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回生充電機能 - (2012/04/17 (火) 02:02:30) の編集履歴(バックアップ)



回生充電機能の長所/短所

“一長一短”の機能

※電動アシスト自転車を買うのは初めて、という人がまず興味を持つ可能性が高いのが「回生充電機能」という言葉であるが、実際には長所と短所が表裏一体、「一長一短」の傾向が強い機能である。

■簡潔な要点
【メリット】…2WD機構による走行安定性、比類なき強力なアシスト感。
【デメリット】…回生充電は思ったほど機能しない。

自分の使用用途に適した場合には充電能力とブレーキ能力の高さから大変便利な機能となってくれる。
逆に自分の使用範囲に適していないのに「回生」という言葉に惹かれて予備知識なしで購入すると、短所面が気になる場合もある。
購入前に良く検討し、自分の環境に適していると納得した上で購入する事が大事となる。



前輪モーター型回生充電

■前輪回生機能搭載車種



■前輪回生タイプの特徴

  • 基本はブレーキレバー連動で充電を開始する。サンヨーのエネループバイクは、時速8km/h~24km/hの間で、左(後輪)ブレーキレバーが効いている間はブレーキ充電を行う。
  • パナソニックのRXシリーズは、時速6km/h~24km/hの間でブレーキ充電を行う。左右の両ブレーキを掛けるとフル充電モード、どちらか片方だけブレーキを掛けるとハーフ充電モードとなり、回収できるエネルギー量(=回生ブレーキの強さ)が変わる。
  • もう1つは、オートモード時に自動で回生充電を開始する。車速や勾配をセンサーで判断し、下り坂への進入速度を基準に車速と勾配の増加に応じて自動で回生補充電を行う(回生充電中は回生ブレーキ効果も発生して減速する)。
  • 2010年より発売のエネループバイクSPLには、更に充電を優先した「エコ充電モード」も登場。下り坂だけでなく、平地に於いても負荷が少ない時は漕いだ力を充電に回し、バッテリーへの補充電を優先するモード。


■前輪回生タイプの長所

  • 回生充電機能を駆使すれば電力を回収して航続距離を伸ばせる。また回生充電中は発電の為にエンジンブレーキのような制動効果がかかるので、車速が24km/h以下の弱い下り坂ではブレーキパッドの負担を減らせ、機械式ブレーキと併用する事で十分な制動力を得られる。
  • リチウム電池の場合、電池劣化の激しい満充電に近い状態を避け、劣化の少ない残量70%~30%の領域の間を往復する様な使い方をする場合に、回生充電なら残量調整をし易く70%~30%の領域を長時間使える。
  • 後輪モータータイプの回生と比べると以下の3点で優れる。①ブレーキ操作で充電開始のタイミングをコントロールできるので、操作感が普通の電アシに近く扱い易い。②ペダル進角に対するレスポンスが早い(ペダル進角ほぼ0度でも即アシスト開始)ので、発進がパワフル。③ブレーキ時に荷重が掛かるのは前輪側なので、前輪に発電モーターがあるとブレーキ時に回収できるエネルギーの効率が良い。
  • 車速を前輪モーターで直接検知するので、ギアが何速に入っていてもギア比を変えても常に時速24km/hまでは最適なアシストを行ってくれる。
  • クランク及び後輪にモーターのトルクがかからないので、チェーン、スプロケット、変速機構、後輪ハブの負担は非電動アシスト自転車と変わらず極めて軽い。よって重くて作動音の大きい高耐久型ハブが無くてもアシスト比率1:2が可能。この為、エネループバイク等は低価格モデル帯でも最大比率1:2に近いアシスト比を実現している。バッテリーが電池の残量や温度状態等により細かく制御を行うので、常にパワーモードなら1:2のアシスト比と言う訳ではないが、全体的に非回生タイプよりもアシストが強い事が多い(安全装置が働いてしまう12%超の急坂等を除く)。
  • 前輪モーター以外に大きな負担がかからないため、チェーン、スプロケット、変速機構、後輪ハブの摩耗・故障が少なく、壊れにくい。
  • 前輪を電力、後輪を人力という2WDで牽引するので、走行安定性は抜群に良い。特に、坂道、悪路、ウエット路面、雪混じり等の滑り易い路面での安定性は他の駆動方式とは比較にならないほど高くなる。前輪車速計測とペダル踏力センサーで後輪がスリップしたのを検知すると、トラクションコントロールが働いて前輪モーターが一時的に駆動力を高め、後輪が横滑りを起こして転ばないように前輪側で牽引して車体を建て直してくれる。
  • 前輪モーター採用車は重量配分のバランスが良いので、リアキャリアに子供乗せを装着しても前輪がウイリーするようなことはほとんどない。



