風が吹く。
冬が来る。
冬が来る。
真田の城を出る一行は物々しく、担がれた輿は立派だった。
甲斐の武田の元へと向かう武者行列を、とろけ腐った果実のような夕日が包み込む。
甲斐の武田の元へと向かう武者行列を、とろけ腐った果実のような夕日が包み込む。
あの中には、独眼竜がいる。
佐助はあらゆる痛みに抵抗する政宗に闇を見せた。
物理的な暗闇ではない、魂を染める、ただ深い深淵を。
佐助はあらゆる痛みに抵抗する政宗に闇を見せた。
物理的な暗闇ではない、魂を染める、ただ深い深淵を。
あの奈落へ落ちる狼の目。
覗き込んだ瞬間に佐助は闇に捕まった。
覗き込んだ瞬間に佐助は闇に捕まった。
例えばそれは鬼ごっこのようなもので、一瞬前まで人であっても、捕まった人間は鬼に変わってしまう。
別に、見た目が変わる訳じゃない。
血を見たくなるわけでもないし容貌が一変するわけでもない。
それでも何かが変わり果てる。
外側からの圧力に抗しきる人でも、内側から変わるなら、佐助はそう思っただけだった。
恐ろしいのは燻る伊達の勢力を再びまとめ上げ、反抗されることだ。
だが何かが変われば、以前の姿を仰ぎ従う者達は違和感を覚え、離散するのではないかと。
……あるいは、自分と同じ場所に落としたかったのかもしれない。
別に、見た目が変わる訳じゃない。
血を見たくなるわけでもないし容貌が一変するわけでもない。
それでも何かが変わり果てる。
外側からの圧力に抗しきる人でも、内側から変わるなら、佐助はそう思っただけだった。
恐ろしいのは燻る伊達の勢力を再びまとめ上げ、反抗されることだ。
だが何かが変われば、以前の姿を仰ぎ従う者達は違和感を覚え、離散するのではないかと。
……あるいは、自分と同じ場所に落としたかったのかもしれない。
何にせよ、独眼竜は闇に良く染まった。
何気ない、品のいい仕草の一つ一つに闇が滲む。
その指先から甘やかな毒がしたたる。
苛烈な空気に眩まされて誰も気にはしなかった潰れた目が、薄い疱瘡の跡がよく目立つようになった。
治しようもない疵のぶんだけ、肌の白さがほぅと浮かぶ。
鬼火を宿した眼差しが人を惑わす。
疵が醜ければ醜いだけ、残った部分が妖しく美しい。互いが互いを引き立てあって、おぞましい。
あれは薄暗い闇の中のほの白さだ。
上田城の虜34/深淵の目2
その指先から甘やかな毒がしたたる。
苛烈な空気に眩まされて誰も気にはしなかった潰れた目が、薄い疱瘡の跡がよく目立つようになった。
治しようもない疵のぶんだけ、肌の白さがほぅと浮かぶ。
鬼火を宿した眼差しが人を惑わす。
疵が醜ければ醜いだけ、残った部分が妖しく美しい。互いが互いを引き立てあって、おぞましい。
あれは薄暗い闇の中のほの白さだ。
上田城の虜34/深淵の目2




