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回生充電機能 - (2010/08/27 (金) 06:19:18) の編集履歴(バックアップ)



回生充電機能の長所/短所

“一長一短”の機能

※電動アシスト自転車を買うのは初めて、という人がまず興味を持つ可能性が高いのが「回生充電機能」という言葉であるが、実際には長所と短所が表裏一体、「一長一短」の傾向が強い機能である。

■簡潔な要点
【メリット】…低速域では航続距離が伸び、回生発電がブレーキも補助。
【デメリット】…高速域では発電機構が足枷になりスピードを上げ難い。
その為、スピードを出したい人や、ゆっくり漕ぐのが苦痛な人には向かない。

自分の使用用途に適した場合には充電能力とブレーキ能力の高さから大変便利な機能となってくれる。
逆に自分の使用範囲に適していないのに「回生」という言葉に惹かれて予備知識なしで購入すると、短所面が気になる場合もある。
購入前に良く検討し、自分の環境に適していると納得した上で購入する事が大事となる。



前輪モーター型回生充電

■前輪回生機能搭載車種



■前輪回生タイプの特徴

  • 基本はブレーキレバー連動で充電を開始する。サンヨーのエネループバイクは、時速8km/h~24km/hの間で、左(後輪)ブレーキレバーが効いている間はブレーキ充電を行う。
  • パナソニックのRXシリーズは、時速6km/h~24km/hの間でブレーキ充電を行う。左右の両ブレーキを掛けるとフル充電モード、どちらか片方だけブレーキを掛けるとハーフ充電モードとなり、回収できるエネルギー量(=回生ブレーキの強さ)が変わる。
  • もう1つは、オートモード時に自動で回生充電を開始する。車速や勾配をセンサーで判断し、下り坂への進入速度を基準に車速と勾配の増加に応じて自動で回生補充電を行う(回生充電中は回生ブレーキ効果も発生して減速する)。
  • 2010年より発売のエネループバイクSPLには、更に充電を優先した「エコ充電モード」も登場。下り坂だけでなく、平地に於いても負荷が少ない時は漕いだ力を充電に回し、バッテリーへの補充電を優先するモード。


■前輪回生タイプの長所

  • 回生充電機能を駆使すれば電力を回収して航続距離を伸ばせる。またリチウム電池の場合、電池劣化の激しい満充電状態を避け、残量80%~40%の領域の間を往復する様な使い方をする場合に、残量調整をし易く80%~40%の領域を長時間使える。
  • 回生充電中は発電の為にブレーキが掛かったような効果になるので、車速が24km/h以下の弱い下り坂ではブレーキパッドの負担を減らせ、機械式ブレーキと併用する事で十分な制動力を得られる。

  • 車速を前輪モーターで直接検知するので、SPEC3と同様な効果がある。ギアが何速に入っていてもギア比を変えても常に時速24km/hまでは最適なアシストを行ってくれる。
  • 後輪にモーターのトルクがかからないので後輪ハブの負担が少ない。よって高耐久型ハブが無くてもアシスト比率1:2が可能。この為、エネループバイク等は低価格モデル帯でもアシスト比1:2に近いアシスト比を実現している。バッテリーが電池の残量や温度状態等により細かく制御を行うので、常にパワーモードなら1:2のアシスト比と言う訳ではないが、全体的に非回生タイプよりもアシストが強い事が多い(安全装置が働いてしまう12%超の急坂等を除く)。

  • 両輪で牽引するので雪混じり等の滑り易い路面での安定性は高くなる。前輪車速計測とペダル踏力センサーで後輪がスリップしたのを検知すると、トラクションコントロールが働いて前輪モーターが一時的に駆動力を高め、後輪が横滑りを起こして転ばないように前輪側で牽引して車体を建て直してくれる。
  • 後輪モータータイプの回生と比べると以下の3点で優れる。①ブレーキ操作で充電開始のタイミングをコントロールできるので、操作感が普通の電アシに近く扱い易い。②ペダル進角に対するレスポンスが早い(ペダル進角ほぼ0度でも即アシスト開始)ので、発進がパワフル。③ブレーキ時に荷重が掛かるのは前輪側なので、前輪に発電モーターがあるとブレーキ時に回収できるエネルギーの効率が良い。

  • スピードだけに捉われず新しい感覚の乗り物として考えれば、走行するだけで楽しめる独特の乗り味がある。それまで乗り手の技術的な上達の関心が「如何に速く走れるか」位だったのが、「今日は上手に操作できたから普段より多く電力を回収できた」等と、別な観点から新しい楽しみを発見できる。
  • 充電機能を駆使する事に注力すると、普段スピードに捉われ易い人でもいつの間にかスピードを出さず周りに抜かれても気にならない様な感覚に自然となれる。理念で安全やエコを唱えずとも、乗る間に自然にエコ走法が身に付き理解できる。


