ステラ・プレイヤーズ 7*大町星雨

文芸部杏電子書架内検索 / 「ステラ・プレイヤーズ 7*大町星雨」で検索した結果

検索 :
  • 右メニュー
    ...の *師走ハツヒト ステラ・プレイヤーズ *大町星雨 The fairy tale of St. Rose *雷華 姉妹サークル『文芸部楓』へ 御意見処 更新履歴 取得中です。 ここを編集
  • ステラ・プレイヤーズ 7*大町星雨
    「何もひっぱたくことはねーだろが」  早足で歩きながら大斗がぼやいた。手で左頬を押さえている。  私はふくれっつらで答えない。  散々怖がらせといて。来るなら来るって言っといてよ! しかも絶対に日常で使えない変な特技持ってんのは小さい頃から知ってたけど、軍の基地に侵入してしかも平気で衛兵になりすましてるって、あんたどんだけ非常時用にできてんのよ!  夜の駐留所は静かで、機械の動く音が時々するだけだ。角から顔を出して人影がないのを確かめる。すぐさま開いていたドアから格納庫に駆け込んだ。一瞬足が止まる。  広さと高さはちょうど学校の体育館ぐらい。両脇に二人乗り戦闘機が、五台ずつ並んでいる。アラル文字が書かれてるし、宇宙用の戦闘機で間違いなさそうだ。 「適当に選んでいこう」  そう言って歩き出そうとした大斗を、私が引き止める。 「いこうって、一緒に来る気なの?」  大斗は少し緊...
  • 連載作品書架一覧
    ... *師走ハツヒト ステラ・プレイヤーズ *大町星雨 The fairy tale of St. Rose *雷華 .
  • ステラ・プレイヤーズ 17*大町星雨
    ②キアト奇襲作戦  レーザー弾を連射すると、画面に移っていた敵機が爆発した。まばゆい光に一瞬画面が暗くなって、すぐ元に戻った。  戦闘モニターをチェックすると、ちょうど最後の一機をアルタが撃退した所だった。 『ティート、かなりいい腕だ。予想以上』  通信機から雑音交じりのマーウィの声がこぼれて、俺は明るい声でありがとう、と返した。「タイト」という名前は発音しづらいらしく、仲間うちじゃ「ティート」で通ってる。 『午後の訓練はこれで終了する』  突然はっきりした声が聞こえて、画面のスイッチが切れた。  俺は訓練装置のキャノピーを開けて、同じように降りてきたアルタたちと合流した。 「四ヶ月でここまで進歩するなんて大したもんだよ。なんか秘訣でもあんのか?」  マーウィが俺の肩を叩きながらいって、俺はにやりと笑った。 「秘密」  ゲーセン通いは無駄じゃないんだって。里菜は...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕 7*大町星雨
     サラが私を移動させて、重い方の石に座らせた。自分は軽石の方に。そして私の座っている石を見ながら言った。 「これだけのものが持ち上がるようになれば大丈夫かな。明日のオラスの訓練は、いつもの個室じゃなく武道場に来てちょうだい」  私は瞬きをしながら座りなおした。 「静かな状態でオラスを使うのはほとんどできるようになった。後は日常での練習だけ欠かさないようにしてくれればいい。明日から、肉体的訓練も兼ねた演習をやるわ」 「何をやるんですか」  私は滑らかな石の表面をなでながらたずねた。学校の体育では、まあ平均的な成績をとっていた。それにクロリアで地上部隊の訓練も受けてたから、体力には少し自信がある。 「それは武道場で、説明するわ」  サラが少し言葉に詰まったのを見て、私は何となく嫌な予感がした。  昼食の後、指定された場所に行くと、サラがちょうど準備をしていた所だった。私は...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕 7*大町星雨
    ④独り  俺はベッドに座ったまま壁に寄りかかり、部屋の暗闇を見るともなく見ていた。非常灯の明かりで、壁や家具の輪郭が分かる。  足音がして、部屋の中に明るい光が差し込んだ。俺はそっちを見る気が起きない。誰かが歩み寄ってきて、俺の隣に座った。 「ティート(大斗のこと)、夕飯の時間だよ」  アルタに言われて、俺はぼんやりと頷いた。アルタが俺の肩をつかんで、顔を覗き込んだ。 「君だけがリナのこと悲しんでるわけじゃないよ。僕もマーウィもミラも、みんな辛い思いしてる。でもずっと悲しんでたって何も変わらないだろう。せめてこの戦いを早く終わらせて、これ以上こんな思いしないようにするしかないんだよ。それに……ほら、まだ死んだって、決まったわけではないし。リナなら無事逃げ延びてまだあの星のどこかで隠れてるのかも知れない。もしかしたらアラルの捕虜になっているかも。それならまだ会える見込みもあるだろう...
  • 2011年杏夏部誌
    ...6 7 8 9 ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕(大町星雨) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 .
  • ステラ・プレイヤーズ *大町星雨
    2010杏まほろば部誌掲載分 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 2011杏春部誌掲載分 1 2 3 4 5 6 7 8 2011杏夏部誌掲載分 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 .
