Dear You & From Licor

Dear you

この手紙を読んでいる君へ…
突然ですまないが、“”というものがどういうものであるか、考えたことはあるかな?

僕から言わせてもらうとね…うん。真実の“”、そんなものは存在しない。お生憎様だけど、これは断言できる紛れもない事実だよ。

人間には感情というものが存在する。時にはそれが幸せの原因となり、また時には不幸の元凶となる。
聖書によると、人類の感情の発端はアダムとエヴァが罪を犯したことによるんだ。
楽園の中央にある木の実だけは絶対に食べてはならないという言いつけを、蛇に唆され食べてしまった。
そのせいで、彼らの目は開き、それと引き換えに罪を持つ存在となったのだった。

じゃあどうしてこれが“”と関係しているかって?その答えはこうだ。


人は欲深い。そして何よりも……自分が最も大切なんだ。思いやりなんてない、そんなのは綺麗事。
彼らは後にお互いがお互いに責任転嫁をして、自分だけ免れようと必死に足掻いた。


飼われている犬や猫だって、本当は自由に暮らしたかったのかもしれない。
動物としての誇りを、野生で暮らす唯一の機会を…彼らは人間の勝手な気まぐれで台無しにされてしまっているのかもしれない。

おっと、気合を入れていたせいで長くなってしまったよ。それでは本題に入ろうか。

今から言う出来事が、本当かどうか…信じるか信じないかは、全て君が決めることだ。
現実では絶対に起こりえないだろうことが、別世界には存在している……この言葉の意味、分かるかい?

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名遅れたけど、俺の名前はディコル。普段はリコルって名乗ってるけど、それは本名じゃない。
尤も、そんなことより妹の本当の名前が未だに伝えられていないということの方が問題だと思うけどな。


俺がまだ赤ん坊の頃……俺は、蒼国にある最も小さい村に誰かに置き去りにされていた。
正確に言えば、時空の扉に何らかのパニックが発生し、本来…親父達と向かうはずだった場所から俺一人だけ外された感じ、ってとこかな。
まぁ…これは最近、姉貴のキュウカから聞いた話なんだけどさ…。

で、無事俺はその村の民家に拾われたって訳。
彼らは捨てられた俺を、優しく、暖かく育ててくれた。
嬉しかった。幸せだった。本当の親のことに未練なんてなかったのに。
血がつながっていなくても、ずっと家族でいられると…そう信じていたと言うのに…

その期待は間もなく裏切られることとなる。

ある日のことだった。俺が住んでいた村に、奴隷商人達が攻め入ってきたのだ。
奴等は女子どもを攫い、いかにも労働力になりそうな若い男共を攫い…残酷な光景だった。
人間の命が、人間によって簡単に支配されてしまうということを当時の俺はまだ知らなかったんだ。

当然ながら、奴等は俺の義理の家族のところにも来る。
俺は……捨てられたという事実を背負いながらも、今まで築き上げてこられた幸せを壊されてしまうのだけは避けたかった。



………だが、家族は俺を見捨てた。



俺を取り残して、命乞いして、さっさと逃げて行った。
もともと、目の色が蒼と紅のオッドアイだったから高く売れると思ったのだろう。

俺の義理の家族は、俺を売り払い、一人ぼっちのまま、置き去りにしてどこかへ去って行ったんだ。


幼いせいで無垢だった。家族を疑うことができなかった。そもそも、状況さえ把握することができていなかったんだと。

絶対に助けに来てくれる、またここに帰れる日が必ず来る……
そんな、純粋な子どもにしか考えられないような儚い希望を胸に抱いて、俺は遠くに連れて行かれた。


その後の生活は辛いものだった。
子どもながらに強制労働を強いられ、何かを失敗したり、少し行動が遅いだけで、殴られ、鞭で打たれ、肌を焼かれ…時には、性的暴行を受ける日もあった。俺の両目を気味が悪い、悪魔の象徴だと罵る奴もいた。…今となっては、聖王国の王家への侮辱に相当するのだろうけど。
また、当たり前のことだが、その頃の俺が王家の息子だったことなど知る由もない。

食事を採ることさえ充分ではなかった。
以前のように、優しさに包まれながらご飯を食べる日はもう一生来ないのだろうと、少しずつ自覚していったのだろう。

けれど、誰も助けてはくれなかった。都会の大人たちは皆、俺達を憐みどこかへ去っていく…
中には奴隷を買う者もいた。でも、買主はとても獰猛で、狡猾で…多分、あの時買われた少女は殺されてしまったことだろう。

そんな残酷な世の中を、知ってしまった、知らねばならなかった。
死んでしまいたかった…でも、死ぬことさえ許されなかった。空を飛ぶ鳥達のように自由になりたいと、常に願っていた程に。

間違っているんだと信じたかったけれど、信じることさえ許されていない俺は、奴等の言いなりになるしかなかったのだ。


それからいくつか月日は経ち、どうにかして俺は生き延びることができた。
成長した俺は、ここから脱出し、一人で生きていく覚悟を心のうちに留めていた。

誰にも頼ることなく、信用することのない……即ち、一匹狼として生きていこう、と。


別に俺は、全て親父が悪いとは思ってない。
それでも、どうして俺を血眼になってまでも探してくれなかったのか…その部分はどうしても、彼を赦すことができない。

結局、国を統治するものにとって重要なのは支配力であり、子どもではない。
王である限り、子孫などいくらでも残せるはず……直感的にそう思った。だから嫌いなんだ。本当は俺のことなんてどうでもよかったのだろう。

まぁ、多少の独断はあるかもしれないけど……
………ディーヴの言う通り、何も告げてくれないのであればそう言い切ってしまっても構わないのではないだろうか。

どちらにせよここではっきり言えることは、俺の心の傷が癒えることはない、身体の傷が消えることはない。……永遠にな。

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最後まで呼んでくれて、本当にどうもありがとう。
くだらない話に付き合わせてしまったね、でもこれらのことは全て事実なんだ。
信じるか信じないかは別として、君達が僕に対する印象を少しでも変えてくれたなら、それはとても嬉しいことだと思う。
あ……別に、同情してくれって言ってるつもりはないよ?寧ろ、それは嫌だね。だからつまり…そう。
仕方がないんだ、この性格は多分……一生治らないかもしれないね。たまに、自分が何を言っているのか分からなくなる時がある。
疲れているのかな…ねぇ、どうしたらいいと思う?誰でもいいから、アドバイスを待っているよ。


そうそう、どうして僕がディーヴとは反対にミズキと仲が良いのか、と言いますと…

彼も僕と同じような人生を歩んできているんだ。だから分かち合える、彼だけは特別なんだろうね。きっと。


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最終更新:2024年04月11日 02:37