■前輪回生タイプの短所

  • モーターが前輪ハブ直結でクラッチ機構を設けられていないため、モーターが稼動していない状態では回転抵抗がある。
  • クランク部のトルク検知構造ペダル踏力がダイレクトにチェーンに伝わり難い構造で、間にゴムを挟んだ様な独特の感触がある。
  • 以上2点から、実質的に時速24km/hを越える高速走行が難しいような気がするものの、実際に27~30km/h巡航してみるとを高速走行を妨げるような回転抵抗を体感することは困難で、むしろ内装3速変速機の高速性能の限界の方に物足りなさを感じてしまう。
  • 時速24km/h以上では回生充電機能が働かないので、短い急坂では殆ど回生充電が期待できない。
  • 平地や普通の登り坂では高いアシスト比率が活きるのでパワフルだが、斜度12%を越える様な超急坂ではアシストが上手く機能しない事がある。
1つ目は荷重バランスが原因となる場合。超急坂では車体が斜め上を向くので、荷重は後輪に集中し、前輪タイヤを路面に押し付ける力は弱くなる。この為、超急坂では前輪モーターのアシストパワーが荷重不足で全力を発揮できない事がある。
  • もう1つはトラクションコントロールの安全制御装置が働く場合。前輪のスリップを検知すると、安全の為にアシストを一時的に停止(軽減)する制御となっている。スリップ転倒防止の安全機能だが、超急坂では、車体が斜め上を向きすぎて前輪の荷重が抜けて空転気味になり、この安全制御が働いてアシストが止まる事がある。
  • 外気温が極端に低い場合、外気温が極端に高いか発電のし過ぎでモーターが高温になりすぎた場合、充電中に満充電になった場合、等では回生充電ブレーキ機能が働かなくなる事がある。
  • 前輪に重いモーターがあるので、前輪の空気圧が不足した状態で段差を乗り越えるとリム打ちパンクが起こることがある。




後輪モーター型回生充電

■後輪回生機能搭載車種



■後輪回生タイプの特徴

  • 前輪回生タイプと違いブレーキ連動では無い。前輪に内蔵の速度検知機能や傾斜センサーを使い、充電の開始タイミングは全て自動で行われるので、ユーザーの側で充電開始のタイミングをコントロールする事はできない。モード切替で充電度合いを変更できる。
  • 前輪回生タイプと違い、回生可能な速度の範囲が広く、時速24km/hを越える速度でも回生できる。エアロアシスタントの場合は、速度センサーに加えて傾斜センサーも搭載しており、下り坂の惰性走行で自動充電開始する。下り坂に進入した時の速度を越えようとすると、回生充電によるブレーキ効果を強烈にかけて減速し、下り坂進入時の速度を常に保とうとする
  • イグニオの場合はコストの問題か傾斜センサーを搭載していない。自動充電開始の条件は車速とペダルにかかるトルクの検知のみで判断し、「ペダルを漕いでいない 且つ 速度が一定値以上」の場合に自動充電開始となる。その為、平地の惰性走行時でも時速20km/hを越えると自動充電を開始して車速が下がる。回生ブレーキは相当に強力で、下り坂で30km/hを越える事は殆ど無い程。
  • また下り坂だけでなく、平地でも一定速度(20km/h~30km/h程度)を越えると、余剰なエネルギーがあると判断されて、僅かに回生ブレーキを掛けて発電に回している。極端にスピードを上げるとペダルを止めて自動充電に切り替わった際に発電機内部に急に大きな電力が発生するので、「過剰電流による故障防止の為に回生ブレーキを働かせて速度を抑制させる」と言う意味合いもある。


■後輪回生タイプの長所

  • 最大の長所は、時速24km/h以上でも回生充電可能な事。この為、急な下り坂でも回生ブレーキが使えるのは大きい。回生ブレーキの力はかなり強力で、特に充電モードに切り替えれば、余程の急な下りでない限り機械式ブレーキを殆ど使わずに回生ブレーキだけで下る事が可能な程。
  • この為、急な下り坂の多い山岳地帯で真価を発揮する。本来ならスピードが出て危ない坂もブレーキパッドの消耗を抑えつつ安全な速度で下る事ができる。しかも充電エネルギーもかなり回収できる。こと舗装路のダウンヒルに関しては無類の強さ。