  • ステラ・プレイヤーズ 1*大町星雨
    〇(シンナ)それが何かも分からないうちに何かが起こった日 「母さん? 兄貴?」  学校から帰って来たのに、二人の返事がない。今日は兄貴の大学もないし、ずっと家だって言ってたのに。  リビングに入ると、生暖かい風が顔の横をすり抜けていった。テレビも真っ暗で、自分の足音さえ響きそうなほど静かだ。  次の瞬間、重いものや固いものが、派手に崩れる音がした。私の心臓が飛び上がる。何の音なのか理解する前に、聞き覚えのある声がした。 「佳惟(かい)、こっち押さえて!」  母さんの声――庭だ!  急いでリビングの窓から庭に出ると、物置の前に二人がいた。なかなかアクロバットな姿勢になっている。ダンボールやら庭ほうきやらが崩れてきて、腕から足まで使って食い止めている。  膝にダンボールを乗せたまま傾いたはしごを支えていた兄貴が、私の足音に気づいて首を苦しそうにこちらに向けた。 「里菜!...
  • ステラ・プレイヤーズ 5*大町星雨
     私はあごの下で手を組んだ。考えるしかない。次に何をするのか、何をしたらいいのか。  まず、よく分からない単語がいくつもあった。……とりあえずパスだ。  明日機械が届いたら、短剣の場所はほとんど特定されてしまう。なら、短剣を捨ててしまったほうがいいかな? でも、今捨てたら相手に気づいたことを知らせてしまうことになる。  でも、逆に持っていたら自分の居場所を教えることになるよね。  こっちから持ってってあげたら助けてもらえるかな。たまたま困ってた人から買っただけなんですって言って。あ、「秘密を知った以上生かしておけん」とか言われて殺されちゃうかも……。大体短剣を探してる事知ってる時点でおかしいし。通信傍受したのバレバレじゃん。  それにそんな事したら父さん母さんとか兄貴とかにも絶対迷惑かけるよね。  じゃあ私の家にあるってばれる前に、短剣をどこか遠くに持っていこうか? でも探査機...
  • ステラ・プレイヤーズ 9*大町星雨
    ①クロリア第十六駐留所  ビーッというブザーの音で、俺は慌てて飛び起きた。里菜から聞いた短剣の力について考えてたはずだったのに、いつの間にか眠り込んでたみたいだ。それこそ夢みたいな話だったけど、里菜は短剣が何か教えてくれると信じているらしい。俺は白昼夢で行動を決めるなんて非合理すぎるって言ってやった。まあ、これで本当に星があれば考えてみてもいいけど。いや、無いと困るんだけど。  俺は里菜の言うとおりにしたのを若干後悔していた。里菜があんだけ自信ありげに言ってきた座標だけど、本当に惑星が、それも俺たちにとって安全なのがあるんだろうか。 目の前の画面に「目的地接近中 通常空間に戻る準備をせよ」と表示されていた。天窓から見える景色は相変わらず真っ白だ。 「着くの?」  後ろから里菜の声が聞こえた。俺と同じだけ寝たにしては、疲れたような声だ。  俺は黙って頷くと、ワープレバーに手をかけ...
  • ステラ・プレイヤーズ 8*大町星雨
     私はパネルに目をこらした。一つだけあがっていないレバーがある。きっとあれだ。  短剣を上向きに構えると、レバーを突き上げるようにゆっくりと短剣を上に動かした。  レバーが上がり、カチンという音がしたような気がした。  背後で機械音がして、冷たい風が、大量の雪と一緒に吹き込んでくる。気おされたように、弾の数が一気に減った。 「こっちに乗れ!」  大斗の声ですぐ横の戦闘機に飛び乗る。吹雪のせいで足元が不安定だけど、だてに雪国で育ってきたわけじゃない。  前の席で大斗が何やらいじってたけど、じきに低いエンジン音とともに宇宙船が動き出した。透明なカバーが頭上で動いて、吹雪を遮断する。  弾が何発か飛んできたけど、視界が悪いおかげで全部それていった。 「やっぱゲーセンも馬鹿にできねえな! アラル軍機のシューティングゲームそっくりだ!」  大斗が操縦桿を引きながら、エンジンの音に負...
  • ステラ・プレイヤーズ 4*大町星雨
    「あのバカ! 何でこんな日に限って呼び出すのよ!」  私は声に出して自分を励ますと、庭の門を手で押した。思わず手を引っ込めたくなるほど冷たい。目の前の家だからって横着しないで手袋してくればよかった。雪は降ってないけど風が冷たい。  大斗の手紙が学校の下駄箱に入っていたのは昨日の放課後だった。  ラブレター、ではもちろんなく、硬い字体で明日どうしても話す必要があるから家に来るように、とだけ書いてあった。しかも誰にも言うなとまで書いて。  学校でも話せないことって一体何なんだろう。昨日久しぶりにあの変な夢を見たのもあって、胸騒ぎがした。  大斗の部屋に入ると、薄暗く、人の気配がなかった。 「里菜、こっち」  どこかからくぐもった声が聞こえて、私は迷わず横のクローゼットを開けた。  その向こうは広い空間になっていた。三つのコンピューター画面の光で、キーボードを打つ大斗の影が浮き上...
  • ステラ・プレイヤーズ 2*大町星雨
     本当に、素晴らしいとしかいいようがなかったと思う。  銀色の刃が光を反射して光っている。鞘に収まっていた時のイメージとは違い、磨きこまれて透き通るようだ。峰の所には、何か文字のようなものが刻まれていた。 「これ何語?」  兄貴が覗き込みながら眉をしかめた。確かに見た事のない文字(?)だった。点と曲線で出来ていて、爪ぐらいの大きさ。それがびっしりと刻んである。裏側は英語の筆記体のようなものが書いてあったけど、こっちも全然読めそうにない。  当の母さんも首を傾げた。 「何か言葉みたいだけどね。持ってきた人も分からないみたいだったし」  しばらく黙って、短剣を光に当てていた。宝石には正直興味がないけど、この刃には何故だかついみとれてしまう。 「これ、私の部屋置いといてもいい?」 「はあ!?」「いいわよ」  私がポツリとつぶやくと、兄貴があきれた声を出して、母さんがあっさりOK...
