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    <title>desuga_orimayo @ ウィキ</title>
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    <description>desuga_orimayo @ ウィキ</description>

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    <title>白衣の技師氏作</title>
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      ・[[ベルタ着せ替え大作戦-前編&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/100.html]]
・[[ベルタ着せ替え大作戦-後編&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/102.html]]
・[[ベルタ着せ替え大作戦-後編2&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/103.html]]
・[[ベルタ着せ替え大作戦-後日談&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/106.html]]
・[[元気娘と過ごす夜&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/107.html]]
・[[ろくろくろくさいきょうのまじょ-前編&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/109.html]]
・[[ろくろくろくさいきょうのまじょ-後編&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/110.html]]
・[[ろくろくろくさいきょうのまじょ-後編2&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/111.html]]
・[[ろくろくろくさいきょうのまじょ-後日談&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/112.html]]
・[[オティーリエ・ハーケの平穏な一日【AM】&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/113.html]]
・[[オティーリエ・ハーケの平穏な一日【PM】&gt;http://www16.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/114.html]]


































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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/114.html">
    <title>オティーリエ・ハーケの平穏な一日【PM】</title>
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    <description>
      1330　―食糧庫―

「ここもようやく品数が充実してきたねー」
「数日前まで空だったのが信じられませんね。おかげで掃除ははかどりましたけど」
　昼食を食べ終えたティーとベルタの二人は、新しく仕入れられた食糧の受領をかねた食料庫の整理にやってきていた。

「でもさ、僕らで勝手に片付けていいの？実際に使うのはぼく達じゃないけど」
「食堂の人たちいわく『名目上とはいえ、あなた達の責任なんだからやってくれ』だそうです。結果的にとはいえ、私達でここを空にしちゃいましたからね」
　本来こういった作業はウィッチ達の役目ではないのだが、ベルタ達がこうしているのは先日開かれた『ウィッチ隊による料理教室』が原因だった。

「あれはもう災害だと思う。人間の食べる量じゃないよ、どう考えても」
　ウィッチの料理スキルを競うという名目で開かれた祭りは、料理自慢のウィッチ達がそれぞれ料理を持ち寄る、基地内での交流会みたいなものだったのだが、どこからかそれを聞きつけた涼の母君の「襲来」により、基地にある食料の、殆ど全てがなくなるという事件が起きてしまった。

「『味方を食い尽くすウィッチ』の伝説は一度聞いたことはありましたが。まさか本当だとは思いませんでした」
　たった一人の人間により、向こう数日分の食料全てが無くなったというこの事件は、最終的に無くなった食材を出雲家で賄うこと、責任はウィッチ隊の悪乗りという形で決着をつけることになった。

「まぁ、中途半端に残ってるよりはましだけどさ。イチから入れ直した方が片付けやすいし」
「無駄話しないで、早く片付けますよ。事務もまだいくつか残っているんですから」
　ベルの言葉で、二人は倉庫に無造作に置かれた受領分の整理に取り掛かる。

　ちなみに、二人は料理が得意なほうとはいえない。
　ベルタは、いわゆる『砂糖少々』といった曖昧な表現に対する勘が鈍く、良くも悪くもレシピ通りにしか作ることができない。
　対するティーは野外料理専門であり、何故か食べられる野草とキノコに対する一通りの知識を持っていた。そのせいか、作る料理は全体的に雑で大味な料理になってしまうらしい。

　黙々と片付ける二人の手により、積み上げられた食材が見る見るうちにあるべき場所へと片付けられていく。普段から弾薬庫や資料室の整理をしている二人にとっては、手馴れた作業だった。

　しかし、どんな人間であろうと何かしらのミスはつき物である。それは、この二人であろうと例外ではない。
「―――あ、ああぁー！」
　ティーの悲鳴で振り向いたベルタが見たのは、コンテナに収められていたジャガイモが音を立てて崩れるところだった。

「大丈夫ですか、ティー！？」
「うん、大丈夫。せっかく積み上げたのになぁ…」
　床に散乱したジャガイモを見つめながら、ティーがため息をつく。広範囲に散らばった芋を片付けなおすのは、実際かなりの手間である。

「手伝いますから、早くやってしま―――」
「エッカート少尉！ちょっと来てくれないか！」
　ティーを手伝おうと駆け寄ったベルタを、入り口から龍華が呼びかけていた。

「どうかしたんですか？」
「弾薬の数がいくつか合わなくてな、手伝ってくれ」
「分かりました、ちょっと待てください！―――ティー、まかせてもいいですか？」
　龍華の用件を聞いて、ベルタはティーに確認を取る。ティーも、すばやく残った食材を確認すると

「うん、大丈夫。ちょっと遅れるかもしれないけど、これくらいなら一人で行けるよ」
「分かりました。それでは、後はお願いします」
　そう言いのこし、龍華と弾薬庫に向かうベルタを見送ると、ティーは床に落ちたジャガイモを拾い集める。いくつかをコンテナに積み上げた時

「……あ、そうだ」
　何かを閃いたのか、ティーは一度積み上げたジャガイモを、もう一度床に散りばめ始めるのだった―――。


1530　―事務室―

「ベル、こっちお願い」
「はい―――それではこっちの計算、お願いします」
　食糧庫と弾薬庫の整理を終えたティーとベルタは、机の向かいに座り、互いに書類のやり取りをしながらかなりのハイペースで書類を仕上げていた。

「いつもながらですが、凄いペースですね。あの二人」
「私としては、あの二人がきてくれて本当に良かったと思いますよ。正直、もう二人がいないと終わる気がしないですもん」
　二人合わせて、通常の倍以上のペースで書類を仕上げていくのを見ながら、喜美佳とクララは呟く。

　PCどころか、まだ印刷機と言われる機械等が発達していない時代、書類の類は全て白紙の紙に一枚一枚手書きで仕上げていくのが常識であった。
「確かに、二人とも頭の回転は速いですし、手先も器用です。書類仕事が苦手ということは無いでしょう」
「定型書式を、一番真っ当な理由で使ってくれますしね」

　六六六では、定型書式を全自動印刷機によって印刷し、作業の効率化に成功している。
　もっとも、その定型書式が始末書に使われることが多いのは皮肉という他ないだろうが。

「―――ティー、コレの再計算お願いします」
「あれ、間違ってた？」
　要所ごとの重要な項目こそ個別で書くものの、共通する項目―――外枠等の線をティーが書き込み、文字や数字をベルタが書きあげ、数字計算があるときにはティーが計算を行う。この一連の流れを阿吽の呼吸で行い、完成した書類は二人でクロスチェックを行うことでミスなく、迅速な事務処理を実現していた。
　その速さゆえに、事務の苦手な何人かから『印刷済みの定型書式を使わないで！』とクレームを受けたのはもはや笑い話である。

「ところで大尉、ウチのリーチェとお宅のベルタ、トレードという訳にはいきませんか？」
「艦内の、貴女の部屋で手を打ちましょう」
　小声でずいぶんな取引を持ちかけるクララに、喜美佳も小さい声で応える。
　クララの部屋、すなわち中に置いてある酒―――それを聞いて、クララは顔を青くした。

「艦内って…せめて基地の方に置いてある分にしてくださいよ」
「両方でないだけありがたいと思いなさい」
　後生と言わんばかりのクララの態度に、喜美佳はにべにも無く応える。予想通りの返答に、クララは項垂れながら整備課特製のジュラルミン枠の算盤を弾き始めた。

「ねぇねェベルにティー、ちょっと手伝って欲しいのがあるんだけど…」
「個人的な原稿でしたら、手伝いませんよ？」
「ちょっと、私は仕事との切り替えはしっかりしてるわよ？」
　何度か仕事にかこつけて、原稿作成の手伝いをさせようと画策していた事を棚に上げながら、リーチェは不満そうに口をとがらせた。

「冗談ですよ。なにか―――」
「……キャァァァァァァァァァァァァ！！」
　クスクスと、小さく笑うベルタが用件を聞こうとした時、遠くの方から、しかし確かな悲鳴がはっきりと届いた―――


同時刻　―食糧庫―

「ミケー？もう、何処行ったのー？」
　午前の仕事を終え、午後からは暇を貰った高野皐月は、久しぶりに飼い猫のミケにブラッシングでもしようと思いたち、基地中を探しているところだった。

「…あ、いた。こんなところに入っちゃダメでしょう？」
　皐月が食糧庫を覗くと、ミケはコンテナの隙間に入り込んでいた。もう一つ、皐月の目に留まったのは、明らかにコンテナから崩れ落ちたと思われる、床に散らばったかぼちゃの山だった。

「もう、ダメだよ？こういう悪戯しちゃ」
　猫を相手に何を言っても変わらないとはいえ、飼い猫の不始末は飼い主の不始末である。皐月はため息をつくと、片付けるためにかぼちゃの山に向かう。
　そうして、かぼちゃを拾おうと屈んだ時。

　―――コンッ

「あいたっ…え？」
　急に頭に受けた衝撃に、皐月は思わず上を見上げる。何かが落ちてきたのか、床を見下ろすとそこには、先程は無かったはずのジャガイモが一つ、床に転がっていた。

「ジャガイモ？…どうして？」
　疑問に思った皐月がジャガイモのコンテナを見上げた瞬間―――

「……キャァァァァァァァァァァァァ！！」
今まで何とも無かった筈のジャガイモが、音を立てて皐月に向かい崩れ始めた―――。


「……何事ですか！？」
　五分後、悲鳴を聞いていち早く駆けつけた環とジャンヌの二人は、予想外の光景に目を丸くした。

「ふえーん、助けてくださ～い」
　涙目になりながらジャガイモの山に埋もれる皐月の姿という、あまりにもシュールなその光景に、やってきた二人は言葉を失い、ただ唖然とするばかりだった。
｢土井大尉、先ほどこのあたりから悲鳴が聞こえたのだが…大尉？」
　程なく、悲鳴を聞いて駆けつけたのであろう涼が駆けつけて、ようやく二人は我に返った。

「―――はっ、少佐。私も状況はよく飲み込めないのですが…」
　環の言葉に、涼は怪訝な表情を浮かべながら食料庫にはいる。そして、状況を一目確認すると

「…大尉。確か、今日は食料の納品があったはずだが、片付けたのは誰だったかな？」
「えっと、確かエッカート少尉とハーケ少…」
「ヴァルツ曹長、エッカート少尉とハーケ少尉の二人を呼んで来てくれ」
　涼の質問に答えようとした環の言葉を待つことなく、厳しい声色でジャンヌに指示を飛ばしていた。

「はっ、五分で呼んでまいります！」
　触らぬ出雲に祟りなし。涼の様子から敏感に空気を察したジャンヌは、略式で敬礼をするとそのまま脱兎のごとくその場を離れた。
「全く。あの馬鹿者は一体何を考えているのだか―――」

「どうでもいいですから早く助けてくださ、きゃあぁぁぁ…」
　そうして、一向に助けてくれない涼たちに対して痺れを切らした皐月の頭上に、更に玉ねぎの山が雪崩れ込んでくるのだった。


2100　―ベルタ自室―

「うぅ～、ひどい目にあった…」
「それはこっちの台詞です」
　部屋にはいるなり、疲れ果てた二人はそれぞれベッドと机に突っ伏していた。

　遠くから悲鳴が聞こえ、何かあったのかと気にしていると程なくやってきたジャンヌに呼び出された二人を待っていたのは、文字通り鬼の形相をした涼の説教だった。

「隊長でなくても、あんな悪戯したら怒られるのは当たり前でしょうに…一体なにを考えているんですか？」
「だって、思いついたんだもん。悪戯は思いついた時には仕掛け終えてないと」
「…その行動力を普段の仕事にだけ向けてください。あと、お願いですから人を巻き込まないで下さい」

　ティーは普段から、様々な悪戯を仕掛けることで有名であるが、今回の悪戯は危険な悪戯であったこと、そして食べ物を扱った悪戯だったことが涼の逆鱗に触れてしまった。
　特に、悪戯を仕掛ける時には食料庫を離れ、戻ってきた時にはすでに整理を終えていた為にまったく気づかなかったベルタからしてみれば、完全にとばっちりである。

「うん、そこはごめんね？」
「もういいです、過ぎたことですし。もう慣れましたし」
　結局、二人は散らばった食材の片付けと始末書の提出、後は被害者の皐月に対し、おやつ二日分を譲渡することで許しをもらった。

「今度やるときには一気に崩れるんじゃなくて、一つ一つ落ちていくようにするよ。夏にやれば面白くなりそう」
「―――それ、ちょっとした怪談…じゃなくて。ぜんぜん反省してないじゃないですか！」
　ティーの言葉に、ベルタは思わず机から跳ね起きる。正直な話、何回も彼女の悪戯に巻き込まれて始末書を書く羽目になるのはごめんである。

「大丈夫だよ、今度はちゃんと一人のときにするから。迷惑にはならないよ？」
「そういう問題じゃ…ティー」
　まったく反省の様子を見せないティーに対し、ベルタが思わず振り向いた瞬間、ベルタはそれまでの様子を一変させ

「ベル？どうかした？」
「―――寝ましょう。今日はもう疲れました」
　そういうと、ベルタはそのままティーに抱き付くようにベッドに潜り込んだ。

「え？いきなりどうしたの？」
「いいから寝ますよ。明日も早いんですから」
　いつもならこんな早い時間には寝ないベルタが、部屋から追い出さずに一緒に寝るという、普段とはまったく違う対応に面食らうティーを意に介さず、ベルタは言葉少なに寝付いた。

「…うん、お休み―――」
　少し時間を置いて、ティーもベルタに続くように眠りにつく。その顔は、本人も気付いていなかったが、つい数時間前と比べるとずいぶんと青白くなっていた。
　元々、体が強くないのに無理をしがちなティーの体調は実際崩れやすい。ベルタはティーを多少強引にでも眠らせる為に、一緒に床についたのだった。

　その思惑は見事に成功したのだが、一緒に寝て安心しきったティーと、いつもよりも早すぎる時間に寝たベルタが、次の日ものの見事に寝過ごしてしまい、二人で大目玉をらったのは仕方のないことなのかもしれなかった。


同時刻　―廊下―

　ベルタとティーの二人は気付いていなかったが、実は鍵穴から中の様子をずっと伺っている二人ウィッチがいた。

「…やった！ベルとティーの組み合わせになった！これでネタがはかどる！」
「そうですね、いつもハーケ少尉がエッカート少尉を振り回しているからこそ、逆の関係が映えますね！」
　そこにいたのは、ある意味では当然というべきか、リーチェとリッピの二人だった。

「少尉、いつまでも独り占めしないで私にも見せてください。そろそろ十分はたっていますよ？」
「あー、ごめんなさい。もう電気消してるから何も…」
「そんな！いいです、それなら扶桑に伝わる心眼というもので暗闇を見通せば―――」
　そんな、もう真っ暗な鍵穴先について二人が争っていると

「何を見通すの？」
「そりゃぁベルとティーの濃密な二人の時間を―――」
　後ろからのやってきた声に二人が振り向く。そこには、いつの間にやってきたのか勇音が二人を見下ろすように立っていた。

「あ…大尉」
「で、あんたらは他人の部屋の前でいったい何をやっているのかしら？」
　勇音の問いかけに二人は言葉を詰まらせたが、次の瞬間には立ち上がり

「「―――っは、戦友が夜な夜な淫らな行為を行っていないか、監視しておりました！」」
「淫　ら　な　の　は　お　前　ら　の　頭　の　中　で　し　ょ　う　が　！」
　打ち合わせもなしに一言一句言葉を合わせた二人の頭を、勇音の手が万力のように掴んでいた。

「「痛、イタタタタタタッ！！」
「ほら、ちょっとお話したいからキリキリ歩く。特にリッピ中尉には自分の立場について、私と見解をすり合わせておいたほうが良さそうだしね」
　痛がる二人の頭を掴んだまま、勇音は引きずるように連行する。やがて、夜の宿舎は元の静けさを取り戻すのだった。


FIN    </description>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/113.html">
    <title>オティーリエ・ハーケの平穏な一日【AM】</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/113.html</link>
    <description>
      一九四五年　某日

　まだ朝日も昇らない早い時間、そのベットの主人―――オティーリエ・ハーケはふらりと上体をお持ち上げた。
「………」
　虚ろな目をした彼女は起き上がると、ベットの下に放っていた二つの鍵を手に取り部屋を後にする。

　寝ぼけているのか、ふらふらと頼りない足取りで彼女は隣の扉に近づくと、
『ガチャリ』
　手に持った鍵の一つを使って扉を開ける。そのまま彼女は、部屋の主人が眠っているであろうベットに近づくとそのまま―――

『ボフン』
　糸の切れた人形のようにベットに倒れこんだ。

「ひゃ！？な、なに・・・？」
　突然の衝撃に、ベッドで眠っていた少女―――ベルタ・エッカートは飛び起きる、何があったのか確認するために見回すと
「くー…むにゃ…すー…」
　ベットに上半身だけを埋もれさせたまま眠るティーの姿があった。

「…またですか？勘弁してください」
　ベットに倒れこむティーを見つけたベルタは、半分諦めにも似た表情を浮かべると、時計に目を向ける。
　0445時、このまま起きているのにも、もう一度眠って朝を待つにも微妙な時間である。

「ほら、そんなところで寝たら風邪引きますから。こっちにきてください」
　寝ている相手だというのに、ベルタは律儀に声をかけながらティーをベットに引き上げる。
　完全に脱力した人間を運ぶのはそれなりの重労働ではあるが、ベルタは苦労しながらも何とか
ティーをベットに引き上げると
「んー…」
「はいはい、どこにも行きませんから」
　触れたものを反射的に掴む赤子のごとく、ベルタを引き寄せるティーを胸に抱きつつ、もう一度眠りにつくのだった。



　　　『オティーリエ・ハーケの平穏な一日』

　0545時
「―――そろそろ、起きないと危ないですね」
　寝ぼけた戦友の抱き枕にされながら、ベルタは起床時間の15分前を迎えると同時に目覚めた。
「ティー！起床時間です！起きてください！」
　胸の中で眠りにつくティーの耳元に向かい、あらん限りの大声を浴びせかけた。

「ん…？…おはよう、ベル」
　軍隊で鍛えただけあって、かなりよく通るベルタの大声を耳元で受けたはずのティーは、まるで水の中から聞いたかの様にのんびりと返事を返した。
「おはよう、あと15分で起床時間ですよ？早く支度してください」

「ん…あと360分」
「午前中ずっと寝るつもりですか！？いいから、起きないさーい！」
　そういうや否や、ベルタはベットから体ごとティーを引きずり出すと、すごい勢いでティーを床に立たせる。軍隊で鍛えて小柄なりに力持ちのベルタと、一般と比べても軽すぎる体重のティーだからこそできる技である。

「はい、鍵もって。15分で着替えて顔洗って食堂に集合。いいですね？」
「はい、了解しましたぁ―――」
　ベルタの声に、ティーは片足を夢の世界に突っ込みながら答える。振り子のように体を揺らしながら、ティーは部屋をあとにした。

「…さ、着替えて迎えにいかないと」
　相方が部屋を出て行くのを確認すると、ベルタは手早く着替えを始める。
　寝間着を脱ぎ、制服に着替えるとすぐに部屋を出て隣の部屋へ向かう。

「ティー？入りますよ？」
　ノックをし、『返事が来ない』ことを確認するとそのまま扉を開ける。
「…やっぱり」

　そこには予想通りというべきか、小一時間ほど前と同じようにベットに突っ伏しているティーの姿があった。
「ティー、早く起きなさい！もう起床時間ですよ！」

「ん…？…あと1440分」
「それって丸一日ですよね！？早く起きてください！さもないと…」
　ベルタはそこで言葉を切ると、先ほどとは打って変わった小さな声で
「…今日の朝食は納豆だけになりますよ？」
「それだけは嫌だぁー！」

