やがて全ての一年生が、立ち上がり座ると、演壇に立っていた教官が事務的に一言何かを行って下がった。すると、代わってシークレットガーデンの面々から、各寮の寮長らしき人たちが出てきた。 レッドローズがブルーローズより下位であるらしいことを考えると、丈の長い青いローブを着たミカエルのライラは四人の中では最下位らしい。微妙に悔しい。 「名前を呼ばれたら出てきてくださいね」 なにやらピンク色の綿菓子のような頭の、ブルーローズが、そう言って手にもった巻物をするりと広げた。 愛和は思わず椅子の上で居住いを正した。同様に背筋を伸ばす絹ずれの音が一年生のあちらこちらで聞こえる。 まず最初にリトルドーヴとリトルクロウの一年生の名前が呼ばれる。二人が正面の演壇にのぼり、巻物をレッドローズに渡したブルーローズであるドーヴの手でそれぞれ赤と青のケープを肩にとめてもらう。 促されてシークレットガーデンの面々のいる席に進む二人の顔は晴れやかで、大きな会場の拍手に嬉しそうでもある。 続いて、スターの一年生が呼ばれ、レッドローズでポーラスターである七年生の手によって、ケープが着せかけられる。その次はブロッサムの二人だ。 最後はエンジェルである。前の拍手がやんでから、名前が読み上げられるまでの時間が、いやに長い。そう感じただけかもしれないが、そう言い聞かせても緊張するものは緊張するのだ。 「リトルミカエル、アイナ・タツマチ。リトルガブリエル、アリス・サンヴィターレ」 予想にたがわない口調と声。ほっとして、ふぅと息をついて立ち上がる。左隣のアリスと、自然と目線が合い、互いに小さくうなずいた。 壇上に登る。膝に力が無く、いつも何も考えないで歩いているはずなのに、意識して左右を動かさないと足が前に出ない。 やっとのことでライラの前にたどり着いた。長いローブに輝く金色の翼がまず目に入って、続いてその手にささげ持たれた青いケープに目が行き、最後にライラと視線が合う。 にっこりと、心底うれしそうな顔で微笑んだ彼女はそっとそのケープを愛和の肩にかける。続いてアリスにも。 そして、そっと二人に唇を寄せて最上の一言を紡いだ。 「あなたは私の誇り、エンジェルの誇り。最上の天使よ」 二人がハッと視線を彼女に向けると、改めて頬笑み、二人をそっと押しやった。 二人が用意された席に着くのを確認したブルーローズが言う。 「一年のリトルブルーローズに、エンジェル寮、アイナ・タツマチを、リトルレッドローズにブロッサム寮、ターニャ・サンデルを任命する」 巻物を閉じ、一歩下がって四人の列になると、ゆっくりと端から段を降り、そして元の席に着くと、代わりに着任したばかりの音楽の教官が立ち上がった。 指揮棒を振り上げ、振りおろし、歌が始まる。 見上げると、ホールの丸天井に沿って作られた回廊に、聖歌隊の少女たちが並んでいた。 曲が終わり、指揮者が座り、校長が閉会を宣言し、晴れてセントローズの一員となった一年生が、寮ごと青いケープの二年生に連れられて退場する。続いて二年生、三年生、と退場を始めると、ブルーローズが「それでは」と一年生の八人に向かって口を開いた。 「私たちも行きましょうか。シークレットガーデンの本部へ」 [[戻る>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/139.html]] [[進む>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/141.html]] .