モーンランド

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モーンランド - (2013/03/11 (月) 06:14:55) のソース

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モーンランドはかつて人間の国サイアリがあった場所だが、王国暦994年のデイ・オヴ・モーニング(悲嘆の日)に原因不明の大爆発が起きて、そこに住む人々を地上から消し去り、街という街、鄙ひなという鄙を荒れ果てた大地に変えてしまった。かつての麗しい国は見る影もなく、いまや荒廃しきった不毛の地に成り果てている。残存する魔法の効果が荒涼たる風景を覆い尽くし、ごつごつとした岩山にはリヴィング・スペル(生きている呪文)や奇怪な姿をしたモンスターがうろつき、不思議な現象が絶えないという。モーンランドの境界線の内側では、自然のことわりが通用しない。したがって魔法による治癒も自然治癒もここでは機能せず、屍はいつまでも死んだときのままの状態を保ち、腐敗することがないという。さらには、ロード・オヴ・ブレードなる存在が秘密の要塞にウォーフォージドの兵を集めているとも言われている。こうしたさまざまな危険にもかかわらず、モーンランドで得られるものもまた少なくない。廃墟に埋もれたレリックはもちろんのこと、モーンランド誕生の謎を解き明かしたいという衝動が、多くの人々をこの地に引きつけてやまないのである。


それでもモーンランドを目指しますか?

ハシウス・ロート

 コランベルグ・クロニクル、ゾルデイ、ドラヴァゴ4日号より転載
 ごきげんよう、読者のみなさん! この記事に目をとめるぐらいだから、あなたもまた財宝や名声を求めてモーンランドに分け入ることを考えておいでなのだろう。したがって、かの地であなたを待ち受けるさまざまな危険については、とうにご承知に違いない。リヴィング・スペル、デッドグレイ・ミスト、奇怪な変貌を遂げたモンスター、残存するデイ・オヴ・モーニングの魔法効果、はぐれウォーフォージド。これらはそういった危険のほんの一部に過ぎないが、もちろんこんな材料であなたを思いとどまらせることができるとは夢にも思っていない。そのかわり、探検から生還したいのであれば必ず知っておくべき事柄をいくつか挙げるので、心して読んでほしい。
 あなたが理解しておかなければならない最も重要なこと──それは、モーンランドでは治癒ができないということである。自然治癒も魔法による治癒も、あの不毛の地ではまったく機能しない。ただし、ドルイド呪文のグッドベリーは、なぜかモーンランドの影響を受けないようだ。また、患部に手をかざすことで傷を治すパラディンの能力も普通に使えるらしい。さらに、次元間旅行を可能にする魔法は貴重この上ない。異世界にいるあいだは、治癒をおこなうことも治癒を受けることもできるからだ。それと、人造を修復する呪文はモーンランドでも問題なく機能するので、もしパーティーのメンバーにウォーフォージドがいても、彼らがさほど困ることはないだろう。
 さて、それなりの装備を整えて出発したあなたが最初に出くわす障害が、モーンランドの外縁を取り巻くデッドグレイ・ミストだ。霧のなかに足を踏み入れたあなたは、なんだか意気消沈し、冒険の熱意が失われていくのに気づくだろう。いやいや、なにもあなたの意気込みを疑っているわけではない。こうした気分になるのは、霧の持つ魔力のせいなのである! しかも、この魔力の効果がひときわ強い場所がところどころに存在するので、霧の灰色がいちだんと濃い場所を見つけたら、けっして足を踏み入れないことだ。この霧はまた、方向感覚を失わせる力も持っている。デッドグレイ・ミストで迷ったあげく消息を絶った探検隊の話は、私自身飽きるほど聞いたので間違いない。 今のところ、私にできる助言はこれですべてだ。あとは勇敢なる冒険者諸兄の幸運を祈るばかりである。ちなみに次回のタイトルは「それでもデーモン荒野を目指しますか?」なので、ご期待いただきたい。

#ref(http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/news/5n/img/top007.jpg)