■前輪回生タイプの短所

  • 最大の問題点は、時速24km/h以上で漕ぐと、ダイナモランプを当てている様な、ペダルが重くなる抵抗が発生する事。モーターが前輪ハブ直結でクラッチ機構を設けられないので、モーターが稼動していない状態(電源OFFか24km/h以上の時)では、前輪モーターの発電機構が漕ぐ際の抵抗となる。
  • また前輪モーターだけでなくクランク部のトルク検知構造ペダル踏力がダイレクトにチェーンに伝わり難い構造で、間にゴムを挟んだ様な独特の感触がある。アシストがOFFになる状態で踏んだときの抵抗感の大きさに影響している。
  • 以上2点から、実質的に時速24km/hを越える高速走行が難しい。普段から自転車で走行する際に常時20km/h程度でゆっくり走っている人には問題ないが、普段から自転車で24km/h以上の高速域を多用して居た人には、速度に大きな制限が掛かり利便性が落ちる。
  • 更に、後輪モータータイプと違い時速24km/h以上で電源を切っても走行抵抗は減らせないので、高速走行時に発生する抵抗感を解除できない。ギアを変更しても電源をON/OFFどちらにしても構造上効果が無いので、「常時時速24km/h以下で走る前提の乗り物」という傾向が強くなる。

  • 充電開始条件の制限が厳しく、時速24km/h以上では回生充電機能が働かない。例えば「30km/h出る下り坂を26km/hに減速させつつ回生充電」と言った事が出来ない。急坂ではまず機械式ブレーキを強く掛けて速度を24km/h以下に落としてからやっと回生充電可能となる。この為、機械式ブレーキを強くかけて車速を落とした後では、回生できるエネルギーが僅かになってしまい、急坂が多い地域では殆ど回生できないと言う事もありうる。
  • 日常の中で、惰性走行すると24km/hを自然に越えてしまう下り坂は意外と多く、「最初に機械式ブレーキを強くかけ、減速を殆ど終えてしまってから回生発電を開始してゆっくり降りる」か、「回生を諦めて、ブレーキをかけずにスピードに乗って坂を駆け下りる」か、の二択になる。自転車にとってスピードの出る下り坂は移動時間を稼ぐチャンスでもある。そのチャンス区間の下り坂で大減速を強いられるのは、急いでいる時ほど痛手となる。遅刻気味の朝の通勤等では、殆ど回生せずに走行する羽目になる事も。

  • 普段は高めのアシスト比率でパワフルだが、一定度合いを超える急な登りではアシストが上手く機能しない事がある。1つ目は荷重バランスが原因となる場合。急な登り坂では車体が斜め上を向くので、荷重は後輪に集中し、前輪タイヤを路面に押し付ける力は弱くなる。この為緩い登り坂では高いアシスト比率でパワフルだが、超急坂では前輪モーターのアシストパワーが荷重不足で全力を発揮できない事がある。
  • もう1つはトラクションコントロールの安全制御装置が働く場合。前輪のスリップを検知すると、安全の為にアシストを一時的に停止(軽減)する制御となっている。スリップ転倒防止の安全機能だが、あまりに急な登り坂(12%を越える様な超急坂)では、車体が斜め上を向きすぎて前輪の荷重が抜けて空転気味になり、この安全制御が働いてアシストが止まる事がある。現実的に12%超の急坂がある地域は限られるが、超急坂地帯に住んでいる場合には注意が必要となる。
  • 外気温が極端に低い場合、外気温が極端に高いか発電のし過ぎでモーターが高温になりすぎた場合、充電中に満充電になった場合、等では回生充電ブレーキ機能が働かなくなる事がある。

  • 前輪に重いモーターがあるので、段差を乗り越えた際の衝撃が大きい。また前輪が重いと、駐輪場等で前輪を浮かせてその場から動かずに旋回させる事が難しい。なお、前輪の空気圧が不足した状態で段差を乗り越えるとリム打ちパンクが起こり易いので、タイヤ空気圧をチェックしない様なメンテに無頓着なユーザーがパンクを起こす率が高い。
  • 電源をOFFにした際もペダルを漕ぐ際に抵抗が発生するので、万一電池切れを起こした場合は車重の重さも加わってかなり体力的な負担が大きい。常時電源を入れて走行する前提の設計で、残量が不安でも電源を切って漕ぐには適さない
  • クランク部にあるトルク検知構造の関係上、ペダルを踏んだ力がダイレクトに車輪に伝わり難い。踏み込んだ際にグニャッと柔らかい物を挟んだような感じが入る。