  • ステラ・プレイヤーズ 3*大町星雨
    Ⅰ(イウィ)「現実」が変わった数カ月間、そして吹雪の日  風が木の葉を揺らす音で目が覚めた。横たわったまま、頭上の葉が揺らめくのを眺めていた。 「ああ、また衣装を汚して。早くしてください。あなたがいなきゃ始まらないんですから」  足元の方から、怒った声が聞こえた。全く、そんなにせかせかしなくてもいいじゃないか。  しばらくそのまま寝転がって相手をいらつかせてやった後、勢い良く起き上がった。草の香りが、ほのかに鼻に届いた。  相手が腰の短剣を抜いて、軽く振った。短剣の文字が光る。風が巻き起こって、衣装についた草や土が吹き飛ぶ。  相手はしかめ面をした後、ふっと表情を緩めた――。  使節団の仕事は速かった。  訪問の一ヵ月後には「アラル・地球文化協力条約」が成立。地球は全惑星の共同体である「アラル連邦」に加盟し、宇宙に乗り出していくことになった。  テレビや雑誌で...
  • ステラ・プレイヤーズ 10*大町星雨
     指定された場所に行くと、センサーで感知できないほど小さな空き地があった。せいぜい町の公園一個分。この宇宙船だと、五、六個並べられるぐらい。いくら操縦方法を全部覚えてても、これだけ狭いとさすがに手が汗ばむ。  俺は手順どおりに戦闘機を着陸させた。ちょっと端により過ぎたかもしれないし、里菜の顔色が青白くなってるけど、成功は成功だ。  キャノピーを上げて外に出る。冬だった地球(正確には日本)に比べてずっと暖かい。初夏って言ってもいいくらいだ。  二人して上着を脱いでいると、森の中から数人が出てくるのが見えた。服を脇に抱えて、そちらに視線を向ける。  四人中三人が迷彩服、一人がしわのない青い軍服を着ていた。迷彩服たちが素早く銃を向けてくる。……悪いことした覚えは無いんだけどな。まあ俺が今着てる服は確かにアラルのだけど。  両手を上げた俺たちに向かって、軍服男が口を開いた。 「武器を持...
  • ステラ・プレイヤーズ 6*大町星雨
     雪をかぶった腕時計が午前四時を差す頃、私は駐留所に着いた。中央の管制塔から出る光が、基地全体をゆっくりと照らしている。それでも林に面した場所にまでは光は届かない。  周りはごく普通の、背丈ほどしかないフェンスで囲まれている。でも大斗の情報に寄れば、無理に切って入ろうとしたり、登って越えたりすると電気ショックを受けて気絶。気付いた時には、衛兵に捕まって牢屋に入ってるという状態らしい。 私は傍に生えている防風林の木に手をかけた。枝に積もった雪を払いながら、体を上に持ち上げる。木登りなんて、ずいぶん久しぶりだ。寒さで指先の感覚が無くなってくる。  短剣売った人、地球人だかアラル人だか、こうなる事知ってたんだか知らないんだか分かんないけど、何にも言わずに厄介事だけ置いてくなんて反則!  フェンスが下に見えるところまで上がってくると、私は枝の上にそうっと立ちあがった。フェンスの向こうの雪だ...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕  6*大町星雨
    Ⅷウィラの攻撃とソシンの救助  キチッという音がして、時計のねじが止まった。私は息をつきながら、枕の上に置いていた時計に手を伸ばし、机の上に戻した。針は私がねじを巻き始めた時間から三〇分くらい後の時間を示していた。 私は額にうっすらとかいた汗を腕で拭いながらベッドに倒れこんだ。もちろん手でやるよりは遅いけど、やっとここまで早くできるようになった。もっと簡単なもの、例えば本の出し入れやクローゼットの開閉はほぼ自然にできる。訓練では、飛んでくるボールにぶつからないように避けたり、一抱えもある石を持ち上げる練習をしたりしていた。 これだってそうだ。私は置いたばかりの時計を見ながら思った。だいぶ慣れてきたからって、ウィラと朝夕の当番を交代してもらった。朝食の時間に間に合わせるために早起きしなきゃならなくなったけど、自分が確実に進歩していくのが楽しかった。 隣のベッドを見ると、ウィラがまだ寝...
