もう一度回るのは面倒だし、わざわざ行く理由もないので却下。
　先に村と城っぽい何かを目指すことにする。

「にしても、同じ感じの城マークがあるはずなのに、一体どこにあるんだ？」

　少し狭い路地を見渡しながらナナカは歩き始める。
　暫くすると大通りに出たが、城のような建物は見つからない。

「そもそもこの建築、すごい高度だよな……誰が考えたんだよ」

　支給品といい、この街自体といい、おかしなことは多い。
　この街の中にも気になるものはたくさんあった。
　それが一体何を意味するのか、そもそもナナカは前提事態を知らないのだった。

「とにかく、村に行こう。
　村っぽい何か、ここで－ドライバーを探して……でもある気がしないな。
　どうしよう」

　どうしようどうしよう。
　暫く考えながら歩き回ったが、結局とりあえずいってみようで落ち着いた。
　行かないよりも行ったほうがいい。
　やらない善よりやる偽善。
　据え膳喰わぬはなんとやら、
　ナナカは決意新たに大きな空へ飛び出した。


　その頃、どことも知れぬ草原の上。
　正確にはＢ５の空白草原地帯。街の入り口に当たる場所でもある。
　そこで命輪廻と基山ヒロト、レヴィの三人（＋一人）は話し合いを続けていた。
　議題は今後の進路である。

「とりあえず私は動きたくないんだが」

「いやいやここは極寒の寒空だろ。
　絶対何かあるぜ、この寒村」

「やっぱり村みたいなところに行ったほうがいいと思うよ」

『あちゃー、見事に分かれちゃってるね』

　というわけで平行線、向かう場所を悩んでる最中である。
　因みにロックは特に意思表示していないものの、塔のあたりを目指したい派である。
　面倒なことになるのがわかりきっているのでいわないのは彼なりの優しさか。

　対して、三人は惜しげもなく自分の意見を通そうとしてくる。
　恐らく何がしかの変化がなければこのままずっと審議中のままだろう。
　ならば仕方ない、そろそろ誰かに味方しようかと、ロックが考えたとき、そんな彼に声をかける影があった。
　正確にはロックを持っているヒロトに対して、である。

「な、なななな、なな、な、ななななななななな、なぁ！」

　凄く緊張した声が聞こえてきた。
　プルプルと震えるそれは武者震いか何かか、振り向いた先には野暮ったいスーツを着た少女がいた。
　当然ながら、ご存知の通りナナカ＝コトハナである。

　こんな所で何をしているかと言えば、すさまじく目を輝かせている。
　その目線の先は当然ロック。
　そしてその器であるＰＥＴ自身だ。
　よだれまでたらしてしまいそうな表情で、うらやましげにＰＥＴを眺めている。

「わ、私はお前（ロック、及びＰＥＴ）が欲しい!」

　緊張ゆえか、それとも素か、思いきり叫んでいた。
　因みに周りには突然現れた少女がヒロトに告白しているようにしか見えない。
　……一波乱の予感がした。

【場所・時間帯】B5・朝・町の入り口

【名前・出展者】ナナカ＝コトハナ＠某テイルズ
【状態】超☆ナ☆ナ☆カ☆状☆態
【装備】２５オート
【所持品】大量の－ドライバー専用螺子
【思考】
基本：殺し合いとかどうでもいいから機械をよこせ
１、お前が……ほしい！
２、村（？）を目指す。
３、－ドライバーを探す。
※寒村にも興味を持っています。

【名前・出展者】基山ヒロト＠イナズマイレブン
【状態】正常
【装備】PET(ロックマン)＠ロックマンエグゼAXESS
【所持品】基本支給品一式、チップセット＠ロックマンエグゼシリーズ、綱海のサーフボード＠イナズマイレブン
【思考】
基本：殺し合いには乗らない。このゲームからの脱出
１：どういうことなの
２：木暮くんと立向居くんを探したいな

【名前・出展者】命輪廻＠東方二次幻想
【状態】正常、けっこう凹んでる
【装備】ストライプI&amp;II＠Panty &amp; Stocking with Garterbelt
【所持品】ラジカルレヴィのコスチュームセット＠BLACK LAGOON
【思考】
基本：打倒てんこ・祈祷を探す
１：どういうことなの
２：暫くは動きたくない
３：祈祷を探したい



【名前・出展者】レヴィ＠BLACK LAGOON
【状態】健康、呆れてる
【装備】バックレース＠Panty &amp; Stocking with Garterbelt
【所持品】基本支給品一式、不明支給品一品
【思考】基本：乗り気ではないが、面倒な相手はブッ殺す
１：何なんだよこいつら
２：銃火器は手に入ったしまあいいか

【名前・出展者】ロックマン.EXE＠ロックマンエグゼAXESS
【思考】
１：どうしようかな……
２：レヴィのことが気になる
３：ヒロトと輪廻を出来る限りサポートする

前の話
|027|[[兄貴とシスコンの邂逅]]|

次の話
|029|[[殺戮の行く末]]|    </description>
    <dc:date>2011-06-12T11:21:22+09:00</dc:date>
    <utime>1307845282</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/41.html">
    <title>汝死合の徒なりや</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/41.html</link>
    <description>
      　雨音のごとく響く轟音。戦闘の一振り。
　軽く光灯る洞窟の、夜目を求める暗がりで、二つの暗がりが激昂を響かせる。

　片や腰辺りの短槍をステッキのごとく繰り回し。
　片や狙い済ました麻縄を手足と同じく手繰り寄せる。

　その両者を同時につなぐのは笑みのみであった。

　出会ってから数分もない。
　いくつかの火の合間を縫って、えいやえいやと、戦闘を続ける。
　それだけではない、雷か、浅く光る電光石化。
　それだけではない、投擲か、甲高い音の飛び道具。