後輪モーター型回生充電

■後輪回生機能搭載車種



■後輪回生タイプの特徴

  • 前輪回生タイプと違いブレーキ連動では無い。前輪に内蔵の速度検知機能や傾斜センサーを使い、充電の開始タイミングは全て自動で行われるので、ユーザーの側で充電開始のタイミングをコントロールする事はできない。モード切替で充電度合いを変更できる。
  • 前輪回生タイプと違い、回生可能な速度の範囲が広く、時速24km/hを越える速度でも回生できる。エアロアシスタントの場合は、速度センサーに加えて傾斜センサーも搭載しており、下り坂の惰性走行で自動充電開始する。下り坂に進入した時の速度を越えようとすると、回生充電によるブレーキ効果を強烈にかけて減速し、下り坂進入時の速度を常に保とうとする
  • イグニオの場合はコストの問題か傾斜センサーを搭載していない。自動充電開始の条件は車速とペダルにかかるトルクの検知のみで判断し、「ペダルを漕いでいない 且つ 速度が一定値以上」の場合に自動充電開始となる。その為、平地の惰性走行時でも時速20km/hを越えると自動充電を開始して車速が下がる。
  • また下り坂だけでなく、平地でも一定速度(20km/h~30km/h程度)を越えると、余剰なエネルギーがあると判断されて、僅かに回生ブレーキを掛けて発電に回している。極端にスピードを上げるとペダルを止めて惰性走行に切り替わった際に発電機内部に急に大きな電力が発生するので、「過剰電流による故障防止の為に回生ブレーキを働かせて減速させる」と言う意味合いもある。


■後輪回生タイプの長所

  • 最大の長所は、時速24km/h以上でも回生充電可能な事。この為、急な下り坂でも回生ブレーキが使えるのは大きい。回生ブレーキの力はかなり強力で、特に充電モードに切り替えれば、余程の急な下りでない限り機械式ブレーキを殆ど使わずに回生ブレーキだけで下る事が可能な程。
  • この為、急な下り坂の多い山岳地帯で真価を発揮する。本来ならスピードが出て危ない坂もブレーキパッドの消耗を抑えつつ安全な速度で下る事ができる。しかも充電エネルギーもかなり回収できる。こと舗装路のダウンヒルに関しては無類の強さ。

  • また、登り坂や発進時には荷重は後輪に集中するので、後輪モーターは前輪モーターに比べると荷重バランスの面でモーターの力を有効に路面に伝える事ができる。急斜面になる程に前輪の荷重は抜けて後輪に荷重が集中するので、後輪から動力が発生するのは有効となる。

  • 平地で高速走行する場合にネックになるのが時速20km/h以上で発動する自動回生充電であるが、電源スイッチを切れば自動充電を解除できる。前輪回生だと電源を切っても走行中はモーターを空転させなければならず、時速24km/h以上での走行抵抗を解除できないが、後輪回生の場合はモーターを空転させる必要が無く動かなければ良いので電源を切れば単なる重たい車輪と化す。前輪モーターに比べれば対策がある分だけ対応できる状況が増える。


■後輪回生タイプの短所

  • 最大の問題は、平地でも時速20km/hを越えると自動的に回生充電開始で走行抵抗が発生する事。しかもブレーキと連動してない完全自動回生なので、自動回生を止めさせる方法は無く解除不能。モード切替と走り方で多少調整はできるのみ。充電して欲しくない時に勝手に充電開始してペダルに抵抗が発生して困る事がある。
  • この為、常に時速15km/h~20km/h以下の低速で走行する前提の設計であり、高速走行は厳しい仕様。普段から自転車で時速25km/h以上の速度を常用している人にとっては「時速20km/h以上出せない自転車」となり、大きく利便性を損なうので苦痛に感じる事がある。

  • 更にイグニオの場合傾斜センサーが無いので、平地でも時速20km/h以上での惰性走行時に自動充電開始する。オートモード時の自動回生ブレーキの強さは、充電モードの3段階中2番目と同じ位の強さ。つまり、20km/h以上では漕ぐのをやめるとみるみるスピードが落ちていく。
  • この為、電源ON時に回生を働かせたくなければ常に漕いでいる必要がある。漕ぐのを止めて惰性走行すると自動充電で車速がみるみる20km/h以下まで落ちる。自転車の走行では、実際には漕いでいなくて惰性で走行する時間がかなりの割合を占める。漕ぎ方次第では、体力を消費して充電に回すフィットネスバイクになり、「“非”電動の自転車よりも運動量が増えて体が鍛えられる」という妙な事態も起こり得る。