  • ステラ・プレイヤーズ 16*大町星雨
     建物の中に入ってすぐ、トレーンさんに声をかけられた。なぜか眼鏡のつるが少し曲がっていて、おでこの端に青い色のシップが貼ってある。マーウィがああまたか、と楽しそうに言った。 「基地を回り終わったら、事務室に行ってほしいって。移る予定だった星が襲撃されて、しばらく移動できそうにないから、どこかの部隊に所属しとくのはどうかって」  トレーンさんは、私に意味ありげな目配せをした。 「里菜は当分オルキーランについて教わる事になる。ただでさえいきなりまだ中学生の女の子が現れたってのに、オルキーラン研究家の所にしょっちゅう行ってる、なんてなったら怪しまれるだろ。だから周りと同化して、注目の目は減らしとくべきだってことじゃないかな」  大斗がアルタたちに分からないよう、日本語で説明してくれた。さすが大斗、なるほど納得。 「案内は大体済んだから、行ってもらっていいよ。また夕食の時呼びに行くよ」 ...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕 8*大町星雨
    『ティート、四‐九の方向から敵が来てるぜ』  マーウィの通信で、俺はとっさにその方向を見た。視界に入りづらく、かつレーダーにかかりにくい角度だ。近づきながらレーザー弾を浴びせてくる。俺は撃たれた振りをしてきりもみ状になった。敵がとどめをさそうと追いかけてくる。機体が敵の方を向いた所でバランス調整機を一気に上げ回転を止める。敵機は状況を判断する前に吹き飛ばされた。俺は額の汗を素早く拭い、戦況を確認した。  お世辞にもいい状況とは言えなかった。警護していた軍の輸送船が攻撃を受けて、あちこちで火花が飛んでいる。船に群がる戦闘機は、まるで食べ物に集まるありみたいで気持ちが悪い。こちらの戦闘機が追い散らそうとしてるけど、いかんせん数が多すぎる。おまけに今は戦闘に参加していないけど、司令官を乗せているだろう主力艦も遠くに控えている。勝敗が着くのは時間の問題だった。  俺は敵機を分析したデータを見...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕 6*大町星雨
     私はオルアの基地を歩いていた。人の声がしていて、にぎやかだ。  足が何かに引っかかって、私は下を見た。足首に緑色の触手が巻きついている。はっとして振り向くと、あの巨大イカがこちらをにらんでいる。助けを呼ぼうとしても、場所がいつの間にか洞窟の中に変わっている。  私は触手を引き剥がそうとしながら、腰のクラルを抜こうとした。なのに何も無い。皮のベルトが下がっているだけだ。背筋がぞくりとして、私は上を見上げた――。  眩しさに目を細く開けると、くすんだ白い天井が見えた。自分がオルキーランの寮で寝ていたことを思い出しながら、私は何度か瞬きをした。  そこでようやく、ベッドの脇で誰かが見下ろしているのに気づいた。サラが呼びにきたのかな。そっちを向くと、三つの目が黒く冷たい視線でこっちを見ていた。一七、八歳ぐらいに見える。短い黒髪が厳しい表情に似合っていた。目が三つって……この人、ルシ...
  • ステラ・プレイヤーズ 18*大町星雨
     最後の艦艇が空に消えると、クロリア第十六駐留所はしんと静まり返った。この作戦のために指揮官や兵士が大勢かりだされて、今駐留所に残ってるのは新兵や非戦闘員、留守番の少数の士官ぐらいだった。人が少ないせいで、訓練も休みだ。  ごろごろしてるのもなんだったから、三日目に、俺は里菜にくっついてトレーンさんの所に行くことにした。里菜は訓練のない時、トレーンさんからオルキーランの授業を受けている。 「つくづくすごい作戦だよねぇ」  分厚いファイルを抱えてきながら、トレーンさんが息を吐き出すように言った。 「まあこれで大統領が捕まってしまえば僕も万々歳だけどね。アラルにいるとどうもやりづらくって」  トレーンさんが首を振った。アラルではオルキーランやルシンの研究が厳しく規制されてるらしい。トレーンさんも資料を没収されそうになって、クロリア管理下の星へ、その後暗殺を恐れて駐留所へ転がり込む羽目...
  • ステラ・プレイヤーズ 13*大町星雨
    「カウダクス・トレーンです。ルシンの文化を研究しています。で、オルキーランの説明だったよね」  それだけ言うと、トレーンさんはすぐに手もとのノートを開いた。しかも即刻敬語取れてる。こりゃ没頭すると周りが見えなくなるタイプだな。里菜が何か言いたげにこちらをちらりと見た。何だよ。 「まず、ルシンのことは知ってる?」  トレーンさんの言葉に、俺たちは頷いた。新興ウイルスで全滅した、不運な人種だ。 「アラル政府はそう言ってもみ消そうとしてるけど、実際はちょっと違うんだ」  トレーンさんが眉をしかめながら言った。 「それは後で説明するとして、ルシン人が絶滅した七年前ごろまで、宇宙にはオルキーランという組織があった。政府からはほぼ独立していて、各地で遺跡や文化の調査を行ったり、ボランティア活動をしたり。戦争の調停もやったし、独自にあちこちをスパイしてたってうわさもある」 「で、彼らが持ち...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕 4*大町星雨
    Ⅴサラ・オウイル  周りの木々が風に揺れて音を立てる中、私は目の前の人から目を離せずにいた。壊れかけたコンピュータみたいに、頭がうまく働かない。  長い髪の女性はクラルを上着の中にしまうと、口を開いた。 「私はサラ・オウイル。オルキーランの生き残りの一人で、あなたを迎えに来たの」  目の前の女性は、自分がオルキーランだと言った。私と同じ、クラルを使う人間だと。 私はそっとお腹の下に力を入れた。頭の中に冷水が流れ込んだように、気持ちが落ち着いた。頭が、さっきまでの麻痺が嘘のように動き出す。 オルキーランの挨拶を知ってて、クラルを持ってても本物のオルキーランとは限らない。もしかしたらアラルの張った罠かも。でも本当に罠だったら目の前の人は戦いのプロ。しかも私が未熟でもオルキーランの技を使えるって知ってるはずだ。私が面と向かってかなう相手じゃない。ここは相手にのせられたふりして、相手の...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕 4*大町星雨
     しばらくしてサラが迎えに来た時、私は疲れ果てて床に仰向けになっていた。結局最初の時以上の高さにペンが上がることはなく、自分の体の重みに比例するようにペンも動きづらくなっていた。  私が起き上がりながら顔をしかめると、サラがペンを拾い上げながら言った。 「始めはそんなものよ。こういう練習を、普段の生活の中でもやっていってもらいたいの。ドアや明かりのスイッチを入れる時や、服をたたむ時。それから寮の部屋に共用の時計があるから、その操作もオラスでやるようにしてね」  私は頷きながら立ち上がった。拍子に足元がふらついて、サラに支えられた。ずっと座ってたせいで、自分がどれだけ疲れてるのか気付いてなかった。我ながらかっこ悪い。  真っ直ぐ立てるようになるまで壁に寄りかかっていた後、私はサラに続いて建物を出た。  部屋に戻ると重々しい雰囲気のウィラが机に向かっていた。私をちらりと見ると、...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕 2*大町星雨
     うう、やっぱ、判断間違えたかな。  地面に座り込みながら、私は途方に暮れていた。入り口からまっすぐ泳ぎ続けて、いくつかの分かれ道を通って、やっと陸地を見つけて上がった。幸い、奥のほうの川はせいぜい足首くらいまでしかない。とりあえず、今のところ肉食獣の気配はない。  とりあえず、だけど。そう思いながら辺りを見渡した。  実際には見えるものなんかほとんど無かった。湿ったヒカリコケがあるおかげでぼんやりと洞穴の輪郭は分かるけど、歩いたり遠くを見渡したりするには物足りない。  暗視装置はポケットに入れてあったけど、さっきの光弾にやられて使い物にならなくなってる。指令装置のライトを使えば見えるけど、電池を残しておきたいのと猛獣に気付かれたくないのとで、必要がない限り使いたくなかった。他の感覚がとぎすまされて、横を流れるちょろちょろという水の音と、空気の生温かさがよく分かる。  今の問題は...
