はやにえ、というものがある。
百舌が獲物を枝などに刺して取っておく習性によるものだ。最近では枝以外にも
有刺鉄線などにさす場合がある。
カエルやイナゴ、ミミズ、ドジョウ。時にはトカゲなどが獲物とされる。
かつてはしばしば見られたが、獲物が少なくなった現代の町では、とんと見られ
なくなった。
そのアマガエルの少年は目を覚まし、そして自分が意識を失う寸前に見た光景を
思い出し身震いした。
彼が気絶する直前に見たのは、空から自分に向けて物凄い勢いで降りてくる影。
(僕は…鳥に捕まったのか?)
ではなぜまだ生きている?
少年は亡羊とした意識で現状を把握しようと首を曲げ――
「あああん!」
――そして、自分のすぐ横で繰り広げられている痴態にようやく気付いた。
「えっ?」
聞こえた嬌声に、少年の意識はしっかりと目覚め、感覚が正常に戻る。
通常の能力を取り戻した耳と目が、至近で繰り広げられている卑猥な行いを少年
に認識させた。
それは美しくも背徳的な、異種同士の交わりだった。
「いい!いいわぁ!」
「あ…うあ、あ…」
女は蕩けた目で嬌声を上げ、男は空ろな目で呻き声を上げる。
男は、むしろ少年といってもいい年頃のトカゲだった。その顔には疲労の色が濃い。いくどとなく絶頂を、それも強制的に迎えさせられたのだろう。
だが更にカエルの少年が驚いたことは、そのトカゲの少年の尻から、尻尾以外のものが生えていたことだ。
それは、枝だった。トカゲの少年の肛門を抉っていた。押し広げられた本来排泄にのみ使われるはずの窄まりからは腸液がしたたり枝をぬらしている。
まるで熟れた女性の秘部のようなありさまだった。
そう――トカゲの少年は直腸を犯され、少なからず快楽を得ているのだ。
今まで想像すらしたことのなかった光景に、カエルの少年の意識は真っ白になる。だが視線だけは更に状況を把握しようと、行為者のもう一人に向けられた。
女は、百舌だった。
その翼の柄に、カエルの少年は見覚えがあった。自分達に数多くいる天敵の中でも、特に恐ろしい種の一つ。百舌。彼女たちに捕らえられて還ってきた仲間はいない。
少年の精神状態が、そして彼を取り囲む状況が正常なものなら、彼は恐怖にすくみあがっていただろう。
だが今の彼は、その恐怖のみ感じることが赦されるはずの姿に、見蕩れてしまっていた。
「へあぁ…はあん♪」
起立するトカゲの一物を、百舌が下の口でくわえ込んでいた。
溢れでる欲望の泉水は、じゅぶじゅぶといやらしい音を立てている。
百舌の女が激しく腰を振るたびに、重力を忘れたかのようにつんとした乳房が躍動する。捕食者たるものの証である、無駄のない肉体を収める滑らかな肌は汗ばみ色づき、女の匂いを立ち上らせる。
その甘い香りは、少年の情火すら煽り立てた。
そのことに気付き、少年は愕然とする。
「な、なんで…」
なぜ自分は欲情してるんだ。相手は恐ろしい捕食者なのに…!?
