ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ
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ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ
ja
2012-04-29T17:19:46+09:00
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鰐男・虎の目大冒険-01
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ここは異世界ハルケギニア。
今日の鰐男は、アルビオン大陸にあるウエストウッドの森から物語をはじめよう!
(ナレーション:政宗一成)
うららかな陽射しの下、小川の両岸に丸太を渡しただけの簡素な橋に腰を下ろし、ふと短い足と長い尻尾をぶらぶらさせなが
らのんびりと釣り糸を垂れる鰐が一匹。
我らが獣王クロコダインである。
その近くで野苺を摘んでいるのは革命的バストを持つ美貌のハーフエルフにして実はアルビオンの王位継承権者でもあるテ
ィファニアだ。
ティファニアが口ずさむ「ダニーボーイ」を聞きながら、草原に寝転んだマチルダは青空を横切る白い雲をぼんやりと眺めて
いた。
「平和だねえ…」
そのとき耳障りな羽音を響かせて、子牛ほどもある特大の雀蜂が飛んできた。
蜂はクロコダインの頭上でホバリングすると、大顎をカチカチと鳴らしながら何事かを告げる。
「どうしたんだい?」
「どうやら招かざる客のようだ」
そうマチルダに告げると釣竿を手放した右手にグレイトアックスを掴み、クロコダインは駆け出した。
「あたしも行くよ!」
飛び起きたマチルダは二、三歩走ったところで振り向いた。
「ティファ、あんたは家に戻ってな!ブルース、ティファを頼んだよ!」
緑色の巨大雀蜂は前脚を複眼の前にかざし、マチルダに向かって敬礼してみせる。
CGアニメなら加藤賢崇の声で「了解だブ~ン」と言っているだろう。
鬱蒼とした森の中、鎧冑に身を固めた騎士の一団をモンスターの群れが囲んでいる。
サイクロプスがいる、グリフォンがいる、ヒドラがいる、笛のような声で“テケリ・リ!テケリ・リ!”と鳴くなんだかよく
わからないものがいる。
彼らはみなクロコダインに敗北し、軍門に下ったものたち-所謂ジャンプ方式である-であった。
「ええい近寄るでない下郎!」
円陣を組む騎士たちの中心でやたら偉そうな白髪白髭のジジイが喚いている。
「随分と元気なご老体だ」
モンスターたちの間から貫禄たっぷりに進み出る鰐。
「おお、会いたかったぞクロコダイン!」
「はて、どこぞでお会いしましたかな?」
首をかしげた鰐の背後から地響きが近づいてくる。
全力疾走から跳躍したマチルダはクロコダインを飛び越え、スカートが捲くれあがる
2012-04-29T17:19:46+09:00
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虚無と獣王-38
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38 虚無と学友
#navi(虚無と獣王)
ルイズとクロコダインが学院に戻るのに1週間を要したのには理由がある。
虚無魔法の研究は勿論だが、他にもやるべき事が色々とあったからだ。
中でも一番やっかいだったのが、クロコダインの鎧の修復に関してである。
怪我は癒せるし、服は着替えればすむ。しかし鎧はそうもいかない。
彼が召喚された際にハルキゲニアへと持ち込めた数少ないもののひとつがこの鎧であったが、当然その辺の店で売っている様な代物ではなかった。
幸いというべきか、この世界にはクロコダインがいた世界には存在しない魔法があった。土系魔法の初歩、『錬金』である。
術者の実力にもよるが自在に物体の形状・性質を変化させるこの魔法は、修復には最適といえた。この場合は修復というより新造といった方が正確だが。
今回の件において、土メイジの協力者にはルイズの姉エレオノールやグラモン元帥がおり、しかもこの2人は数少ないスクウェア・メイジだった。
彼らの腕をもってすればものの数分で鎧を一から造り起こせる。ただし、それは元のデザインを知っていればの話だ。
クロコダインは今年召喚された使い魔の中では最も目立った存在で、学生たちもその姿をよく目にしている。
学院に戻った際、それまでと全く違う鎧を身につけていては、いらぬ勘繰りを受ける可能性があった。
で、着用者のクロコダインにどんな鎧だったか質問した土メイジ2名であったが、生憎この獣人は絵を描くという習慣が全くない生活を送ってきていた。
そんな者が上手く説明できる筈もなく、グラモン元帥はどうしたものかと頭を抱える。
一方エレオノールは打開策を打ち出した。使い魔が駄目なら召喚主に聞けばいいとばかり、ルイズにクロコダインがどんな鎧を身につけていたか尋ねたのだ。
確かにルイズはハルケギニアにおいて、一番クロコダインの近くにいた人物である。