　日頃から「何でも食べるけど納豆だけはダメ」と公言しているティーは、ベルタの言葉を聴いた瞬間に跳ね起きた。

「…あ、ベル。おはよー」
「はい、おはようございます。もうすぐ起床時間ですから、着替えて食堂に行きますよ？」
「はーい」
　ようやく起きたティーとまともに挨拶を交わしたころ、起床時間示すラッパの音が基地中に響き渡った。


0635時　―食堂―

「「おはようございます」」
「おはようございます。ティー、今日も寝ぼけてたの？」
　挨拶とともに食堂に入っていた二人を出迎えたのは、心なしか呆れた表情を浮かべた御影だった。

「御影からも何か言ってください。このままでは専属の付き人になってしまいます」
「…そう言ってるけど？」
「寝惚けたくて寝惚けてるわけじゃないし…」
　両サイドからの言葉を居に返さず、ティーはお盆を持って、急ぎ目に食事を取りに向かう。

　六六六空の食糧事情は、一言で言って凄まじいの一言に尽きる。成長盛りの、年頃の子供が集まっているとはいえ、それを差し引いてもよく食べるウィッチが何人か居るためである。

「だからショーコ！少しは加減して、っていうか大皿ごと取ろうとしないで！」
「自分の分をとろうとしただけだもん！」
「あんたの場合そのまま食べ始めるでしょうが！」
　この日も、部隊のエンゲル係数を上げる原因の一人であるショーコ・リトネマンの暴食を阻止せんと、勇音とクララによる防衛線が展開されていた。ちなみに、ショーコの言う『自分の取り分』は高確率で『皿に盛ってある分』と訳されることが多い。

「大皿ごと取ったらダメだよショーコ。とりあえず貰うね？」
「―――あぁぁ！？ちょっとティー！ドサクサ紛れになに取ってんの！？」
「あんたが言うなあんたが…」
　図らずも漁夫の利を狙う形で大皿のサラダを掠め取ると、ティーは周りの隙間を縫いつつ、悠々と自分の取り分を確保していく。

「相変わらず要領はいいよね、ティー」
「そのおかげで助かったことも何度かありますから、むしろ感謝しています」
　順調に食料をとっていくティーを眺めながら、ベルタと御影はゆっくりと食事を取っていく。たくさん食べようとすればある程度急ぐ必要があるが、そうでなければ特別急ぐ必要もないからである。

「あ、二人とも遅いよ」
「ごめんごめん。ティーはそれくらいでいいの？」
「うん、今日はこれくらい」
　ちなみに、献立は標準的というべきか、ご飯と味噌汁、サラダに、おそらくは部隊長の趣味であろう焼き魚（秋刀魚）、そして納豆の組み合わせである。ティーはそのうち、サラダと味噌汁を五割増で確保していた。

「ちゃんと納豆も食べてくださいね？残したらダメですよ？」
「えー。納豆だけはダメなんだって」
「食べないと隊長に怒られますよ？」
「うー…」

　ティーは納豆を親の敵のごとく睨み付けると。そのまま一気に食べ始めた。
「うえー、やっぱだめ。ぼく納豆だけはだめ」
「はい、お水。がんばりましたね」
　ベルタがすかさず水を渡すと、ティーは一気に飲み干す。飲み干した後も口に違和感が残るのか、顔をしかめながらサラダを食べ始めた。

「納豆は好き嫌いがはっきり分かれるからなぁ。ベルは大丈夫なんだっけ？」
「―――ここだけの話なんですけどね、御影…私、納豆ダメです」
「…え？いや、結構食べてるじゃない？」
　ベルタの言葉に御影は驚いて聞き返す。するとベルタは半分涙目で

「食べないわけには行かないじゃないですか。残したら怒られますし、ティーも納豆以外は本当に何でもおいしく食べますし」
　そういうとベルタは猛然と納豆を口に頬張る。途中、何度かエズきそうになるのをこらえながら何とか飲み込むと、そのまま何事もなかったかのように食事を続ける。

「納豆、よく食べられるよね？」
「当然です。カールスラント軍人たるもの、好き嫌いをしてはいられません」
　納豆を食べられることに感心するティーに対し、当然といわんばかりの態度をとるベルタからは、先ほどまで御影に見せた弱気な態度は微塵も感じられなかった。

「…すごいなぁ。」
　全く性格の違う、振り回すティーと振り回されるベルタの相性の良さの秘密は、こういうところにあるのだろう。
御影は驚き半分、関心半分といった感じで、毅然と朝食をとるベルタを見つめていた。


0800　訓練場

「うー、格闘は嫌いなんだけどなぁ」
　朝食を終えて、胴衣に着替えたティーはあさると04のメンバーとともに基地内部にある訓練場にやってきた。
「ティーは軽いもんね。実際、航空ウィッチにはあまり必要のない技能だし」
　やや暗い顔をのぞかせるティーの後ろから声を掛けたのは、同じ小隊のリーチェだった。体格という意味ではティー同様あまり恵まれてはいないが、小柄な体躯をと爆発的なパワーを利用した戦法でそこそこの成績を収めている。

「地上で、徒手空拳でネウロイを相手にする可能性もあるっていう隊長の意向なんだから文句を言わない。それとは別にこういうのが好きなのも多いんだけど」
　普段掛けているメガネをケースに入れながら、クララが応じる。
「艦上勤務であるなら可能性はゼロではないでしょうね。基本的に火器はもてませんし」
　やや遅れて入ってきた千早も会話に加わってくる。月に一度の、謎の体調不良のせいであまり成績は芳しくない彼女ではあるが、その分一撃はかなり重いため、実は一番油断できないとはクララの言葉である。

「人型のネウロイもいるって言う報告もあるし、可能性は十分ありえるでしょうね」
「艦内に侵入を許した時点でまずいと思いますけど？」
「そういうことは言わない。備えるにこしたことはないってね」
　とりとめもない話をしながら、四人が訓練場に入ると先に入っていたメンバー、アーディを初めとしたアサルト02が待ち構えていた。

「来たみたいね。それじゃ、そっちの準備が終わり次第始めてもいいかしら？」
「構いませんが、お手柔らかにお願いしますよ。元々私なんかは武闘派じゃないんですから」
「それはお互い様。どっちにしろ総当りになるんだから、貴女はまず後輩に負けないようにしないとね」
　そういうアーディの視線の先には、やたらと気合の入った様子で柔軟に打ち込むソーニャの姿があった。
「…はぁ。本当、どこで教育を間違えたのやら」

　深いため息をつくとクララも柔軟を始める。クララやティーにとっては憂鬱な格闘訓練の時間は、
まだ始まってすらいなかった。


　クララ達が柔軟を終えたのとほぼ同時にやってきたのは、こっちにきて新調したばかりのはずなのに、すでにかなりくたびれた胴衣に身を包んだエリーだった。
「…悪い、遅れた」
「いえ、構わないわ。おかげでいい感じに温まってきたところだけど…今日は隊長じゃなかったかしら？」

　六六六の格闘訓練では教官役に近い形で、格闘訓練での成績優秀者五人(涼、龍華、エリー、環、勇音）のうちの一人がつくようになっている。
「急に別件が入たらしくってな、ボクにお呼びがかかったんだ。さて、始める前に…」
　主な理由としては、個人ごとにバラつきのある格闘スキルの平均化と組み手の際の審判役、そして―――

「せいやぁ！」
「うぉっと！？そこっ！」
「はいはいやめやめ、ストーップ！」
　組み手の途中で熱くなりすぎた連中に対するストッパーとしての役目である。

「―――遊びは終わりだ、いいな？」
「は、了解しました」
「いつでも問題ありません」
　腕試し目的ではじめた組み手がいつの間にか本気の勝負になっていたショーコとリーチェの二人は、間にはいったエリーの目を見るなり直立に戻り、各々のやり方で敬礼を返す。

「それじゃ、とりあえずは一組ずつ組み手でもやってみるか。ショーコとリーチェ、まだいけるだろ？」
　エリーの言葉に、二人は獰猛な笑みで返す。

「ようし、負けたほうは基地内一周だ。無様見せんなよ！」
　言葉には出さずとも威勢のいい様子に満足したエリーは啖呵をきる。
　そして、場の中央にやってきた二人の間に立ち、右手を上げると
「一本勝負、始め！」
　開始の掛け声とともに、振り上げた右手を一気に振り下ろした―――


「―――そこまで！勝者は大槻中尉！」
　傍目からみても重いことが分かる一撃を受け、地に倒れたのはリッピのほうだった。対する千早も、リッピの猛攻を捌き続けたためか、肩で大きく息をしていた。

「大丈夫ですか、リッピ中尉？こちらも手加減できなかったとはいえ、モロに受けていましたが」
「大丈夫、とはいえませんね…。わかってはいましたが、本当にとんでもない威力です…」
　床に倒れ、肩で息をしているリッピに千早が手を貸す。

「これで一対一の五分か…次の組み手は責任重大ですね」
　その様子を見ながら、ソーニャはじっと正座をして順番を待つアーディに声を掛ける。
「命のやり取りをするわけでもないのだし、気楽に構えればいいわ。だからって適当に流さないで、怪我しない程度に本気で取り組めばいいし、他人の組み手も見るところを間違えなければ勉強になるわ」

　落ちついた態度で諭すアーディの言葉を受けて、ソーニャは今さっき行われた二つの組み手を思い返す。

　剣術を得意とするために覚えた、至近距離での徒手格闘を旨とするショーコ。
　小柄な体を生かした瞬発力と、警官である父から教わった組み技、そこに打撃技を組み合わせることで、さながら古式柔術に近い技を使うリーチェ。
　この二人の相性は、単純な力とウェイトで勝るショーコに多少ながら有利に働いていたらしい。

　一番最初に行われた二人のの組み手は、最終的にショーコの勝利で終わった。


　次に行われたリッピと千早の組み手は、実はかなり短い時間で終わっている。

　徒手格闘は苦手ではあるが、投げから打撃まで一通りの技を扱うリッピ。
　対する千早は、徒手格闘は苦手ではないものの、それ以上に身体が弱く、長時間の運動を苦手としている。その弱点を補うために、最小限の力で相手の攻撃を裁き、機を狙って必殺の一撃を打ち込むスタイルに特化している。
　そのためリッピは手数の多さでの短期決戦を挑み、間隙をついた千早の一撃の前に沈んた。
　
「それじゃあ次は、順当に行けばソーニャとティーか…」
　ショーコとリーチェ、リッピと千早、この二組の組み手を見届けたエリーは、次の組み合わせについて考えはじめる。

「…よし、ハーケ少尉とハンマーシュミット大尉。カールスラント軍人同士でやってくれ」
　わずか数秒、ティーの顔を見つめたエリーはそのままティーと、そしてアーディの二人に声を掛ける。
　その瞬間に、自分の組み合わせが確定したクララがいやそうな顔をしていたのは、幸いにというべきか誰も気づいていなかった。

「大尉とかぁ。お手柔らかにお願いします」
「階級は気にしないで、全力で来なさい」
　中央にやってきた二人は、挨拶を交わすとそのまま構える。そして三度あがったエリーの手が、再度振り下ろされる。

「―――」
「……」

　開始から十数秒、二人はお互いの手を待つかのように微動だにしなかった。様子見なのか、アーディが一歩踏み出せばティーはその分後退し、一歩引けばその分前進する。

「どうしたの？かかってきなさい？」
「…っ！！」
　アーディの言葉に、ティーは一気に間合いを詰める。そのまま袖口を掴もうと手を伸ばした瞬間
「―――ふっ！」
　アーディの当身がティーの顔をめがけて襲い掛かってくる。当然、ティーは開いた片手を防御に回すが、その隙に掴もうとした袖口を掴み損ねてしまう。

　そこからは激しい攻防が続いた。決め手となる技をほとんど持たない反面、細かい技術や小技を大量に持つティーは、手数の多さで確実にアーディを追い詰めていく。一方のアーディも、それらをの技を的確に読みきり、丁寧に捌き続けていく。

「…ねぇ千早。これ、今どっちが有利なの？」
「今のまま続けばハーケ少尉のほうが有利ですね。手数を大尉が捌けなくなった瞬間に組み付いて終わりでしょう」
　事実、組み技ではティーに勝てない事を承知しているアーディも、徹底的にティーを遠ざけていた。

「でも、このまま大尉が黙ってやられるはずもないでしょうし。どこで主導権を奪い取るかですね」
「そうなんだ…ごめん、さっぱり分からない」
　元々徒手格闘とは無縁で、実際才能もないクララには今目の前で起きている光景を、その半分も理解できていなかった。

「―――はぁぁっ！」
「っ…！」
　このまま我慢比べが続くかと思われていた時、長く隙をうかがっていたアーディが、ようやくその牙をむいた。

　掴みにかかった右手を、左手ごと払う。そのまま大きく開いた空間にアーディの当身が入れてくる。
　驚いたティーは後退しようとするのに対し、すかさずアーディは軸足を崩そうと足を入れる、ティーが完全に体勢を崩したその瞬間―――

「そこまで！ハーケ少尉、お前の負けだ」
　間に入ったエリーが鋭い目つきで、ティーを支えるように敗北を宣言した。

「へ？負けですか？」
「どっからどう見てもお前の反則負けだ。分かったら下がれ」
　取り付く島もないエリーの物言いに、多少不満な表情を見せるティーだったが、特に何も言わずにおとなしく下がる。

「反則負けって言われてもなぁ」
「耳と尻尾出しながら言っても説得力ないわよ、とりあえずはお疲れ様」
　尻尾と耳をしまいつつ、場外に戻ってきたティーに労いの言葉をかけつつ、入れ替わりで中央に向かうクララを迎えながら、エリーは先ほどの組み手を思い返していた。

（馬鹿野郎が。たとえ実戦だったとしても、あんな真似する奴を戦場に出せるか）
　実は、過去の組み手においても、ティーはああいった負けを喫してはいるものの、何度か『あの先』の展開に至ったことがあった。
　そして『その先』こそが、ティーの持つ最大の問題点でもあった。

　次々に繰り出す技の隙をつかれ、主導権を握られ不利な状況に陥った時、彼女の戦法は一変し、力任せの打撃技にシフトする。
　それだけでなく、本人ですら気づかないうちに魔力を開放し、肉体を大幅に強化した上で強引に主導権を奪い返しにかかるのだ。当然反則である。

　この癖は、実はストライカーユニットを使った実戦訓練の中でも散見されるが、特にこの格闘訓練のなかで顕著に現れている。

『まるでバーサーカーだな』
　いち早くティーの悪癖、むしろ本質に近い性質に気づいた涼はそう評価を下している。

『あいつは自分の身体を省みていない、初めから最後、身体が動かなくなるその瞬間まで全力で、力任せに駆け抜けるのがあいつの本質なんだろうな』
『普段回りくどいやり方を好むのは、多分あの本質に気付いた誰かが力任せなやり方ではなく、技術的な小技を教え込んだんだろう。とりあえずそうすれば無茶な力技で物事を切り抜けようとはしなくなる』

　だが、あくまでそれは応急処置に過ぎず、結果的には問題の先送りでしかない。だからこそ、いま彼女は自身の限界を知らないままに戦場に赴き、そしていつ落ちるとも分からないままに飛び続けている。

（…そんなふざけたこと、認めてたまるか。ボクが、涼がいるこの部隊で一人の戦死者も出してたまるか）
　ティーの組み手思い返し、涼の言葉を思い出したエリーは口には出さずに、改めて首にかけた認識票に誓う。そしてふと我に返ったとき―――

「…あだだだだだ！ギブ、ギブギブギブギ……！！！」
　エリーの目の前には、ソーニャによって床に倒され、見事に間接を極められたクララの姿があった。


1200―食堂前―

「痛たたた…死ぬかと思った」
「バラノワ中尉は、本当に格闘は苦手なんですね」
　ソーニャによって硬く極められた関節の調子を確かめるように、身体を動かすクララに、千早が微笑みながら話しかける。
「元々、しがない図書館の司書ですから。デスクワークのほうが性分なんです」

「でも中尉はもうちょっと前に出るようにしたほうがいいと思います。そうでないならいっそ逃げ回るとか」
「いっそ酒を飲んで酔拳をやってみるとか？」
「それは、どっちも隊長の素敵な個人指導コースよ？それでも良いならあなた達がやりなさい」
　相変わらず両極端な意見を述べるティーと、冗談半分でとんでもない意見を出すリーチェの意見を受け流しつつ、クララは食堂の扉に手をかける。

　その瞬間、日々の訓練の賜物かなのか、扉の向こうにある不穏な気配を、クララは敏感に感じ取った。
「―――全員、整列！」

　普段とは違う、任務や戦闘のときにしか出さない、低く堅い声でクララは三人に呼びかける。
　それは、クララたちの小隊の間で取り決めた『真面目な対応をするように』という号令であった。

　その号令と受けた瞬間、弛緩していた空気が一変し、千早を中心にティーとリーチェの二人が即座に
「号令、イチ！」
「ニ！」
「サン！」
「アサルト04小隊、各隊員問題ありません！」
　きれいにかけられた号令を受け、クララは食堂の扉を開く、そこには、朝のような喧騒は鳴りを潜め、黙々と、静かに食事をするウィッチ達の姿があった。

　クララが食堂を見渡すと、奥の席にこの整然とした空気を作り出した張本人―出雲涼が、悠然と食事を取っていた。
　通常、左官になると食事は別に用意されていることが普通であり、涼やヘレーナは大体そちらで食事を取ることが常である。

　しかし年頃の少女、それも色々と問題児が集まっている六六六の食事は朝のように騒々しく、
「このままでは部隊の名誉にかかわる！」
と危機感を抱いた涼の判断により、時折ヘレーナと交代で食事を取りにくるようになっていた。

「……」
　それを確認したクララたちも、黙ってお盆片手に食事を取りに行く。昼は、欧州組みに配慮した洋風の食事―何故かカールスラント風を意識したのか芋一色という壮絶な献立となっていた。

「…なんでうちの食堂は、たまにこういう変な方向に走るのよ」
「え、ジャガイモおいしいよ？ヴィシソワーズはガリア料理だけど」
　朝から激しい運動で体力を使っていたティーは、ここぞとばかりにお盆に盛っていった。

「お疲れ様、ティー。午前中は格闘訓練でしたか？」
「うん、おかげでお腹ペコペコ」
　ティーの言葉に嘘はなく、お盆には隣にいるベルタのお盆にある量と比べると、優に二倍はあろうかという量が盛られていた。

「いつもそれくらい食べた方がいいんじゃない？体力もつくし」
　こぼれんばかりに盛られた料理の山を器用に食べながら、ベルタの向かいの席に座っているジャンヌが茶々を入れてきた。
「そんなに食べたら太るじゃない｣
「むしろ太るべきではないかと、下手したら私よりも軽いんじゃないですか？｣
　ティーの食べる量は、食事の前に行われた運動量に比例する。動いた分だけ食べ、それ以上は食べないという見事な体重管理ができる、世の女性のほとんどが羨む才能を持っていた。
　もっとも、その才能がよりにもよって全く必要のない人間に備わっているのは皮肉というべきであろう。

「食べたいだけ食べてるよ？」
「それでその体重を維持できるってのは反則だよ。何か秘密の体操でもあるんじゃないの？」
「確かに、それは前から気になっていたところ、詳しく聞きたいところですね」
　後ろからの突然の声に、三人は驚いて振り向く。そこには、が若干厳しい顔をしながら、腕を組む喜美佳の姿があった。