　二度三度影が躍って、それぞれの面は前奏を奏でる。
　少女の程の小影が軽く手を横に振るう。距離は人が二、三は収まるほど。
　ゆるゆらり、淡くは黒の泡ぶくのように、五つのカードが浮かび上がる。
　移る絵図らは最高手、広がるそれは無限のスペード。

　炎のように纏って、いくらかの程、展開されるカードは火の玉と変わらない。
　覆う手のひら返すは両手。
　あふれんばかりの好敵手、回避は不可能、考え不要。

　一つの間が空き世界のように。
　男の影が軽く振るう。
　まるで成長する植物のようにそれは伸びる。
　単純な麻縄と単純ではない牢屋構造。

　三百六十全方向、余すところなく両者が埋まる。

　飛び出すトランプ止める麻縄。
　切っ先は鋭く、頑丈な鉄格子にがぶりと喰らいつく。
　格言うそれは大したものにはなりえず、引導には一つ足りない。

　無数の壁か、はたまた針山か。
　結果で言えば当然壁に変わり映えない。

　瞬間、瞬く、閃く大影。
　電光と化した石は、がりごりと空間を抉り取る。
　気のせいか、気のせいで、かくして男は自身の鉄格子から抜け出でる。

　連続、そこから時は加速の一途。
　不可避の可視が小影を襲う。
　麻縄の群れ、水得たり。

　はだかる少女、両手を広げる。
　漏れ出るは更なるカード、大きさを増し、水を増し、姿を増し。
　増し増し増し。

　激突する。

　寸前、男は影を放し、そこから電撃が生まれ出る。

　とはいえ麻縄は電気を通すものではない。
　変わって炎が現れ出でた。


　両者の顔が、浮かび上がる。


　――影と影の踊りから、戦闘は死闘へと、姿を変えた。

　バーン=オルディオ。
　趣味は人間観察とでも言うべき自由奔放な人間。

　クローバー・トランプ
　殺人を好む大嘘吐き。生きるよりも簡単にうそをつき、人を殺す。

　戦闘はバーンにとっては偶発で、クローバーにとっては必然だった。
　遭遇と同時、クローバーへ話しかけたバーンに、クローバーはトランプの放射でもって答えて見せた。
　以降、大よそ数分ほど、戦闘を行っていた。
　とはいえ、本人たちには一時間程度に感じられたが。

「楽しいね!　本当に楽しいね、飽きない戦いは殺戮の本望だよ!」

　腰辺りまでの長さの短槍を自由自在と振り回し、クローバーは哂う。
　一度、大きく横に槍を薙いで、二度、かわされたそれを上へ伸ばしに三度まわしながら叩き落す。
　そこへ洞窟に据えつけてあるランプを吊るすための麻縄をもぎ取って、バーンが振りまわす。

「フフフ、ではそのまま殺戮に囚われてしまってはいかがでしょう。プリンセス」

　言いながら麻縄を伸ばし、短槍へ巻きつけた。
　逃さないと、目で語る。

「殺戮は既に僕らのものさ。誰かが囚われてしまったら、もったいないじゃないか」

　クローバーが言いつつ、軽やかに片手を振るう。
　次いでそこから大きく車輪のように麻縄へ襲い掛かる。
　一度では懲りず、二三度きりつけると、きれいな音と共に掻き消えた。

「では、こういったショーはどうでしょう」

　遠くから、青年の声が響く。
　――遠くから、クローバーはその意味に感づいて、大きく後ろへ跳ぶ。

　直後、麻縄が大きく燃え広がる。

「随分と荒々しいショーだね!　いけないよ、マジックショーは派手であって決して野蛮ではないからね」

「お褒め頂――」

　瞬間、バーンが高速でクローバーに迫る。
　一瞬で距離をつめる両者。
　今度は怒涛のごとくバーンが攻める。

「光栄至極!」

　横薙ぎの電光。
　人一人を焦げ付かせるには十分なそれはそのままクローバーを穿つ。
　ただし、直前にトランプの壁が浮かび上がるが――

「甘い、ストロベリーサンデーを三回頼めるほど甘いですよ!」

　追撃、その奥に、電撃を放つ。
　このゲーム独自の制限か、バーンの一撃の射程距離は半分ほどに落ち込んでいたが、接近戦において不自由はない。

　四方八方支離滅裂。

　大よそ避ける隙間はないし、避ける時間もない。
　これでチェックメイトだ。
　少なくとも、トランプの向こう側にクローバーが存在すれば。

「マジックショーにおいて、消失マジックを行う場合、観客の注目を一手に集めることが効果的だよ。
　たとえば、死体を設置したりとか、ね」

　気配はあった。
　声を聞くまでもなく存在は予期できた。
　バーンは迫る短槍を弾いて受け流す。

　クローバーは笑いながら、追撃の手を加える。

「この場合も単純に言えば錯覚さ。
　君は僕自身がトランプの向こう側にいると誤解している。
　だってそうだよね、僕はこうして後ろで悠々と自適していたのに、君はアレを放ったんだから」