思わずもらしたつぶやき。
それは、百舌の耳にも聞こえたようだ。
百舌が流し目で、カエルの少年をちらりと眺め、
ニヤリ
と、赤い唇に笑みを浮かべた。
「気になるのかしら?」
「…!?」
気付かれた。少年は正気を、すなわち恐怖を取り戻した。
その怯え方を見た女はいっそう気を良くする。
「ふふふ…。
ちょっと待っててね。次はあなたのだから…。
んふぅっ…!」
女は美しい眉根を少し顰めて、動きを止めていた腰を、再び激しくくねらせる。
そして、その動きは、そのまま彼女を刺しぬいていたトカゲの一物に伝わった。
「はぁぁあああっ!」
「あああん、出たぁ♡」
女が恍惚の表情をする。
舌を突き出しながら、ドクドクと己が中に迸る、雄の体液を感じ取る。
ゴブゴブと、収まりきらなかった精液が、愛液と混ざり合いながら女の蜜壷から糸を引きながら零れ落ちた。
「素敵だったわ…」
女は言って、射精を終えた肉蛇を肉穴から引き抜いた。その際に刺激を受けたのか、射精と共に失神したトカゲの体が、びくりと動く。
だがそれに対して一顧すら垂れることない。女の興味はすでに次の獲物に移っていた。
「お・ま・た・せ♡」
興奮に色づいた肌に包まれた乳房も、むせ返るような性臭を漂わせる混合液を零す股間も隠すことなく、彼女はカエルの少年に向けて歩み寄っていく。
「い、いやだ」
今まで感じたことのない根源的恐怖に苛まれながら、少年は首を横に振る。
その涙交じりの挙動に、捕食者生来の欲求がいっそう刺激された。
今すぐにでも犯しぬきたい衝動を抑え御しながら、女は少年を組み伏せて、優しい声音で囁く。
「大丈夫。すぐに気持ちよくなるから」
いいながら、百舌は朱唇を少年に重ね、その舌を少年の中に進入させる。
「ん…ぶむ…」
「あむ…ちゅ…んむぅ…はぁ」
少年の口を十分堪能した後、百舌はその舌技を頬から首筋、そして胸元へと送っていく。
肌を伝わる生暖かい舌の感触に、少年は言いようのない感覚を得て体を硬くする。その刺激の名前が性的快感というものだと、少年は知らない。
「ふふ…気持ちいいでしょ?」
「!?そ、そんなこと…」
言い当てられ、思わず否定する少年。
女はそれを予想していたかのように、楽しげに言う。
「あら?じゃあ、何でここがこんなことになってるのかしら?」
指示語のみの言葉だが、意味は十分伝わった。
女が、少年の張り詰めたペニスを握っていた。
「し、知らないよ…」
「強情な子ね」
真っ赤にした顔を背けて言う少年。女は半ば呆れたように言ってから、口付け加えた。
「じゃあ。これならどうかしら?」
女はその赤い舌を、いきりたつ肉棒へと這わせた。
まだ他者に触れられたことすらない先端を、女の粘膜が擦り上げる。
その瞬間、少年の体に電撃が走った。
「はぅ!」
「アハ、良い反応」
女は楽しげに言うと、今度はそれを口に含んだ。それも一気に根元まで。
「!!!!!」
声にならない悲鳴を上げる少年。
暴れまわる彼を押さえ込みながら、女は唇を窄め、頬でなで上げ、喉で吸い上げながら、少年のペニスをゆっくりと口から引き抜いていく。
「あ、あ、あ、あ…」
あまりの刺激に、少年の目の裏で火花が散り、腰が浮き上がる。
女は少年のベニスが口から抜け落ちる直前まで引き抜いた後、再び一気にペニスを飲み込んだ。少年の亀頭を女の咽頭の粘膜が擦り上げる。
「ふぅ!?」
そしてまた、先ほどと同じように刺激を与えながら口から引き抜いていく。
だが、今回はそれだけにはとどまらなかった。
女は少年の腰を抑えていた手を彼の知りに回すと、両手の中指を、彼のまだ幼さすら感じさせる肛門に、一気に突き入れた。
「ひあっ!」
「んんっ!」
腰を跳ね上げる少年。それによってペニスが再び女の喉に叩き込まれる。
さすがに苦しげな声を上げた女だがそれもつかの間。
百舌はフェラチオの往復速度を上げ、同時に指先で、彼の中を蹂躙する。
首の前後運動だけで成される刺激と、巧みな指技。それによる刺激で表裏両方から刺激された少年のペニスは、抵抗する暇すら与えられなかった。
「あああああ!」
少年は、生まれてはじめての絶頂を迎えた。
ドピュ、ドピュリュ…
「だ、め…あ」
力なくつぶやく少年。だがその言葉に反して、彼の本能は刺激に素直に従って、女の口内に生命の原液を流し込む。
本来の場所に出されなかった精子たちは、役目を果たせぬまま百舌の胃の中に消えていく。
やがて射精の終了を感じてから、百舌は尿道の残った精液を吸い上げる。
「ひいんっ!」
「あ、可愛い。女の子みたいよ」
少年の反応に気を良くした百舌は、少年の股間から笑顔で彼の顔を見上げる。
少年は焦点の合わない目で、虚空を見上げている。
「本当に可愛いわ。女の子みたい」
「ぼ、くは…男、だぁ…」
かろうじて、反論する少年。だがその反抗は、百舌にとってしてみればご馳走を与えてもらったようなものだった。
嗜虐的な欲望のままに百舌は言う。
「うふふ。本当かしら?おチンチンはついているけど…。
おマンコもあるじゃない」
「な、何を…んなぁっ!」
悲鳴の原因は、肛門へ追加された二本の人差し指だった。
両手の中指と人差し指。合計四本の指で、百舌はカエルの少年の菊座を、皺の一つ一つを引き伸ばすように丹念に広げていく。
「ち、違う!それは…違うぅ…!」
「ふふふ。本当に?