「あなた達、もう少し静かに食べなさい。部隊そろって空腹で午後を過ごしたいと言うのなら、話は別ですが」
　それだけを言うと、喜美佳は静かに席に戻っていく。どうやらいつの間にか声が大きくなっていたらしく、気がつくと喜美佳の向かいに座っている涼の鋭い視線が突き刺さってきた。

「「「―――」」」
　三人はふと互いの顔を見つめあう。そして、これ以上余計なトラブルを起こすまいと、黙々と食事に集中するのだった。


***PMへ続く***    </description>
    <dc:date>2013-01-02T22:05:26+09:00</dc:date>
    <utime>1357131926</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/112.html">
    <title>ろくろくろくさいきょうのまじょ　―後日談―</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/112.html</link>
    <description>
      　翌日　―朝―


｢うぅ…頭、頭痛い…」
　日の光を目に受け、目覚めたベルタにまず襲い掛かったのは、頭が割れるかといわんばかりの激しい頭痛だった。あまりの痛みに耐えかねて体を丸めると―――

　フニョン

　程よい柔らかさと暖かさを兼ね備えた、クッションのようなものがベルタの頭にあたるのを感じ取った。
「あ…気持ちいい…」
　寝起きの気だるさと強い頭痛に挟まれた頭を解してくれそうな、不思議なクッションの感触に、思わずベルタは頭を埋める。

　幼い頃、母に抱かれている時を思い出すその感触に浸っているベルタだったが、
「そろそろ起きろ、少尉。起床時間も迫っているぞ？」
　厳しさの中に見え隠れする優しさを感じさせる、凛とした声がベルタの目覚めを促した。

「あ…？もうそんな時間ですか？…起きないと…うぅ、頭痛い…」
　その声に、やや重い体に鞭打って体を起こす。起きた瞬間、またもひどい痛みがベルタを襲ったのか、そのまま頭を抱えてしまう。
「水だ、飲むといい。少しは楽になる」
　その様子を察したのか、先ほどの声の主がどこからか一杯の水をベルタに差し出した。

「ぅう、ありがとうございます……ふぅ」
　差し出された水を受け取ったベルタは、ゆっくりと水を飲み干す。やがて、すっかり飲み干して一息ついていると。

「おはよう少尉、よく眠れたかね？」
「ハイ、おはようございます、ティー…あれ？」
　先ほどから自分の身を案じている声の存在にようやく気付いたのか、ベルタは顔を上げる。そこには、本来居る筈のない人物が、穏やかな笑顔を浮かべながらベルタを見つめていた。

「私はハーケ少尉ではではないぞ？エッカート少尉」
「ち、ちちち中佐！？お、おはようござ…うぅぅ」
「大声を出すからだ、しばらくは大人しくしていた方がいいぞ？」
　慌てて挨拶を返そうとし、自分の声で自爆したベルタに、涼は苦笑混じりにアドバイスした。

「すみません……ここは一体…？」
　しばらくして、ようやく頭痛が落ち着いたベルタはゆっくりと周りを見渡す。
　ハンガーの代わりになっている古い剣や、インテリアなのであろう掛け軸に小さい木製の地蔵、机の上に置かれたヘルウェティアの時計etc。
　それぞれがどれ程の価値があるのかはベルタには想像すらできなかったが、少なくともここが自分の部屋ではないことを理解するには十分だった。

「落ち着いたみたいだな、ここは私の部屋だ。昨日の事は覚えているか？｣
「昨日…ですか？確かバラノワ中尉とお酒を飲んで、それで―――」
　そこまで続けたところでベルタはぱったりと口を閉じてしまう。クララと一瓶空けて、そこから先の記憶が完全に抜け落ちていた。

「覚えていないか…まあいい、大体の事情は聞いている。そろそろ戻れ。あまり人の部屋に長居するものじゃない」
「はぁ…その前にひとつだけ―――いったい昨日は何が？」
｢そのあたりは自分で調べることだ。ま、この部屋の中の事に限ってなら事細かに話してやってもいいが？」
「いえ、結構です。失礼しました！」
　邪悪な笑みを浮かべる涼の姿に何かの危険を感じ取ったベルタは、そのまま一目散に部屋を飛び出した。

「そうそう、朝食の後でいいから松田大佐のところに行っとけ。曲がりなりにも軍規違反には違いないんだからな」
　背中に受けた涼の言葉に、ベルタはようやく落ち着いたと思っていた頭痛がぶり返すのを感じた。


―食堂―

「エッカート少尉。ちょっと、いいですか？」
　一度部屋に戻り、身支度を終える頃には既に食事の時間が過ぎており、結局水だけを飲んで朝を乗り切ることになったベルタを後ろから呼び止めたのは、喜美佳だった。
「南坂大尉？おはようございます。何でしょうか」
「大したことではありません。ちょっと、息を吐いてください」
「え？ええ？？」
「早く｣

　要領を得ないベルタを呼び止めた喜美佳は、そのまま真面目な表情でベルタの口臭を確認すると、
「…まあ、大丈夫でしょう。少尉、私からは特に何も言いませんが、次の日に響くような事はしないように」
「あ、了解しました…じゃなくて。昨日は一体何が…」
「…たまには、あのような日があってもいいのではないでしょうか？」
　それだけ言うと喜美佳は去っていった。

「あのようなって、一体何が…？」
「おや、エッカート少尉。おはよう、昨日はよく眠れましたか？」
　呆然と喜美佳を見送るベルタの背後から掛けられた声に振り向くと、そこには穏やかな笑顔を浮かべたヘレーナの姿があった。

「おはようございます。眠れたとは思うのですが…ちょっと記憶が曖昧で」
「ずいぶんと飲んでいたみたいでしたからね。自分の体質はつかめましたか？」
｢それがさっぱり…失礼ですが少佐、昨日のことをご存知なのですか？」
「私が来たときにはもう片付ける頃合でしたから、詳しいことは分かりませんけど、かわいい寝顔でしたよ？」
「…忘れてください」

　ヘレーナの言葉に泣きたい気持ちになるベルタを知ってか知らずか、ヘレーナは急にまじめな顔に戻ると。

「それはそうと少尉、松田艦長が呼んでいるので、執務室へ行ってください。何があったかはともかく、規則は規則ですよ？」
「了解しました…それでは行って来ます」

　略式の敬礼を生真面目に入れ、ベルタはきびすを返して走っていく。その様子をヘレーナは見送りつつ
「―――それで、いつまで隠れているのですか？Heidiお姉ちゃん？」
「少佐、意外に意地が悪いんですね｣
　物陰に隠れていたアーディは、ばつの悪い顔を浮かべながらやってきた。

「昨日、あんな事があってはどう話しかけたものか、悩みもします」
「本人は覚えていないと言っていたのですから、そのまま接してあげたら良いでしょう？下手にギクシャクする方がよくないですよ？」
　普段から部隊の問題児達の面倒を見ているアーディが諌められるという、ある意味では最も珍しい光景を誰にも見られていない事を確認しながら、アーディは言葉を返した。

「まぁ…そうかもしれませんが。ところで、ベルタが呼ばれた理由はやっぱり？」
「こればっかりは規則ですから…そこまで強くは言われないとは思うのですが」
　ベルタの行った先を見つめながらヘレーナは肩をすくめる。いかに六六六空が比較的自由な風潮があるとはいえ、こればっかりはどうしようもないことと言えた。

「…とりあえずは始末書ですね。一体何枚になることやら」
「自業自得と言うしかないのが一人いますけどね」
　それだけ言うと二人はそれぞれ歩き出す。欧州派兵を控えた今の時期、時間は一分とて無駄にはできなかった―――。


―佐世保基地　事務室―

「おはようございま…あれ？」
「えーと、始末書の雛形が…ああ、今日中にこっちの分片付けないといけないんでした」
　いつもの時間にやってきた御影が目にしたのは、頭を抱えながら、机の上に山積みにした書類を分類別に分けるモルガンの姿だった。

「おはようございます、中尉…昨日の分の始末書ですか？」
「あ、おはようございます御影さん。一応は私も主犯というか、騒動の元凶でしたから…」
「そういえばそんな事言ってましたね…もしかして私も同罪でしょうか？」
　一連の騒ぎの元凶ないし主犯ではないとはいえ、直接かかわっていた御影は若干顔を青くしてモルガンに問いかけた。

「どうでしょう？隊長達がどこまで火消しをしてくれるかだとは思います。大尉達もいましたし」
「そうですか、少佐の指示を仰ぐことにします…ベル、落ち込んでるだろうなぁ」
「責任感の強い娘ですから、フォローしてあげないとですね」
　そういいながら、二人は書類を分け始める。目先にある書類の山は、一筋縄では終わりそうには無かった―――。


―松田大佐　執務室―

「確かに、うちは他の部隊に比べてかなり自由な気風がある。ウィッチ隊は、それでなくともある程度ことなら黙認されやすいのも事実だ…だが軍規違反は軍規違反だ」
　松田に呼ばれたベルタが、執務室にやってきて真っ先にぶつけられたのは、当然というべきか叱咤の言葉だった。

「エッカート少尉、君とて軍規は知っているだろう？軍人にとっては就寝も任務のひとつ、自らの持ち場に着き、みだりに離れることは許されない。違うかね？」
「はい、その通りであります」

「特に、君は年少組の中ではそれなりの立場にいる。もう少しそのあたりの節度を―――」
「その程度で良くないですか、大佐。彼女も、十分に反省していますよ」
　その松田の説教を途中で遮ったのは、彼の後ろに控えていた後藤中佐だった。

「後藤君、そうもいかんだろう？こういうことを放置しては部隊内の風紀にかかわる」
「しかし、過去の事例を見る限り、彼女はああいった騒動にはむしろストッパーに近い立場であったと思いますが？」
　松田の重圧を飄々と受け流しつつ、後藤は続けた。

「これが例えばアルベティーニ少尉とか、リトネマン少尉とかならば、私もあまり強くは言えませんが、出雲中佐から事情を聞く限り、今回の件は事故のようなもの。少尉個人を見ればほとんど初犯です」
　後藤の言葉に、松田は顔をしかめて黙り込む。数秒、ベルタにとってはその何倍にも感じる時間が経過した後―――

「…日頃の行いが功をそうしたな、少尉。今日のところは、これでよしとするが、だからといって節度のある行いを忘れぬよう」
「―――はっ。寛大なお心に感謝いたします」
「騒ぎの責任は、きちんと取ってもらう。下がってよし」
「ご迷惑をおかけしました。それでは、失礼します」
　そうしてベルタが退室し、十分に遠ざかったのを見計らうと、後藤は再度松田に意見した。

「…少々、甘すぎやしませんか？」
「君も言っただろう？彼女自身は十分反省しているし、特に前科もない」
「そうは言いますが、他の者達に示しがつきませんよ？」
　松田の言葉に、一転して後藤は苦言を呈する。実は先程の説教の一幕は松田と後藤の芝居だった。

「本当なら清水少佐辺りにきつく言って貰った方が良かったのかも知れんな」
「いったいどんな事情があれば、わざわざこんな芝居を打ってまで叱り飛ばす必要が…」
「…君は、まだ子供はいなかったかな？」
　半分呆れた様な後藤の言葉に、松田としては珍しく意地の悪い笑顔を浮かべながらそう呟いた。

「は…？まぁそれは、まだというかこれからといいますか…」
「ならそれでいい。いずれ君にも分かるようになるさ」
　あまりにも突然な松田の言葉に、しどももどろに答える後藤の様子に笑いながら松田は席を立つ。
「―――あんな寝顔を見せられてはな、叱り飛ばせんよ…出雲少佐にはしてやられた」
　窓の外、空を悠々と飛ぶ鳥の姿を眺めつつ、小さく呟いたが、後藤には小さく、聞き取ることはできなかった。


―廊下―

　
「あ、いたいた。ベル、大丈夫だった！？｣
「あ、おはようございます。バラノワ中尉」
　今日はよく呼び止められるなと思いつつ後ろを振り向くと、クララが小走りに駆け寄って来た。

「貴女が松田艦長にじきじきの呼び出し喰らったって聞いたから…本当に、昨日はごめんなさい」
「私の方は幸いと言ってはいけないのですが、大したことには。むしろ私の方こそすみません。よく考えずに飲んでしまって」
「私が飲ませた様なもんだからいいのよ。部下に無理させた結果というか、因果応報というか｣
　二人は扶桑人の様に頭を下げあうと、そのおかしさに気づいたのか、どちらともなく笑いあった。

「そんなことよりもベル、昨日言ってたお願い事っていったい何なの？」
「え？あ、それはその…念には念をと言いますか、万全な状態でいたかったと言いますか…」
　クララの問いに対し、ベルタは突然言いよどんでしまう。結局のところ言いそびれてしまったお願いも、この状況で言うのは卑怯ではないのか。そんな考えがベルタの脳裏をよぎった。

「なによ、昨日は結局そのためのだったんでしょ？だったら気にしないで言って頂戴。出ないと私の立場もないし、お願い」
　私の顔を立てると思って。そういうとクララは両手を合わせてベルタに懇願する。クララとしても、お土産の酒も飲み干してしまった立場でうやむやにするわけにもいかなかった。
「ち、中尉！？分かりました、だからそういうのはやめて下さい！…その、こういう形でお願いすることになるとは思わなかったのですが」

　そう言うと、ベルタはいったん言葉をきり、まっすぐにクララの目を見据えながら『お願い』を口にした。
「中尉に、空戦の際の回避機動について、ご教授を願えないでしょうか？」
「…へ？」

「中尉の回避機動は相当なものです。一対一でもハンマーシュミット大尉や出雲中佐ほどの腕のウィッチに取り付かれて、五分以上逃げられる戦爆機はSG2にもいませんでした」
　あまりにも予想外の『お願い』に、クララは呆けた顔を返してしまう。そんなクララに畳み掛けるように、ベルタは一気にまくし立てた。
「これからの戦いにで、いつまでも私のシールドが保つ保障はありませんし、魔法力の温存という意味でも自分の回避機動を見直したいんです。お願いします」
「ああ―――そういえば昨日そんな事言ってたっけ…？」
　ベルタの眼差しに若干怯みながら、クララは昨日、格納庫で悩んでいたベルタのことを思い出していた。

「…分かったわ。私がどこまで力になるかは分からないけど、出来るだけのことはしましょう。」
「本当ですか！ありがとうございます！！」
（本当にこの娘は…このためにわざわざあんな安くもない贈り物を）
　このカールスラントの準エースに教えることがあるのか。内心に不安や疑問を抱えながらも、クララはその律儀さ、まっすぐさにある種の感動を覚えていた。

「じゃあそろそろ行きましょ、とりあえずは昨日の始末書を書かないといけないし。話は―――」
「何だ、そういう事だったのか。水臭いなぁ、そういう事なら私に言ってくれればいいのに」
　ベルタの手を引いて事務室へ行こうとするクララはそのまま硬直する。彼女の前方には、楽しそうな笑顔を浮かべた涼の姿があった。

「えっと、中佐？そういう事といますと―――？」
「聞くまでもないだろう？どうせやるなら戦力の底上げも兼ねて、もっと大々的にやったほうがいい、お前達二人だけで済ますにはもったいない」
　心底楽しそうに語りかける涼の姿を見て、クララはあることに思い至った。
（―――そういえば、昨日の騒ぎの一番の被害者って、もしかして隊長じゃないのかしら？）

　遅くまで残り、職務で疲労した状態で何か騒いでいると思い食堂に言って見れば、『えらいさわぎ』になっていて―――
　とりあえず騒ぎの元凶を落ち着かせたらそのまましがみ付かれ、結局一人で火消しに回る羽目になり―――
　みんなが書いた始末書って最終的には隊長が処理しないといけないんだから―――

　騒ぎの一番面倒なところを押し付けられた挙句、仕事が増えたとあっては、文字通り巻き込まれ損である。そして、いい感じに鬱憤晴らしの対象が目の前になる二人がいるのだ。

　その事に気づいたとき、クララは涼の姿をじっと見据えながら、一歩ずつ後退を始めた。
「…ベル、早速だけど訓練。大丈夫かしら？」
「―――はい、何なりとどうぞ」
　クララの意図に気づいたベルタも、視線を一点に固定したままクララと同じペースで後ずさりを始める。
　そして―――

「―――出雲中佐から逃げ切れぇー！！！」
「了解しましたぁー！！」
「待たんか貴様らァー！！！！！」

　まだまだ寒さの続く二月、雲で覆われた曇天の中、六六六空名物「地獄の鬼ごっこ」は、少々変わった面子で行われたのであった。

FIN    </description>
    <dc:date>2013-01-02T21:59:16+09:00</dc:date>
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  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/1.html">
    <title>トップページ</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/1.html</link>
    <description>
      ここではアニメ、ストライクウィッチーズをモデルにした、
オリ魔女作成ったーで、自分のウィッチを作られた方の、専門スレ。のまとめサイトです。

本スレ

ですがスレ創作中隊第二〇救難飛行隊
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1329067723/


過去スレ

ですがスレ創作中隊第十九偵察部隊
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1314979008/

ですがスレ創作中隊第十八貯油所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1309862304/

ですがスレ創作中隊第十七弾薬廠
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1304507545/

ですがスレ創作中隊第十六哨戒班
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1301402640/

ですがスレ創作中隊第十五消磁所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1298903510/

ですがスレ創作中隊第十四射表作成班
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1293300535/

ですがスレ創作中隊第十三測量班
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1292128442/

ですがスレ創作中隊第一二航空燃料試験班
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1291211945/

ですがスレ創作中隊第一一輜重隊
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1290508085/

ですがスレ創作中隊第一〇会計隊
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1289919904/

ですがスレ創作中隊第九戦隊
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1289312588/

ですがスレ創作中隊第０８小隊
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1288706367/

ですがスレ創作中隊第七飛行区域
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1288187862/

ですがスレ創作中隊第六管区
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1287578904/

ですがスレ創作中隊第五射場
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1286951595/

ですがスレ創作中隊第四地区隊
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1286485627/

ですがスレ創作中隊第三飛行場
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1285687312/

ですがスレ創作中隊宿営地第二泊地
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1285236499/

ですがスレ飛行中隊ピスト
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/36360/1284308301/

お願いできれば幸いなこと

１．創作をアップロードされる際は、拡張子txt、docなど、OSやオフィスが旧い人でも扱いやすい形で、お願いいたします
２．部隊運営、練成、教練など以外で、他の方が作ったキャラクター、そのバックボーンを否定するような記述は、お控え願いたく存じます
３．原作（今のところはTVA「ストライクウィッチーズ」）世界観、キャラクターを否定、非難するような記述は、出来るだけ回避していただければ
４．それ以外は極力自由に、他の作品からのキャラ召還も含め「書いていて楽しいことが一番」で、ご投稿願えれば幸いです
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    <dc:date>2013-01-02T21:57:26+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/111.html">
    <title>ろくろくろくさいきょうのまじょ　―後編2―</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/111.html</link>
    <description>
      「あなた達！一体何を騒いでいるの！｣
　その声に、食堂にいたすべての人間の動きが止まる。やや大きな音を立てて食堂の扉を開けたのは、後ろに喜美佳と龍華の二人を引き連れたアーディだった。

｢バラノワ中尉に樫城大尉。まさかとは思いますが、またあなた達ですか？」
「あ、ハンマーシュミット大尉。これは、その…」
「これは決して、何かやろうとした訳ではなくって…」
　一番近い位置にいた勇音とクララにアーディが詰め寄る。二人も事の次第をどのように話したものか、咄嗟に説明できないでいたが、ややまごついた態度をとったのが更にアーディの心象を悪くしたらしい。

「二人とも、別に私はお酒を飲む事を悪いとは言いません。欧州派兵も近い今、多少羽目を外したくなる気持ちも分かります。しかしです―――」
　柳眉を吊り上げたアーディは、そのまま説教モードに入ってしまった。