　横、突き、縦。
　屈み、反らし、受け流す。
　両者は激しくせめぎあい、次いでクローバーは笑い続ける。

「殺すならこうでなくちゃ!
　死というのはこうでなくちゃ!
　解らないかな、今、凄く死にそうだね!」

　二連、クローバーは放つ。
　一度は短槍。
　二度はトランプ。
　斜めにふるって、振り切る。
　二十にわたって展開し、左右を生める。

「ふふふ、嬉しいですね。
　何せ貴方は非常に魅力的ですから」

　一度、左へ動き、安地へと踏み込む。
　さらに――電撃が舞った。
　トランプのカードは簡単に燃えて塵へ変わる。
　そのまま大きく後ろへ跳んだ。

「じゃあ、プレゼントをくれないかな」

　短槍を構え。
　電撃を迸らせ。
　両者は。


「Trick or Treat（お菓子をくれなきゃ、ぶちころすぞ）」

「Give You Heart（あなたの心臓、差し上げましょう）」



　笑う。



　クローバーが接近する。
　トランプの幕と共にそれはバーンを細切りにしようといったところか、無数に迫る。
　速度は高速、けれどバーンほどではなく、軽く笑ってバーンは動く。
　二歩、三歩――間合いをつめるその流れで全てのカードを叩き落す。

「努力不足です、結束を持ってきなさい」

「冗談は餅屋だけにして欲しいね!」

　紙製のそれをたやすく握りつぶして、両者は言う。
　反撃、バーンの電撃が二線、交差して広がる。
　が、それはクローバーが伏せるだけで壁を上下にえぐり、不発となる。

　そして、接近戦。
　大よそどちらもの間合いへ入り込んだ両者は、それぞれの得物を振るう。
　一回転するステッキな短槍。
　辺りへ成長する枝のように迸る電撃。
　どちらもどちら、両者を途絶えさせるには至らない。

　すんでの所で、すり抜けていってしまう。
　ならばと、バーンは大きく横へ跳んだ。
　ここは洞窟、それほど横幅は広くない、けれどバーンは斜め後ろへと後退する。

　あるのはランタン。
　バーンが麻縄を使用する際に地面に落ちたものだ。

「フフフ、いやはや面白い、なるほどそれほどではあるようで。
　貴方のような存在は……つい束縛してしまいたくなる」

「侵害だね、言ったよね?　僕はプリンセスじゃあない。
　君はちょっと誤解しすぎだよ」

「ではそうですね、貴方の得意なそれで、束縛を切り裂いてはどうでしょう。
　私ごと……ね?」

「それはいいね、面白い、君自身を殺せるのだから、二倍面白い」

　言って、無数の凶器を取り出す。

「まぁ……」

　バーンが言いかけたその一言。
　それが合図だった。
　無数のトランプは二色のそれとなり、バーンへ複雑に襲い掛かる。

　そして、バーンは続ける。


「それでチェックメイトなのですが」


　同時に、足元の火種を蹴り上げた。

　――戦闘中、麻縄を手にしたときからバーンは考えていた。
　最初はほんの戦闘中の無駄な思考。
　それが一瞬引っかかったのが、そもそもの原因。

　彼の疑問、彼の策は単純だ。


　この洞窟の中で燃え続けるランタンは、一体どれほどもつのだろう。


　このゲーム、六時間ごとに死ぬ人間は恐らく十前後。
　となると最後の一人になるには数日掛かる。
　その間、これは相当な火をともし続けなければならない。
　どうもこのランタン、原理は大分ファンタジー的なもののようで、油のにおいがかすかに感じられた。
　火の大きさはこぶし大。
　それを燃やし続ける。

　ということは、相応の油が使われているのではないか?

　もしそれを全部ぶち巻いたら、簡単な火事くらい、起こせるのではないか?

　ならば後は簡単だった。
　コレまでに二度、彼は両幅の壁をえぐっている。
　一度目はトランプ越しの雷。
　二度目はクローバーに回避された交差する電撃。
　そのどちらもが、麻縄を切断すると言う目的のために使われた。

　コレによって火の元を得たのだ。
　とはいえそれだけでは心もとない。
　だが彼にはこれ以上のものは用意できない。
　だが、彼女には、大量に用意することが可能だった。

　クローバー・トランプの支給品は紙のトランプ１３ダース。

　合計７０２枚。
　バーンはそれを知るところではないが、相当の数だろうということは検討がついていた。
　何せクローバーは怒涛の勢いで乱射しているのだ。
　補充が利くとしか思えない。

　そしてそれが紙製であること――最後のトリガーとなりうる条件はクリアできた。

　また、最後にランタンを向こうに割らせる機会作りのため、向こうの無駄口に一々答えて見せた。
　これによって最後の声がけが不自然にならなかったことは、記すまでもあるまい。

　そして、その結果。


　クローバーは避けようのない炎に囚われた。


　既にバーンは辺りにはいない。
　気がつけば炎は紙を伝い縄を伝い、クローバーを囲んでいる。
　クローバー自身も熱に焼かれ、正常な思考をしていなかった。

　だが、だからこそ解る。

「――まけ、た?　僕が?　殺意に?　殺人に?　殺戮に?」

　激昂。
　その感情は屈辱だった。

　燃え盛る炎。
　激情の紅。


「ふざけるな!　ふざけるなよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


　敗北に満ちた声は、やがて全てが消えるまで続いた。

　そして――バーンは。

「っはぁ!」

　大きく息を吐き出して、全てをほぐしていた。
　緊張と、殺意と、疲れと。
　どうしようもなく芯に響いていた。

「っまったく……早く鎖か、代わりになるものをみつけないといけませんね」

　もうこんな綱渡りはごめんだ。
　逃げるにも制限の所為か高速移動は長続きせず、体力を消耗させられる。
　一刻も早く出来うる限り最上の装備を手に入れるべきだ。

　だが、

「……ああいったものも、覚悟なの、ですね」

　今はゆっくり休もう。
　でないと、これから何も出来そうにない。

「嫌いじゃ、ありませんよ」

　今は、未来のことを考えたくはなかった。


&amp;color(red){【クローバー・トランプ＠夢と希望と絶望と　死亡】}


【場所・時間帯】桃色エリア　Ｄ１　朝

【名前・出展者】バーン＝オルディオ＠リャナンシーの契約書、他ぽつぽつ出展
【状態】疲労中～大
【装備】なし
【所持品】不明支給品２点　デイパック一式
【思考】
基本：まずは武器を探す、スタンスはそれから。
１、休憩したい。
２、いい覚悟だ。
※支給品は本人の戦闘に役立つものではなさそうです。