  • また、登り坂や発進時には荷重は後輪に集中するので、後輪モーターは前輪モーターに比べると荷重バランスの面でモーターの力を有効に路面に伝える事ができる。急斜面になる程に前輪の荷重は抜けて後輪に荷重が集中するので、後輪から動力が発生するのは有効となる。

  • 平地で高速走行する場合にネックになるのが時速20km/h以上で発動する自動回生充電であるが、電源スイッチを切れば自動充電を解除できる。前輪回生だと電源を切っても走行中はモーターを空転させなければならず、時速24km/h以上での走行抵抗を解除できないが、後輪回生の場合はモーターを空転させる必要が無く動かなければ良いので電源を切れば単なる重たい車輪と化す。前輪モーターに比べれば対策がある分だけ対応できる状況が増える。


■後輪回生タイプの短所

  • 最大の問題は、ブレーキと連動してない完全自動回生で、ユーザーの任意のタイミングで回生の開始と停止を決められない事。特に時速20km/h以上では、下り坂の惰性走行時に強制的に回生充電開始なので、惰性走行時で充電して欲しくない時に勝手に充電開始して速度が低下して困る事がある。ユーザー側でできるのはモード切替と走り方で多少調整する事のみ。
  • 更にイグニオの場合、傾斜センサーが無いので平地でも時速20km/h以上での惰性走行時には自動で充電開始する。オートモード時の自動回生ブレーキの強さは、充電モードの3段階中2番目と同じ位の強さ。つまり、20km/h以上では漕ぐのをやめるとみるみるスピードが落ちていく。
  • よって、電源ON時に車速を維持したい(=回生を働かせたくない)場合は、常に漕いでいる必要がある。エアロアシスタントでは緩い下り坂、イグニオではそれに加えて平地でもこの事態が発生する。漕ぐのを止めて惰性走行すると自動回生充電で車速がみるみる20km/h以下まで落ちる。実際の自転車の走行では、漕いでいなくて惰性で走行する時間がかなりの割合を占める。体力温存に有効な惰性走行が使えないからと常時漕ぎ続けた場合、「非電動の普通の自転車よりも運動量が増える」という妙な事態も起こり得る。
  • これらの点から、基本設計が常に時速15km/h~20km/h以下の低速で走行する前提であり、高速走行は厳しい仕様。平地主体で普段から自転車で時速25km/h以上の速度を常用している人にとっては「時速20km/h以上出すのには不向きな仕様の自転車」となり、大きく利便性を損なうので苦痛に感じる事がある。

  • 高速走行時の自動回生充電によるブレーキ状態を防ぐには、「20km/hを越える寸前に電源を切る」か「常に時速20km/h以下でゆっくり漕ぐ」の二択となる。しかし、実際の走行では「スイッチを切るべきか、そのまま電源ONで走行するべきか、判断が微妙な勾配や平地の道路」が多い。
  • 「短い登りと下りが交互に繰り返される道路」「普通に惰性走行すると微妙に時速20km/hを超えそう」、等と言ったコースが厄介になる。電源をOFFにすれば自動回生による減速はなくなるが、路面勾配が登りに入る度にスイッチを入れなおす必要が出てしまう。逆に電源ONのままにしておくと、20km/hを越えたら回生ブレーキが始まるので惰性走行が使えなくなり疲労が増えるので、「わざと速度を20km/h以下に抑えて走行しなきゃ」という気持ちにさせられる。機械の仕組みに振り回されて自分の好きなペースで走れない感じが出てしまう。
  • オートモード時は緩い下り坂でも自動回生ブレーキが強烈に効くので減速が激しい。機械側は常に「時速15km/h~20km/hを越えない様にしよう」と働こうとする。これを防ぐには、充電モードレベル1にしてペダルを少し漕ぐ事で自動充電の始まる条件を回避するか、または充電を諦めて電源を切る、等の変則的操作が必要。やや操作にクセがあり、微妙な勾配の変化が続く道路では操作が面倒に感じる事がある。
  • この様に、急坂の多い地域では重宝した自動回生機能も、平地ばかりの地域では使い難い物になってしまう。漕いだ力の余剰分を発電に回す機会が増えて、アシストよりも充電重視なので平地走行での快適性に欠ける。