「あーあ、今日はこれでお開きかしらね？」
｢申し訳ありません、今日は運が悪かったと思って諦めてください。出雲中佐やヘレーナ少佐がいれば、何とかなったかもしれませんが」
　いつもの光景が始まったのを見て、ノーラがゴチる。そのノーラに、肩をすくめながら龍華が申し訳なさそうに話しかけてきた。

「あれ、そういえば中佐と少佐はどうかしたんですか？」
｢立場があると色々と忙しくなるものです」
　ジャンヌの言葉に、喜美佳がイカの切れ端をつまみながら答える。その言葉に、環がようやく合点したと言った表情を見せた。

｢そうでしたか、道理でおかしいと思っていました。あの中佐が、こんな面白そうなことを嗅ぎ付けないなんて、ありえませんから」
｢別の機会に仕切り直した方がよさそうね。皐月、そろそろ…ベルタはどうしたの？」
　自分の分を手早く片付けながら、皐月に撤収を指示しようとしたノーラは、つい先程まで皐月と共にいたベルタの姿が無いことに気付いた。

「あれ、そういえばベルタさんは…？」
　突然のアーディ達の登場で注意が逸れていたのだろう。皐月も、ノーラに言われてようやくベルタがいないことに気付いた。

｢エッカート少尉がどうかしたのですか？」
「ああ、今日は珍しくお酒飲んでいて、完全にでき上がっていたんですよ」
　そういえば大尉達は見ていませんでしたねと、環が説明しながら周りを見渡す。

「む、それはいかんな。酔っている時は、どんな人間でも予想も出来ない事をするもの。特に前後不覚な状態で外に出たとあっては尚更だな」
　そう呟くと、龍華はベルタが外に出た時のことを考えて廊下に続く扉に向かう。万が一、そのまま外で寝ていたとあっては危険すぎるし、仮に何も無くても風邪を引きかねない。

「いえ、中尉。外には出ていないようですよ？」
「む？」
　喜美佳の言葉に、龍華は怪訝な表情で彼女の視線の先を追う。そこには―――

「―――後輩や部下と楽しく過ごすことが悪いとは言いません。しかしあなた達も、もうそれなりの立場なのですから、その辺りのけじめをちゃんと…」
「Heidiおねぇちゃん、アーン！」
　その場の空気など何のその。クララと勇音に説教をしているアーディに、満面の笑顔でクラッカーを差し出すベルタの姿があった。

「おねぇちゃん、アーン」
「―――エッカート…少尉？」
　普段からは決して考えられないベルタの様子に、アーディは完全に言葉を失う。アーディに怒られていたクララと勇音も緊張の面持ちで二人の様子を見守っていた。

「…あのね、少尉。今はふざけている時ではなくって―――ムグッ！」
「どう、美味しい？」
　なるべく穏やかにベルタを諭そうとするアーディに、ベルタはクラッカーをねじ込む。少し離れた所で、皆がハラハラしながら二人の様子を見守っていた。

「―――ええ、美味しいですよ？」
「えへへ、やったぁ」
　思わず答えるアーディに、ベルタは皆にやっていたように抱きつく。

「ベル、あなた…もしかしなくても酔ってるわね？」
「むぅ、Berよってないもん」
　ベルタから漂う酒気と、普段からは考えられない様子から、アーディは確信を持ってベルタに問いかける。その答えは、勇音が問いかけた時とまったく同じものだった。

「嘘をつくのは止めなさい。こんなに赤くなっちゃって、バカなんだから」
　そう言うと、アーディはそのままベルタを抱きしめる。抱きしめられたベルタは少しアーディの腕の中で体をよじった。

「うにゅ…おねぇちゃん、くるしい…」
「お仕置きです、我慢なさい」
　ベルタの訴えに、見かけは耳を貸さないアーディだが、その実、ベルタにあわせて少しだけ腕の位置を調整しているあたり、内心ではかなり気にかけている様子が見て取れる。
　この場には存在しなかったが、8ミリに収めて編集すれば、かなりいいシーンになっただろう。
　だが、酒がすべてを支配しているこの状況で、そんなシーンが長く続くはずが無かった。

「ずいぶんと楽しそうですね、Heidi」
「ハッ！き、喜美佳！？これは…」
　いつの間にか横に現れた喜美佳の言葉にようやくアーディも我に返る。しかし、もはや色々な意味で手遅れだった。

「いえいえ、いい事だと思いますよ？そのままベッドまで寝かしつけてもよし、その辺で遊んでいてもよし。私は、あなた達の様子でも肴にして一杯やっていきますから」
　一部では『体は扶桑人、心はブリタニア人』とも噂される喜美佳の言葉は、的確にアーディにダメージを与えていった。

「喜美佳、あなた…」
「ねぇHeidiおねぇちゃん。わたしね、オテダマできるようになったんだよ？」
　そんなアーディの様子を知ってか知らずか、ベルタは無邪気にアーディに話しかけてきた。
「オテダマ？一体どんなの？私にも見せて頂戴…喜美佳！後で覚えてなさい！」

「…助かったのよね？私達」
「これは、しばらくはベルタに頭上がらないわね…」
　楽しそうにミカンを手にアーディにお手玉を披露するベルタを見ながら、勇音とクララは互いの無事を確認しあうかのようにため息をついた。

「それでは、二人とも私に貸し一つと言うことでよろしいですか？それくらいの働きはしたと思うのですが」
　二人の安堵の気配に合わせるかのように、冷酒を片手に持った喜美佳が後ろから話しかけてきた。

「う、大尉…せめて二人で貸し一つではいけませんか？」
「別に構いませんよ？ただし、その場合はお二人の秘蔵の品がいくつかなくなるだけですので」
「お、鬼だ。鬼がここにいる…！」

「ふむ、ではせっかくなので我輩も楽しませてもらうとするかな？｣
　喜美佳に握られた弱みを何とか取り返そうと躍起になっている二人を尻目に、龍華はいつの間にか悲惨なことになってしまったミカンを頬張っているベルタに近づいた。


「あ、りゅうかおねえちゃん。みかんたべる？」
「おお、これはありがたい…ところでベルタ、せっかくだから我輩と遊ばないかな？｣
　そう言うやいなや、龍華はそのままベルタを抱き抱える。初めはキョトンとしていたベルタだったが

「うわぁすごーい、たかーい！｣
　元々、女性として見ても小柄なベルタと、扶桑人としては破格の背丈を持つ龍華である。そこから見える周りの様子に、ベルタは目を輝かせた。

「ははは、そうであろう？だがこうするともっと高いぞ。それ｣
　嬉しそうに目を輝かせたベルタの様子に気を良くした龍華は、調子に乗ってベルタを肩に乗せようとし―――

『ガスッ！！』
　鈍い音しかしはっきりとした音が、部屋中に響き渡った。

『―――――』
　周りの空気が文字通り凍りつく。
　鈍い音の発生源―――梁に頭を打ったベルタの様子は、頭を抑えているため確認できない。
　自然と、みんなの視線が龍華の元に集まった。

「あ、その、えっと…」
　もちろん龍華もそれに気付いて、何か声をかけようと必死になって言葉を捜す。この時、皆の心には一つの希望が残っていた。

『ベルタなら！きっと耐えてくれる！！』
　元々が我慢強いベルタである。フォローしだいではあるいは、この後に待ち構えている惨事も回避することができるかもしれない。
　そのためにはとにかく。龍華の適切な対応が必要不可欠だった。

『いけ、何とかしろ！』
『頑張ってください！』
『ここで泣かせたらどうなるか、分かっているでしょうね？』
『ここは、貴女の手腕の見所と言うべきですね』
　四方からそんなプレッシャーを感じながら、ようやく搾り出した龍華の言葉は―――

「あー、大丈夫か。ベル、タ？」
　ある意味では、これ以上に最悪の言葉は無いと言い切っても過言ではない言葉で、そして対するベルタの答えは

「…ふええええええ～～～～～～～～～～～～ん！！」
　部屋一杯に満遍なく響き渡る、力の限りの泣き声だった。

「―――何やってるんですかあんたはぁ！」
「げふぅ！？」
　ある意味究極の災害警報が鳴り響いた直後、光の速度で反応したジャンヌのミドルキックが、龍華の腹に直撃した。

「うわっととと…！ベル、大丈夫！？」
　無論、龍華に抱えられていたベルタはそのまま地面に投げ出されたが、こちらはすぐ傍にいたアーディがしっかりとキャッチした。

「ふえ～～ん。わぁぁああああ～～～ん！！」
　キャッチされたベルタは、そのままアーディの胸に縋りつく。心は子供でも、体は鍛えられたウィッチの力に、アーディは顔をしかめつつベルタの頭を確認する。そこには、触って確認するまでも無いほどの大きさの、見事なたんこぶがこさえてあった。

「よ…よしよし、痛かったわね。もう大丈夫だからね？」
　予想以上の大きさのたんこぶに驚きながらも、アーディはベルタをなだめる。
「悪いお姉ちゃんは私達がちゃんと退治しましたからね？ほら、痛くない痛くない」
　そういいながら、ベルタをなだめに勇音、環の二人もアーディの下に集まってきた。

　ちなみに、勇音の言う『悪いお姉ちゃん』こと龍華は、ミドルキックの直撃を受けた後にジャンヌ、御影、そしていつの間にか復活したモルガンの三人によって袋叩きにあっていた。
　その様子を喜美佳が「危なくない程度に留めておきなさい？」と煽っているのか止めようとしているのかはっきりしない言葉と共に見守っていた。


　そうした中、龍華の悲鳴を聞きながら何とかベルタを泣き止ませようとするアーディだったが、
「…泣き、止まないわね」
　一度泣き始めたベルタは、一向に泣き止む気配を見せなかった。

「泣き上戸のスイッチが入ってしまったのでしょうか？」
「いえいえ、もしかしたら大尉だとダメなのかもしれません。ここは私に任せてください」
「…何が言いたいのかしら、樫城大尉？」
「まあまあ大尉、ここは勇音に任せてみましょう」
　勇音の言葉に剣呑な表情を見せるアーディをなだめつつ、環が交代を促す。このままでは埒が明かないと気付いたアーディも、渋々といった表情で勇音にベルタを渡したが―――


―20分後―

「な…なんて事」
「子供の相手には、多少自信があったのですが」
「もう、ベルタ。お願いだから泣き止んで」
　そこには万策が尽き、疲れた表情を見せた一同の姿があった。
　喜美佳やノーラ、モルガンら、半分駄目元で龍華や皐月達も加勢も、まったく効果はなかった。

「こうなったら時間を待つしかないですかねぇ…？」
「我輩が言うことでもありませんが、これだけの時間がたっても泣いていることを考えると」
「期待はできませんね。こうなると外部戦力に頼るしかないでしょうか？」
　クララの言葉に、龍華と喜美佳がそれぞれの見解を出す。

「そ…それなら私、ヘレーナ少佐呼んできます！」
「それだ！私も一緒に―――」
　皐月が名案を吐き出すと同時に走り出すのを、ジャンヌが追いかけようとしたその時。
　もう何度目になるのか、食堂の扉を開き、宴に乱入する二つの人影が現れた。


「なにやら騒がしいと思えば―――」
「お前達、いったい何の騒ぎだ？」

　新たに食堂に入ってきたのは、ややくたびれた声と表情をした涼とヘレーナの二人だった。軽く右手をさすっているところを見ると、どうやら二人とも職務を終わらせたばかりらしい。

「少佐、いいところに！実はベルタが…」
やってきたヘレーナの姿を見て、あーディが挨拶もそこそこに事情を説明する。彼女の説明を聞いた二人は

「何とまぁ。あの少尉がこんなかわい…痛々しいコブを作って。一体どれだけ強く打ち付けたのですか？」
「まぁ、そのあたりは後で追求するとして、今は少尉を泣き止ませるのが先だな。どれ、私に貸してみろ」
「中佐がですか？失礼ですが、それは…」
　一瞬聞こえた「ヒィッ！」という悲鳴を無視しつつ、ベルタを受け取ろうとする涼に対し、アーディはわずかな不安の声を上げた。

「安心しろ。自慢ではないが、子供の相手は得意なんだぞ？どんなに泣いている子供でも、私が相手をすればたちどころに泣き止むんだからな」
　それ、単に怖くて黙り込んでいるだけでしょう―――
　皆が一様に思った言葉は、しかし誰一人として口に出す勇気のあるものはいなかった。

「そう心配するな。別にとって食うわけじゃないんだから」
　いろいろな意味で不安しか残らない言葉を並べつつ、涼はベルタを抱き上げる。緊張の面持ちで見守る皆を一瞬確認した涼の口から出たのは―――

『おやすみなさい　お眠りなさい
バラと撫子に囲まれ―――』
カールスラントの作曲家、ブラームスの子守唄だった。

「うわぁ…」
　普段の厳しさからはまったく違う、柔らかく暖かな歌声に誰かが感嘆の声をもらす。そこには部隊員から「オーガ」だの「鬼」だの言われる六六六の指揮官ではない。やさしさと自愛に満ちた一人の少女の姿があった。

　涼の見事な歌声は、ベルタの耳にも届いたのだろう。部屋中に響き渡る泣き声は次第に止み、涙を浮かべた瞳はゆっくりとまぶたが降り―――
　涼が歌い終わるころには、すっかり眠りについてしまっていた。

「…ん？寝てしまったか。どうだ、私の言ったとおりだろう？」
　ベルタが寝静まったのを確認した涼は、それ見ろと言わんばかりに胸を張る。その姿に、皆はまず涼の歌声に対する惜しみない拍手を送り、そして―――

「「「ウソだ！！！」」」
　心の底からの、驚愕の悲鳴を上げた。

「信じられない。何であのオーガ相手にあんな安らかに！？」
「ほかの人ならいざ知らず、まさか一番ありそうにない人に当たるとは…」
「これは、さすがに信じたくないですねぇ」
「長いこと泣いてましたから、さすがに泣き疲れたのでは？」
「それだ！！」
「お前達、言うに事欠いて散々な言い草だな…現実を見ろ現実を」

　自分の胸を枕代わりにして眠るベルタを誇るかのように、涼が自慢げに言い放つ。
「…中佐、お仕事も終わられたようですし、一杯と言いたい所でしょうが、すでに時間も時間です。区切りもいいですし、今日はここでお開きにするべきかと」
　その様子を恨めしげに見ていたアーディだったが、すぐに気を取り直すと、二人に提案した。

「確かに、わてくし達も来るのが少し遅過ぎたみたいですね。今日のところは、これで満足といたしましょう」
「まぁ、仕方ないか…それじゃあ御影にジャンヌ、悪いがベルタを部屋まで連れて行ってやってくれ」
「はい、了解しました」
「ベル、一緒に行きましょ」
　涼の言葉に、御影とジャンヌの二人がベルタを受け取ろうと手を伸ばす、そのままベルタを涼から引き剥がそうと力を込めた瞬間―――

「…むぅ！」
「おお゛？」
　先ほどとは比べ物にならない、とてつもない圧力が涼を襲った。

「…あ」
「これって、まさか…」
「いいから二人とも、早く引き剥がせ…」
　ある意味では二人の疑念に答えるように、涼が催促をかける。今起きている事態の深刻さを、食堂に集まった全員が敏感に感じ取った。

　次の瞬間―――
「「「それでは中佐、我々はこれで失礼いたします！」」」
　その場にいた全員が、今までに見せたことない見事な敬礼を見せ、ものすごい勢いで撤収を開始した。

「な…お前ら！こういう時にばかり無駄に連携を発揮するな！」
　部隊の中では比較的珍しい、涼の突っ込みの言葉を背中に受け、瞬く間に片づけを終えた一同は、一斉に食堂を後にした。

「…涼」
　食堂に一人取り残されたかに見えた涼に、ただ一人残っていたヘレーナが声をかける。

「敗者には敗者の務めがあるように、勝者には勝者の務めがあります…エッカート少尉のことは、頼みましたよ？」
「…ヘレーナ？」
「それではおやすみなさい、涼。よい夢を」
　普段とは何一つ変わらない、穏やかな笑みを浮かべるヘレーナはそういい残し、そのまま食堂を後にする。

「…どうしろというのだ」
　一人残された涼は、自分の胸の中で幸せそうに眠るベルタを見つつ、呆然とつぶやくのだった。



＊＊＊後日談へ＊＊＊    </description>
    <dc:date>2012-09-28T20:36:01+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/110.html">
    <title>ろくろくろくさいきょうのまじょ　―後編―</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/110.html</link>
    <description>
      佐世保基地　－食堂－

「はい、せっかくだからベルタもどうぞ」
　そういいながら、クララは食堂に来るなり用意したグラスに先程の酒をなみなみと注いでベルタに渡す。どこから持って来たのか、ちゃっかりつまみに乾パンを用意している所が抜け目ない。

｢あ…ありがとうございます｣
　普段、飲み会でもお酒は適当に断りながらすり抜けてきたベルタではあったが、正面からこうして酒を勧められるのは、実のところ初めてであった。

（やっぱり、こういう時は飲まないと失礼ですよね）
　自分からお願い事をしてきた手前、この酒を断ることは流石に出来なかった。見ればクララも既に飲み干さんばかりの勢いでグラスに口を付けている。
　その様子を見たベルタは意を決してグラスに口をつける。次の瞬間、ベルタはその事を激しく後悔した。

｢―――う、ぁ」
　感想を一言で言うなら『お酒』。味わいがどうだとかいう以前の問題として、ベルタを襲ったのは強烈なアルコールの衝撃だった。

｢へぇ、面白い味ねぇ。でも少し物足りないかな？…ってなんだ、ベルタも意外といける？」
　この一杯で終わらせよう。そう思っていたベルタだったが、予想をはるかに超えるアルコールに反応が遅れてしまう。ベルタとは対照的に平然と飲み干したクララは、自分と同じように空になったグラスを見ると慣れた手つきで再び注いでいた。

「いえ、中尉。私はもう十分―――」
「まぁまぁ、そう言わず。いい機会だから一緒に飲みましょうよ」
　もはや完全に飲兵衛と化したクララは、笑いながらもう一度グラスに注いだ酒を飲み干す。

（これは、話をする前にせめてこのビンを空けないとダメみたいですね）
　そう見切ったベルタは、意を決してもう一度自分の目の前にあるグラスに口を付ける。
　宴の夜は、まだまだ始まったばかりだった―――。


「あー疲れた、誰か居るかしら？」
｢姉さん。いくら小腹が空いたからって、食堂から御裾分けを期待するのはダメだと思う」
｢いいじゃない、ユニット弄ってると思わず時間を忘れるのよ」
　そういいながら食堂に入ってきたのは、勇音と御影の二人だった。
　どうやら勇音が格納庫に篭ってユニットを整備しているうちに時間を忘れたらしい。御影が呼び掛けなければずっとそのままだったのだろう。

｢それは姉さんの自業自得じゃないかなって思うんです。たまにそのまま一日過ごして朝倒れてることもあるし」
｢何よ、いいじゃない。あんただって…ってあれ？何か珍しい面子が居るわね？」
　御影の言葉に言い返そうとした勇音だったが、食堂に普段見かけない人物が、それも二人も居る事に目を留めた。

「あれ？勇音じゃない。どうしたのよこんな時間に？」
｢それはこっちの台詞よ。ベルと酒とか、何珍しいことやってんのよ」
「いや、ちょっと誘われてねぇ…あんたもどう？まだ酒もつまみもあるわよ？」
　勇音が見てみると、テーブルの上には既に空になったビンが二本転がっていて、クララはちょうど三本目を空けているところだった。