前の話
|021|[[【死神は笑う、歌うように】]]|

次の話
|023|[[ぱんすとかっこわらい]]|    </description>
    <dc:date>2011-06-12T11:15:32+09:00</dc:date>
    <utime>1307844932</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/36.html">
    <title>二人はチジョキュア！</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/36.html</link>
    <description>
      再び眼が覚めると、川の真上でした。

　「―――ぁあああああああああああああああああああああ」

…これで彼女が叫んだのは二度目である。
一度目は先程の見せしめを見た瞬間、そして二度目は――



ざっぱん。




――場所は反対側

　「ああああああああああああああああああああああああちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

目の前にある巨大な樹を幾度も蹴るのは、包帯まみれの少女であった。

ドカバキ！バクドカ！げしっげしっげしっげしっ！！

　「ああああ！糞ぉおおっ！！どっ！っりゃぁああああっあああああっっ」

ドカバキ！バクドカ！げしっげしっげしっげしっ！！

しかし、大木は倒れるどころか、揺れすらしない。
それだけその樹が強固であると言う事が理解できるであろうが、彼女――命祈祷はそんなのこれっぽっちも気にせずに、倒れることのない樹を力の限りに蹴り飛ばしていた。
――先程ガキと眼が合ったが、訳の判らぬ悲鳴を上げて逃げ出しやがった。クソ、余計に腹が立つ。
そんな彼女が左手に持っていた（どうやら左利きのようだ）ものは……

　「なっにっがっ、おたまだッくしょう、糞ッ垂れ！！！」



――再び、大樹の向こう側

　「っぷはぁ！！」

白狼の娘は、大きな桃の如くどんぶらこどんぶらことは流れずに自力で川から這い出てきた。
勿論全身はびしょ濡れ。しかしデイパックは幸い（？）落ちる弾みに肩から外れ、大樹の近くに落ちていた。
しかしこの状態では歩くことすらままならない。オオカミ少女――フェンリルは、服を乾かすが為にそれを近くに日の当たる位置に置き、彼女自身は文字通り「オオカミ」へと姿を変えたのであった。

（この状態では誰にも会いたくはないなあ……）

そうぼんやりと考え、彼女も日なたぼっこをしていたそのとき。

　「……ざっけんなくそ」

“フェンリル自身”が良く知る顔が現れた。


＊＊＊　＊＊＊


　（い、祈祷さん……！？）

フェンリルがバッと起き上がると、祈祷の顔をまじまじと見つめた。
……が、一方祈祷は何故かフェンリルを睨みつける。目が合い、思わずフェンリルは一歩後ずさる。

　（まさか……私が誰か分かってないとか？）

そのまさか以前の問題であることには、彼女は考えてもいなかった。
――つまりは祈祷自身が「フェンリル」の存在を知らないということだ。そうでもなければ、ここまで警戒心を剥き出しにはしないだろう。

しかし、フェンリルはそんなことを微塵にも思っていない。だからこそ、この思考へと辿り着くわけであった。
……でも。
判ってくれなければ、姿を解けばいいだろう。びしゃ濡れだけど、このまま信じてくれない方が嫌だ。
そう思い、フェンリルは人の姿になった――が。

　「あ、ほら、私です！フェンリルで――「露出狂。スッパテンコー。変態。淫獣。」
　「え――――ッ


　　　　　……きゃああああああああああっっっ！！！！？？」





――彼女の思考回路が廻りきっていなかったのだった。


「う、う、迂闊でした……」
　「……自分の事ぐらい自分で判ってろ、痴女」
　「なっ、いっ、祈祷さんだって人のこと言えないじゃないですかっ！！」
　「ぁ？ンだよ、あたしに何の文句が――って、おい待て」

たまたま祈祷に支給されていたという毛布をフェンリルに貸してやり、2人は並んで話をしていた。
と、包帯女の方の痴女が話を一度留める。

　「なんであたしのこと知ってんだよ」

祈祷自身、狼耳の生えた少女など知らない。
一応、似たような耳を持った奴が居たのは知ってはいるが、そいつの髪色は白と聞いた。それに種族も天狗。
目の前に居る少女は狼の姿が元来であると想定出来る故、“彼女”とは違うと確定出来るには充分すぎるほどであった。

　「え、その、だって」
　「あたしは幻想郷に住んでる。……だけ言っときゃどうにかなるか？」
　「幻想郷…？」

その受け答えを見た祈祷はすぐに察した。
信じ難い話だが、所謂“外の世界”やら“別の世界”に住んでるらしいこいつの知り合いには、あたしと顔がソックリな奴が居るという訳だ。
幻想郷という、妖怪ぐらいしかいない片田舎に住む彼女がどうしてここまで頭が廻ったのか。
それを詳しく知る者は、今この場所では祈祷自身しか居なかった。

