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リリース禁止と外来生物法 - (2010/11/14 (日) 03:50:20) の編集履歴(バックアップ)


リリース禁止と外来生物法


リリース禁止の現状


 毎週のように新聞の片隅には、全国のどこかしらの都道府県でブラックバス絡みのリリース禁止にかかわる記事が掲載されていること、皆さんご存じでしょうか?ここ最近、一度は沈静化したと思っていた、いわゆるリリース禁止の諸問題が再燃しているように思えてなりません。情報を収集し、現状を把握できるコンテンツをいくつか紹介します。

琵琶湖での現状をリアルタイムで知ることができます
亀ちゃんの外来魚回収レポート

更新は無くなったものの、外来魚問題では有名なページです
ゼゼラノート



リリース禁止とは(1)

 リリース禁止って何ですか?「リリース禁止」という、言葉そのものはよく耳にするものの、それが一体どのような性質を持つものなのか、禁止に背いてリリースした場合どのようなことになるのか、ちゃんと説明されている場所って意外に少ない(過去の情報収集した時は曖昧な説明しかなかった)と思います。

 リリース禁止に関する理解がなされていないために、市民と行政との間での議論が噛み合わない現場をこれまで何度も見てきました。琵琶湖のような場合には「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例 」というような、条例という形式で定められているのでわかりやすいのですが、リリース禁止は必ずしも条例だけでないようです。

 たとえば、長野県の事例で見てみます。以下のようなやり取りが『信州・フレッシュ目安箱』という長野県websiteでなされています。
質問:外来魚のリリース禁止についてどうしても伝えたいこと、また、お聞きしたいことがありメールをさせていただきました。(省略)今回の条例について公聴会の開催やパブリックコメントの募集を行うなどにより県民の意見を聞くということもなく、いつのまにか条例が成立しているというように感じていますが、それでよかったのですか。「外来魚=駆除しなければならない」というような偏った考え方のみで条例を成立させてしまってませんか。

回答:今回のオオクチバス等の再放流禁止は条例ではなく、漁業法第67条に基づき長野県内水面漁場管理委員会の指示としてなされたものです。内水面漁場管理委員会は、漁業法、地方自治法に基づき設置されている行政委員会です。漁業者代表5人、漁業者以外の採捕者(釣り人)3人、学識経験者5人の13名の委員から構成されており、オオクチバス等についても様々な意見をお持ちの方が委員に選ばれています。オオクチバス等の再放流禁止については、この委員会で2年間議論してきました。本年度は委員会に外来魚小委員会を設けて集中的に検討してまいりました。その中の議論において、再放流禁止は効果がない、再放流禁止にせず観光的に利用したいとする意見もありましたが、1尾でも減らしていくためには再放流禁止が有効であるとの意見が大勢を占め、今回の決定に至ったものです。

 なんじこりゃ(探偵物語)、行政のアカウンタビリティもありますが、アングラー一人ひとりの、問題を知ろう!とする努力も必要なようです。以下に簡単に解説したいと思います。


リリース禁止とは(2)

 結論から言えば、長野県におけるリリース禁止は、条例ではなく、内水面漁業管理委員会の指示となっています。長野県に限らず、他県でも同様の形式でリリース禁止を定めているところがありました。少し難しくなりますが、わかる範囲で書いてみます。説明の都合上難しい概念規定はなるべく省きます。

 まず、内水面漁業管理委員会とは、合議制の行政庁です。漁業管理委員会は漁業法に基づき、漁業調整上必要と認めるときは、関係者に対し必要な指示をすることができるとされています。

漁業法
(海区漁業調整委員会又は連合海区漁業調整委員会の指示)
第 67条 海区漁業調整委員会又は連合海区漁業調整委員会は、水産動植物の繁殖保護を図り、漁業権又は入漁権の行使を適切にし、漁場の使用に関する紛争の防止又は解決を図り、その他漁業調整のために必要があると認めるときは、関係者に対し、水産動植物の採捕に関する制限又は禁止、漁業者の数に関する制限、漁場の使用に関する制限その他必要な指示をすることができる。

 長野県の場合だと、指示とは、相手方に不作為を命じる禁止の法的性質を有するものといえそうです。なお、関係者とは漁業従事者に限らず、適用すべき全ての方を含み、特定の方・不特定の方を問いません。


委員会指示に違反した場合には、罰則が適用される場合があります。


(罰則)
第139条 第67条第11項( 略 )の規定に基づく命令に違反した者は、1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。


 罰則に関しては、139条に規定があるように、「罰金又は拘留若しくは科料」であるとあります。

 これは道路交通法違反に対する罰則と同じ性質を持つ、行政上の刑罰ということになります。分かりやすくするために別の事例をあげますと、特別区なんかであよくある、タバコのポイ捨て禁止なんかには過料が課せられますが、これは行政上の秩序罰といい、刑法総則、刑法の罰の適用はなく、また裁判所の判決を必要とせずに、その場で「お金頂戴」と徴収することができるとされています。その場で罰金払えということにはならない、ということでしょうか。



外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)

近年の外来魚問題において、最も世間を騒がせたといってもよいのがこの外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)です。第159回国会の決議において可決(投票総数180 賛成158 反対22)され、平成17年6月1日づけで施行とりました。

04年10月27日 第1回全体専門家会合開催
05年 1月19日 特定外来生物の指定で最大の焦点になっていたブラックバスの一種、オオクチバスが、指定第1陣リストに入らないことが専門家会合で決定。
   1月22日 小池百合子環境大臣(当時)の閣議後の会見での「まずは指定すべきだ。私は納得していない」発言が契機となり特定外来生物の再考開始。
   1月27日 釣魚議員連盟(会長 綿貫 民輔)による、小池発言に反対する釣魚議員連盟決議文が提出される。
   1月31日  第2回全体専門家会合で候補リスト作成。環境省が規制対象となる「特定外来生物」の候補第1陣を公表、ブラックバスがこれに盛り込まれる。
   3月2日  外来生物指定に関するパブリックコメントに約10万1000件が寄せられる(なお大部分がブラックバスに関するもの)
   6月1日 外来生物法施行

この外来生物法の規制によって、飼育、栽培、保管及び運搬の原則禁止、輸入の原則禁止、野外への放流の禁止、譲渡又は引渡しの禁止、個体識別等の措置を講じる義務といった項目が発生する(環境省ホームページ 自然環境局http://www.env.go.jp/nature/intro/)ことになります。参考:環境省発行のオオクチバス同定マニュアルhttp://www.env.go.jp/nature/intro/4document/manual/sakana.pdf