喉が渇いて枯れて、痛かった。
拷問を受けていた時と比べ、水は足りているはずだというのに、ずっとずっと痛かった。
「領民を……許してやって欲しい。オレの部下も兵卒も、暴れているならその最後は解っているだろう。
その覚悟もないような奴は、オレの部下にはいない」
……小十郎。
「鎮圧の後、首謀者達を武田の法に照らし裁いて構わない。死に兵として使うも、
斬首するも、勝った武田の考えに任せる」
小十郎。
オレを許すな。オレを信じオレに付いてきた皆を、今オレが裏切った。夢どころか、命さえ!
だからオレを許すな!
「だが、領民には罪はないはずだ。土地を……人が離れた土地は、どうしようもなく荒れる。
血が染みこんだ土は泣く。数十年も人が住みにくい地に……なる。
それは、お館様……武田にとってもいい話じゃないはずだ。領民には、手を出さないでくれ。
兵として戦った者以外には、手を出さないでくれ」
この唇から際限なくこぼれ落ちる戯言は何だ。オレは何を言っているんだ。
小十郎。小十郎。
「兵を匿った者がいても、そいつらは兵を助けたんじゃない、そいつの普段の姿をいとしんで、
息子や恋人を匿っているだけだ。累を及ぼさずに、温情をかけてやって欲しい」
目の奥が痛い。両目とも潰れる兆しか?
小十郎、……小十郎っ!
お前もう死んでいるんだろ?あの戦場で、散ってしまったんだろう?
これから伊達の者が、オレが助命を嘆願しなかった、オレが選ばなかった者達が山ほどそっちに行く!
オレを責め立ててくれ、夜な夜な現れ恨んでくれ、そうでもなければ気が狂いそうだ!
領主としての心得?そんなものどうだって良いんだ本当は、皆が生きていたなら……!
「それで後悔はないと申すか……ふっふ……」
信玄は低く強く含み笑う。
この後、信玄について伊達の暴動を治めに行かなくてはならない。
行って、自分がやったことの責任を取れ、武田に従えと諭さなくてはならない。
どの口が言うんだ!?オレが責任をとって暴動をおさめる、それはいいさ、あたりまえだ、
たとえ石を擲たれても甘んじて受ける!
だがオレの責任はどうなんだ?誰がオレを罰する?
武田の法に準じ打たれ斬られる者達を前にして、責任だ!?──笑わせるな!
拷問を受けていた時と比べ、水は足りているはずだというのに、ずっとずっと痛かった。
「領民を……許してやって欲しい。オレの部下も兵卒も、暴れているならその最後は解っているだろう。
その覚悟もないような奴は、オレの部下にはいない」
……小十郎。
「鎮圧の後、首謀者達を武田の法に照らし裁いて構わない。死に兵として使うも、
斬首するも、勝った武田の考えに任せる」
小十郎。
オレを許すな。オレを信じオレに付いてきた皆を、今オレが裏切った。夢どころか、命さえ!
だからオレを許すな!
「だが、領民には罪はないはずだ。土地を……人が離れた土地は、どうしようもなく荒れる。
血が染みこんだ土は泣く。数十年も人が住みにくい地に……なる。
それは、お館様……武田にとってもいい話じゃないはずだ。領民には、手を出さないでくれ。
兵として戦った者以外には、手を出さないでくれ」
この唇から際限なくこぼれ落ちる戯言は何だ。オレは何を言っているんだ。
小十郎。小十郎。
「兵を匿った者がいても、そいつらは兵を助けたんじゃない、そいつの普段の姿をいとしんで、
息子や恋人を匿っているだけだ。累を及ぼさずに、温情をかけてやって欲しい」
目の奥が痛い。両目とも潰れる兆しか?
小十郎、……小十郎っ!
お前もう死んでいるんだろ?あの戦場で、散ってしまったんだろう?
これから伊達の者が、オレが助命を嘆願しなかった、オレが選ばなかった者達が山ほどそっちに行く!
オレを責め立ててくれ、夜な夜な現れ恨んでくれ、そうでもなければ気が狂いそうだ!
領主としての心得?そんなものどうだって良いんだ本当は、皆が生きていたなら……!
「それで後悔はないと申すか……ふっふ……」
信玄は低く強く含み笑う。
この後、信玄について伊達の暴動を治めに行かなくてはならない。
行って、自分がやったことの責任を取れ、武田に従えと諭さなくてはならない。
どの口が言うんだ!?オレが責任をとって暴動をおさめる、それはいいさ、あたりまえだ、
たとえ石を擲たれても甘んじて受ける!
だがオレの責任はどうなんだ?誰がオレを罰する?
武田の法に準じ打たれ斬られる者達を前にして、責任だ!?──笑わせるな!
だがそれでも、あの領土を、あの風景を血で汚さないでくれ。
奥州は稲穂満ちる豊かな国だ。秋の収穫期には兵役から解放された皆が稲を刈り、
泥に汚れた顔のまま、良くできたものを誇らしげに城へ届けてくれた。
それを調理し、また皆に振る舞い労うのが好きだった。
上田城の虜57/かんなびのさと2
奥州は稲穂満ちる豊かな国だ。秋の収穫期には兵役から解放された皆が稲を刈り、
泥に汚れた顔のまま、良くできたものを誇らしげに城へ届けてくれた。
それを調理し、また皆に振る舞い労うのが好きだった。
上田城の虜57/かんなびのさと2