　「ああ、成る程。判った判った。よぅく判った」
　「え！？ど、どういう意味……ですか？」
　「つまりはあれだ」
　「あれ？」

　「あたしと腹立つぐれェにそっくりな奴があんたの知り合い、ってことだろ」

祈祷はすっと立ち上がり、自身に付いている白い羽根をばさりと一度だけ羽ばたかせると、フェンリルを一瞥する。
フェンリル自身はまだ何も理解が出来ていない。が、祈祷にとってはどうでもいいことであった。
フェンリルがおどおどとしていると祈祷は、勝手にフェンリルのデイパックを開いて中身を漁りはじめた。

　「えええっ、ちょ、やめてください！」
　「は？あたしはあんたの“友達”なんだろ？だから良いだろ」
　「そういう問題じゃないですよ！」

毛布を被って立ち上がり、祈祷もといデイパックの傍に駆け寄る。
と、祈祷の左腕からは銀色に輝く二挺の拳銃が出てきた。

　「ソードカトラス……よし、あたしが貰った」
　「えっ、困りますよぅ！」
　「あたしはあんたの以下省略。てか、あんた銃なんざ握ったこた無いだろ？そうに決まってる」
　「うぅぅ～……、まあ、そうですけど……」

そして、替えの弾薬もかっぱらうと、デイパックをフェンリルへと放り投げた。
きゃっと言いつつもそれを両手でキャッチ出来た……が。

　「痴女」
　「ぇ――…………


　もう、何なんですかぁああああああああっっ！！！」




両手を離したせいで、再び産まれたままの姿を晒すハメになった。







【場所・時間帯】C3、世界樹付近、朝

【名前・出展者】フェンリル＠Heroes Academy
【状態】髪が少し濡れてる、全裸＋毛布一枚
【装備】毛布＠現実（ずり落ちたけど）
【所持品】基本支給品一式、不明支給品一品
【思考】基本：殺し合いには乗らない
１：うぅうう……
２：祈祷さん、なんだけど……
※まだ[[参加者名簿]]を見ていません
※ここに参加している祈祷を、自分と同じ世界に居た“祈祷”と思い込んでいますが、違和感は感じているようです
※服は近くに干してあります

【名前・出展者】命祈祷＠東方二次幻想
【状態】健康
【装備】ソードカトラス＠BLACK LAGOON
【所持品】基本支給品一式、おたま＠現実、替えの弾薬
【思考】基本：面倒事には首は突っ込まないでおく、輪廻を探す
１：ゲラゲラゲラゲラ
２：弄りやすいな、こいつ

【ソードカトラス＠BLACK LAGOON】
レヴィの愛用する、ガンスミス・プライヤチャットの手によるカスタムガン。
ベレッタM92Fをベースにロングスライド、長銃身化、ドクロのエンブレムを配した象牙のグリップなどのカスタムを加えたもの。

次の話
|016|[[無題]]|

次の話
|018|[[【嗚呼華麗なるビクトリーム様】]]|    </description>
    <dc:date>2011-06-12T11:10:10+09:00</dc:date>
    <utime>1307844610</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/28.html">
    <title>【木暮夕弥が吹 っ 切 れ た】</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/28.html</link>
    <description>
      ――願いを叶えたくはない？

青く蒼く、長い髪を持った美しい少女はそう言って純粋に、あるいは狂気的に、悪戯っぽく微笑んだ。

　　　＊　　　＊　　　＊

どうしよう、どうしよう、どうしよう。立向居勇気は戸惑っていた。「殺し合い」をしなければならないという、この状況に。
夢であればどんなにいいかと思ったが、頬を抓れば普通に痛いし、先程の出来事だって夢にしてはあまりにリアルすぎやしないだろうか。
人の首と胴体が真っ二つに離れ、赤黒い色をした液体が辺りに散乱し、充満する鉄の臭い――そこまで思い出して吐き気がこみ上げるのを感じた。どんなにサッカーが出来ても、それでも本質はただの中学1年生でしかない立向居に“あの”場面は刺激が強すぎた。

(お、落ち着け……落ち着かなきゃ！)

くじけそうになる自分を必死に奮い立たせようと頬を二回ほど両手で叩く。
記憶違いでなければ、確かあの場には立向居と同じイナズマジャパンのメンバーである基山ヒロトと木暮夕弥がいた筈である。

(そうだ、まずはヒロトさんと木暮を探そう。あの2人なら、殺しなんて絶対にしない筈だ)

元エイリア学園のマスターランクチームキャプテン「グラン」のヒロト。その経験を活かしてか、円堂達のいなかったアルゼンチン戦では負傷した風丸の代わりに皆をまとめようとしてくれた。
エイリア学園との戦いの途中で出会った、漫遊寺中出身だという木暮。悪戯好きでやや毒舌だけど、なんだかんだで魔王・ザ・ハンド習得の為の特訓に付き合ってくれた。
彼らなら大丈夫だという、殆ど確信に近い思いがあった。それほど同じチームメイトである彼らを信用していた。

(よし、そうと決まったら2人を……)
「立……向居……？」

聞き覚えのある、立向居の捜し求めていた人物の声だった。
小さなツノのように立っているやや青みがかかった黒い髪に、円らで大きな黄色の瞳。小学校低学年でも通りそうなほどの小柄な体系。――木暮夕弥が、そこにいた。

「木暮！」

探していた人物のうち1人をあっさり発見し、先程とは一転してぱあっという効果音がつきそうなほど明るい表情になった立向居。対して木暮は「ひいっ」と小さく悲鳴をあげ、数歩後ろに下がった。
――あれ？
おかしい、と立向居は思った。木暮の様子が何時もと全然違う。何時もの意地悪い何かを企むような表情は消え失せ、代わりに完全に怯えきった様子が居座っていた。