  • ステラ・プレイヤーズ 20*大町星雨
     その後しばらく、基地全体に暗い雰囲気が漂っていた。他の基地の中にはこの作戦で場所がばれた所もあって、そこからの避難者で基地の人口はむしろ増えていた。でも会話は少なく、みんなが気を紛らわしに行くせいもあって、訓練場の音だけがにぎやかだった。 「青貝市で探してみたけど、やっぱりあの自衛隊基地以外のことはほとんど出てこなかった。基地のパソコンに侵入しようとはしたんだけど、こっちのプログラムが少なすぎて」  食堂の端に座りながら、大斗がいらついたように机を指先で叩いた。私は落ち込んだのがばれないように、うつむいて食べ物を口に運んだ。 兄貴達が今どうしてるか、知りたかった。私が脱出した後、家族に関する情報は全く手に入らなかった。アラルから何か私の話を聞かされたのか。それとも全然私の事は分からないままでいるのか。私の側から連絡したくても、このクロリア基地の場所を漏らす危険は冒せなかった。通信電...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕 3*大町星雨
     外に戻ると、暖かい風が吹き込んできた。腕を広げて風を受け止めてみる。保管室は寒いし生活感がしないし、正直しょっちゅう行きたいとは思えない。  私たちは、そのままサラの部屋に行った。中庭に面した窓は開け放ってあって、丁寧に手入れされた花壇が良く見えた。  サラは私に座るよう促すと、棚から辞書のように厚い本を一冊、手帳ほどの大きさの本を一冊取り出してきた。それを私の前に差し出す。 「こっちの厚いのがオルキーラン語の辞書。こっちが色々なことを書き留めるためのノート。持ってっていいよ」  私はあいまいに頷きながら、その二冊を受け取った。家では電子辞書を使ってたから、紙の辞書なんて本当に久しぶりだ。使い込まれたページをめくってみると、もう見慣れたアラル語の他に、象形文字のような記号が書かれていた。何かはすぐに分かった。クラルに刻まれているオルキーランの文字、オラケラだ。 「オラケラは五千...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕 3*大町星雨
     いくら走っても、後ろの音が止む気配はない。むしろ近づいてきてる。私ごときでそこまで必死にならなくてもいいじゃない! 別の獲物探しなさいよ!  汗が目に入って、闇雲に袖でぬぐった。瞬きした時、一瞬視界が明るくなった気がした。はっとして立ち止まり、更に数歩戻る。岩の隙間から微かな光がさしていた。曲がりくねったカーブの向こうからだ。  ひょっとして、また巨大発光イカなの? 隙間から向こうをのぞこうとしながら、心臓が落ち込むのを感じた。後ろからで洞窟の崩れる音が迫ってくる。  その時、地球から逃げようとした時のように、頭の中に自分の知らないイメージが浮かんできた。  暗い場所から急に外に出て、思わずまぶしさに目を細めた。見上げると、雲ひとつない青い空が広がっている――。  今度こそ本当の出口なんだ! いつもの不思議なイメージがそれを教えてくれてるんだ。  動かない足に鞭打...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕 5*大町星雨
     次の日の朝、機械がエラーを起こした時のような、ピーという音で目が覚めた。  目を開けて音のする方を見ると、既に着替え終わったウィラが自分のベッドに座り、両手で握った時計をじっと見つめている。音はその時計から発せられていた。  ねじが、まるでCDか何かが回るように、残像を残しながら回っている。人間の手では到底できない速さだ。最後にキチッとねじを巻き終わる音がした。  ウィラは時計を私の机の上に置くと、ちらりと私を見てから部屋をさっさと出て行った。  私は布団の中で複雑な心境と戦っていた。ウィラのオラスってあんなに強かったんだ。でも私が起きてたのを確認してから行くなんて、嫌がらせ?  私は布団をはねのけながら起き上がると、時計のねじに向かってじっと集中した。  ギ、と嫌な音がしただけだった。 「里菜はオルキーランの歴史についてどれぐらい知ってるの」  サラに聞かれて、私...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕 9*大町星雨
    ⑤台風の過ぎた後のように  俺がいつものように人目を避けて訓練に集中していると、横の訓練装置に人が乗ってきた。こんな時間に珍しい。しばらく無視して自分の操作にかかりきりになっていたが、今度は隣の音が気になり始めた。何しろ、やたらレーザー弾の発射音がするくせに命中音がなく、戦闘機がやられたことを示すブザーが何度も聞こえてくる。要するにめちゃくちゃ下手くそ。いつもなら他も騒がしくて気にならないんだけど、今は二人だけだ。  俺は自分の機械の電源を落とすと、キャノピーを上げて隣を覗き込んだ。ちょうどブザー音が鳴り響いて、乗っていた人が頭を抱えた。横で俺が見ているのに気づいて、キャノピーを上げた。 「トレーンさん、戦闘機にでも乗る気ですか?」  俺は少しばかり呆れながら、それを表情に出さないよう気を使った。自分の足で歩いててもけがする人が、何で宇宙船なんか。  トレーンさんは眼鏡を押し上げ...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕 1*大町星雨