 「嘆くがいい、コーヴェアの国々よ。“ガリファーの宝石”はもはや存在しない。おまえたちは、そもそもガリファーの王位に就くという、ミシャン王女が持って生まれた正当な権利を否定したときに始めた企てを、ようやく成就することができたわけだ。嫉妬とちっぽけな野心に衝き動かされたおまえたちがわれわれにもたらしたもの、それがこの大惨事にほかならない! 「嘆くがいい、わが兄弟姉妹たちよ。われらが故郷と家族は、卑劣なたくらみの犠牲となった。ゆめゆめサイアリを忘れさせてはならぬ! “悲嘆の日”(デイ・オヴ・モーニング)の記憶を風化させてはならぬ! この許しがたい暴挙の首謀者を突きとめ、正義の裁きにかけるそのときまでは。サイアリの子らがふたたび故郷で安寧と充足を享受できるようになるそのときまでは。 「今日は存分に涙しよう、サイアリの同胞たちよ。そして、この日をけっして忘れずにいよう。だが明日……そう、明日にはとりかかるのだ、悪党を狩り出し、報いを受けさせ、あの愛しくも懐かしいサイアリを再建する作業に。明日には還ろうではないか、われらが故郷に!」

――王国暦994年、ブレランドの難民キャンプ(のちのニュー・サイアリ)でオルゲヴ王子がサイアリ難民に語った言葉



 かつてサイアリは未来だった。ガリファー王国最盛期のサイアリは、まさに秘術的夢想の数々が具現化した奇跡の国だったと言える。“麗しのサイアリ”、“ガリファーの王冠に輝く紫の宝石”、“驚異の地サイアリ”……この州に奉られたあだ名は数知れない。なかには頽廃渦巻く倨傲の里と見る向きもあったが、それでもガリファー王国に住む人々の大半にとって、サイアリはまさに地上の楽園であった。
 ジャロットが王位に就いたとき、その子供たちはまだ五つ国の統治を引き継ぐだけの年齢に達していなかった。そこで現職の総督(ジャロット王の弟妹)または摂政が引き続き政務を執るかたわら、ジャロット王の嗣子たちの教育係を務めたのである。ジャロット王の第一子であるミシャン王女はサイアリに送られ、叔父の膝元で政を学びながら、総督に就任する日にそなえた。もちろん、ゆくゆくはガリファーの玉座に就くのだと、当たり前のように思っていた。それが、ガリファーによる統一王国樹立以来の伝統だったし、その伝統は未来永劫続くというのが当時の常識だったからだ。
 ところが、ミシャンは、いやガリファー王国の誰もが思い知ることになる――未来永劫変わらないものなどないということを。 ジャロット王が身罷ると、ミシャン王女はさっそくスローンホールドに赴く準備を始める。亡き父王の葬儀に出席するとともに、その第一子として生まれ持った権利を行使して王位を継ぐためである。ところがいざ葬儀にやってくると、王女の弟妹たちはみな武装兵団を引き連れてきている。そして、ミシャン王女が戴冠するいとまもなく、第一子が王位を継承するというしきたりにサリン王子が異を唱えたのである。シルヴァー・フレイムに仕える忠実なる騎士たちをかたわらに控えさせ、サリンは自分のほうがガリファー王にふさわしいとまで言い放った。王を選ぶための新たなルールが必要だという点において、カイウスとローンの2人はサリンを支持する。「いちばん年かさでいちばんひ弱な者が自動的に王位を襲うなど、それこそ理不尽ではありませんか?」そうローンは疑問を投げかけた。けっきょくミシャンを支持したのはロガーだけで、残りの3人は彼女が王位に就くことを頑として認めようとしなかった。ロガーがどうにかその場をおさめ、スローンホールドでの流血沙汰はひとまず回避されたが、王位継承問題を宙に浮かせたまま、5人の王子王女とその随行者たちは島をあとにしたのである。その年のうちに最終戦争の口火を切る戦いが起こり、やがて5人の嗣子全員が、みずから王位に就くという野心を表明するにいたる。
 王国が瓦解し、五つ国が文字通り5つの独立国家になると、戦火は大陸全土に広がった。とりわけ“麗しのサイアリ”は、最終戦争を通じて数々の合戦がおこわれる主戦場と化す。カルナス、スレイン、ブレランドの各国から送り込まれた軍隊が互いに激突し、あるいはサイアリの国防軍と干戈を交えるのに加え、ダーグーン、ヴァラナー、タレンタ平原の部族民やラザー公国連合の海賊たちまでが、漁夫の利をせしめ、略奪にふけり、隙あらば領土を奪おうとサイアリに侵入してきた。
 そのようにして、サイアリの大いなる驚異の数々は合戦のたびに少しずつ失われ、やがて“悲嘆の日”の恐るべき災厄によって、かつてまばゆい輝きを放った国の悲しむべき崩壊にとどめが刺されたのである。この国を地上から消し去った巨大な秘術エネルギー――それが解き放たれてしまったのはいったい誰の責任か、いまだ判明していない。また、デイ・オヴ・モーニングの当日いったい何が起きたのか、正確なところを知る者はいない。わかっていることと言えば、メイキング――現在ガラス高原と呼ばれている一帯のほぼ中心に位置した街――とその周辺で何か恐ろしいことが起こり、それがゆっくりと広がって、ついには一国を滅ぼしてしまったということぐらいである。難を逃れて生き延びることができたのは、国境近くに住んでいた者たちと、運命の日にたまたま国外にいた幸運の持ち主だけであった。
 こんにち、サイアリという国はもはや存在しない。かつてサイアリのあった場所には、濃いデッドグレイ・ミストの壁に取り巻かれた、モーンランドと呼ばれる焦土が黙然と広がるばかりである。サイアリ難民の大半はブレランドならばニュー・サイアリかシャーン、ズィラーゴならばドラゴンローストかゾランベルグに移住し、ごく少数がスレインやカルナス、またはクバーラのコミュニティに移り住んでいる。サイアリ人の多くはまだ災厄の衝撃から立ち直っておらず、同時に、自分たちに助けの手を差しのべることを拒んだ五つ国に対して消しがたい怒りを燃やしている。ましてや、じわじわと広がる死の霧を逃れてサイアリ南東から脱出した同胞を数千人規模で虐殺したヴァラナーのエルフを、許せるはずもないのである。
 スローンホールド講和会議では、サイアリの生き残りに追い討ちをかけるようなさらなる不正義が重ねられた。そもそもデイ・オヴ・モーニングがあったからこそ五つ国が和平に向けてまとまったという事実があるにも関わらず、サイアリはこの講和会議への参加を認められなかったのである。「サイアリはもはや存在しない国」とアーララ女王は主張した。「和平を目指すこの手続きに参加する権利などありません」。ヴァラナーのヴァダリア大王もこれに賛同し、結果、コーヴェア大陸各国の国境を画定しなおし、最終戦争に幕を下ろすこの講和会議で、サイアリはまったくの蚊帳の外に置かれたのである。