「木暮？　どうしたんだよ」
「く、来るなっ！！」

木暮が叫んでまた怯えたように数歩下がる。立向居は一瞬、「チームメイトの木暮に拒絶された」ことに気づくことが出来なかった。もしかしたら、気づきたくなかったのかもしれないが。
知り合いを見つけたことによる安堵感が沈み、再び浮上してくる不安。


(もしかして、オレが殺し合いに乗ってるって思ってる！？)

仲間に疑われたという事実はショックで仕方が無いが、今は打ちひしがれている場合ではない。互いを信じあい、協力して乗り越える時なのだ。その為には、木暮を少しでも安心させて信じてもらわなければならない。

「こ、木暮、落ち着くんだ！　オレは別にこんな、殺し合いに乗るつもりなんてない！」
「嘘だ！！」

即座に出てきた否定の言葉が立向居の心にずしりと重く圧し掛かる。
木暮は叫ぶようにして続ける。

「そうやって、オレのこと油断させて殺す気なんだろ！　仲間だって油断させて裏切るんだろ！？」

立向居は何も返さない。

「どうせ武器を隠し持ってて、オレが近づいたところで殺すんだろ！　そうに決まって――」
「木暮ッ！！！」

木暮の言葉を遮るように立向居は叫ぶ。そして、自身が背負っていたデイパックを少し遠くに放り投げて見せた。木暮の大きな瞳が見開かれる。

「オレは……オレは本当に殺し合いには乗らない」
「そ、そんなこと言って……何か隠し持ってるんだろ……」
「木暮」

立向居の顔が悲しそうに歪み、木暮は言葉を失った。

「どうして……なんで信じてくれないんだよ……。オレ達、仲間じゃないか。一緒にエイリア学園を倒して、今は世界と戦ってる、仲間じゃないか！！」

初めて出会って、試合をして。一緒にカレーを食べて、唐辛子を仕込まれたけど平気で。色んな試合を乗り越えていって。
立向居勇気は悲しかった。
これ程までに木暮夕弥が自分を信頼してくれないという事実が、ただただ悲しかった。

「オレは絶対に裏切らない！　ヒロトさんも見つけて、皆で帰るんだ！　FFIで優勝するんだ、皆で！　1人だって欠けちゃいけないんだよ、イナズマジャパンは！」

一通り叫んで立向居は、自身を落ち着かせるようにゆっくりと息を吸って、そして吐いた。

「……だから、信じてくれよ。確かに、円堂さんや鬼道さんや豪炎寺さんみたいに頼もしくはないかもしれないけど。でも、皆で力を合わせれば、きっとなんとか出来る。円堂さんだったら、きっとそうすると思う」

立向居は、木暮に微笑んだ。木暮の顔にはもう怯えは無く、けれど申し訳なさそうに俯いていた。

「ごめん、立向居。オレ……」
「いいんだ。こんな状況だし、無条件で信用しろって言うのも難しいよ」
「立向居……」
「まずはヒロトさんを探そう。それに、もしかしたらオレ達みたいに殺し合いをしたくない人だっているかもしれない。そういう人達で集まれば、きっと何か方法が見つかるさ」
「……そうだな！　ま、お前じゃちょぉ～っと頼りないけど、我慢してやるか。うししっ」
「って、いきなり調子に乗るなよー」

口ではそう言ったものの、やっと木暮が何時もの調子に戻ってくれて、立向居は再び安堵した。安心したところで、立向居は背中が妙に軽いことに気づく。
――あ、さっき投げちゃったんだった。
とりあえず自分が何を支給されたのか、今現在自分がどの辺りにいるのかを把握する為にも、先程放り投げたデイパックの中身は必須だ。

「ごめん、ちょっとさっき投げたの取ってくる」

立向居はそう言って、放り投げたデイパックを拾おうと踵を返す。



　パ　ァ　ン　。

乾いた音が辺りに響いた。

　　　＊　　　＊　　　＊

「はぁ？　あんた、いきなり何言ってんだ？　ていうかここ何処？」

木暮夕弥はヒロトと森の中を歩いていた筈だった。そこに至るまでに河童とサッカーとか色々あったのだがそこは割愛させていただく。
何時もの調子で捲し立てる木暮に、青い髪の女性は静かに言い放つ。

「あなた、お母さんに捨てられたんでしょう？」
「……なんで、そのことを……」
「さあ？　なんでだと思う？」

くすくすとからかうように笑う女性。相手のペースに巻き込まれつつあることに気づき、木暮は不機嫌になった。それを見透かしてかそれともそんなこと知ったこっちゃないのか、女性は続ける。

「ねえ、願いを叶えたくはない？」
「それは、どういう」
「家族に捨てられなかった人生を歩みたくはない？」

木暮は、息を呑んだ。

「あなたの願い、叶えて差し上げられますのよ？」

ふざけた口調で女性は笑う。嗤う。哂う。

「そ……そんなこと出来る訳ない！」
「出来るわ。出来るからあなたはここにいる」

女性のその言葉に木暮は反論の言葉を失った。
確かに、それならいきなり自分がここにいて、それでいてさっきまで一緒にいたヒロトがいないのにも納得がいく。もしかしたら目の前の女性は、それだけの――奇跡を起こす力でも持っているのかもしれないと、木暮は錯覚した。
実際はそんな筈ないのだが、目の前の女性のことを殆ど知らない木暮にそれを分かれというのも酷だろう。

「でもね、ただで願いを叶えてもらえるなんて、そんな蜂蜜かけた羊羹みたいに甘い考え持っちゃ駄目。何かを得る為にはそれ相応の対価が必要なの。そう、あなたが何か願いを叶えたいなら、まずは私の望みに応えてもらわなくちゃ」

