夕暮れ

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  • 夕暮れ
    夕暮れのページです
  • 街灯*夕暮れ
     その街灯の照らしている場所を一歩外れると、一本の小道の先には、ひたすら深い闇が広がっていた。月明かりも、人が持つあらゆる善い心さえも、すべてを呑み込んでしまうように、ただ闇が支配する空間があった。  その頃私は、毎晩食事が済むと、下宿の周りを散歩するのが常であった。普通は一人で、時には同じ下宿の仲間たちと歩くこともあった。仲間と歩くと言っても、散歩とは名ばかりで、どこか外へ飲みに行き、酩酊して明け方の冷たい空気を吸いながら、薄暗い道を歩くことになるのが大半であった。しかし、一人で出歩く時は違った。自分ひとりで、昼間歩いた道、通り過ぎた曲がり角、そういった所を思うままに歩いてみるのである。日が落ちて、太陽に代わって月が木々に影を落とす時、私は歩きながら様々なことを思った。時には自分の浅薄な考えに自惚れ、また時にはその幼稚さに打ちひしがれながら、俯き加減に歩いていると、私は自分がこ...
  • 天網恢恢 *夕暮れ
     ある日の夜半すぎのことでした。マンションの裏手にあるゴミ捨て場には透明なビニール袋がいくつも積み重ねられ、ゴミ捨て場の戸の隙間から入る街灯の明かりがわずかに戸の中を照らしておりました。  そのたくさんのゴミ袋の、ある一つの袋の中では、色とりどりの、けれどもそれぞれへこんだりひん曲がったり、形がばらばらの缶たちが皆ざわざわとお喋りをして、夜を過ごしておりました。そんな中、一人のカセットボンベが太った緑色の判事に向かって声を張り上げて言いました。 「判事さん、大体あたしゃ納得がいかないんだ。そもそもこの馬鹿亭主がいつもいつも酒の臭いばかりさせていやがるから、ゴミ箱へ捨てられるときになってやっと別れられたと思ったってのに、捨てられた後もまだ付きまとって来るなんてさ!」  それに答えて、銀地に何やら黒い文字が描かれた缶が、酒臭い息を吐きながら怒鳴りました。 「なんだとこの馬鹿野郎! こっ...
  • 2011年杏春部誌
    ... 新年度となり、夕暮れ、替え玉、雷華の3人の部員を迎え、賑やかなスタートを切りました。 以下の作品名の後の数字のリンクからそれぞれの作品へお進みください。 ~特選集~ 文芸部の活動中に書いた作品の内、それぞれ部員が自作品で最も良いと思った物を掲載しています。 天網恢恢(夕暮れ) 1 くもりのち(小豆) 1 2 チム・チム・チェリー!~灰被り姫と星の王子さま~(師走 ハツヒト) 1 2 3 終末時計(大町 星雨) 1 ~書き下ろし集~ 今回の部誌の為に書き下ろされた作品を掲載しています。 ※「こえをきくもの」「ステラ・プレイヤーズ2」は連載作品です。 すき焼き(夕暮れ) 1 2 うそまち(替え玉) 1 2 3 こえをきくもの(師走ハツヒト) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕(大町 星雨) 1 2 ...
  • 『すき焼き』 1*夕暮れ
     さほど親しくもない人から、自分の行いを非難されたり、欠点を指摘されたりすることは、甚だ不愉快なことである。自分に何らかの非がある場合に、他人から注意されることは仕方のないことだが、自分に注意を促した相手が、「悪い所を直してやった」というようなしたり顔をしているのを見ると、いくら自分に非があっても相手に対して嫌な気を抱いてしまい、「こんな奴の言うことなど聞いてやるものか」という気持ちになってしまう。  しかし、それが近しい者、例えば親兄弟や友人であれば、お互いに相手の性質をある程度理解しているため、多少言い方が悪かったとしても、相手の言わんとしている事を理解しようと歩み寄る気にもなり、かえって相手の指摘を受け入れ、正そうと言う気持ちになるものである。  すなわち、人に注意を促す際には、互いの人間関係の距離によって言葉を使い分け、相手を納得させられるよう努力すべきである。直截的な 物言い...
  • 『すきやき』 2*夕暮れ
    「そんなことを言うなら、お父さんだって人のことを言えないじゃないの。今日だってあたしたちはお寿司が食べたいって言ったのに、お父さんは鍋が良いなんて言って、それに鍋にしたって、あたしはしゃぶしゃぶが良かったのに、お父さんはすき焼きにするって。先週家ですき焼きを食べたことをもう忘れたの」  すると母親が笑いながら、 「ちょっと、どうして言い争いを止めようとしたあなたがそんな興奮して話しているのよ。お父さんに似て短気なんだから」 「あたしは、二人があんまりやかましいから……」 「そもそも、お前が野菜を先に……」  二人同時に言いかけたが、 「はいはい、もうやめましょう。周りのお客に迷惑よ。さあ、野菜を入れて、じゃがいもは早く入れないといけないんでしょう」  と母親が二人を遮って言うと、 「おお、そうだとも。あとは白菜だ。ああ、肉ももう煮えてきたな。ほら、お前、器を寄こしなさい」 ...
  • 2011年杏夏部誌
    ...替え玉) 1 街灯(夕暮れ) 1 ~連載長編作品~ The Fairy Tale Of The St. Rose School ―芽吹きの季節に―(雷華) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 こえをきくもの(師走ハツヒト) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ステラ・プレイヤーズ〔ⅲ〕(大町星雨) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 .