    ★用語解説(五〇音順) アト人…地球人に似た外見を持つ、アト星出身の人達。 アラル連邦…全ての星を束ねている組織。 エガル人…爬虫類のような鱗に覆われている、エガル星出身の人達。 オルキーラン…かつて存在した超能力を使う人々。八年前に滅びたとされている。 クラル…オルキーランが使っていた、自分の能力を引き出すための道具。短剣、長剣、腕輪、数珠など様々な形の種類がある。 クロリア…アラルに抵抗する組織。 ルシン人…地球人に似ているが、額に三つ目の眼、六本目の指、尖った耳を持つ。オルキーランが生まれた星の種族で、オルキーランのほとんどがルシン人だった。八年前にウイルスによって滅びた。このウイルスにはアラルが関係しているといううわさがある。 ★前回のあらすじ  十四歳の星崎里菜は地球でスクールライフを送る普通の中学生だった。  ある日、宇宙から未知の人類がやってきた。外...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕 2*大町星雨
    Ⅶオルキーランの修行  トゥスアに着いた次の日、私は昨日かなり疲れていたくせに、朝早くに目が覚めた。新しい環境で心が高ぶってるみたいだ。遠足とか修学旅行とかの前みたいに。部屋を見回したけど、ウィラ・ソルインの姿は無かった。  机の上に目をやると、お盆の上に朝食が用意してあった。横には小さなメモがある。定規で引いたような角ばった文字が、これまたきっちりと並んでいる。鉛筆で書いてなかったら、印刷かと思えるくらいだ。 『朝食後寮の入り口 村の案内』  これは、間違いなくウィラだ……。私の遠足気分は一気にテスト前の気分にまで落ち込んだ。  朝食の後ずっしりした心を抱えて寮の出入り口に行くと、相変わらずのしかめた顔で、ウィラが待っていた。 「あ、おはよう」  今日はよろしく、と言うつもりだったのに、ウィラは返事も待たずに歩き出してしまった。ちょっと、せっかくこっちが友好関係を築こうと努...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕 8*大町星雨
     また何かがぶつかる音がして、戦闘機が揺れた。それでも何とか持ちこたえてくれている。 「そっちからは仕掛けてくる気ないの」  音が止んだかと思うと、ウィラの大声が聞こえてきた。大声でも冷たさを失っていないところはさすが。私も戦闘機の下から顔をのぞかせて言い返す。 「まだ習ったばっかりなのに、そんなに上手くできるわけないでしょ! 攻撃だってろくにできないし、防御なんてやったことすらないんだから!」 「なら避けろ」 「無茶言うなって!」  そこで向こうからかなり大きな物体が飛んでくるのが目の端に見えた。あれがぶつかったら今度こそやばいかも。  私が戦闘機の陰から走り出すと、背後で今日一番の破壊音が聞こえた。肩越しに振り返ると、タンスに吹き飛ばされた戦闘機が、さっきまで私がいた場所にスローモーションのように崩れ落ちていく。私は体の血がすっと足元に落ちていく感覚を味わった。  ウィ...
  • ステラ・プレイヤーズ 19*大町星雨
    Ⅲ(トゥラ)転機  息が上がり、のどがふさがるような感覚を覚えながら、私はひたすら走った。角を曲がるたびに速度を落とすのがもどかしい。地上行きのエレベータに飛び込むと、チョッキの上からクラルを握り締めた。  自分にできることを必死に考えていた時に、ふと、視界にどこか基地でない場所が被った。目を閉じると、その光景だけがまぶたの裏に浮かんだ。いつもの不思議な夢と同じ。誰かがクラルを振って、燃え盛る火を消そうとしていた。  それが見えた瞬間、これしかないと思った。  軽い振動と共にエレベータが止まり、ドアが開いた。開ききる前に飛び出す。民家の中の監視用機械やロボットの隙間をぬって、屋根裏の展望台に上がった。私の体温に反応して、部屋の電気がつく。  目の前に緑の海が広がっていた。と、言ってもこの高さからあの巨大な木々を見下ろす事はできない。実際に高い所に展望台を作るとアラルにばれる...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕 5*大町星雨
     イスに座ってパンをちぎりながら、私はぼんやりと考え事をしていた。船はワープ中で、自動操縦になっている。食事は、戦った後の私を心配して、オウイルさんが用意してくれたものだ。残念ながら、戦いの後に食欲がわくほどの精神力はないんだけど。それにこれからどうなるのかほとんど分からないから、不安でもある。それでも少しずつ口に押し込む。  シャワーを浴びた後、服も換えさせてもらったからだいぶ疲れはとれた。襟に淡い青の線が入った白い長袖に、同じく淡い青の長ズボンという、飾り気はないけど動きやすい服だ。傷の手当てまでしてもらった。クラルは腰に下げてある。 「オルキーランは今何人いるんですか」  その問いに、向かいでオウイルさんが自分のマグカップを置いた。それを両手で覆って話し始める。 「あなたを含めて十二人。でもうち一人はルシン・ウイルスの後遺症で意識不明のままよ。更に残りの十一人のうち五人が見習...