更に自慢の使い魔であるが故に彼がどんなものを身に纏っていたか克明に記憶していた。
── しかし、記憶しているものを正確にアウトプットできる訳ではない。
大変残念なことに、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに絵心はなかった。
『こんな感じです、姉様』とドヤ顔で差し出された再現イラストを見てエレオノールは頭を抱える。そ
2011-11-11T23:42:20+09:00
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虚無と獣王-37
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37 虚無と姉
#navi(虚無と獣王)
結局ワルドは再び『魔法の筒』の中へと入る事となった。
対外的には『単独任務中』という扱いになっている彼が、突然王宮内で目撃されてはいろんな意味で困る。
「しかしまあ、よく喋ったものです」
年頃の女学生でもあるまいに、と言うマザリーニにヴァリエール公爵はしれっとした顔で言った。
「ああ、麻痺解除薬に『ちょっと素直になるクスリ』を混ぜておいたからな」
有り体に言うと自白剤であり、媚薬と同じく立派な禁制品である。
「まぁどうせそんな事だろうとは思いましたがね……」
マザリーニも予測していたようで、溜息ひとつで流した。彼の娘への愛情を考えれば、毒が混ざっていなかっただけマシというものだ。
「クロコダイン殿、申し訳ありませんが暫くそのマジックアイテムを貸し出しては貰えませんかな」
一両日中には返却しますので、というマザリーニにクロコダインは鷹揚に頷いた。
「それはかまわんが、それまではここにいた方が良いのですかな」
「ええ、できれば。こちらとしてもルイズ嬢と共にお聞きしたい事柄が幾つかありますし」
ただそれは今すぐに、という訳にもいかない。特にルイズには、少なくとも明日までは休息が必要であろう。
「クロコダイン殿はこの部屋でお休みください。追って夕食を用意致します」
別に野宿でも構わないのだが、と遠慮するクロコダインをそういう訳にもいかないと2人がかりで説得する。
ワルドとは違った意味で、彼もまたあまり人目につかない方がいいのだ。
「では私は先に失礼しよう。もうすぐ客が来る頃だ」
そういって部屋を出たのは公爵である。
仇敵と周囲から認識されているマザリーニと仲良く秘密の出入り口から現れるのを目撃されては、これまでの苦労が水の泡だ。
「ああ、宜しくお伝え下さい」
「娘たちにもお前との仲は言ってないのに何をどう伝えろと言うのか」
クロコダインに「ではまた」と手を上げ足早に去る友人を見送り、マザリーニも腰を上げる。既にルイズには関係を明かしているとは言えなかった。
「私もいつもの仕事を片付けにいかねばなりませんが、その前に1つ」
マザリーニは目を輝かせながら言った。
「頼みごとばかりで心苦しいのですが、一度、その手に刻まれたルーンを
2011-07-20T09:30:29+09:00
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虚無と獣王-36
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36 尋問者と獣王
#navi(虚無と獣王)
浴室で一通り騒いだ後、ルイズたちはそれぞれ用意された客室へと戻った。
結局キュルケへ礼は言えず仕舞いだったが、着替えの時にさり気無く近づいてきたタバサが言うには、
「気にしなくていい、キュルケのアレは照れ隠しみたいなもの」
との事である。
よく見ているのね、と頭の片隅で考えながら、ルイズは小声でタバサにやっと礼を言う事ができた。相手は無表情のままに見えたが、ほんのりと頬が染まっていたのは果たして湯上りのせいだけだろうか。
ちなみに入浴中『学院に戻るつもりだった』と言ったところ、学友2人には心の底から呆れられた。
「貴女ねぇ……。半日前に殺されかける様な戦闘経験したでしょうが。帰ったら授業に出るとか、普通ないでしょ」
「1週間くらい休んでも誰も文句を言わないレベル」
誰か味方はいないのかと思ったものである。
閑話休題。
ルイズが部屋に入って程なくして昼食が運ばれてきた。
量は普段のキャパシティを考えるとやや多めだったが、流石は王宮というべきか味が絶品なのと朝食抜きだったのもあって、デザートのクックベリー・パイまで平らげてしまうルイズである。
ほぅ、と満足感に浸る彼女であったが、そうなると次にやってくるのは睡魔だった。
入浴で体を温めた後でお腹いっぱい食べたのだから、眠気に襲われるのはごく自然な流れだ。
が、ルイズとしてはフーケ撃退に一役買ったというギーシュにも礼を言わねばと考えていたし、何より無性にクロコダインの元へ行きたかった。
自分の我儘に近い任務志願に嫌な顔ひとつせず付き合ってくれ、文字通りその身を盾にして守ってくれた頼もしい使い魔。
まだろくに謝ってもいなければ、きちんとした礼もしていない。
6000年もの間途絶えていた伝説の系統に目覚めたと言ったら、彼は一体どんな顔をするだろうか?