  • 部員紹介
    ...分からない。 夕暮れ 工学部です。純文っぽいものを書きたいなと思いながら、今一つ頭の方が追いつかない気がします。 好きな作家さんは、三島由紀夫さんや、最近亡くなられましたが北杜夫さんなんかが好きです。 あと、外国の作家さんならマイケル・クライトンも好きです。
  • 6月13日 リレー小説
    ...紀は振り返る。  夕暮れのターン  ゴツンッという音を聞いた時、達之は目の前に星が瞬くのを見た。と思うとすぐに星は光を失い、目の前が暗くなって行くのを感じながら、達之は意識を失った。  一面全くの闇だ、薄眼を開けながら達之は思った。自分の見ているものが廃工場の中なのか、それともどこか他の景色なのか。背中から伝わってくる冷たいコンクリートの感触に、ここが野外でないことだけを彼は理解した。暗闇の中で、彼は色々なことを考えた。美紀はどうしただろう、初めに思ったのはそのことだった。美紀と、そしてマルと、二人はどこへ行ってしまったのか、無事なのか、考えても分かるはずの無いことも、暗闇の中では考えないわけにはいかなかった。  小豆のターン  美紀が叫ぶ。 「ダ、ダーリン!」 「達之!」  マルも叫んだ。  怪人に殴られた達之が倒れ伏す。ピクリとも動かない。 ...
  • 縁日草子 4*師走ハツヒト
     早目に来たつもりが時間はあっという間に過ぎ、夏の長い日も暮れて真っ暗になっていた。とはいえ、出店や提灯の明かりはその煌めきをいや増していた。 「もうすぐ花火始まるな、そろそろ席取るか」 「うん」  ちょこちょことしか進まないリイナの歩く速さに合わせてゆっくりと歩きながら、空いた場所を探す。混んではいたが、男一人と子ども一人が入るくらいのスペースはすぐに見つかった。 「あそこのあたり、どうだ?」 「悪くない」 「よし決まり」 俺はさっき買った焼きそばと焼きもろこしを片手にまとめ持って、空いた左手をリイナに差し出した。リイナもさっき俺が射的で当てたキャラメルを袂に入れて、俺の手を取る。  小さな手が触れた瞬間、一気に体温が上がるのを感じた。自分でやった事なのに、何を照れてんだ俺は。単にはぐれない為に手を繋ごうとしただけで、やましい気持ちはない。断じてない。  訳もなく高鳴る...
  • The Fairy Tale Of The St. Rose School ―芽吹きの季節に― 10*雷華
     その時ガタリと音がして、壁が開いた。 「おっそーい!」 「まあまあ、ダリア、そうカリカリしないで」 「だってエルフェ、自己紹介に十分もよ?」 「私たちの時はその倍はかかりましたね。主にあなたのせいで」 「それはそれ、これはこれ」  差し込んできた眩しい光に慣れると、夫婦漫才を繰り広げるブルーローズとレッドローズの姿があった。  その向こうには緑のバラの庭園が広がっている。 「ようこそシークレットガーデンへ」 落ち着いた空気を取り戻すようにレッドローズが言う。 「まさか本当にシークレットガーデンが庭だとは思わなかったでしょ? まさか私たちの仕事の大半が庭仕事とか、全校には言えないわ。夢壊しちゃうもの」  冗談めかしてブルーローズが言い、落ち着きかけた空気を盛大にブレイクさせる。 「とにかく中に入ってちょうだい。さあ、歓迎会よ」  レッドローズの言葉に一年生が...
  • ステラ・プレイヤーズ〔ⅱ〕 2*大町星雨
     うう、やっぱ、判断間違えたかな。  地面に座り込みながら、私は途方に暮れていた。入り口からまっすぐ泳ぎ続けて、いくつかの分かれ道を通って、やっと陸地を見つけて上がった。幸い、奥のほうの川はせいぜい足首くらいまでしかない。とりあえず、今のところ肉食獣の気配はない。  とりあえず、だけど。そう思いながら辺りを見渡した。  実際には見えるものなんかほとんど無かった。湿ったヒカリコケがあるおかげでぼんやりと洞穴の輪郭は分かるけど、歩いたり遠くを見渡したりするには物足りない。  暗視装置はポケットに入れてあったけど、さっきの光弾にやられて使い物にならなくなってる。指令装置のライトを使えば見えるけど、電池を残しておきたいのと猛獣に気付かれたくないのとで、必要がない限り使いたくなかった。他の感覚がとぎすまされて、横を流れるちょろちょろという水の音と、空気の生温かさがよく分かる。  今の問題は...
  • チム・チム・チェリー!~灰被り姫と星の王子さま~ 2*師走ハツヒト
     寒い季節はこの仕事の最も忙しい時期で、日も短いので本当に朝から晩まで仕事がある。もうそろそろ春がやってくる頃だが、それでもチェリーは今日も遅くまで一生懸命仕事をした。  それは一重にこのためだった。 「んーっ! 今日の仕事もおしまい!」  チェリーは屋根の上で伸びをした。チェリーの眼前には日も暮れて真っ暗な空いっぱいの星と、星のようにキラキラ輝く夜景が広がっていた。  屋根の上から見上げる空と見下ろす街の風景は、煙突掃除人たちだけの世界だった。チェリーは今掃除し終わったばかりの煙突に命綱――他の 煙突掃除人は使わない者が多いが、チェリーの母が絶対に使えと泣いて頼むので仕方なく使っているもの――を結びつけると、ぐるりと回りを見回した。  北に見えるのは時計塔で、戦争が終わってすぐに町のシンボルとして建てられたものだ。南には真っ黒な海が広がり、けれど月の光を反射して逆さ向きに輝く白...
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