  • ステラ・プレイヤーズ 14*大町星雨
    Ⅱ(エシェ) 小麦粉(のようなもの)のわな  クラルを構えて立っている。小さな武道場の中で、同じように構えた相手と向き合っている。 「始め」  審判の声が聞こえて、ゆっくりと動き出した。しばらく相手の様子をうかがって、一気に攻撃に出る。  顔の脇を刃がかすめて、ひやりとした――。  起きて膜を開けると、大斗もちょうど着替え終わった所だった。 「置いてあったスケジュールによると、そろそろ朝飯らしいぜ」  私はふうんと頷いて、大斗の後ろから部屋を出ようとした。寮の部屋は(なぜか)手動の引き戸だ。 「うわあ!」  大斗が叫ぶと同時に、目の前で白い煙が立ち上った。空調の作る風に乗って、こっちに押し寄せてくる。  鼻がむずむずしてきて、連続でくしゃみをした。そのたびに白い粉が舞う。  奥の方で笑い転げる声がした。煙の向こうに目をこらすと、大斗と同じような服を着た人が...
  • ステラ・プレイヤーズ 11*大町星雨
     風呂から上がると、脱衣所に新しい服が置いてあった。学校の制服に似た、ワイシャツと黒いズボンだ。きちんと糊が利いている。格納庫での撃ち合いで服を焼け焦げだらけにしていたし、手ぶらで来たから、ありがたく袖を通す。  ユニットバスから出ると、小さなテーブルに肘をついて、里菜が待っていた。考え込むように眉を寄せながら、小さなりんごをかじっている。自分の荷物に入れてた物らしく、黄緑のワイシャツにジーンズの七部ズボンだ。ベルトには返してもらった短剣が下がっている。  俺がテーブルのかごに入っているひめりんごに手を伸ばしながら座ると、里菜が真っ先に口を開いた。 「これって牢屋じゃないよね」  俺は大きく頷く。ドアに鍵こそかかってるけど、他はホテルみたいな部屋だ。 「急にこんな態度が変わるなんて、最初はまた短剣が何かしたのかと思った。でもそれじゃ、あの人たちが何であんなに驚いてたのか分からない...
  • ステラ・プレイヤーズ 12*大町星雨
    「耳を見せなさい」  画像の女が里菜の方を向いて、言った。遠距離通信のせいかややくぐもって聞こえるが、歯切れが良く聞き取りやすい。 そこで里菜の表情が目に見えてこわばった。真剣な視線が注がれていても、硬くこぶしを握ったまま、髪をよけようとしない。少し尖ったような形のせいで、よくからかわれていた耳。最近は言われても笑うか、ちょっとやり返すぐらいだったから気にしないでいたけど、この様子じゃ相当コンプレックスだったらしい。  それでもやがて、ゆっくりと片手が上がり、髪を耳の上に上げた。  里菜が見せやすいように横を向くと、着陸の時のようなざわめきが走った。学者なんか、身を乗り出して見入っている。  里菜が眉をひそめたまま目配せしてきたが、俺もどう反応したらいいか分からなかった。  しばらくして、男がため息をついた。部屋の時間が動き出す。里菜がすぐさま耳を髪の中に隠した。 「失礼した...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕 1*大町星雨
    ★用語解説(五〇音順) アト人…地球人に似た外見を持つ、アト星出身の人達。 アラル連邦…全ての星を束ねている組織。 エガル人…爬虫類のような鱗に覆われている、エガル星出身の人達。 オラス…意志または思いの力。オルキーランはこれを利用して超能力を使う事ができる。 オルキーラン…かつて存在した超能力を使う人々。八年前に滅びたとされているが、わずかな生き残りがトゥスア星に身を潜めている。独自の言語を持つ。 クラル…オルキーランが使っていた、自分の能力を引き出し、強化するための道具。短剣、長剣、腕輪、数珠など様々な形の種類がある。 クロリア…アラルに抵抗する組織。 ルシナ・フレスタ…ルシン人が滅びた頃に行われていた、ルシン星の平和記念祭。今ではルシン滅亡の事件を指す。 ルシン人…地球人に似ているが、額に三つ目の眼、六本目の指、尖った耳を持つ。オルキーランが生まれた星の種族で、オル...
  • ステラ・プレイヤーズ 21*大町星雨
    ③凶報 『全隊退却用意』  相手を撃ち落した事を示す爆発音に続いて、耳につけた通信機から指令が聞こえた。  俺は周りに敵がいないことを確認すると、設定してある退却方向に機体を向けた。 『敵の応援、ワープ航路より接近中』 「ちょっと遅かったな」  俺は戦闘機の中で独り言をつぶやくと、ワープレバーを引いた。 「初戦としては上々だったんじゃないか」  母艦の中を歩きながら、マーウィが言った。俺はポケットに両手を突っ込んだまま、笑って肩をすくめる。  まあこれで里菜に胸張って自慢してやれるかな。俺がいなくて無事にやってんのかな。  そんな事を考えてるうちに、中央広場に出た。重要な報告や結団式なんかをやるところだ。そこが何やら騒がしい。人があちこちに集まって、興奮した、不安そうな様子で話している。アルタが走って話を聞きに行った。マーウィと俺は壁際に立って、黙って顔を見...