そんなとりとめのない思いを胸に、いつしかルイズは眠りの園へと誘われていった。
キュルケもほぼ同様の状態で、まさに今は夢の中にいる。
ルイズに比べ格段に体を動かしており、さらに精神力も先程のシルフィード急降下の折にマンティコア隊の攻撃を迎撃した魔法で使い切っていた。
実を言えば浴室でも半分沈没しかかっていたのだが、ルイズが変な方
2011-02-01T11:33:34+09:00
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ゼロの剣士-16
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#navi(ゼロの剣士)
#1
地平線から太陽が顔を出し始めた頃、ルイズは眠りの中で奇妙な音を耳にした。
金属質で、規則的。
あるいは足音のようにも聞こえる物音だ。
一体この音はなんだろう?
ネコのような唸り声をあげながら、ルイズは寝返りを打った。
大してうるさい音でもなかったが、いったん気になりだすとその音はますます耳触りになてくる。
ルイズは目を開けるのももどかしく、枕に顔を突っ伏したままぼやけた声を吐き出した。
「ユンケル~、うるしゃいわよぉ……」
その声を合図に、金属音はぴたりと鳴りやんだ。
使い魔が従順に命令に従ったことにルイズは気をよくしたが、
唐突に訪れた静寂はむしろ場違いな客人が来たかのような居心地の悪さを感じさせた。
静かにしろと言っておきながら、いざ静かになってみれば逆に落ちつかないとは面倒な性分ではある。
ルイズは仕方なく体を起こし、使い魔が朝っぱらから何をしていたのか確かめようとした。
窓から差し込む明け方の光は、部屋の中を薄暗く照らし出し、ルイズの目に見慣れた風景を映し出す。
いつも勉強に使っている机と椅子。服や下着の入った品のいい洋タンス。ベッド脇に落ちた読みかけの本。
そして問題のルイズの使い魔といえば……いつも通り、藁の上で眠りこんでいた。
「えっ、あの音を立てていたのってヒュンケルじゃないの……?」
呆けたようにつぶやいたルイズの顔は、少し青ざめていた。
物音がした辺りには誰の姿も見えず、代わりに魔剣が鎮座しているばかりであった。
謎の音はヒュンケルが立てたものではない。
そしてこの部屋には自分とヒュンケルの他には誰もいない。
いや、喋る剣という珍妙なものがいるにはいるが、今は固く鞘の中に仕舞われている。
となると……。
ルイズはもう一度床の辺りに視線を這わせ、結局なにも聞かなかったことにしようと心に決めた。
きっと寝ぼけてたのよと自分に言い聞かせ、再び寝床に向かう。
ただし向かった先は自分のベッドではなく、ヒュンケルの寝床であったが、それは些細な問題に過ぎないだろう。
……たぶん、おそらく、きっと。
#2
「最強の系統はなにか知っているかね、ミス・ツェルプスト―?」
「虚無じゃないんですか?」
「私は伝説の話しをしているのではない。現実
2011-01-20T02:30:23+09:00
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虚無と獣王-35
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/182.html
35 公爵と獣王
#navi(虚無と獣王)
トリステイン魔法衛士隊は、ここ数日多忙を極めていた。
隣国の内乱が貴族派の勝利に終わりつつある今、首都トリスタニア近辺には厳戒態勢が敷かれ始めている。
例え王宮御用達の職人であっても荷物及び身体検査は厳重に行われ、『ディテクト・マジック』による敵メイジの操作の有無についても調べられた。
当然王宮上空はフネ・幻獣の区別なく飛行禁止令が出されている。
魔法衛士隊はグリフォン、マンティコア・ヒポグリフの3隊から構成されていた。
グリフォン隊はゲルマニアからの帰国後から休暇という扱いになっている。もっとも『レコン・キスタ』の侵攻に備え城の宿舎にて待機中ではあったのだが。
ヒポグリフ隊は訓練期間に入っており、郊外の練兵場にて腕を磨いていた。