最早、木暮には反論する気力すら消えていた。

「じゃあ、もう一度聞くわね」

女性は優しく、けれど残酷に微笑んだ。

「願いを叶えたくはない？　――木暮夕弥くん」

　　　＊　　　＊　　　＊

 
聞きなれないその音は、刑事ドラマとかでよく聞く銃声によく似ていたような気がする。
思い出したくも無いその臭いは、数十分前に嗅いだ鉄の臭いによく似ているような気がする。
イナズマジャパンのGKユニフォームの右肩部分に滲むそれは、なんだか赤黒くて、まるで――――

「あ……え？」

じわじわと脳を侵食し始めた激痛に、立向居は漸く自分が「撃たれた」ことに気がついた。

「あ、あ、ああああぁぁぁぁぁぁっ！？」

一体何に？　そんなもの、銃に決まっている。
じゃあ、一体誰が？　誰が何の為にこんなことを？　一体誰が？　誰が？　誰が誰が誰が誰が誰が誰が痛い誰が誰が誰が誰が誰が誰が誰が誰が痛い痛い誰が誰が誰が誰が誰が誰が誰が誰誰誰誰誰誰誰痛誰誰痛誰誰誰誰誰痛誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰だれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれ。だれ、が？
今、この場には立向居ともう一人しかいない。
立向居が自分で自分の肩を打ち抜くわけが無い。
つまり――――………………つまり、どういうこと？
振り向きたくない。もし振り向いたら、“それ”を現実として認めてしまうことになる。けれどこの痛みは紛れも無い現実であり現実以外の何物でもなく痛みも嫌な臭いも何もかもが現実でつまり要するに。
立向居は、激痛の走る右肩を抑えながらゆっくりと振り返った。
立向居勇気が最も見たくなかった……拳銃を手にした木暮夕弥がそこにいた。

「こ、ぐれ……」

立向居の中の何かが、急速に冷え切っていくように感じた。しかしそれもほんの一瞬のことで、彼の感情は今までせき止められていたものがなくなったダムの水の如く噴出していく。

「な、なんで……なんで、どうして、木暮ェっ！！」

パァン。
返事の代わりに撃ち出された銃弾は、立向居の左膝を撃ち抜いた。

「あああああぁぁぁぁ！！」
「……お前、今の状況分かってる？」

脚の痛みに耐えられずに膝をついた立向居を見下ろす木暮は、まるで立向居の知らない人物のようだった。

「どう、して……なんで……」
「そりゃあ、優勝したいからに決まってるだろ？　うししっ」

その笑い方は紛れも無く「木暮夕弥」そのものだった。けれど立向居は目の前の人物を、自分を迷い無く拳銃で撃った上で笑うその人物を「イナズマジャパンの木暮」として認めたくなかった。

「そんなことしてまでっ……こんなことでFFIを優勝したって、円堂さん達が喜ぶ筈ない！」
「何勘違いしてるんだよ。オレは別に、FFIで優勝するっていう願いを叶えるなんて一言も言ってないのにさ」

――え？　じゃあ、何故？　そこまでして叶えたい願いって、一体――
それを口に出す前に、銃口が立向居の眉間にぴったりとつけられた。

「誰かに見られても面倒だからさ。――じゃあな、立向居」
「……！　よせ、木暮っ！！」

殺されたくない。だがそれ以上に、仲間が人殺しをするなんて嫌だ。そんな立向居の願いが届く筈も無く、引き金に指がかけられる。
その瞬間は、やけにスローモーションに感じた。
所謂走馬灯という奴だろうか。立向居の脳裏に様々なものが浮かんでは消える。

(校長先生、戸田キャプテン、皆……)

陽花戸中の人々や、イナズマキャラバンに参加した仲間達。そして、イナズマジャパンの仲間達――憧れの存在だった人。

(円堂さん……)

やがて立向居は、諦めたように目を瞑った。

(……ごめん、なさい……)

戻ることができなくて、ごめんなさい。
仲間を止めることが出来なくて、ごめんなさい。
彼を人殺しにしてしまって――ごめんなさい。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　パ　　　ァ　　　ン

無慈悲な音がした。

　　　＊　　　＊　　　＊

もしかしたら。
もしかしたら、母親に捨てられなかった未来を歩むことができるかもしれない。
普通の家族が居て、今日学校で何があっただとか、今日の夕飯は何にするだとか、そんな他愛のない話の出来る家族がいる場所が手に入るかもしれない。
幸せに、なれるかもしれない。
家族と仲間を天秤にかけた結果が、目の前に横たわるもう動かない少年。眉間には紅い穴。瞳孔は開きっぱなしになっていて、正直見ていて気分のいいものじゃない。
けれどこれが彼の選んだ道なのだから、もう後戻りすることは出来ない。


「……うししっ」

木暮夕弥(こあくま)が、悪戯っぽく笑った。


&amp;color(red){【立向居勇気＠イナズマイレブン　死亡】}



【場所・時間帯】F2・朝・森の中
【名前・出展者】木暮夕弥＠イナズマイレブン
【状態】正常
【装備】ワルサーP5＠現実
【所持品】基本支給品一式、予備の弾薬＠現実、奇跡の指輪＠ムシキング～ザックの冒険編～、立向居のデイパック(支給品未確認)
【思考】
基本：優勝して「ありえなかった未来」を現実にする
１：とりあえず移動する
２：「女性」が望む通り疑心暗鬼をばらまく
３：場合によってはヒロトも殺害する