  • ステラ・プレイヤーズ 15*大町星雨
    「別に、盗聴みたいな悪い事はしてないぜ」  アト人が明るく言った。金髪に青い目が鮮やかだ。その顔を見て、ハッキングに成功した時の大斗を思い浮かべた。 「ちょっと見れば分かるんだよ。部屋にあった荷物が古臭い上に、昨日急に上官会議が開かれたんじゃ、ぱっとわかる」 「もしかしたら、俺たちはもう少し前からいたかもしれないじゃないか。で、たまたまそんな荷物しか用意できなかったかも」  涙目になった大斗が、しかめ面で反撃した。古臭いはちょっとひどい。  アト人がにやっと笑った。 「お隣ならすぐ分かるんでね」 「さいで」  大斗がボソッと言った。 「隣人つながりもあることだし、後で基地を案内してやるよ。これも恒例だしな。軍にははいるつもり?」 「まだ、そこまでは……」  アト人の言葉に困って、首をかしげながら答えると、エガル人の男性が手を振った。 「ここを離れるにしろ、いるにしろ...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕 10*大町星雨
     俺は部屋に駆け込むと、隅に小ぢんまりと押しこめられているパソコンをのぞきこんだ。マウスをいじって、すぐに安心して息をついた。何でもない、前からいかれてたデータの異常だ。いつかこうなるとは思ってた。俺は軽くキーボードを叩いて壊れたデータを消すと、肝心の暗号データを開いた。  こちらも大したことはなかった。アラル軍部向けに発信された、大統領の演説画像だ。立体画像を強引に平面の画面に映しているから、ボールの上に貼り付けたみたいに隅の方がゆがんでいる。本当は新しい立体映像装置がほしいけど、クロリアで生活してるとそうもいかない。こうやってスクラップ寸前のコンピュータを掘り出してくるのが精いっぱいだ。  俺はしかめ面をしながら床にあぐらをかいて、画像を再生した。 『――から、クロリアを倒すという君たちの信念はこの世界全体にとって有益となるはずだ』  耳に突っ込んだイヤホンから、大統領の力強い...
  • 2010杏まほろば部誌
    こちらは2010年秋に教育学部の文化祭、まほろば祭に合わせて発行した部誌に掲載された作品です。 公式に発表された最初の部誌でした。 以下の作品名の後の数字のリンクからそれぞれの作品へお進みください。 ダンゴムシは口を閉ざす (小豆) 1 2 3 4 5 6 涙 (師走ハツヒト) 1 2 こえをきくもの (師走ハツヒト) 1 2 3 4 5 6 僕は英雄になりたかった (椿) 1 ステラプレイヤーズ (大町星雨) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 a
  • 2011年杏春部誌
    ...「こえをきくもの」「ステラ・プレイヤーズ2」は連載作品です。 すき焼き(夕暮れ) 1 2 うそまち(替え玉) 1 2 3 こえをきくもの(師走ハツヒト) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕(大町 星雨) 1 2 3 4 5 6 7 8 .
  • 大町星雨の頭ん中
    ... 1 連載作品 ステラ・プレイヤーズ .
  • 部員紹介
    文芸部杏のメンバーを紹介します。 名前をクリックすると、その部員の個人書架に飛びます。 2年生 有内毎晩 工学部情報工で文芸部所属。周りから「何がしたいの?」と訊かれます。 書くジャンルはファンタジー寄りですが、日常コメディ系もたまに書きます。 好きな小説家は、谷川流や井上堅二。読みやすい文章を念頭に日々試行錯誤中。 灰傘日光 中途半端な時期に入部しました。機械システム工でふらふらしています。灰傘といいます。 好きな作家さんは伊坂幸太郎さん、冲方丁さん、伊藤計劃さん。 読むのも書くのもファンタジックなものが好きですが、いろんなジャンルが書けるようになりたいです。 よろしく御願いします。 万変億化 物質工で動いてる謎の人です。ペンネイム不明(上記は借)でころころ名前は変わ り、ほぼ気まぐれで決めています。好きな作家は福井晴敏です。誤字脱字に気をつけ て...
  • 6月13日 リレー小説
    雷華のターン 「おーぷんせさみ!」  魔法の言葉を叫んで、美紀は手を高々と掲げた。指輪が不思議に発光して少女を包み込む。 「開けゴマ!」 同じ意味の言葉を叫ぶこちらは男子。美紀の昔からの友人で、今じゃ一緒に戦う仲間である達之だ。  数瞬ののちにはそこにはフリル過多の白い衣装と、黒のタキシードを纏った少年少女が立っていた、 「あくの化身なんてほっとかっぷるによって成敗されるべし!」  のりのりで美紀が言う。手に持った白のブーケをつきつけているが、はっきり言って迫力が今ひとつである。 「僕らの恋路の邪魔はさせないよ!」 ステッキをつきつけて達之も言うが、やはり迫力は足りない。なにせ、どう見ても結婚式ごっこをしている子供二人なのだ。  だから敵さんもなかなかやりにくいらしい。 「まさか、噂のピンキーズか……。ゴホン。うるさい!われら悪の組織のじ...
  • @wiki全体から「ステラ・プレイヤーズ 7*大町星雨」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索