という訳で、現在首都の警備に当たっているのはマンティコア隊という事になる。
この隊の長はド・ゼッサールといった。鍛えぬかれた体躯、厳めしい顔に髭をたくわえた姿は威厳に溢れている。先代隊長から受け継がれている『鋼鉄の規律』を体現している人物だった。
そのド・ゼッサールに非常事態が告げられたのは昼を幾らか過ぎた頃である。
「王宮に向かってくる幻獣を2体確認! 風竜とワイバーンです! 双方騎乗あり、迎撃出ます!」
マンティコアに跨った5人の隊員が、素早く空へと舞い上がった。
日頃の訓練の賜物か、5騎はあっという間に件の侵入者を取り囲む。2騎は前方、1騎は後方、上下に各1騎。当然全員が杖剣を抜いていた。
「この区域は現在飛行禁止令が施行されている! 直ちに進路を変更されたし!」
リーダー格のメイジが風魔法で声を相手に届かせるが、相手からの返答はない。
ここは多少強引な手段を取るべきかと衛士たちが判断しかけた時、ふいに幻獣たちが動き出した。
指示とは逆に、王宮の方へと。
「ッ、このっ!」
下方にいたメイジがとっさに『エア・ハンマー』を放つが、急加速した風竜の尾を掠めただけに終わった。
マンティコアは小回りと持久力に優れているが加速という点では他の飛行幻獣に劣る。
それでも後を追いながら魔法を放つ衛士たちであったが、それらは全て風の防壁で弾かれるか、また火の呪文で迎撃されていった。
距離も時間も短いが真剣な追
2011-01-01T15:32:17+09:00
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ゼロの剣士-15
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#navi(ゼロの剣士)
#1
「青年の名はロト。異世界より来たりし冒険者――勇者ロトと名乗っておった」
オスマンの言葉に、ルイズとヒュンケルは顔を見合わせた。
その名はルイズにとってはもちろん、ヒュンケルにも聞き覚えのないものだったのだ。
しかし――勇者ロト。
その名前はなにかとても印象深い響きをもって二人の耳に入ってきた。
勇者という言葉でルイズが連想するのは、タバサがよく抱えている『イーヴァルディの勇者』という本だったが、
ヒュンケルが思い浮かべるそれはかつての勇者である師・アバンと、未熟ながらも世界を救おうと奮闘する弟弟子・ダイの姿だった。
ロトという青年も彼らと同じように、世界のため戦った英雄なのだろうか。
想像を膨らますヒュンケルを余所に、オスマンは懐かしげに思い出語りを始めた。
「あれは何十年前のことだったかのう。たぶん百年はいってないと思うが、まあそんくらい前のことじゃ。
ある日森に出かけたわしは、そこでとても大きなワイバーンに襲われたのじゃ。
不意を食らったわしは杖を失ってしもうてな、そこで命を落とすことを半ば覚悟した」
そこまで言って、オスマンは過去の情景を瞼の裏に思い浮かべるように目をつむった。
話の流れから考えるに、おそらくそこで勇者ロトが現れたのだろう。
物語の中の王子様みたいね、とルイズは思った。
もっともロトは、助ける相手を大いに間違えたようだが――。
「突然のことじゃった。ワイバーンが牙を剥き、今にもわしに襲いかかろうという時、剣を持った青年が颯爽と現れた。
青年は剣でワイバーンの巨大な鉤爪を受け止めると、天に指をかざし、魔法を唱えた。
……なんという名前じゃったかな。ザムディン……いや、違うのう」
オスマンはまるで便秘中のようにウンウン唸った。
ルイズはいいところで話を切られてもどかしかったが、そこでヒュンケルが口を挟んだ。
「もしや……ライデインでは?」
ライデイン――それはヒュンケルの世界で、勇者のみが使える神聖な雷の呪文である。
まさかと思いつつ聞くと、オスマンはそうじゃそうじゃと陽気に頷いて話を続けた。
「青年がライデインと唱えると、天から物凄い雷が降り注ぎ、ワイバーンは一瞬で巨大な焼き鳥になってしもうた。
わしも随分
2011-02-09T20:12:33+09:00
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ゼロの剣士-14
