楊梅は勅使河原と喧嘩をした。
最初はつまらないことだったのだが、腹が立っていたので相手の素行や発言といった些細なことにまで指摘が及び、彼女は持っていた金槌で勅使河原を殴ってしまった。
道具が道具だったのでためらいがあったのと、彼女自身の力が弱かったため勅使河原はこぶを作っただけで済んだ。
しかし、二人はそれぞれ怒られることになる。
担任が出張で不在であるので、楊梅は副担任の東西南北に呼ばれて理科研究室にいた。
懐いている教師に叱られるのは嫌だったが、彼女は自分がやりすぎたことを知っているので覚悟を決めている。
「何であんなことをしたんですか」
「…………」
言えない、たった一言でかっとなってしまったことなんて。
「せんせいにはいえません」
小さな声でそう答えるのがやっとだった。
言わない、でも関係ない、でもなく、言えないと答えた。
「勅使河原君と、仲直りできる?」
しなさい、ではなく出来るかと彼は尋ねる。
彼女は一瞬、答えられずに俯きがちになった。
「勅使河原君のことが嫌い?」
「いいえ、好きです」
当惑したような表情で、しかし楊梅ははっきりと言った。
その声は相変わらず小さい。
「それは良かった」
東西南北は納得したのか微笑んだ。
言えない、どうせ俺より先生の方が好きなんだろうと言われて怒ったなんて。
「でも勅使河原君は二番目です」
東西南北の問いに対し、そんなことさえ思ったなんて。
キャラが自分でないと思うと凄く書きやすいです。
しかし出来上がったものを見ると実在の人物をデフォルメしたもののように見えます(笑)
因みに、設定としては二人の好感度が高い場合です。
主人公は先生を好きですが、勅使河原は主人公に片思い。
先生は、主人公も勅使河原を好きなのだと思っています。
複雑怪奇(苦笑)