***戦後のサイアリ 


 祖国は滅び、同胞は世界中に散り散りになっている。サイアリ人が五つ国における自分たちの不安定な立場を鋭く意識せざるをえないとしても無理からぬところだろう。スローンホールド合意で蚊帳の外に置かれたサイアリ難民は、唯一サイアリ人が王室の客人として歓迎されるニュー・サイアリを除き、五つ国のどこにも寄る辺がない。故郷を追われ、わずかの友人を除いてまわりは敵だらけという状況にあって、サイアリ人が自分自身やいちばん身近な血縁者を大切にするのは当然といえば当然なのである。五つ国のほかの国々に対しては、なんら親愛の情をおぼえないどころか、なかには燃えるような憎悪をかろうじて抑えているに過ぎない者もいる。彼らにしてみれば、他の五つ国人というのはミシャンの正統なる王位継承権を否定し、ガリファー王国を崩壊に追いやった“反逆者”にほかならないからだ。
 とは言っても、サイアリ人はけっして陰気な人種ではない。彼らは今なおサイアリ的美意識を捨てていないし、“悲嘆の日”以降若干翳りを帯びるようになったとはいえ、サイアリの美術や歌は依然として先見性に満ちた、特異で先鋭的な文化なのである。サイアリ人のファッションは元来、大胆ないでたちから驚くほどシックな装いまでとじつに幅広いのだが、最近の若い世代にははっきりとした暗色の服を“ 喪装”(モーニング・ウェア)と呼んで着る動きが広がっている。これはそうすることで、自分たちがほとんど知らない祖国を思い出すためのよすがにしようという試みだ。
 サイアリ難民のなかには、自分が身を寄せている異文化社会にできるだけ溶け込もうと、わざわざ名前をそれらしく変える者さえいる。しかし大半の避難民は自分たちの伝統をかたくなに守り、居候の立場に甘んじるよりはと、もっと大きな避難民のコミュニティを探して加わろうとする。なかでもニュー・サイアリとオルゲヴ王子のまわりに集まる人々は、自分たちの未来に希望を見出している。そして、“麗しのサイアリ”を見舞った不正義に対する報いをコーヴェアの国々が受けるときを、心待ちにしているのである。
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