ステラ・プレイヤーズ 2*大町星雨

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 本当に、素晴らしいとしかいいようがなかったと思う。
 銀色の刃が光を反射して光っている。鞘に収まっていた時のイメージとは違い、磨きこまれて透き通るようだ。峰の所には、何か文字のようなものが刻まれていた。
「これ何語?」
 兄貴が覗き込みながら眉をしかめた。確かに見た事のない文字(?)だった。点と曲線で出来ていて、爪ぐらいの大きさ。それがびっしりと刻んである。裏側は英語の筆記体のようなものが書いてあったけど、こっちも全然読めそうにない。
 当の母さんも首を傾げた。
「何か言葉みたいだけどね。持ってきた人も分からないみたいだったし」
 しばらく黙って、短剣を光に当てていた。宝石には正直興味がないけど、この刃には何故だかついみとれてしまう。
「これ、私の部屋置いといてもいい?」
「はあ!?」「いいわよ」
 私がポツリとつぶやくと、兄貴があきれた声を出して、母さんがあっさりOKした。
「こんなの置いといてどうすんだよ。危ねえだけじゃん」
 兄貴はずっとぎゃあぎゃあ騒いでたけど、私は指で耳栓をして無視した。
 私はこれが気に入ったの! 一回決めたら譲らないから! 

「逃げろ! 時間がない。もう追っ手はすぐそこまで来ている」
「追っ手? どういうことだ?」
「説明は後だ。命が、将来がかかっている。急げ――」

 下でどたばた言う音がして目が覚めた。寝起きのいい私には珍しく、何だかだるい。やけに切羽詰った夢を見たような気がするし。真っ暗な中で、声だけ聞こえてきてたけど、何て言ってたっけ。
 枕の上で頭を動かすと、短剣が机に置いてあるのが目に入った。昨日どこに置こうか散々迷ったんだけど、結局決まらないまま寝ちゃった。
 ぼうっと短剣を見たまま寝転がっていると、階段を勢いよく駆け上がってきて、ドアを激しく叩く音がした。私が起き上がるより先に兄貴が飛び込んでくる。パジャマ姿のままだ。
「里菜早く起きろ! テレビですごいもんやってるぞ!」
「今日休日でしょ。後でもいいじゃん」
 私が面倒くさくて目をこすると、兄貴がイラついて足を踏み鳴らした。
「とにかく、来い!」
 そう言って私の腕をつかむと、ベッドから引きずり出して一階のリビングまで連れ込んだ。家で一番大きなテレビに父さんと母さんが見入っている。
 私も画面に目をやって、眠気が一気に吹き飛んだ。
『世界各地の空港にUFO着陸』
『乗組員は各国の指導者と会談希望』
 一瞬、ドッキリ映像かと思った。でも、いくつもの国の映像が流れているし、慌てふためく人達も仕掛け人なんて人数じゃない。……本当の話なんだ。
 私はソファに座るのも忘れて、テレビに見入った。ちょうど成田空港をバックに、リポーターが興奮気味に話しているところだった。興奮しすぎてろれつが回ってない。
『謎の乗り物に乗った、高度技術を持つ文明からの使節を名乗る団体は、さっ、先ほど官僚に誘導され空港の部屋に通されました!! それではっ、彼らが降りてきた時の様子を見てくだ、ご覧ください!!』
 画面が切り替わって、円盤状の物体を自衛隊が何重にも取り巻いている様子が移った。銃がきっちりと物体に向けられている。銀の深皿を二枚張り合わせたような、まさに「UFO」だ。
 その一部からタラップが降りて、背広をきっちりと来た人々が降りてきた。外見は地球と変わらないし、そのままかばんを持って会社に出勤してきそうだ。「UFO」からそんな人たちが降りてくるのは、ものすごく違和感のある光景だった。
 先頭の人物が遠巻きにしている人に話しかけている。その人が驚きながら言葉を返している様子から見て、言葉は通じているみたいだ。


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