【奇跡の指輪＠ムシキング～ザックの冒険編～】
なんでも望むものを生み出すといわれるお宝。ザックはこれで究極必殺技のカードを手に入れた。
一度使うと宝石部分にヒビが入り、もう二度と使えなくなる。
果たしてこのロワでどれだけの効果が望めるのか……。

　　　＊　　　＊　　　＊

「嗚呼、だから人間って面白いのよ」

比那名居天子は嘲笑った。

　　　＊　　　＊　　　＊

前の話
|008|[[主催者には炎の鉄槌を、空気にはダストを]]|

次の話
|010|[[目的知らずの人助け願望]]|    </description>
    <dc:date>2011-06-12T10:58:55+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/15.html">
    <title>pQeLQiQnN_UcQ &amp; EmUOK_ANOsUOkIt</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/bo-dorowa2/pages/15.html</link>
    <description>
      　「良い？貴方を理解出来るのは私しか居ないのよ」
　「?U? ?IsIN?」
　「ええ、本当よ。通りで私の言ってる言葉が分かるでしょう？」
　「｡｡｡U｡｡｡ ｡｡｡IsIN｡｡｡ ?A OUs *pQeLQiQnN_UcQ*?」
　「.Q. .U EmUOK_ANOsUOkIt. .U,U UpEmOtUs EmUOK_ANOsUOkIt.」
　「?｡｡｡U｡｡｡? ?UpEmOtUs EmUOK_ANOsUOkIt?」
　「.U.」
　「!U! !UmxXUc!」
　「.E.　――さあ、そうと分かれば行きましょう」
　「!U!」

全く理解出来ない言語を、蝙蝠のような羽根を持った少女はものの見事に返してみせた。
彼女は傘を差してはいるが、柄と中心の骨が銃となっている。その“傘”の部分も、何故だか丈夫そうに感じ取れた。
そして理解してくれたのか、それを話していた、先ほどの少女よりも小さな少女は、満面の笑みを溢した。
小さな少女……ウー・クリストファは宙にふよふよと浮いており、その小さな両手には物言う剣「ソーディアン・アトワイト」が握られていた。
アトワイトのコアクリスタルが光り、声がしたが２人は一切耳も傾けていない。そもそもウーにはアトワイトの“言語”が通じなかった。

　「私の言うことを聞いてくれれば、貴方の命を保証しても構わないわよ」
　「?IsIN?」
　「ええ、大丈夫よ。私は吸血鬼なんだから、簡単にくたばったりしないもの。私の運命は絶対、よ」
　「!UmxXUc!」

第三者から見れば、何を話しているのか分かるはずが無い。
だが、この目的を把握するのは吸血鬼――レミリア・スカーレットだけで充分であった。

　「(こいつは呆れるほどの純粋無垢で透明だ。……使える。ならば利用し尽くすまでだわ)」


吸血鬼は、微笑んだ。















「良い？貴方を理解出来るのは私しか居ないのよ」
「うー？ほんとぉ？」
「ええ、本当よ。通りで私の言ってる言葉が分かるでしょう？」
「うー…たしかに……。　うー（あなた）、も透明人形(プリオンアーク)なの？」
「いいえ。私は吸血鬼よ。ええ、恐ろしい吸血鬼。」
「うー…？こわぁいきゅけつきさ、なのかなぁ？」
「ええ。」
「うー！すごぉい！」
「ありがとう。――さあ、そうと分かれば行きましょう」
「うー♪」












【場所・時間帯】青色エリア・F7・山村・朝

【名前・出展者】レミリア・スカーレット＠東方project
【状態】健康
【装備】ロベルタの傘＠BLACK LAGOON
【所持品】ほんやくコンニャク＠ドラえもん(使用済)、不明所持品１品
【思考】基本：ウーを利用しつつ、ゲームに乗り優勝する。ウーは使えなくなったら殺す
１：さあ、行きましょう
２：どう利用してやろうかしら
※雨は無理だけど、雪ならセーフのようです
※ウーの言葉が分かるのは、ほんやくコンニャクを食べたからです


【名前・出展者】ウー・クリストファ＠いぬ
【状態】健康
【装備】ソーディアン・アトワイト＠テイルズオブデスティニー
【所持品】不明所持品２品
【思考】基本：レミリアについていく。レミリアには信用しきっている
１：!UmxXUc!（すごぉい！）
２：?ArQEmQElQU IsIN UpEmOtUs?（レミリアって、ほんとにこわいのかなぁ？）


【名前・出展者】ソーディアン・アトワイト＠テイルズオブデスティニー 
【思考】１：何があったって言うの！？
２：ところで、何語？
基本：出来る限り助言はする。また、もし持ち主が殺し合いに乗ったらなんとか説得する 
※ロワ内では誰でもソーディアンの声を聞くことができます 
※また、威力は落ちるもののソーディアンさえ持てば誰でも晶術を扱えます 

※レミリアとウーが造語同士で会話している為、2人(厳密に言えばレミリア)の目的どころかここが何処なのかまだ把握出来ていません


【ロベルタの傘＠BLACK LAGOON】
ショットガンと防弾繊維を仕込んだ傘。ショットガンは「フランキ・スパス12」である。

【ほんやくコンニャク＠ドラえもん】
ドラえもんのひみつ道具のひとつ。食べると、あらゆる言語を自国語として理解できるようになるコンニャク。
自分が話す言語は、相手が使用する言語に自動的に翻訳されるため、言葉の通じなかった相手と自由に会話できる。
自分だけが食べると、他言語使用者と話すときは相手側の言語で、同言語使用者と話すときは自分側の言語になる。

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|003|[[ある意味これもトゥーハンド]]|    </description>
    <dc:date>2011-06-12T10:53:49+09:00</dc:date>
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