  • 高速走行時の自動回生充電によるブレーキを防ぐには、「20km/hを越える寸前に電源を切る」か「常に時速20km/h以下でゆっくり漕ぐ」の二択となる。しかし、実際の走行では「スイッチを切るかそのまま電源ONで走行するか判断が微妙な勾配や平地の道路」が多い。
  • 普通に漕いだら時速20km/hを微妙に越えてしまいそう、という路面が厄介。電源をOFFにすれば路面勾配が登りに入る度にスイッチを入れなおす必要があり、電源ONにしておくと20km/hを越えたら充電が始まるのでわざと速度を20km/h以下に抑えて走行しなきゃという気持ちにさせられる。機械の仕組みに振り回されて自分の好きなペースで走れない感じが出てしまう。
  • オートモード時は緩い下り坂でも自動回生ブレーキが強烈に効くので減速が激しい。機械側は常に「時速15km/h~20km/hを越えない様にしよう」と働こうとする。これを防ぐには、充電モードにしてペダルを少し漕ぐ事で自動充電の始まる条件を回避するか、または充電を諦めて電源を切る、等の変則的操作が必要。やや操作にクセがあり、微妙な勾配の変化が続く道路では操作が面倒に感じる事がある。
  • この様に、急坂の多い地域では重宝した自動回生機能も、平地ばかりの地域では使い難い物になってしまう。漕いだ力の余剰分を発電に回す機会が増えて、アシストよりも充電重視なので平地走行での快適性に欠ける。

  • モーターが後輪直結なので、雨で濡れたマンホール等の滑り易い路面の上に後輪が乗ると、後輪モーターが空転してチェーンが暴れて外れる事がある。また空転した事によりペダルがスカッと空振りする様な感じになってバランスを崩す事がある。一般的な電動アシスト自転車の場合はモーターが車体中央のクランクのすぐ後ろにあるのでこの様な事態は起こらない。
  • モーターが後輪にありホイール直結なので、前輪モータータイプに比べると雪混じりや半凍結等の滑り易い路面の登り坂での安定性に欠ける。普通の自転車よりトルクがある分タイヤ空転やチェーン外れの危険が増える。
  • 回生の条件が緩くてしょっちゅう回生しようとするのであまり目立たないが、減速時に荷重が掛かるのは前輪なので、後輪モーターでは回収できるエネルギーの効率の面で不利になる。
  • ペダル進角に対するレスポンスが若干遅い。ペダル進角0度から即アシストを開始できる前輪回生タイプに比べると、踏み込んでペダルが約15度ほど回転しないとアシストが始まらないので、加速時に若干もたつく感じが出る。



回生機能の適正チェック

■こんな人には回生が便利(・∀・) イイ!

スピードを出さなくても構わない、と言う人。
  • 重要な条件。普段からあまりとばさずに、常に時速24km/h以下でゆっくり走るのを苦痛に感じない人

緩やかな下り坂や停止回数が多い地域。
殆ど平地が無く、傾斜路ばかりの地域。
  • 平地が無ければ自力で漕いで24km/hになる機会は減る。「登りでアシストを効かせている時間」と「下りで回生充電する時間」が殆どになるので、「自力で漕いでスピードを出そうとした時に抵抗が発生する」という回生充電機能の弱点が目立たなくなる。

通勤ルートが「往路登り→復路下り」の道な人。
  • 往路では復路の電池残量の事を気にせずアシストをガンガン使いまくって坂を登れる。復路では電池が減っていても下り坂で充電できるので充電器に挿す回数が減る。逆に「往路下り→復路登り」だと相性があまり良くない。


■こんな人には回生は不向き(・A・) イクナイ!

漕ぐのが速い人。
  • 高速域では発電構造が抵抗になるので、普通に漕ぐと24km/hをあっさり越えちゃう様な健脚の人にとっては、漕いでる時間の殆どが、常時ダイナモ点灯の様な走行抵抗発生状態になってしまい非常に走り難い。特に前輪モータータイプの場合は、時速24km/h以上では回生充電も働いていない無駄な抵抗エネルギーの損失となる。

殆どが平地の地域。
  • 平地が増えると、どうしても自力で漕いで24km/hを超える機会が増えてしまう。また回生機能を使うチャンスも少なくなる。

「スピードこそ命」な人。
  • 「発進と坂と向風の時だけアシストしてくれれば良くて、一旦スピードに乗ったら後は自力で快適にとばしたい」と言う人。つまり「電動アシストは低速トルク強化の為に使いたくて、残りの高速域は自力でスピードを出す」という目的で電動アシストを買った人。
  • 尚且つ「ロードバイクは登り坂で時速10km/hとか遅くなるのが嫌、坂でも時速15km/h以上はキープしつつ、平地では27km/h程は欲しい」等の欲求を持つ人。そういう人はスポーツタイプを買うべき。回生タイプと最も相性が悪い要求を持つ人なので、買ってから「こんなはずじゃ無かった…」となりがち。