彼女と二番

 彼女は、彼を特別なものとして思ってはいない。
 そのことを、彼は知っていた。

 彼女は時々、自分の周りにいる人間のことを話す。
しかし、彼自身については滅多に話さなかった。
「先生が」
「師匠が」
「パパさんが」
「ママさんが」
けれども、彼のことは口にしない。
 楽しげな彼女を見るのは、勿論嫌いではない。
ただ、少しだけ薄暗い気持ちになるだけで。
まるで窒素のような扱いだ、と考えてみたりもする。
 何かを自分に話してくれるのは、とても喜ばしい。
でも、明らかに。
彼女にとっての一番は、彼ではない。
何時まで経っても二番手止まり。セカンド。
彼女の目が輝くのは、他の誰かを語る時。

「女の子はいつだって、大好きな人のたった一言を待ってるんだよ」
 その一言をあげられるのが自分でないことに、失望が沸き上がる。


 いつもより短くしました隊長編inミュンヘン。
何となく、彼には2番という美味しい立場が似合いそうだと思います。
(設定もろくに出来ていない内から決定事項的に)
でもそれでは満足出来ない、一番が欲しい恋する少年なのです。
ピュアなんです。
 この中で彼女の一番は誰なのか、それはご想像にお任せします。

最終更新:2009年01月23日 18:20