「…まさか、二人で開けたの？」
　体質やペース配分等にもよるが、普段から飲み慣れているクララはともかくとしても、飲み慣れていないベルタにとっては、下手したら致死量である。
「ベル、大丈夫？」
　案の定、顔を伏せたままピクリとも動かないベルタを心配した御影が呼び掛ける。

「ぅうん……あ！」
　まだ完全には落ちていなかったのか、御影の呼び掛けにヨロヨロと頭を上げる。そして、ベルタはそのまま目に映ったものに目を輝かせた。

「大丈夫？立てる？ダメそうならこのまま…」
「…いさねおねぇちゃん！」
「「「…ゑ？」」」　
　隣に居る御影には目もくれず、ベルタは椅子の上に立つとそのままテーブル越しに居る勇音に飛びついた。

「ゲフッ！…な、何事ぉ！？」
　小柄とはいえ、いきなり人間に飛びつかれて平然と受け止める事は難しい。勇音もとっさに反応したとはいえ、余りにも予想外の事態に軽くパニックを起こしていた。
「えへへ、おねぇちゃん」
　そして当の本人はそんなこと気にも留めず、とても嬉しそうに勇音の胸に顔をうずめていた。

　その余りの事態に、御影は目を丸くして完全に固まっており、クララも自分がグラスを倒してしまったことに、全く気付いていなかった。
「―――ベル、あんたいきなり何して…っていうか酔ってる？酔ってるわね！？」
　ようやく何が起きたのかを把握した勇音は、母親に抱きつくコアラのように自分にしがみ付いているベルタに問い詰める。
「…むぅ、Ｂｅｒよってないもん」
　頬と膨らませて、酒臭い息を出しながら出したベルタの答えは、完全な酔っ払いの常套句だった。

（ああ、もう完全に出来上がってる…ベルって酔うとこんな感じになるんだ）
　勇音はそんなこと思いながらクララを睨みつける。剣呑な目に睨まれたクララは、慌てて目を逸らしながらテーブルに零れた酒を拭きだした。
（まったくこの子に一体なにしてるんだか、この呑み助は…）

「…あー、ゴメンゴメン。お姉ちゃん間違えた」
　勇音は笑いながらベルタの頬を軽く押す。風船から空気が漏れたような音がベルタの口から漏れると、ベルタは途端に上機嫌になって
「えへへ、おねぇちゃんまちがえた」
　と笑いながら勇音の頬をつつき始めた。

「あははは…ん？」
　無邪気に笑うベルタにつられて一緒に和みはじめた勇音だったが、不意に横から不穏な気配を感じてそちらを見る。
　そこには、なにやら険しい表情を浮かべた御影の姿があった。

「だめでしょうベル、姉さんに迷惑かけるようなことしたら。ほら、私と一緒に行きましょう？」
　そう言うと、御影は勇音からベルタを引き受けるように。と言うよりはむしろ奪い取るようにベルタを引き寄せた。

「えっと、御影？」
「えー、 Ｂｅｒいさねおねぇちゃんがいい」
「姉さんは疲れているんだからダーメ。ほら、こっちで私とおつまみ食べましょう？」

　勇音から引き剥がされたことがよほど不満だったのか、ベルタは御影に不満そうな顔を向けたが、やがて御影の腕の中も心地良いと思ったのか、コロコロと表情を変えながらベルタは御影と残った乾パンをつまみ始めた。

「…フフン♪」
　そして、唖然としている勇音とふと目が合った御影は、なにやら勝ち誇ったような笑顔を勇音にむける。そこで、勇音はようやく御影の狙いに気付いた。

「やられた…人の言葉を逆用するとは」
　あれで意外に嫉妬深い御影である。友達なのに、ベルタが自分ではなく勇音を選んだことがそこまで気に入らなかったのか。どちらにしても、もう手遅れだった。

「…ええいバラヌ、酒よ酒！その酒よこせ！！」
「勇音、そういうのを世間では自棄酒って言うのよ？」
　クララは冷静に突っ込むと、手近にあったグラスに先程あけた焼酎｢霧島｣を注ぐ。

「うるさい！あんたに妹を取られた姉の気持ちが分かるっていうの！？」
「…貴女、まだ素面よね？」
　いろんな意味で変貌を遂げた勇音に、クララは内心冷や汗を浮かべながらグラスを開ける。
　そんな中、扉から食堂を覗く人影があった。


「気になって探してみたら、何かとんでもない事になってしまっている…」
　扉を少し開けながら中を覗いていたのは、モルガンだった。
　酒を進めた手前、やはりベルタの事が気になって影からこっそり様子を見ようと思い立ったモルガンだったが、そこで彼女が見たものは、ある意味とんでもない修羅場の予感だった。

「どうしましょう。なんだか関わったらいけない気もするし。かといってこのまま見過ごす訳にも…」
「何やってんですか、中尉？こんなところで」
　ハラハラしながら中の様子を伺っていたモルガンの後ろから声をかけたのは、フライトジャケットを肩にかけたジャンヌだった。
　見れば、ジャンヌ以外にもノーラと環、皐月の四人―――アサルト０２の面々が揃っていた。

「いえ、私はその―――皆さんは一体どうしたんですか？小隊揃ってどちらに？」
「私達？もうすぐ欧州に出発するから、その前に小隊の結束を深めようかと思って。ちょっと飲み会でも開こうかと思っていたんだけど」
　モルガンの疑問にノーラが答える。古今東西、部隊の結束を高める手段として酒は付き物である。

「どうやら先客が居たようですね。せっかくですし、ここは混ぜてもらいましょう」
｢べアール中尉もせっかくなのでどうですか？余りたくさん持って来てはいないですけど」
　食堂から聞こえる声に気付いた環が、ノーラの後ろからそう呟く。モルガンがふと下を見ると、中につまみが入っているのだろう、小ぶりなかごを抱えた皐月がそばにいた。

「いえ、今食堂に入るのは余りお勧めできないと言いますか、何と言いますか…」
｢ここで様子を伺っていても仕方ないじゃないですか、入りましょうよ」
　それでも何となく煮え切らないモルガンの態度に、ジャンヌが背中を押しながら食堂に入った瞬間、二人が目にしたものは―――

｢わーん。いさねおねぇちゃんとみかげおねぇちゃんがこわい～」
「わ゛…分かったから、ベル…お願いだから、ちょっと離れて…」
「ちょっと、何でここであんたが出てくるのよ！」
｢そうです、バラノワ中尉は下がっていてください！｣

｢…中尉、一体何が起きているんです？」
「さ、さぁ…いつの間にこんな事態に？」
　二人が眼にしたのは、ベルタに首を極められて落ちかけているクララと、そのクララに詰め寄っている勇音と御影の姿だった。

｢なんだか込み合っているみたいね。これは邪魔しちゃ悪いかな？」
「修羅場のようですね。皐月、余り見ないほうがいいですよ？」
　遅れて入ってきたノーラと環は大体合っている見解を述べつつ、環は手に持った一升瓶で皐月の視界を器用に隠していた。

｢―――あ、Norraおねぇちゃん。みんながこわい～」
｢お…？おーよしよし。もう大丈夫だからね｣
　やがて、入り口にいる五人に気付いたベルタが半ベソをかきながらノーラに抱きつく。ノーラもいつもとは正反対のベルタの様子に多少眼を丸くしつつも、すぐに対応してのけていた。

｢…三人とも、一体何事ですか？エッカート少尉が妙に怯えているようですが」
「環…えーと、分かりやすく言うとベルが酔っちゃって」
｢楽しくお話したくて｣
｢…お花畑と死んだおじいちゃんが見えました｣
　熱くなりつつあった食堂の熱が下がりつつあるのを確認した環は、皐月をジャンヌに預けつつ先客の三人に話かける。三人の返答は、この場の状況を端的に説明していた。

「えへへ、 Norraおねぇちゃんだいすき」
「はいはい、分かったから。ほら、こっち行くわよ？」
「うん！」
　ベルタはベルタで、今度はノーラにコアラのように抱きついている。ノーラもベルタの性格を把握したのか、いい感じに構いつつ席に向かった。

｢…なんか、珍しい事が起きてるな」
｢ベルタさん、お酒そんなに強いほうじゃないのかなって思ってましたけど。すごく意外です」
　そのベルタとノーラの様子を、ジャンヌと皐月は唖然とした表情で見守っていた。

｢とりあえず、私達も混ざっていいですか？そちらの酒もつまみも、まだ残っているようですし…ベアール中尉、貴女はどうするんです？」
｢…え？ああ、では私も。このまま戻るわけにも行きませんし」
　何となく場の空気に一区切りがついたところで環がクララに提案を持ちかける。モルガンも引き下がるわけにも行かず、その場に残る決断を下した。
　かくして、宴の夜はいよいよ本番に近づきつつあった。


　数分後。そこには、食堂に置いてあったミカンで、いつの間にかベルタにお手玉を披露する羽目になった皐月の姿があった。
「わぁー、さつきちゃんすごーい！」
「そ、そんなことないと思うけど…ベルタさんは、こういうのやったことないんですか？」
　無邪気に感心しているベルタに、ほんの好奇心から皐月はベルタに聞いてみた。

｢おとうさんとテニスやってた！｣
「そ、そうなんだ…他には、何かやってなかったんですか？」
　ベルタが幼いころから父とテニスをやっていたことは、昨年末の六六六空テニス大会のベルタの姿を見れば十分すぎるほど分かる。
　皐月は、それ以外のベルタの遊びについてもう少し探ってみた。

「えーと、えーと…きのぼりでしょ、マラソンでしょすいえいでしょ、あと…」
「分かりました、もう分かりましたから…ちょっとお手玉練習してみましょうか？｣
「うん！」
　ベルタの体力の源泉が分かったような気がした。後に皐月はこう語っている。

｢…しかし意外ですね。ベルタ、酔っ払うとああも変わるとは思いませんでした」
｢そうですか？普段から抑圧されているものが、表に出てきただけだと思いますけど」
　つたない手つきでミカンを握るベルタに手取り足取り教える皐月を見ながら、ノーラと環、そしてジャンヌの三人は清酒『大漁旗』を煽っていた。

｢そうきたか…お酒でも飲まないと、他人に甘えることも出来ないって事？」
｢どちらかと言うと、子供のころにやり残した事を今清算しているようにも見えますが」
「大尉、うまい事言いますねぇ…でもってこのイカもうまい｣
　ノーラと環の話に相槌を打ちつつ、ジャンヌは環手製のイカの干物を頬張る。持ち寄ったつまみの三分の二はジャンヌが用意したものだが、既にその半分近くが食い尽くされていた。

「―――ちょっとジャンヌ、もうちょっと考えて食べて」
｢いつの間にかなくなりかけてる…」
　話をしている間に、目の前のイカが減っていることに気付いた二人は慌て自分の分を確保しはじめた。
「すみません、美味しいもんだからつい」
　対するジャンヌも、多少の反省の色は見せつつも右手でゴッソリとナッツを掴み取っていた。

　その三人を尻目に、モルガンはミカンを宙に投げるベルタと皐月に近づいていた。
「楽しそうですね。ベルタさん、皐月さん」
「あ、ベアール中尉。なんだか子供のころに戻った気分です」
　お手玉に夢中でモルガンに気付かないベルタに代わり、皐月がモルガンに挨拶を返す。モルガンも、真剣な表情でミカンを投げているベルタが、本当に妹のようにも見えていた。

「…ねぇねぇさつきちゃん、みてみて！」
　何度か失敗しながらも、やがてコツを掴んだのか。酔って多少足元がおぼつかないながらも、ベルタは少ない回数ながらお手玉を成功させてみせた。

「うわぁ、ベルタさんうまい！」
｢本当にお上手ですね、ベルタさん」
　初めてやったにしては十分上出来な腕前を見せたベルタに、二人は拍手でベルタに応じる。ベルタも、褒められて嬉しかったのだろう。

「ありがとう。さつきちゃん、おにいちゃん」
　そんな、喜びの中にとんでもない爆弾を投げ込んできた。

｢おに…ベルタさん、モルガンお姉ちゃんですよー？｣
　爆弾を叩きつけられたモルガンも、それがただの言い間違いだと信じたかったのだろう。やや引きつった笑いを浮かべながら、やんわりと訂正した。

　しかし、ベルタはそれに対しきょとんとした顔をすると、おもむろにモルガンの胸に手を当てると
｢…ペッタンコ」
　年代を問わず、世の女性の大半が抱くであろう悩み。そのど真ん中を打ち抜いてしまった。

｢……グスッ」
　ベルタの前では意地があったのだろう。モルガンは何も言わずに二人のそばを離れると、そのまま―――
｢うええぇぇぇん！ジャンヌざぁぁぁぁん゛！！」
　一直線にジャンヌの元に駆け寄り、そのまま泣き崩れてしまった。

「うわぁ！どうしたんですか、中尉！？」
「エ゛グエ゛グ。私だって、私だってもう少ししたら成長するのに。成長ずるのに～！」
「あーもう、分かりましたから離れてくださいよ！」
「だって、だって～！！」
　よりにもよってベルタに言われたのがショックだったのか、モルガンはジャンヌの言葉に耳も貸さず、ただ泣きながら己を主張を訴え続けるだけだった。

「あれ、おにいちゃんどうしたんだろ？」
「あの、ベルタさん…流石にあれは言ってはいけない事だと…」
　いまいち自分が何を言ったのかが分かっていないベルタに、さつきも流石にまずいだろうと口を開いた時、またも食堂の扉が開いた。

***続く***    </description>
    <dc:date>2012-09-28T20:33:15+09:00</dc:date>
    <utime>1348831995</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/109.html">
    <title>ろくろくろくさいきょうのまじょ　―前編―</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/109.html</link>
    <description>
      一九四五年二月
佐世保基地　－格納庫－

　昼休み目前の格納庫の一角で、中島はベルタからの相談を受けていた。
｢シールド出力の上昇、ですか？」
｢はい、欧州への出兵も近いですから。今の内に不安なところは対処したいなと思って」
　中島の問いかけの言葉に、ベルタははっきりと答えた。

　間近に迫った欧州派兵。ベルタが懸念していたのは、ネウロイの攻撃力。特に、ウラジオで遭遇した新型の凄まじい機動力と、桁違いの火力だった。
　その化け物に対抗する為のベルタの答え、それがシールド出力の上昇だった。

　そのベルタの意思を汲み取った中島だったが、その表情は険しかった。
｢…不可能とは言いません。しかし現在の調整で、限界ギリギリまでシールド出力を上げていますから。これ以上を望むなら、メーカに依頼してのユニットの改装になりますが…交渉しても、決着がつくのは最低でも一年は先のことでしょうね」
｢そうですか…分かりました、ありがとうございます」

　申し訳なさそうに答える中島に対して、ベルタは落胆の表情を見せる。その答えは、ベルタ自身分かっていた答えだった。
「どうにかできないか試してみます。午後から訓練でしょう？その時に感想を聞かせて下さい」
　その中島の言葉と入れ替わるように、午前中の訓練を終えた部隊の面子が格納庫にやってきた。


｢あーーもうヤダ。どう考えても嫌がらせって言うか、私に何か恨みでも持ってるのかって言うか…」
　暗い愚痴を呟きながら帰ってきたのは、泥人形―――改め、全身ペイント弾で泥だらけになったアサルト04の小隊長、クラーラ・バラノワ中尉だった。

「仕方ないんじゃないんですかぁ？隊長機落とされたらその時点で終了って扱いですし。むしろそれだけ泥だらけの癖に、直撃は半分だけって事の方が驚きなんですけど」
　クララに続いて帰ってきたのは、小柄な体とは対照的な大型の双発機『タイガーキャット』を履いた[[クラリーチェ・アルベティーニ少尉]]だった。

｢海面に当たるとね、意外に飛び散るのよ。眼鏡も泥まみれで前もろくに見えないし、むしろ途中からずっとその状態で飛んでたのよ」
「それでも逃げ回れる中尉はすごいと思うけど」
｢少尉、それでは中尉を馬鹿にしているように聞こえますよ｣
　クララの言葉に、褒め言葉ともけなし言葉ともつかない中途半端な言葉を返したのは、[[オティーリエ・ハーケ少尉]]、それを後ろからとがめたのは副隊長の[[大槻千早中尉]]だった。

「あれ？今の褒め言葉にはなりませんでしたか？」
｢人にもよるとは思いますが。けなし言葉にも聞こえますね。気をつけないと、今日の昼食に納豆を余分に追加しますよ？」
｢うわぁ、ごめんなさい｣
　普段から『好き嫌いはありません』と公言するティーではあるが、流石に納豆は未だに苦手らしく大慌てで謝った。

｢皆さん、お疲れ様です。確か、今日はアサルト01との模擬演習でしたか？」
｢…ああ、ベル。お疲れ様。あのオーガに追い掛け回されてこの様よ」
｢バラノワ中尉は隊長にじきじきに追い回されましたからね。ハーケ少尉が比較的マシな方でしょうか」
　千早の言葉にベルタが改めて全員を見てみると、確かに泥に塗れていない所が殆どないクララは別格として、リーチェと千早が全体の半分近く、ティーが三分の一近くが泥に塗れていた。

｢流石は出雲ンよねぇ…頭数だけならこっちの方が上の筈なんだけどなぁ」
｢戦力的には出雲隊長が三人分に、エリーと勇音だから五人よ」
　リーチェのぼやきに、眼鏡をタオルで拭きながらクララが答える。

「流石は隊長だよねぇ。皆に出来ないことを軽くやってのけてるし｣
「そのくらいでなければ、この部隊の隊長は務まらないでしょう…そういえば、エッカート少尉はどうしてここに？確か貴女は午後からの訓練だったと思いますが？」
　ユニットを脱ぎ、水筒に入れてきた水を飲みながら、千早は思い出したようにベルタに尋ねた。

｢ユニットの調整をしたくて、中島さんと相談していたんですが…どうもうまくいかなくて」
｢何かあったの？簡単な計算くらいだったら相談に乗れるけど」
｢いえ、小手先の調整では効かない問題なもので、別のアプローチを考えていたところです」
｢何、オーバーホールでもしないといけない状態にでもなったの？年末にやったばかりじゃなかった？」
　手早く大まかな泥を落としたリーチェがベルタに尋ねる。同じユニットを使うもの同士、気になることも多いのだろう。

｢シールド出力を上げたかったのですが、既に限界ギリギリになっていたらしくて。これ以上はユニットの改装になるということでした」
｢…貴女のシールド、この部隊にある機銃位なら殆ど防ぐじゃない。これ以上上げてどうするのよ」
　ベルタが気付くと、クララが呆れた様子でベルタを見つめていた。

　人によってユニットの調整にはある程度の傾向があるが、ベルタは部隊でも特殊な調整を施しており、シールドを誰よりも強く展開できるように調整を施していた。
　クララが言うように、ベルタのシールドを破れる重火器類は六六六の中でも数が限られている。

｢だからこそです。ウラジオに現れた新型、あの砲撃の前には並大抵のシールドでは意味がありません。欧州で、あれと同等以上の砲撃を持った新型が出てくる可能性は高い、常に万全の備えをしておきたいんです」
　それに対してまっすぐに答えるベルタの目に、クララは言葉を失った。あのクラスの攻撃を、既にネウロイ全体に行き渡らせている可能性を既に見据えている、その油断の無さはクララにはおそらくは追いつけないだろう。

｢その前に避けた方が早くないですか？いくら万全の備えをするにしたって、まだ出来ることがあるのに試さないのは、貴女らしくないですよ」
　やんわりと諭すように、千早がベルタの肩を撫でる。まるで肩についたゴミでも取り払ったのかのうな動作だったが、それだけでベルタの気迫は嘘の様に消え去っていた。