怪しいわぁ。試してみないと…アレでね」
女は少年の背後を指差す。少年は首を曲げて指差す方向を見て、恐怖に凍りついた。
それは、トカゲの少年を貫いていたのと同じような、枝の先端だった。
カエルの少年の脳裏に、あのトカゲの少年の姿が浮んだ。
「―――あっ、うああああああ!」
「暴れないの」
逃げ出そうとするカエルの少年。だが捕食者の百舌から逃れられる道理がなかった。
百舌は少年を持ち上げ、尻たぶを広げながら枝先に向かう。そして、彼のほぐされた汚菊が、枝の先端に添えられる。
「や、やだ…やめてぇ…」
絶望に打ちひしがれながら言う少年に
「いやよ」
百舌は愉悦を込めた声でそう言って、少年を犯した。
「あぎひぃぅっっ!」
「すごい悲鳴。そんなに気持ちよかったの?」
「そ、そんなこと…!」
「うそつきは嫌いよ?だってほら」
百舌は目線で少年の股間を指し示す。それに従い少年は自分のペニスを見て、そして絶望する。最初の射精で萎えかけていたペニスは、再び硬さを取り戻していた。
「う、嘘…そんな」
「ふふ…いいわ…その表情。最高…」
世界が崩れ落ちてしまったかのような表情の少年と、美酒に酩酊したように、頬を染める女。
動かぬ少年に、女はすりより、抱きしめる。そして蟲惑的に、自失した少年に囁く。
「いいのよ…あなたは悪くないの…」
「だ、だって…ぼく…女の子じゃ」
「ふふふ。大丈夫、お尻を刺激されて立っちゃうのはおかしくないのよ?」
「ほん…と?」
「ええ」
呆然としながら、憎むべき、恐るべき存在だったはずの女を見る少年。
百舌は、まるで天使の姿を借りた淫魔のように囁く。
淫魔は微笑みながら、自分の触れそぼった蜜壷を少年に宛がい
「慰めてあげるわ」
一気に自ら貫いた。
「はああああああ!」
嬌声のような悲鳴は少年のものだった。
女の内部は、口とはまた異なる感触で少年を攻め立てる。先ほど一度射精していなければ、この時点ですでに達していたことだろう。
あまりの快感に引きつる少年。
少年に、百舌は優しく問いかけた。
「気持ちいい?」
問いに対して、少年は少しの沈黙の後…
「は、はひ…きもちいひです…」
―――答えた。
それは少年の精神が壊れ堕ちた瞬間だった。
百舌はその事実と、そして快楽に壊れたカエルの少年に、愛おしさすら感じながら抱きしめる。
その豊かな胸の谷間に少年の顔がうずまり、彼の鼻腔から肺にかけて、女の匂いが充満する。それに含まれる甘さが、よりいっそう少年の性欲を駆り立てる。
もっと、もっとと。
心が壊れ、抑制を失った本能が、少年を突き動かした。
少年は自ら腰を振り始める。
「やはぁん♡いきなりぃ!?」
嬌声を以って、女はそれを受け止める。
肥大したペニスが女を突き上げ、それと同時に、肛門を貫く枝が、少年の直腸とそして前立腺を刺激する。
限界はすぐに来た。
「は、ほあ!はあああ!」
「ああ♡逝くの?逝くのねぇっ!?
いいわよ。来て、来て、来てぇっ!」
ジュブジュブという水音に、パンパンという肌をぶつけ合う音が混じる。
そして…
『ああああああああっ!』
百舌とカエルは共に絶頂を迎えた。
「ふぅ…ふぅ…うふふふっ、良いわよ。とても濃くて…素敵♡」
無言で痙攣するカエルの少年に、百舌の女は、赤い舌で唇を舐めながら微笑んだ。
「それじゃあね。忘れなかったらまた来るわ」
百舌はそういうと、そこから飛び去った。
残ったのは、肛門を串刺しにされたトカゲとカエルの少年達―――二つのはやにえだけだった。
最終更新:2006年12月03日 15:51