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コロッケ会 血液培養        ***血液培養(Blood Culture)血液培養(以下,血培)は菌血症の診断に対しては "Gold Standard "な検査であり,&br()臨床医はその目的・採取方法・結果の解釈について,習熟しておく必要がある.  **1. 血液培養の意義・目的   (1)菌血症の確定診断(gold standard)   (2)感染症の重症度の指標    肺炎や腎盂腎炎などで血培陽性であれば,その感染の程度が大きいことが予想され,抗菌薬の投与量や    使用期間は,血培陰性時よりも大量・長期となる.   (3)感染部位からの検体採取が困難な疾患において起因菌の検出に有効.    心内膜炎や感染性血管炎,化膿性骨髄炎など.   (4)原因不明の感染症では,検出菌から感染巣をしばしば予測できる.    例:α−連鎖球菌---心内膜炎、大腸菌---尿路系や腸管系感染 **2.血液培養をどのような時に採取するか   血培採取の一般的適応と考えられる状況---表1     化学療法中の患者,糖尿病・腎不全など基礎疾患を有する患者などでは,血培の適応は健常人よりも     広くしたほうが良い.     菌血症の疑いが少しでもある患者では,血培を積極的に採取すべきである.     血培の必要な患者か,必ずしも必要でない患者かは,数多くの症例で血培を提出して,陽性・陰性の     フィードバックを受けながら獲得されていく.       表1 血液培養の適応と考えられる状況      ・菌血症を疑う症状がみられる       発熱・悪寒/戦慄・頻脈・頻呼吸、      ・原因不明の低体温や低血圧      ・突然変調を来した高齢者もしくは小児      ・免疫抑制患者の変調時      ・免疫抑制患者での原因不明の呼吸不全・腎不全・肝障害      ・昏迷などの意識の変調(特に高齢者)      ・説明のつかない白血球増多や減少,代謝性アシドーシス      ・抗菌薬の変更時                 **3. 血液培養採取のタイミング ・血培は抗菌薬の開始前に採るように努める!     治療開始後では菌の検出の可能性が相当に低くなる.     抗菌薬投与中であれば,血中濃度が最も低い(Trough level)と予想される次回の抗菌薬投与直前に     採取すべきである.  ・菌血症を疑ったら,迅速に血培を採る.     血液中に菌が出現し始めるのは,発熱や悪寒が起こる1〜2時間前からであり,発熱のピーク時には     菌は既に消退していることが多いといわれている. **4. 血液培養は何セット提出するか   ☆提出するセット数を増やすことは、血培の感度を高くする。  ・菌血症患者での菌の検出率    1セットで80%,2セットで88%,3セットで99%という結果や,また別の報告では    1セットで91%,2セットで99%という結果が出ている.     (Mayo ClinProc:1975:50:91-98, Rev Infect Dis: 1983:5: 35-53)  ・得られた結果が常在菌の混入であるコンタミネーションか,真の起因菌か否かを解釈する際には,   1セットのみでは評価できないことが多い.                 ↓   ☆以上のような理由から提出するセット数は最低2セットは必要とされている. **5. 採血の間隔をどのくらい空ければよいか?    採血の適当な間隔は,はっきりと分かっていない.      間欠的菌血症:肺炎や腎盂腎炎などの通常の感染症に合併するもの     患者の状態が変わらなければ,24時間以内に3セット以上採る必要は少ない.     発熱が間欠的であり,かつ患者の全身状態が落ち着いているのであれば,間隔を空けて採取した方が     良い.        急激に悪化しているような患者では,治療を優先させるために,血培の採血部位を違えて,同時に提出     することもやむを得ない.      持続的菌血症---心内膜炎などの血管内感染症        常に血液中に菌が存在する持続的菌血症を呈することが特徴.     いつ採血しても菌がいる       それを証明する目的にて,24時間以内に間隔を空けて最低3セット採取する. **6. 血液培養採取の手技と留意点   血液培養で常に問題となるのは,コンタミネーションである.   コンタミネーションの原因は検体の採取過程に責任があることが多い.    適切な採取手技を知ることにより,不用意なコンタミネーションを減らす.     1.採血部位     1セット毎に四肢は変更し,不潔な鼠径部からの採血は避ける。     点滴中の四肢は選択すべきでないが,やむを得ない場合には点滴部位の末梢より採血する.     動脈血が静脈血より検出率が優れているという明らかなデータは無く,採取の容易さ・疼痛の少なさ     などから,まずは静脈からの採血が良い.     留置カテーテルからの採血は原則として避ける.     カテーテル関連の菌血症を強く疑う場合にはカテーテル孔から採血しても良い.しかしこの場合でも     他の末梢部位からの検体を,2セットは必ず提出する.    2.消毒と採血     70%エタノール綿球(酒精綿)で消毒の後に,ポピドンヨード(イソジン液)に浸した綿球を用いて,     採取部位を中心に円を描くように広く消毒する.     この消毒効果は2分程度で最大になるので,それを待ってから採血する.     手袋の使用は血液曝露のリスクを避けるために必要であり.動脈血採血のように消毒後に採血部位に     触れる必要がある場合には,滅菌手袋の使用が適当.     手袋を使用しないで,採血部周辺を触れる場合には,イソジンにて示指と中指を消毒してから触れる     ようにする.    3.血液の採取量     血液の量は検出率に大きく影響する重要な因子である.     1回の採取量は最低10mlで,20〜30mlが好ましい.それ以上の採血量では検出率は増えないので     30ml以上は不要である.                 各ボトル液の1/55から1/10の比率で,血液を注入することが勧められている.       各血液ボトル製剤には,推奨される注入量が表記されているので,実際は20ml程採った血液を,     推奨量を越えないようにして,注入すれば良いことになる.     &ref(ketubai.jpg)このボトルでは3-10mlが推奨量である    4. 血液培養ボトルへの注入     ボトル注入時に針を付け替えても,コンタミネーションの率は変わらない.むしろ針刺しの危険も     あるので針は付け替えない.     ボトルの血液注入部は滅菌は保証されていないので,酒精綿やイソジンで消毒するか,アルコール     ランプやライターの火であぶるようにする.     好気性菌(Aerobic)と嫌気性菌(Anaerobic)用のボトルがあるが,嫌気性菌用には針内を血液で満たし     てから注入するなど,空気が入らないように工夫する.    5. 血液培養結果の解釈     どんなに注意を払っても,コンタミネーションは2〜3%に起こり得る.     コンタミネーションを疑わせる手がかりは、      ・検出された菌が皮膚の常在菌        コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,Corynebacterium属,Propionibacterium属など      ・他の血培セットから培養されてこない,4本中1本のみ陽性などは怪しい      ・4日目以後に培養されてきた菌.      ・複数の菌が検出された場合        黄色ブドウ球菌,肺炎球菌,α−連鎖球菌,腸内細菌群などは1本のみから陽性であっても,        起因菌として対処すべきである.  ◎血液培養を出したら,必ず翌日・翌々日などは細菌検査室に連絡し,培養の状況を確認する。決して提出  しっ放しにせずに,フォローするようにしていく.                                   Yoshikazu Hisamatsu,M.D. 参考文献  1) Pranatharhi H, et al : Clinical Issues of Blood Cultures. Arch Intern Med 154 : 841-849, 1994  2) Jason W.Chien : Making the most of blood cultures. Postgrad Med 104 : 119-128, 1998  3) Mevin P. Weinstein : Current Blood Culture Method and Systems:Clinical Concepts, Technology    and Interpretaion of Results Clin Infect Dis 23 :40-46,1996

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