｢あ…いえ、そうなのですけど…そ、そういえば出雲中佐達はどうしたのですか？もう帰ってきていてもおかしくないですけど」
　千早の言葉に何かあったのか、ベルタは唐突に話題を変える。もう昼休みになろうと言うのに、格納庫には未だに涼達の姿は無かった。

｢多分、まだベネックス中尉とじゃれ合ってるんじゃないかしら？私たちが帰るときも『低空飛行訓練だ！』とか言って低空に貼り付けてたし」
　ベルタの言葉に、リーチェが空を見上げながら答えた。その予想は当たっていて、数時間後に帰ってきたエリーは『海が、海が上がってくる』とうわ言を呟きながら担架で運ばれていったと言う。

｢ベルゥー、お腹すいた」
　色々と話していた矢先、唐突にティーがベルタに覆いかぶさるように抱きついてくる。気付けば既に昼休み、訓練で消耗した身ではお腹がすくのも無理は無かった。

｢そっか、もうこんな時間ね。じゃあ、私たちは先にシャワー浴びてから行くから、ベルタは先にお昼とっててちょうだい」
｢分かりました。それでは、失礼します」
　格納庫を出てベルタとクララ達とで二手に分かれる。食堂に向かいながら、ベルタは先程の千早の言葉を思い返していた。


｢やはり、回避するしかないでしょうか。しかし、天山よりも性能は上がったとはいえ、タイガーキャットも旋回性能は劣る機体。私で避け切ることが出来るのか…」
　ベルタが懸念していたのはその事だった。もちろんシールドにばかり頼るつもりは無い。しかし、いざと言うときに回避できなかったら。
　その懸念が、ベルタが殊更防御を重視するようになった理由でもある。

　だがその懸念を取り払ったのも、また千早の言葉だった。
｢…いや、違う。回避はまだまだ使える手段の一つ。それを試さないで諦めるなんて、そんなのすべてが終わっちゃう」
　具体的な目標を定めたベルタは、軽やかな足取りで食堂を目指す。
　一人では出来ないこと、それは重々承知しているが、ベルタは既に最高の教官の存在に目を付けていた。


佐世保基地　－廊下－

｢べアール中尉、少しいいですか？｣
　外での訓練も終わった夕方、廊下を歩いていたモルガン・べアールは、後ろからの声にその足を止めた。
「おや、ベルタさん。どうかしましたか？」
　モルガンが振り返ると、そこにはいつもの真面目な表情を少し崩して、少し困った表情をしたベルタの姿があった。

「はい、一つお尋ねしたことがあるのですが、よろしいでしょうか？」
｢私でよければ、答えますが…？」
　ベルタの様子に、若干不安な表情でモルガンも答える。ベルタがこういう言い方をする時は何か厄介な問題を抱えていると、ヘレーナとアーディがぼやいているのを聞いたことがあったからだ。

「その…バラノワ中尉の好きなお酒の銘柄などをご存知でしょうか？」
｢バラノワ中尉のですか…？何でいきなりそんなことを？」
　色々な意味で意外な質問に、モルガンも面食らったように聞き返す。
　好きな酒の銘柄を聞くと言うことは、その酒を手土産に持って行こうということは想像がつくが、ベルタがそこまでしようとする経緯が気になった。

｢別に、何か失敗したから謝りに行くのに使うとかではなくて…ちょっとお願い事をしたいなと思って、その時に何も持たずに行くのはやっぱりダメかなと」
　モルガンもベルタの性格は知っている。同じ対地支援を行っていた者同士、よく相談しあうことが多い反面、ベルタの真面目すぎて思いつめやすい性格のことは気にかかっていた。
　妹が居たらこんな感じかな、とモルガンは密かに思っていたが、もちろんベルタには内緒である。

｢お願い事、ですか…そうですね、それでは酒保に行って見ましょうか。言葉でどうこう言うよりも、まずは現物を見るのが一番です」
「いえ、そこまでして頂かなくとも…中尉は、お時間は大丈夫なのですか？｣
｢大丈夫ですよ、ほら、早く行きましょう。あそこの鍵は多少厄介ですので」
　ベルタの言うお願い事も気になるが、妹のように思っている部下が珍しく仕事以外のことで頼ってもらえたことが嬉しかった。
　モルガンも深くは詮索せず、ベルタを引っ張って酒保へと急ぐのだった。


佐世保基地　－酒保－

｢うわぁ…たくさんお酒がありますね｣
｢一般将校の方たちも飲みますし、皆で集まって楽しく騒ぐのに一番簡単な道具…というべきでしょうね。特に、お酒が好きな人が主計に居ると入れ替わりが途端に変わります」
　余り入る事のない酒保に感心したベルタの様子に、モルガンは笑いながら中へと進む。

｢九州では焼酎と言うお酒が好まれていて、この基地では全体の三分の二を占めます。あとは扶桑ですから、清酒…扶桑酒と呼ばれるお酒とビールが一般的ですね。ここは私達(六六六)がいますから、その他のお酒も多いですけど」
　中を案内しながら、モルガンはベルタに簡単な説明をする。こういった所に入ったときの癖なのか、ベルタは整理状況を確認しながらモルガンの説明を聞いていた。

｢ビールは分かるのですけど、その扶桑酒と焼酎というのはどういうお酒なのですか？」
｢扶桑酒はお米で造ったお酒。焼酎はサツマイモや麦等で造ったお酒で、ウォトカと同じ蒸留酒です…全体的には焼酎の方が強いお酒ですね。細かく言えば色々とあるのですが、今はそれだけ覚えていたらいいでしょう」
　決して広いとはいえない酒保の中を進みながら、モルガンは説明を続ける。宴会以外で酒と関わる事の少ないベルタは、そのお酒の量に圧倒されていた。

｢さて、肝心のバラノワ中尉の好きなお酒についてなんですが…実は、私もよくは知らないんです」
｢そうなんですか？」
　モルガンの意外な言葉に、ベルタは面食らったように聞き返す。あの酒飲みで有名なクララの好みを、酒の管理を担当しているモルガンが知らないのは予想外だった。

｢あの人、実は一人で飲むことが多い人でして。もちろん誘われたら一緒に飲むのでしょうが、どちらかと言うと自分の部屋で飲んでいることのほうが多い人だと思います」
｢そうだったんですか…」
　モルガンの言葉に、ベルタは棚を見つめながら考え込む。モルガンの言葉から分かるクララの好みは、強い酒。オラーシャのウォトカ等が妥当だということくらいだった。

「ですが、単純に強いお酒を渡せば良いだろう、というのは面白味がないですね」
「というと？」
｢良いお酒があるのを思い出しました。ついてきてください」
　唐突に酒保を出たモルガンは、そのままベルタを引き連れて基地内を歩いていく、そのまま宿舎に入り、着いたのはモルガンの自室だった。

｢どうぞ、入ってください」
｢し…失礼します」
　上官の自室に入ることになるとは思っていなかったベルタは、いささか緊張した面持ちで部屋に入る。質素ではあるが、時折話に聞く、彼女の先祖が使っていたと思われる壁に掛けられた年代物のカトラス等を見る限り、彼女の出自が分かる様な気もした。

｢これなどどうでしょう？実家から送られてきたのですが、とても味わい深いお酒です」
　部屋に戻ったモルガンがチェストから取り出したのは、『クレーム・ド・カシス』と呼ばれるリキュールだった。モルガンの言うようにカクテルにしてよし、ストレートでよしの良酒である。
｢実家からって…そんな、そこまでして頂かなくても―――」

　自分のために、わざわざ自前の酒を譲り渡そうというモルガンの意図を理解したベルタは、すぐに断ろうとしたが、その前にモルガンはその口を指で軽く押さえながら、ベルタに続けた。
｢いいんですよ、お酒は飲むためにあります。私自身少し持て余していたお酒ですので、いい機会ですから、バラノワ中尉に飲ませてあげてください」

｢べアール中尉、ですが…」
｢どうしてもというなら、今度結果を教えてください。もちろん、言いたくないお願いなら構いませんが、貴女がそこまでして頼みたいお願い事というのも、少し気になりますから」
　なおも食い下がろうとするベルタに、モルガンは穏やかな微笑を浮かべながらベルタの頭をなでる。その様子は、傍から見ると姉と妹の様子のそれだった。

「中尉…ありがとうございます。このお酒は頂きます…失礼します」
　モルガンの言葉を受け、ベルタは礼を言うとそのまま自室に向かう。おそらくは包装でもするつもりなのだろう。どちらにしても、律儀なことに違いはなかった。

｢頑張ってください、エッカート少尉。いい結果を期待していますよ」
　後に、ベルタに渡したあのお酒が六六六の中でも一際大きな騒動の原因になるとは夢にも思わないモルガンは、ベルタの背中を見送っていた。


佐世保基地　－廊下－

「さーて、そろそろ部屋に戻りますか…今日は何飲むかしらね」
　全ての仕事を終えた夜。風呂にも入り、後は寝るだけとなったクララは、部屋に戻りながら今日の寝酒について考えていた。
　ちなみに、こういった発言が勇音達から『酒飲み熊』等と言われる所以でもあるのだが、今のところ本人にその自覚はないらしい。

｢…バラノワ中尉！｣
｢ん？あら、ベルタじゃない。どうしたの？」
　不意に後ろから呼ばれて振り向くと、そこにはなにやら包装紙で包まれた何か…大きさとしてはちょうどお酒でも入っていそうな物を抱えたベルタがいた。

｢一つ、お願いしたいことがありまして…これ、お土産ですので、受け取ってください」
　そういってベルタはクララに荷物を渡す。渡されたクララも何の意図があるのかは分からないが、渡された以上は受け取るしかなかった。

｢あ…これはありがとう。開けてもいいかしら？」
｢はい、ぜひ開けてください」
「それじゃぁ、失礼して…」
　そういいながらクララは包みを開ける。こういった贈り物を受け取ったのはいつ振りだったか、少し思い返しながら、クララは中から出てきたベルタのプレゼントに目を丸くした。

｢…これ、どこで手に入れたの？間違いなく扶桑では流通していないはずよ？」
　クララ自身、初めて見る酒ではあったが、貼ってあるラベルからガリア原産の酒であることは一目で見当がついた。

　ネウロイによって、ほぼ全土が侵略されたガリアの製品はその殆どが希少な物である。特に、酒は原材料の全てがこだわりぬいて作られる物であるため、現在ではネウロイ侵略以前に作られた酒を除いて、殆どが流通どころか作られてすらいない。
　ましてや、遠い極東の扶桑ではクララ自身一度もお目にかかったことがなかった。

｢色々とありまして、偶然手に入ったものですから。バラノワ中尉に是非にと思いまして」
｢そう…立ち話もなんだし、食堂に行きましょう。とりあえずはゆっくり、ゆっくりとね」
　そういうとクララはベルタを率いて食堂を目指す。その姿は、非常に落ち着いたものに見えるが、内心クララはその手の中にあるお酒が気になって仕方がなかった。

（うわー、始めてみた。ガリアの酒とか、しかもこれってリキュール？リキュールよね？どんな味なんだろう。ウォトカみたいに強さ一本な訳ないし…）
　ベルタに気付かれないように平静を装いながら、クララはそんなことを考えていた。


　実はこの時、ベルタはある重大なミスを二つも犯していたこと、そしてある残念な不幸が重なっていたことに気付いていなかった。

　ベルタの一つ目のミスは、ベルタが酒飲みという人種の理解が足りなかったことである。
　お願い事をするときには、まずプレゼントを渡してから話した方が相手は断りにくい。しかし、酒飲みが相手になると、目の前にある酒が気になって仕方がなくなってしまう。しかも、その酒が初めて見る物となれば、もはや相談事など上の空である。
　ここで更にもう一つのミス。よりにもよって、その酒をすぐに飲める夜に渡してしまった事が、ベルタのミスを更に致命的なものにしてしまった。

　そして、ある残念な不幸とはよりにもよって食堂の近くでクララを呼び止めてしまった事である。
　せめてクララの部屋でやってさえいれば、その悲劇はクララの胸の内に留めておくだけで済んだのかも知れない。

　後々、六六六でこの騒動を知るもの全員が思わず苦笑いを浮かべることになる惨劇。その扉が、あろう事かベルタ自身の手で開けられるのであった―――。


*****続く*****    </description>
    <dc:date>2012-09-28T20:30:04+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/105.html">
    <title>鎮魂と再建－マルタ復旧作業任務始末記－</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/105.html</link>
    <description>
      夏場の地中海といえば、概ね明瞭な晴天を誰もがイメージする。
実際、ネウロイさえいなければこの時期、地中海はまさに観光地そのものであった。

しかしその日は降雨こそないものの、珍しく曇天であった。
薄雲ごしに陽光の差しこむ、何処かはっきりとしない天気であった。


「こうなると強風でがぶる心配は減りますね、大尉。視界は良くないですけれど」
「薄曇りってことは、それだけアフリカからの風向きも弱まりますからね…それと今は中尉ですよ」
「原隊に戻ったんですし、大尉でいいんじゃないですか？」
「面倒くさいけれど、一応今は六六六空から『出向』の立場ですから」


大槻千早大尉勤務中尉は、原隊時代から自分の僚機を務めたウィッチに苦笑してみせた。
そう。彼女が原隊たる扶桑陸軍飛行戦隊に復帰した場合、本来の階級は大尉である。

何故、今現在は公には中尉止まりかといえば－


「うちも人のことは言えませんが、大所帯ですからね。大尉を何人も抱えているというのは、やはり？」
「貴重品の将校ウィッチを溜め込んでるだけでも、いい顔をされないことも多いんですよ…」
「ここは何時も、人手不足ですからね」


四式戦闘脚の「マ45」魔導発動機の轟音が重複する中、二人のウィッチは肩をすくめた。

そう。現在のところは千早の所属部隊である海軍第六六六戦闘航空隊。
そして彼女の原隊であり、僚機を務める古参曹長の属する飛行第二〇二戦隊。

何れもが十名から二十名の航空機械化歩兵を有する、ウィッチ飛行隊としては相当の大所帯であった。
これだけの戦力を持ち込み、常に戦力が不足しがちな欧州戦線で、暇を持て余せるはずもない。

今回の任務もそういうものであった。


「…六六六空では言えないけれど」
「何です？」
「航空戦艦なんかに慣れてくると、こっちのほうが余程普通の『機動部隊』に見えるかなあ」
「所管はうち、陸軍ですがね」


彼女らの眼下にはリベリオン海軍、扶桑皇国海軍、ロマーニャ海軍等の駆逐艦や海防艦。
あるいは一等輸送艦に護衛された、全通甲板を有する船舶複数が航行している。

しかし何れも「空母」ではない。





「あきつ丸、熊野丸、にぎつ丸。後はリベリオン製RORO船4隻。少なくとも上は本気、か」
「南号作戦、マルタ奪還作戦で高品質重油が底をついて、中品質油で動ける艦ばかりですがね」
「それでも駆逐艦だけで12隻、海防艦も8隻。これ以上の贅沢は言えないわね」


大槻中尉や僚機の古参曹長、そして眼下の30隻以上の船団。
彼女らを含む部隊の総称は「MR部隊」。その任務はつい最近まで、ネウロイに占拠されていたマルタ島。

そこへ航空ウィッチや上陸部隊の援護の元、工兵や輜重兵。
あるいは民間技師等々を一挙に上陸させ、最低限度のインフラを短期間に復旧することにあった。


「隊長の連れてきた二人は、腕前はどうなんです？」
「だから今は違うんだけれどね…うん、ナイトウィッチの方は文句なしのベテラン。若手も1000時間以上、実戦を介して飛んでる」
「もしかしてうちの若い連中よりは、余程？」
「少なくとも頼りにならない人間は、今回は連れてきていませんよ？」


夜間爆撃に手も足も出ないなんて真っ平だし、こういう任務でこそ若手を鍛えるチャンスだしね。
千早はそんなことを口にしつつ、彼女の現在の上官。

出雲涼海軍中佐から、この任務を拝命した時のことを思い出したしていた。





『鎮魂と再建－マルタ復旧作業任務始末記－』





「工兵を早急に派遣し、マルタの港湾機能の復旧…ですか」
「ああ。そしてこのあたりで、師団工兵に余力があるのは、広島から引っ張ってきた第五師団。
　それに丙型特殊船付の船舶工兵程度だ」


出雲中佐は先日のマルタ島攻略作戦。その際、ネウロイマザーが崩落した後のマルタ島の随所。
それを偵察機が撮影した航空写真を、執務机の上に並べた。


「これは相当ですね…五師と船舶工兵だけですか？リベリオンのシービーズ。
　ロマーニャの陸軍の援護なども、可能ならばあった方が」
「宇垣司令、松田司令。それに第五師団長も打診はしている。シービーズは一週間遅れ程度で大隊が。
　ロマーニャの方は、何とか築城工兵を集成で三個中隊程度は出してくれるらしい」
「金属喰らいの猛威は何度見ても、慣れませんね…」
「ああ。そしてそうなると丙型特殊船に慣れた人間の出番、というわけだ」



それはそうだろうと、船舶工兵部隊付属の飛行戦隊出身者は、航空写真を見て改めて思った。
確かに千早は航空ウィッチであり、その本業は制空戦闘任務である。

だが揚陸第一陣を上空から援護し、何処がもっとも抵抗が薄い地点か。
どのような地形が上陸に適しているか。上空からある程度の見分けがつくように、基礎段階ではあるが、
船舶工兵付の飛行戦隊勤務者は、工兵教育も受けている。


「鉄筋コンクリート造りの桟橋は…駄目ですね。ガントリークレーンも軒並み骨抜きにされている。
　古い石造りの桟橋が、意外なほど健在なのは救いですが」
「流石は工兵隊付、見立てが早いな。で、うちから出せるのはそちらを含め、3名程度だ」
「二〇二戦隊はどうなっています？」
「定数12名揃ってる、飛行時間も練度も悪くない。しかし実戦経験者は四分の一もいない。
　あちらさんからのご指名だよ。大所帯だからなんとかなるだろう、とな」


大所帯故に便利屋扱いされているのを、重々承知といった顔だった。あれは食えない御仁だな。
そういって苦笑する出雲中佐の言葉は概ね的を得ていた。

六六六空は当初こそ寄せ集め、烏合の衆などと言われた時期もあった。
しかし指揮官出雲少佐(当時)を始めとする、大尉クラス以上やベテラン達の訓練指導。

そしてありとあらゆる伝手を用い、航空ウィッチ用重火器をかき集め、それを主軸とした戦闘を経験し、
何時の間にか各地の精鋭JFWには及ばないが、23名個々が水準以上。そして大火力を有する、
ウィッチ飛行隊としては破格の規模の部隊に成長していた。


「あちらに2名、こちらに3名。そんな感じで短期間とは言え増援要請が度重なっている。
　501だけでは手が足りない、ロマーニャ空軍は足が短い、504は未だに再建中では断れん」
「了解しました。大槻中尉、一時原隊に復帰。復旧任務に従事します」
「頼む。他の2名の人選は任せる、それとこれが今回の作戦。
　うちでは建号作戦と呼ばれているが、概略案だ。大雑把に説明してしまえば－」