  • モーターが後輪直結なので、雨で濡れたマンホール等の滑り易い路面の上に後輪が乗ると、後輪モーターが空転してチェーンが暴れて外れる事がある。また空転した事によりペダルがスカッと空振りする様な感じになってバランスを崩す事がある。一般的な電動アシスト自転車の場合はモーターが車体中央のクランクのすぐ後ろにあるのでこの様な事態は起こらない。
  • モーターが後輪にありホイール直結なので、前輪モータータイプに比べると雪混じりや半凍結等の滑り易い路面の登り坂での安定性に欠ける。普通の自転車よりトルクがある分タイヤ空転やチェーン外れの危険が増える。
  • 回生の条件が緩くてしょっちゅう回生しようとするのであまり目立たないが、減速時に荷重が掛かるのは前輪なので、後輪モーターでは回収できるエネルギーの効率の面で不利になる。

  • 電動ユニットは「コンパクトな一体型で、どんな車種にも簡単に搭載可能」と言う点を重視したシステムなので、後輪ハブ内にトルクセンサーも車速計測も制御基盤もモーターも全て内蔵したオールインワン構造となっている。この「トルクセンサーをリアハブ内蔵」にした構造だと、ギア比を上げる程、ハブが検知するトルクは弱くなるという弱点がある。
  • 他の車種ならペダル部分にトルクセンサーを内蔵しているので、ギアを変更しても検知されるトルクの強さは正しい値を示すが、後輪ハブモーター構造では、ギア比を上げる程に後輪ハブに伝わるトルクは弱くなる。トップギアで懸命に漕いでも、センサーは「弱い力で漕いでいる」と誤認してしまう。この為、低速ギアでの発進直後は比較的パワフルでも、加速しつつギアをシフトアップしていくと、普通よりもアシストのパワーダウンが早くやってくる事になり易い。
  • ペダル進角に対するレスポンスが若干遅い。ペダル進角0度から即アシストを開始できる前輪回生タイプに比べると、踏み込んでペダルが約15度ほど回転しないとアシストが始まらないので、加速時に若干もたつく感じが出る。



回生機能の適正チェック

■こんな人には回生が便利(・∀・) イイ!

スピードを出さなくても構わない、と言う人。
  • 重要な条件。普段からあまりとばさずに、常に時速24km/h以下でゆっくり走るのを苦痛に感じない人

緩やかな下り坂や停止回数が多い地域。
殆ど平地が無く、傾斜路ばかりの地域。
  • 平地が無ければ自力で漕いで24km/hになる機会は減る。「登りでアシストを効かせている時間」と「下りで回生充電する時間」が殆どになるので、「自力で漕いでスピードを出そうとした時に抵抗が発生する」という回生充電機能の弱点が目立たなくなる。

通勤ルートが「往路登り→復路下り」の道な人。
  • 往路では復路の電池残量の事を気にせずアシストをガンガン使いまくって坂を登れる。復路では電池が減っていても下り坂で充電できるので充電器に挿す回数が減る。逆に「往路下り→復路登り」だと相性があまり良くない。


■こんな人には回生は不向き(・A・) イクナイ!

漕ぐのが速い人。
  • 高速域では発電構造が抵抗になるので、普通に漕ぐと24km/hをあっさり越えちゃう様な健脚の人にとっては、漕いでる時間の殆どが、常時ダイナモ点灯の様な走行抵抗発生状態になってしまい非常に走り難い。特に前輪モータータイプの場合は、時速24km/h以上では回生充電も働いていない無駄な抵抗エネルギーの損失となる。

殆どが平地の地域。
  • 平地が増えると、どうしても自力で漕いで24km/hを超える機会が増えてしまう。また回生機能を使うチャンスも少なくなる。

「スピードこそ命」な人。
  • 「発進と坂と向風の時だけアシストしてくれれば良くて、一旦スピードに乗ったら後は自力で快適にとばしたい」と言う人。つまり「電動アシストは低速トルク強化の為に使いたくて、残りの高速域は自力でスピードを出す」という目的で電動アシストを買った人。
  • 尚且つ「ロードバイクは登り坂で時速10km/hとか遅くなるのが嫌、坂でも時速15km/h以上はキープしつつ、平地では27km/h程は欲しい」等の欲求を持つ人。そういう人はスポーツタイプを買うべき。回生タイプと最も相性が悪い要求を持つ人なので、買ってから「こんなはずじゃ無かった…」となりがち。