*Blue Ocean, top only 北陸の黒鯛ルアーゲーム アングラー:柴光則 (情報提供者のご都合も考慮し、島の名前はフィクションとなっています) 海の近くの、小さな町。 風が強い日には、本土へ通じる橋が閉鎖される。 ここを訪れるのは、少しだけ物好きな観光客と釣り人くらい。 釣魚会で以前から、何度も出ていた富山のキジハタ釣行企画だが、ここ2,3年前からは釣果が芳しくない。 原因は幾つかあると思うが、中でも海岸部の海草の減少が深刻だ。 魚付林の伐採から、海へ流入する濁った水が増加し、汽水域を中心に海草が減少傾向にあるという。 産卵のために浅場へと魚は上がる、しかし卵を産み付ける海草がなければ、そこに留まることはしなくなる。 そこでと、昨年から、地元の水産高校が研究者と協同で、海草を植林する「海守り」が行われている。 しかし、以前の状態に回復するには、どんなに早くとも5年はかかる。富山湾の回復を切に願う。 そんな状況から、キジハタの変わりとなるターゲットはいないか、と考えた結果、黒鯛のルアーゲームが浮上した。 場所は、北陸にある初音島(フィクション)、黒鯛の魚影は湾とは比べ物にならない位に濃い。 しかも、トップウォータープラグへの反応がすこぶる良いというのだから驚きだ。 今回は、釣魚会遠征の下見を兼ねて、南栄工島を訪れた。 島は周囲およそ70km。車で一周しても十分にドライブが楽しめる距離である。 島の北部は、観光施設が多数あり、外部から訪れる人たちで賑わっている。 対照的に、南部には、昔ながらの小さな漁村が点在し、ゆっくりとした時間が流れている。 それは、雲の形や、海の色が移り変わっていくように、静かに流れる時間。 懐かしい風景が残る、南部の漁村を釣り進むことにした。 黒鯛のトップウォーターゲームは、活性の高い魚がいれば数投で勝負が決まる、早い展開の釣りだ。 使うのは小型のポッパーとペンシルベイト。フォローでフライを入れていく。 投げては移動、移動しては投げるをひたすら繰り返す。 当日の天候は快晴、無風、気温35℃。 麦畑の合間の農道をつたい海へ出て、砂浜とゴロタ場を歩いて移動する。そこにいるのは、ただ、僕ひとり。 少し動いただけで、汗がにじみ出る。けれども、時折流れる海風のおかげか、心地よい。 手を変え、品を変え、夕方まで攻めるも、ノーバイト、ノーフィッシュ。これはタフい。 この釣りを自分の中で確立させ、人を案内するには、まだまだ学ばねばいけない事があるようだ。 1日かけて思う存分、島の日常を堪能した。 島の時間は、ずっと変わらない風景の中で、それでもいくつもの新しい出来事が、毎日折り重なって変わっていく。 雲の形や、海の色が移り変わっていくように、静かにゆっくりと。 自分の秘密の場所が、皆のとっておきの場所に変わるのは、もう少し先のことかもしれない。