出雲涼の本当にザックリとした。しかし抑えるところを抑えた説明を要約してしまうと、
今のところは扶桑皇国しか有していない、全通甲板型(空母型)高速輸送船3隻。

そして喫水線を調整し、健在な桟橋ないし埠頭にデリックの高さを調整できる、
中戦車さえ運べるリベリオン製高速RORO型輸送船4隻。

これらに駆逐艦、海防艦18隻。そして大型輸送船では近づけない浅深度水域。
そこへの進入が可能で、なおかつ海防艦並の武装を有する一等輸送艦6隻。

合計30隻以上の護衛艦艇、輸送船を持って師団工兵連隊。ロマーニャ築城工兵。
そして護衛に当たる第五師団の連隊戦闘団を一挙に揚陸。


可及的速やかに現地に必要な最低限の軍民インフラを復旧。
軍事拠点としても生活拠点としても、再建の端緒をつけてくるというはなしであった。

そして陸軍飛行第202戦隊、六六六空から千早を含む3名は上空援護。
ウィッチ15名を貼り込むとは大事であるが、これはこれで理由がある。



「特殊船3ハイにRORO船4ハイ。これだけ注ぎ込むというのは、時間に余裕が無いということですね」
「ヴェネチアハイヴ奪還。それに関する突き上げが随所から高まっている。
　それに備えて後背だけでも手早く何とかしておきたい。そういうことだろうな」
「後はここで上陸作戦じみた行動をこなしておけば、後々の予行演習にもなります、か」


無論、貴重極まりない高速大型輸送船。
それも航空機・ウィッチ運用能力を持つものや、重車両を迅速に展開できる大型船を7隻。

これらに同様に貴重な機械化された工兵、陸戦ウィッチを含む完全編成に近い戦闘団。
そういった貴重な部隊を載せる以上、当然の措置とは言える。

しかし理由はそれだけではなく、後に「オペレーションマルス」と呼ばれることになるヴェネチア奪還作戦。
その際に素案の1つとして検討されている、陸戦ウィッチの艦艇、航空部隊と共同しての上陸作戦。
事実上の強襲揚陸の事前演習。そういった側面も持たされていた。


「こちらには切り札が一応はある。しかしまだ不確定だ。正攻法での破壊も考慮したいのは当然だな。
　中尉、こちらが今、何とか暇そうな連中だ。すまないが伊勢も日向も今回は出せない。
　重油が一時的にだが、不足しがちでな」
「その点、贅沢は言えません。寧ろ駆逐艦、海防艦が20隻近くついてくれるだけでも。
　…成る程、現在タラント飛行場で駐屯しているのは、14名ですか」


無理のない話ではある。南号作戦では航空戦艦2隻と艦隊駆逐艦4隻を、巡航としては破格の、
22ノットオーバーで延々と突っ走らせている。これだけでも相当な重油消費量になる。

加えて肝心のマルタ島奪還作戦では、主役が501JFWと31JFSのエースウィッチだったとはいえ、
501JFW残存ウィッチさえ陽動として投入。

艦隊に至っては旗艦たるガリア共和国海軍最新戦艦「ガスゴーニュ」以下、
戦艦5隻、空母2隻、巡洋艦6隻、駆逐艦12隻さえ貼り込んで陽動を行ったのだ。


そうなれば寧ろ、30隻以上の優良輸送船と護衛艦艇。そして魔法力消耗が激しい場合、
回復に相応の時間を有する航空ウィッチ10名以上が、即応待機にあるのは寧ろ僥倖といえる。


「クスリンナ中尉とレオノア曹長、この二人をお借りします」
「了解した、正式に発令する。で、理由は？」
「確かに近隣のネウロイは排除されましたが、もう一度奇襲がないとは断言できません。
　それが夜襲になった場合、ナイトウィッチがいなければ手も足も出ない」
「クスリンナなら猪突猛進ということはない、夜間歩哨には最適だな。で、曹長の方は」


若干言葉にするのを躊躇ったが、千早は思い切って切り出した。
どの道、この戦況では言葉を選んでいることはできない。


「一番飛行時間が短く、なおかつ護衛空母から飛んだ経験を使わせてもらいます。
　こういう脅威度の低い任務で、少しでも離着艦と飛行時間を稼いでおきたいと思います」
「それだけではなさそうだな」
「これは二人に共通していますが、スオムスとウラジオ。双方で相当に返り血を浴びています。
　マルタ島は奇跡的に、相当数が脱出することが出来ましたが、ホトケさんを見ないで済むとは到底」
「かといって大尉クラスを外すわけにも行かない、か。妥当な線だな」



リーヌ・クスリンナ中尉は「まずは夜の歩哨たれ」と、猪突猛進を戒めた慎重な飛行勤務を心がける、
スオムス空軍出身の練達のナイトウィッチである。

本来なら同じナイトウィッチのシュニッツラー少佐、白水中尉などとペアを組むのがベストだが、
彼女らは戦力不足の飛行隊へ分遣隊として。あるいは航空隊本管で多忙を極めている。

クスリンナ中尉は出雲中佐が手元に残した、夜間戦闘最後の手札とも言える。
それを遠慮無く要求し、了承する当たりに双方ともに今回の任務への理解がうかがえた。


一方のソフィア・レオノア曹長はこの部隊の中では最年少クラス。当然、飛行時間も短かった。
現在では1000時間前後は飛んでおり、実戦も幾度もくぐっている。

ストライカーユニットもオラーシャが近日、ついに正式量産を開始した新鋭のLa-9増加試作型を装備。
元々、物怖じしない性格と敢闘精神から、通常の任務なら安心して任せるレベルになっている。

だが、次の任務は恐らくまともな有様ではすむまい。
他にも気がかりなウィッチは、欧州戦線を以前にも経験した千早から見て、数名ほどいたが、
今現在、この飛行場で即応待機している中では、彼女が最も気にかかっていた。


「La-9は良いユニットですが、まだ慣れているウィッチが殆どいません。
　バラノワ中尉は比較的手馴れていますが、彼女は現在、北部戦線で」
「ああ。陸上ネウロイ相手に本業に立ち返っている。そうなると機体特性の近い84装備の部隊。
　そこで飛行時間を稼ぐのは、確かに悪くない」



この千早からの要請は、直ちに正式な命令として航空隊本部より発令されている。
だが彼女は、リーヌとソーニャに直接頭を下げ、同道を願った。

たとえ形式的なものであれ、任務で責任を負うものは部下に頭をさげるべきだ。最低は一度。
それが14歳にして欧州戦線で軍隊の現実を見た、大槻千早という。

肉体は虚弱体質であっても、精神的には年齢相応以上に老成せざるを得なかった、
扶桑陸軍航空機械化歩兵中尉の信条であった。



「多忙な中、大変申し訳ない。しかし中尉の経験を見込んで。
　そして曹長の技量向上の機会として、どうか任務に付き従ってもらえないか」


日頃は女性としての、どちらかと言えば品のいい話し方をする千早であったが、こういう時には必ず、
軍規に背かないやや固い。しかし将校として、一人の個人として礼儀を尽くすウィッチでもあった。


「いえ、そんな…寧ろ大歓迎です。帰ってきたら先輩よりもうまく飛ばせるようになってる、
　絶好のチャンスです。絶対に行かせてください」
「了解しました。何処まであてになるか分かりませんが、微力を尽くしますよ」


若手ウィッチに相応しい元気さを、未だに多分に残しているソフィア・レオノア曹長。
夜間飛行だけで800時間以上を飛んでいる、ベテランナイトウィッチのリーヌ・クスリンナ中尉。

国籍も年齢も装備ストライカーも異なる二人のウィッチは、対照的な態度ながらも、
千早の礼を尽くした態度に、勿論正規の軍命故に当然ではあるが、快諾の上で敬礼を捧げた。


「本当に有難う。私の本来の原隊は、多少癖の強い部隊ではあるけれど、面白いところでしてね。
　少なくとも－今回、ネウロイが大挙して現れないとしても、退屈だけはしませんよ」


それに応じる千早も、普段通りの言葉遣いに戻り、練れた答礼を返した。
かくして六六六空からMR部隊－Malta・Rebuild・Unitへ三名のウィッチが出向。 

ようやく奪還なった地中海交通の要衝。その再建を上空から援護することとなったのだ。





「それで、丙型での最初の一日はどうだった」


大槻千早中尉の原隊。飛行第二〇二戦隊長にして丙型特殊船「熊野丸」船長。
戸野本中佐は、如何にも工兵らしい角張った頑固そうな顔立ちに、若干値踏みするような。

そんな色合いを浮かべ、目の前にいるウィッチ2名に尋ねた。
すでに時間は19時を大きく回っており、リーヌ・クスリンナ中尉は夜間哨戒に出向いている。


「昔に比べますと、随分と腰が座ったといいますか、雰囲気が変わりましたね」
「前に護衛空母に乗せてもらったんですが…
　それに劣らないと言うか、扶桑はどれだけ軍艦を持ってるんでしょう」


千早の遠慮のない所感。ソーニャの率直な感想に戸野本は四角い顔に笑い皺を刻んだ。


「相も変わらず容赦がねえな。それと嬢ちゃん。こいつは…空母というより輸送艦でな。
　後でそこの生真面目な毒舌中尉に案内してもらえ」
「話には聞いていましたが、こんな空母みたいな輸送艦があるんですね。世の中。贅沢でいいなあ」
「大丈夫。乗ってる人間はそれほど贅沢じゃありません、目の前の不良中年からして」
「俺はまだ不惑は迎えてねぇンだよ」


まだ丙型特殊船部隊が創設期の頃からの付き合いの千早の、意外とざっくりとした口調。

それに合わせてカラカラと笑うと、
官給煙草の「敷島」を胸ポケットから取り出そうとして－慌ててしまい込んだ。

仮にも航空ウィッチ。空中勤務者(パイロット)同様に肺活量が命の一つでもある彼女たちの前で、
うかと紫煙を吹かすわけにもいかない。


「まあ、こちらからも飛行勤務状態は目視と電探で見せてもらった。
　流石はあの六六六空というべきか。随分と腕をあげたな、大槻中尉？」
「有難うございます。まあ、色々ありまして…
　しかしここでも、84での離着艦にびくつく事はなくなったんですね」
「ある意味では、お前さん方が刺激になったんだよ」


幾ら海軍サンの軍艦だからって、戦艦に84より離着艦が面倒なストライカーで乗り降りしてる。
そんな連中もいるのに、陸軍空母乗りの自分達がびくついていられるか。
古株よりも寧ろ、若手の連中がそう言って発奮してな。随分と肝は座ったよ。



「それで、だ」


すと笑顔をしまい込み、真顔になった戦隊長は地図の上に兵用地誌を広げた。

言うまでもなくマルタ島のそれである。随所に細かい損害状況、不明区画の書き込み。
何らかのメモが記されているあたり、船舶工兵や師団工兵隊とも協議を行ったのだろう。


「今のところ巡航16ノットなので、概ね二日後には到着する。バレッタの港は完全に壊滅。
　最初はお前さん方の上空援護の元、一等輸送艦から陸戦ウィッチと戦車、工兵を降ろす」
「いきなり戦車とはまた」
「あくまで可能性だが、マザーが壊滅しても陸上型ネウロイが残存している可能性がある。
　その時には陸戦ウィッチに側背の援護を受けつつ、戦車が工兵の盾になるしかない」
「市街地は、どうなんでしょう？」
「一応、ネウロイのマザーから直接は侵食されていない。被害もさほどではない」



ソーニャの質問に、先ほどとは異なる苦い皺を刻んだ戸野本中佐は、やはり一本吸わせてもらう。
そう断って敷島にマッチで火をつけ、紫煙を吐き出すと続けた。


「航空偵察によると、直接的な被害はそれほど多くない。石造りの建物は基本的に頑丈で、
　大多数が原型を保っている。ネウロイのビームや爆撃で吹っ飛んだのもあるが、それは再建できる。しかし」
「人的損害が本当の問題、ですか」
「敏いな、確かウラジオにいたんだったな。その通りだ。あの時、ロマーニャの守備隊と海軍が踏ん張って、
　居住者の八割はアフリカかロマーニャ本土へ、散り散りながら逃げ出せた。だが二割ほどは行方不明」
「…助かりませんね」
「ところがそうとも限らん。逆に言えば、ひどい話だがそれが厄介なんだ」


何が厄介かは言うまでもない。
どれほどの生存者がいるか分からないということは、救助が間に合うか知れたものではない。

同時に物資が欠乏し、瘴気の恐怖に晒されながら逃げ延び続けていたとしたら、
治安が著しく悪化している可能性もあるのだ。
難民同士の配給品の奪い合い。そういったものは欧州やオラーシャでも日常茶飯事であった。



「兎に角、蛇が出るか鬼が出るか。まだ見当がつかん。
　これから二日間、余程の悪天候でもない限り、一時間でも多く飛んでおいてくれ。
　後は…大槻はいいとして、そっちの嬢ちゃん」
「はい？」
「84－ああ、四式戦と組んだ感じはどうだ。というより、普段と違うウィッチとの編隊飛行だな」
「そうですね…」


四式戦自体は六六六空でも、扶桑陸軍のウィッチの過半が使っており、違和感はない。
基本的には上昇力も降下性能も申し分なく、高速旋回も強い。
ソーニャの目からすると、マ-45が多少華奢に見えるが、それでも大きな故障はさほど聞かない。

肝心なのは乗りこなす側である。


「正直、多少戸惑っています。普段と違う人と編隊を組むのもそうですが、私自身、
　あの試作機にそれほど慣れてはいないんです。150時間は飛びましたので、基礎は身についてますが…」
「そうだな。悪くはないがどう84に合わせるか。若干挙動に躊躇があるような気がした。
　うちの連中がそんなことを話していたよ。加速性や速度はそっちが上な分、尚更かもしれん」

「何とか慣れて見せます。ネウロイがこっちの都合に合わせてくれるわけじゃないですし」
「ああ、その意気で頼む。時間を取らせてすまなかった。今晩はゆっくり休んでくれ。
　船に慣れない兵隊を乗せることも考えてるから、揺れ以外は乗り心地は悪くないぞ」



敬礼と答礼を交わし、船長室兼戦隊長室を退室すると、二人の航空ウィッチは船体後部へと歩みを進めた。
中途、すれ違う乗員や乗船している部隊将兵とも敬礼をかわしつつ。

「熊野丸」は元々、全長180mにして基準排水量11000tと、全通甲板搭載艦としてはこぶりな部類である。
その割には「輸送艦」という性格上、背が高いために安定性はさほど宜しいものではない。


「中尉は陸軍サンなのに、前から思ってましたけれど船の中で綺麗に歩きますよね」
「最初はおっかなびっくりでしたけれど、丙型特殊船や海軍の空母。それに日向や伊勢ですっかり」
「私も護衛空母で親切な少尉さんに教えてもらうまでは、なかなか慣れなくて。船酔いは縁がないんですけどね」


空母を持たない海軍航空隊のウィッチ。
本来は陸軍でありながら空母のような輸送艦で飛んでいたウィッチ。

ある意味では好対照な二人であるが、航空戦艦というある意味では無理のかかった軍艦でしごかれたせいか、
若干動揺のある通路を、危うげのない早足で進んでいく。

やがて彼女らが完全武装で佇立するの衛兵に、部隊徽章と用件を告げて開かれた分厚い鉄扉。
そこを潜った先は、ちょっとした異世界であった。



「まるで…ドックみたいですね。これだけの舟艇が詰まっていたなんて」
「舟艇を出すときはここに注水を行なって、後部ランプを開いて自走させる仕組みなんですよ」
「お金持ちの軍隊っていいなあ」


そう。そこにはかなり高い天井を有する、広大な空間が存在していた。
その底部には扶桑皇国陸海軍が多用する、大型発動輸送艇。通称大発が20隻以上。
固定された陸戦型ストライカーユニットや戦車、工兵機材共々鎮座していた。

何れも鋼製大発であり、ネウロイの抵抗を予期しているのであろう。
操縦室近隣にはブラウニー50口径重機関銃などが増設されている。


「あれ…もしかして、大槻中尉？」
「はい。って、あら。もしかして？」
「お久しぶりです、欧州にいた頃は直協で助かりました」


大発区画をキャットウォークから見物していた二人の背後に立っていたのは、
恐らくは南欧での訓練に明け暮れ、更に日焼けしたのだろう。

浅黒い肌と馬の尾のように結んだ髪を持つ、
制服に装甲機械化歩兵徽章を縫いつけたウィッチの少尉であった。

背丈はさほどでもないが、随所に引き締まった筋力が感じられるのは、流石本職というべきか。
但し表情は意外なほど愛嬌のあるものであったが。



「こちらは井村少尉。私が欧州で飛んでいた頃、何度もお世話になった陸戦ウィッチ。
　九七式で機動戦をやって、小型ネウロイの飛行場への浸透を防いでくれた恩人」
「いやいや、こちらも遅滞防御戦闘の時は、さんざん上を守ってもらいましたから…
　そちらの曹長サンは？」
「挨拶が遅れました。オラーシャ陸軍より出向、海軍六六六空所属のソフィア・レオノア曹長です」
「六六六空って…ああ、あの。オラーシャからも人が来てたのかあ」


ここじゃ作業中の船舶工兵の邪魔になりますし、士官室にでも行きますか。

井村の馬の尾を追う形で士官室に行く途中、彼女はソーニャの方を一度くるりと振り向くと、
お金持ちの軍隊はって言うけれどね？と苦笑した。



「中型ネウロイ相手にやりあえるストライカーユニット、作れたのはほんの最近なんだわ。
　それまではオラーシャのT-34が本当に羨ましかった。使わせてもらったこともあるけれど、
　機動力もシールド強度も、ペイロードも桁違い。お互い様ってことよ」
「あ、あははは…まあうちは、それだけが取り柄みたいなものですから」
「今回も新型戦車や三式陸上戦闘脚。あちこちの留守部隊からも掻き集めて、やっとだもの。
　そっちの兵站将校さんに伝手があったら、いっそKV-2型とか少し欲しいくらいよ」


全くの余談ではあるが、兵站将校を叔父に持つソーニャを経由して、
井村の所属する第五師団機械化歩兵連隊。そこへ複数中隊規模のKV-2が、
本当に「試験要目機材」という名称で運び込まれ、当人たちを呆れ返らせたのは一年後のことであった。





「エコ－0-3より各位。夜間視力、空間失調、ストライカーの不備。何か異常があればすぐに」
「エコー3-1より問題なし。船団との通信、発光試験信号よし」
「エコ－3-2、0-3及び3-1の識別灯確認。夜間視力問題なし、ストライカー正常作動」


既に夜の帳を迎えた地中海。そこにおいて熊野丸より夜間発艦を果たしたリーヌ・クスリンナ中尉。

彼女は飛行二〇二戦隊でのブランクを取り戻す必要のある千早。
あるいはLa-9を1時間でも多く飛ばす必要のあるソーニャとは別のスタンスにあった。

即ち本格的なナイトウィッチを有さない二〇二戦隊における、夜間洋上航法と哨戒の指導教官である。


(私は本当は、誰かに教えてまわるという柄ではないんですが…)


後方を飛翔する「秋津丸」「にぎつ丸」から発艦した、僚機となっている二〇二戦隊のウィッチ達。
彼女らのシルエット、飛行姿勢、飛行灯、魔導エンジンの排気炎を暗視の魔眼で確認する。

少なくとも空間識失調や機体のトリムタブ、フラップ、エンジンの不調など、そういったトラブルは見受けられない。
若手二人で夜間飛行は200時間未満というが、専門職のリーヌの目から見てもそれなりに安定した様子である。


「0-3(リーヌ)了解、これから緩やかな蛇行で哨戒飛行に。背中は預けましたよ？」
「3-1了解、二〇二戦隊三中隊日野少尉です。宜しくお願いします！」
「3-2了解しました、同じく二中隊芹沢軍曹です、宜しくお願いします」
「こちらこそ。哨戒と連絡を密に、けして戦果を逸らないこと。下の電探誘導から外れないこと。
　気を抜けとは言えませんが、緊張しすぎないように行きましょう」