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/180.html
#navi(ゼロの剣士)
#1
「お前が土くれのフーケだったのか」
眼鏡を外し、ナイフを握ったロングビルにヒュンケルがそう言った。
人質に取られたルイズは恐怖よりも混乱が先立ち、目を白黒させている。
ロングビルは盾に取ったルイズの肩越しにヒュンケルを注意深く見つめつつ、笑みをこぼした。
これまで見せてきた上品なものではなく、猛禽類のように凶暴で、それでいてどこか妖絶な女の笑みだ。
「そう、私が『土くれのフーケ』よ。さあ、この娘の命が惜しければ全員武器を捨てな。
ちょっとでも怪しい動きを見せたらこいつの命はないよ? 」
杖を失ったメイジは無力だが、それは剣を失ったガンダ―ルヴも同じだろう。
キュルケとタバサは目を見合わせ、次いで同時にヒュンケルの方を見た。
ヒュンケルは隙を窺うようにフーケを注視していたが、やがて無造作に剣を遠くに放った。
キュルケ達もそれを見ると観念したのか、自分達も杖を手放す。
満足げに鼻を鳴らすフーケに、抑えつけられたルイズが少し声を震わせながら尋ねた。
ちなみにこっちの方はとっくのとうに、力ずくで杖を奪われていた。
「それで、ど、どういうつもりなのよ。あんたがフーケなら、どうしてこんなとこにわたし達を誘いだしたの?」
そう、土くれのフーケがここに潜伏していると情報を出したのはロングビル――当のフーケ本人だった。
一体なんのつもりで追っ手をわざわざおびき出し、どうぞとばかりに『悟りの書』を放置していたのか。
人質として囚われた小娘としては随分まともな問いに、フーケは口笛を吹いて感心してみせた。
フーケの腕の中で、かえって馬鹿にされたような気になったルイズが顔を赤らめた。
「別にあんた達を誘った覚えはないんだけどね、まあいいさ。
あんた、あの使い魔から『悟りの書』を受け取っただろう? 早く出しな」
「い、嫌よ、出さないわ――ひッ!」
拒んだルイズの頬の上で、フーケがナイフを滑らせた。
傷こそつかなかったが、冷たく鋭い感触を覚えてルイズは悲鳴を上げる。
ルイズは思いきり目をつむったが、そこで不思議に穏やかな声がルイズを呼んだ。
目を開けると、ヒュンケルがルイズに向かって頷きかけた。
「ルイズ、『悟りの書』を出すんだ」
ヒュンケルの言葉にも躊躇ったが
2010-12-23T23:35:03+09:00
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ゼロの剣士-13
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/179.html
#navi(ゼロの剣士)
#1
森の中を走って一時間も経った頃、ロングビルは馬車から降りるようルイズ達に告げた。
彼女が言うには、この近くにフーケの隠れ家があるらしい。
馬車で近づくのは色々と目立つし、ここからは歩いていこうとロングビルは提案した。
「なにやってんのヒュンケル? 早く行くわよ!」
馬車の前で靴紐を結ぶように屈んでいたヒュンケルをルイズが急かした。
ヒュンケルはすぐに立ちあがると、ルイズ達と並んで歩く。
フーケの隠れ家は、馬車を置いた場所から十数分のところ、木々が少し開けた場所にあった。
それは打ち捨てられたような小さなボロ小屋で、人の気配がまったく感じられない。
「フーケは留守なのかしら? それとももう逃げちゃったとか?」
そう言って無用心に廃屋に近づこうとするルイズを、ヒュンケルが制止した。
昨日のことといい、どうにもこの娘は勇み足でいけない。
ヒュンケルが見た感じ、ルイズはどこか急き立てられているような印象を受けた。
「落ちつけルイズ。偵察には俺と……タバサで行こう。お前はここで待っているんだ」
しかしルイズは、ヒュンケルの言葉に不満そうに頬を膨らませた。
「嫌よ! 使い魔が行くっていうのになんで主人のわたしが留守番なのよ?」
「……主人を守るのが使い魔の役目。そう言っていたのはルイズではなかったか?
危険がないか見に行くだけだ。少し待っていてくれ」
渋々頷くルイズの頭を、ヒュンケルがなだめるようにぽんぽんと叩いた。
そうしてから、また子供扱いしてとぶうたれるルイズをスル―し、キュルケとロングビルの意見を確かめる。
キュルケは肩をすくめると、ここでルイズの子守りをしていると言い、
ロングビルは用心のために周囲を見回ってみると言って森の方へ歩いて行った。
それぞれの役割を確認し終えると、ヒュンケルはタバサに頷きかけた。
「念のため、『静寂』をかける」
タバサはそう言うと杖を振るい、二人の足音を消した。
恨めしげなルイズをその場に残し、ヒュンケルとタバサは慎重かつ素早く、フーケの隠れ家に接近したが、
相変わらず廃屋からは物音ひとつせず、人の気配もしなかった。
「思いきって中に入ってみるか」
ヒュンケルはタバサに小声で言うと扉に手をかけ、
2010-12-13T00:13:47+09:00
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ゼロの剣士-12
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/178.html
#navi(ゼロの剣士)
#1
学院から遠く離れた森でゴーレムを土に還すと、フーケは顔を隠していたフードを払って大きく息をついた。
オールド・オスマンの留守をついた今日の計画だったが、
まさかその真っ只中に『ガンダ―ルヴ』が現れるとは予想だにしなかった。
フーケ自慢のゴーレムの巨腕を刎ね飛ばしたあの斬撃には、今思い返しても冷や汗が流れる。
あれは風メイジのエアカッタ―のような感じに見えたが、もしやあの剣もまたマジックアイテムの一種なのだろうか。
「まったく、わけがわからないね……」
ともあれ非常の事態があったにせよ、無事に盗みが成功したことにフーケは満足していた。
苦戦すると思っていたあの壁があっさり崩れたことは僥倖だったとさえ言えるかもしれない。
強力な魔法をいくつも重ねられたあの宝物庫は小手先の技も通じず、
ゴーレムによる物理的な破壊という強硬手段でもいけるかどうかという、盗賊泣かせの代物だったのだ。
視界のきくゴーレムの上にいたフーケにはよく見えていたが、あの強固な壁を崩した魔法は――。
「もしかしたらあの娘は本当にアレかもしれないね……」
フーケはそう一人ごちて肩をすくめると、懐からそっと戦利品を取り出した。
――悟りの書。
噂ではそれは選ばれし者にしか解読できない、幻の書と呼ばれていた。
嘘か真か、異界の書であるとか、不逞の輩が読むと呪われるとかいう話しもある。
ディテクトマジックなどかけずとも、そこに何か不思議な魔力がこもっていることは疑いようもなかった。
「どれ、私もちょっと試してみるかね」
あいにくフーケは呪いなどを恐れるタマではない。
なにはともあれ計画が成功した高揚感のままに適当に本を開いたが――。
「な、なんだいコレは……!?」
ある意味予想通りと言うべきか、フーケの見た先にはわけの分からぬものが広がっていた。
困惑したフーケは思わず偽物を掴まされたと思ったが、たしかにこの本には不思議な力を感じる。
しかし念のためにディテクトマジックをかけてみると、そこには何の反応もなかった。
魔力があると思ったのは自分の錯覚だったのか。
それともメイジの魔法とは別系統の、まったく異なる力であるのか。
混乱したフーケにはにわかには分からなかった。
それにしても、い
2010-12-13T00:10:40+09:00
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