リーヌとしては穏やかに笑ったつもりだが、慣れ始めた夜間視力ごしにも、やはり凄みのある微笑に見えたらしい。
二人は気合の入った敬礼を寄越してきた。リーヌも軽い答礼で応じ、緩やかにロールを打って進路変更に移る。


(慣れるべきなんでしょうけど、強面と誤解されるのも困ったものです)


手元の九九式二号二型改13mm機銃に初弾を装填し、安全装置を確認するとリーヌは内心で苦笑した。
彼女は口数の少ない。過剰な自己主張を好まない物静かな性格の持ち主で、若手相手にも丁寧に接する事が多い。

只、これは他者からすれば贅沢な悩みかもしれないが、彼女の整った顔立ちと隙のなさ。

特に表情と唇が薄く、暗視の固有魔法を使うことから自然ときつくなった目元から「怖い人」と誤解されやすいのだ。
実際、熊野丸に乗船してからも、怯えるというほどではないが、何か当惑した表情をされることも多かった。
(もっとも実際に話した彼女の人当たりから、誤解は長続きはしなかったが)



(さて)


ナイトウィッチ特有の魔導針を展開し、それとなく波を探り始める。電子装備で言えば逆探のようなものだ。
積極的に魔力波を送るよりも、魔法力消費が小さく、相手が余程未知のものでもない限り、ネウロイを見逃すことも少ない。


「エコー0-3、こちらオペラ0-1。そちらをレーダーで確認した」
「オペラ0-1、エコー0-3了解。現在規定進路をレジーエイトで哨戒中」


眼下を航行中の船団護衛部隊旗艦。
リベリオン海軍駆逐艦「ニコラス」からの通信に、リーヌは若干訛りのあるブリタニア語で応じた。

旗艦が駆逐艦とは若干不安を本来覚えるところだが、流石は世界の工場の生み出した艦隊駆逐艦。
その一隻である彼女は下手な巡洋艦より充実したレーダー、通信装置、ＣＩＣを有していた。


「低高度から中高度はこちらのレーダーで何とかする。君達は高高度哨戒を頼む。
　エンジェル2-2-0、ヴェクター1-2-0、レジーエイト」
「了解、高度220、進路120、現進路維持」


扶桑皇国海軍とは異なる航空管制であるが、多国籍部隊にいることが多かったリーヌには、困る程でもない。
現在高度は5000m(16000フィート前後)、そうなると。


「各位へ、高度6500まで上昇。しっかり続いてください」
「「了解！」」


リーヌはカールスラント製R2800といえるBMW805へ。日野少尉と芹沢軍曹はマ45へ。
異なる空冷18気筒魔導エンジンへ魔法力を、エーテル燃料を媒介に注ぎ込み、徐々に出力を上げてゆく。



「いきますよ」


フラップとトリムタブの操作、そして出力を増した魔導エンジンの推力によりFw190T-2は高度を上げてゆく。
とはいえ一般にイメージされるような、鮮やかな急上昇ではなく、寧ろ慎重なペースで高度をとってゆく。


(若干緊張気味ですが、流石は若手でも800時間は飛ばしているだけに、大丈夫そうですね)


魔法力を相応に消耗すること。そして暗視の魔眼を用いると、
目の虹彩が七色に近く変化することを彼女自身、好んでいないため、短時間だけ固有魔法を発現。

二人の扶桑の若手ウィッチの飛び方を観察する。
晴天の夜間飛行とは言え、安定している。このまま育てれば良いナイトウィッチになれるのでは。

そんなことを考えている折、いち早く既に高度を6000近くまで取った彼女の魔導針が、何かの波を拾った。
一瞬緊張したリーヌであるが、それは敵意を感じるものではなく、人の声であった。


(これはネウロイじゃない…誰かの、歌？)


儚く聞こえるが、芯の強さも感じさせる声音を魔導針ごしに感じる。恐らくは同じナイトウィッチの誰かが、歌っているのだろう。

夜間長時間の哨戒が多いナイトウィッチは、魔導針と電離層反射を用いた長距離通信。
民間で言えばアマチュア無線に該当するそれを用い、暇や寂しさを紛らわせるものが多いという。

リーヌ自身は話しかけられない限り、積極的にそれを用いる方ではなかった。嫌っていると言うより、単独哨戒が多く、
技量に反して謙虚な彼女は、夜間飛行中の私信は自分には危険だろうと、控えめに距離を置いていたのだ。



「あ、これって501のリトヴャク中尉ですよ」
「うちでも電波状態がいい時は、通信機やラジオが拾えることがあるんです。綺麗な声ですよね」
「リトヴャク中尉って…あのオラーシャの。そう、彼女が」


リーヌも同じ南欧方面に展開するナイトウィッチとして、友軍誤射を避けるためもあって、この方面のナイトウィッチ。

その一覧情報は目を通しており、フリーガーハマーを自在に扱う繊細で華奢にさえ見える少女。
何処かの飲み助と同国人とは思えない、自分より年少のナイトウィッチのエースの存在は知っていた。


「綺麗な歌声ですね。静かで穏やかですけれど、迷いもない。一度お会い出来ればいいんですけど」
「でもリトヴャク中尉って、凄く人見知りが激しいとか。後…」
「哨戒のないときはラジオもやってるんですけれど、
　その時のパートナーが迂闊に近づくと、すっごく怒るそうです」
「それはまた…って確か、彼女のペアって、まさか？」


事の次第に気づいたリーヌは、一瞬だけ軽く天を仰いだ。
後ろの二人からも小声で笑い声が聞こえてくる。


(無傷の撃墜王、ダイヤのエースが何をやってるんですか…
　501に行って性格が変わったんでしょうか？)


そう。今、聞こえるサーニャ・V・リトヴャク中尉の夜間哨戒のペアを務めるのは、リーヌの同国人たるウィッチ。

飛行24戦隊でハンナ・ウィンド大尉と並び、スオムスのトップエースとして名を轟かせている。
シールドを一度も使わず、被弾というものを知らない猛者。エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉であった。

リーヌの知るエイラとはぶっきらぼうで寡黙。しかし為すべきことは人並外れてこなすという。
ある意味では彼女以上に、多少強面のイメージで知られていたはずだが…



「場所が変われば人間、性格も多少は変わるんですかねえ」


リーヌの呆れ混じりの苦笑。そして付き従う二人の若手ウィッチの小さな笑い声は、昼間と変わって晴れ渡った夜空。
満天の星空へと吸い込まれていった。

無論、そんな苦笑は短時間で収め、何時もの彼女らしい手を抜かない、慎重な哨戒飛行へと戻る。
夜間哨戒に不慣れな若手に無理をさせない事もあり、哨戒時間は比較的淡々と過ぎてゆく。

しかしその晩は若手の安否確認と飛行指導。
そして彼女としては珍しく、多少口数の多い雑談により退屈することはなかった。

六六六空の慣れ親しんだ阿吽の呼吸も良いが、こういう口と手を介しての指導や雑談交じりの飛行も悪くない。
リーヌがそんなことを考える頃には、規定哨戒飛行時間は終わりが近づいていた。



「哨戒時刻もそろそろお終いですね…オペラ0-1、エコー0-3、帰投要請」
「オペラ0-1コピー、長い時間ご苦労だった。
　無事に着艦して休んでくれ。こっちも君等ごしに良いものを聞かせてもらった」
「ええ、でしたら幸いです。後を願います」
「ああ、願われた。無事の着艦を」


今回の作戦ではナイトウィッチがリーヌだけであり、フラックウルフがエンジン換装と増漕装備により、
航続距離を大幅に伸ばしたとは言え、巡航に絞っても扶桑やリベリオンのユニットほど長時間は飛べないため、
今晩のエアカバーは終わらせざるを得ない。些か不安はあるが、やむを得ない措置だ。

まさかリーヌに一晩中、代わる代わる新人ウィッチの指導をやらせるなど論外だ。
人間である以上、ウィッチにも限界というものはあるのだ。


幸いにしてリーヌが日野少尉、芹沢軍曹がそれぞれ「秋津丸」「にぎつ丸」への着艦を確認し、自らも「熊野丸」に着艦した晩。
駆逐艦と海防艦のレーダー(電探)がそれぞれ、異なる高度をくまなく探っていたこともあってか、大きな危険性の兆候はなかった。


「あんな子たちに上を守ってもらって、俺達がミスをしでかしたらリベリオン海軍の名折れですね」
「いや全だ…オペラ0-1より各艦。本艦及び0-2は遠距離中高度を。0-3は近距離低高度を。0-4は中距離高高度。
　しっかり見張ってくれ。ESMもウィッチのラジオ、歌声だけにうつつをぬかすんじゃないぞ？」


リベリオン製SK-2、扶桑製二六号等のマイクロ波対空レーダー。あるいはSC型や一三号四型等のセンチ波レーダー。
そして逆探知装置を用い、護衛に当たる各艦艇は最善を尽くした。

彼女らは電波の千里眼を用い、異なる高度と距離を探り続け、聞き耳を立て続けることにより、
この晩、船団に近づく不審目標がないことをしかと確認し続けたのだ。



一方。


「本人は人を教える、先導機を務める柄ではないと言っていたが…自己評価が低すぎるんじゃないか？
　あれだけの腕前のナイトウィッチなら教官に欲しいくらいだ。大槻、交渉を頼まれてくれないか」
「戦隊長ご自身でどうぞ。というより人の同僚を勝手にヘッドハンティングしないでください」


「熊野丸」の電探での飛行記録を確認した戸野本の、リーヌへの評価は非常に高いものであった。
「技量優秀、適切な慎重さ、指揮官として申し分なし。本陸軍基準で技量甲の上位」と。

因みにこの作戦の後、本当に出雲中佐を相手にスカウトを試しにかけた戸野本中佐であるが、
にべもなく「駄目です」「わてくしの貴重な部下を引き抜くのは、ご勘弁を」と、六六六空ナンバー1と2に却下された。




数日後－


『船団指揮官より達する。前方10マイルにマルタ島を視認。アルファグループ、上陸用意』
「始まりましたね」


マルタ島まで概ね15km前後に迫った段階で、船団指揮官より第一陣揚陸準備が発令された。

それに先んじて六六六空より出向している3名を含め、
飛行二〇二戦隊は全力での警急配置を事前に敷いていた。

四式戦闘脚を纏い、九九式二号二型13mm機銃を構えつつ、眼下の輸送船団の様相を伺った。
2000馬力近い魔導エンジンの重奏はストライカーユニットとはいえ、轟々と空気を震わせている。


「鬼が出るか蛇が出るか。あるいは何も無いと良いんですが」
「それを探るのがこっちの仕事、か」
『エコー0-1(中隊長)より各位、事前敵地偵察に移る。0-1及び0-2(千早)、高度1500まで降下。
　及び0-3(リーヌ)及び0-4(4小隊長)は5000にて上空警戒』
「さて、出番ですね」
「0-2より各位、1小隊に続き増速降下。偵察地点は市街地近隣、発光反応などに警戒」


それまで3000mを飛行していたウィッチ達が、一挙に編隊を二分し始めた。

現在の飛行二〇二戦隊における空中指揮官、飛行中隊長が直率する第一小隊。
そして千早が率いる第二小隊は、1500mまで降下しつつマルタ島直上を目指す。

一方、リーヌが臨時指揮官を任せられた3小隊。ソーニャが2番機を務めている4小隊は中高度以上まで上昇。
万が一の航空ネウロイの襲来に備えて、警戒配置をとり始めた。


(万が一にも見逃しがないように…よっと！)


相変わらず器用というか、それ羨ましいですよ。

僚機の曹長の笑い声を耳にしつつ、千早は短時間であるが物体を3次元に操れる固有魔法。
それを用いて放り投げ他双眼鏡を受け取り、丹念に地上を観察し始めた。

勿論、双眼鏡の対物レンズへの日光の反射。それをいるかもしれない地上の生存者が目に留めることも期待して。



「輸送艦は付いてきているか」
「落伍艦なし、異常を認めず」
「本艦現在速力12ノット、陸上及び上空に異常反応を認めず」


そして第一陣を務めるアルファグループ。

その気になれば岸壁に直接、艦尾スロープを接岸させて車輌。人員を展開できる一号型輸送艦6隻。
同じく喫水線が浅く、万が一にもネウロイが陸上に残っていた場合、輸送艦の盾となれる丙型海防艦がやはり6隻。

彼女らは上空の航空ウィッチのエアカバーを受けつつ、
上陸前の速度としては限界に近い12ノットで編隊を維持し、揚陸目標となった港湾跡地へ進む。

海防艦、一号型輸送艦ともに高角砲は水平近くに倒され、陸地を睨んでいる。
機関砲や機銃こそ対空配置についているが、こちらも装填されているのは徹甲榴弾ばかり。

仮に陸上ネウロイが残存していた場合、高角砲特有の高い発射速度を頼みに制圧。
最悪、航行に支障を来すほどの損傷があった場合、艦ごとのし上げて橋頭堡を確保する事も任務に含まれていた。



「どうにもぞっとせんな。こういう時こそ戦艦か巡洋艦でも持ち出せれば良かったんだが」
「陽動作戦で相当に重油を消費してますからね。ロマーニャの内海航路を止めるわけにもいかんですし」


護衛に当たる海防艦戦隊。その旗艦の艦橋では応召の予備士官である艦長が、
やはり商船勤務から引っ張られた航海長共々、配置についていた。

本来は艦橋は航海長に任せるべきであるが、
護衛隊旗艦で輸送艦も先導せねばならないとなると、そうも言ってはいられない。
航行の安全上、肉眼で船団状況を確認するに越したことはない。


そして彼らの言葉は概ね事実であった。

先ほどのマルタ島ネウロイマザー攻略作戦において、
ガリア海軍戦艦ガスゴーニュ以下の陽動艦隊は、マルタ島50海里の沖合でネウロイの空襲を受けている。

空母「天城」にかの精鋭501JFWを乗せ、なおかつ各艦の熾烈な対空砲火により損害こそ少なく、
それが目的であったとは言え、大型艦の高速回避運動による燃料消費は甚大である。

加えて言えば戦時とは言え、ロマーニャ・ヴェネチア国民も食っていかねばならず、地中海及び沿岸航路を止めるわけはいかない。
今回の作戦に輸送艦以外に、陽動が務まりそうな大型戦闘艦がいないのはそういう事情であった。


「まあ言ってみただけだ。航海長、今日の操舵は難しいぞ」
「はあ、浅海域での操艦は苦手ですなあ」


救いといえば、海防艦も輸送艦も舵を握っているのは殆どが応召の予備士官。
それも商船学校出身者。あるいは海軍を退き民間海運企業で勤務していた者が殆どであることか。

彼らは兵学校出身の将校と異なり、戦闘兵科出身者こそ少ないものの、舵を操るという意味では一般予備士官。
時には本職であるはずの江田島出の将校達より、余程巧みに舵を操ることで重宝されていた。



『…エコー…よりアルファリーダー、送レ』
「アルファよりエコー、感度良し。送レ」
『市街地近隣にて、信号と思しき発光反応複数目視。
　これより発煙弾を投下。当方の目視は可能か。送レ』


艦長が双眼鏡を構え、テレトークで通話を耳にしていた見張り員も即座に大倍率眼鏡を回す。
上空およそ1300前後、距離11000、方位40度。

見張り員の報告に従い双眼鏡の向きを変えた艦長は、
そこに魔導エンジンを敢えて不完全燃焼させて、白煙を引いているウィッチを見つけた。



(意図的に不完全燃焼なんかさせたら、さぞかし疲れるだろうにな…無理をさせてしまったか)


「感謝する、確認した。発煙弾投下されたし、発煙色は何か。送レ」
『緑色発煙筒を10分おきに投下する。その地点へ部隊を急行させられたし』
「了解。直ちに増速、接岸させる－輸送艦各位、聞いていたな。生存者残置の可能性大。
　第三戦速まで増速。規定距離まで近接、大発離艦準備を行え。指揮所、艦橋」


とはいえ航空ウィッチがそこまでの無理をして、状況を把握してくれた異常、彼の腹は決まっていた。
元よりこういう状況を想定し、小回りが効き沿岸部の行動も容易な海防艦、一号型輸送艦がやってきたのだ。


『指揮所、どうぞ』
「船団旗艦へ通信。生存者多数存在の可能性大、後続船団も可能な限り近接急がれたし。目標は緑色発煙」


かくして第一陣は信頼性以外は特筆すべき点のない艦本式ロ号罐の圧力を上げ。
あるいは欧州よりライセンス権を取り付けたディーゼルを回し、急速に港湾跡地との距離を縮める。

如何に艦隊駆逐艦ほど高速は求められていないとは言え、流石は何れも小回りのきく小型艦。
加速や舵の効きはなかなかのものであった。

最初の大発が輸送艦後部甲板のスロープより離艦し、護衛の陸戦ウィッチとカンガルーの通称を持つ装軌装甲兵員輸送車を、
嘗ては歴とした港湾であった陸地へ下ろしたのは、それより30分ほど後のことであった。



「ここからが本番ですね…隊長、今日はお加減は？」
「幸い、今のところは何も。と言ってもそんな事は言っていられませんし」


僚機の古参の曹長の問いかけに、千早は軽く苦笑いで応じた。しかし内心は表情ほど余裕があるものではない。

彼女は確かに欧州へ過去に派兵された経験から、ネウロイを相手にした戦争に銃後はない。
民間人の落命、生活の崩壊が日常茶飯事ということを多く経験し、やり過ごす術は心得ている。

しかし、だからといって慣れきってしまったわけではない。
同時に「やり過ごすのと慣れるのは違う」と、部下にも言い聞かせてきた。

人の死に極端に鈍感となった場合、それは自らの身の危険にも鈍くなる。
何より好んで人死に慣れたいなどと思う物好きは、そうはいない。


(私だって助けられるものなら何とかしたい、その為なら多少の無理に泣き言は言えません)


彼女の先天的な特異体質。それに起因する体調不良は誰もが知悉していたが、
特にこういう任務に際し、大槻千早中尉はそれを理由に飛ぶのを躊躇うウィッチでは、けしてなかった。

たとえそれが、仮に飛行を断念しても誰も責めない状況であったとしても。

健気と受け取るか頑迷と解釈するか。それは人それぞれであるが、少なくともこのような状況において、
輸送船と陸戦部隊の上空を守るのに、間違いのない人選であるのは確かであった。



先遣中隊第三小隊長、井村好枝少尉は一瞬だけ隷下小隊に振り向き、肉眼で再度確認した。

自分と同じように陸上戦闘脚を纏い、四周の警戒にあたっている陸戦ウィッチ3名。
生存者援護のための衛生班、工兵などを載せたカンガルー装甲兵車2台。
そして砲塔を随時旋回させ、やはり警戒態勢をとっている三式中戦車改1台。

小隊長、将校としては任官の浅い自分が、下士官として蓄積してきた経験を用い、
半ばは部下に支えられる形で練磨してきた小隊は、油断なく修羅場へ踏み入れる準備を整えていた。


「装備、人員、全て準備よし。即時進発よろし」
『0-0了解。航空隊からの報告では生存者救援の可能性大。危険ではあるが速度を優先する。
　荷の軽い0-3が前衛警戒、重装備の0-2は中央、0-1は0-0と共に後衛。
　現地点はヴァレッタ近隣の沿岸部、緑色発煙はカルカーラ近隣に多数』


既に兵用地誌を取り出していた井村は、素早く注意事項を彼女なりに書きこんでゆく。
一応、事前に一通りの説明があったとは言え、現実に足を踏み入れるとなると大違いだ。

(ここから…距離にすれば15km程度もない。とはいえ、石造りの古い建物が多い。
　もしも私がネウロイだったら)

野戦用双眼鏡を取り出すと、そこには16世紀から由来を持つという礼拝堂。
他にもローマ帝国時代からとさえ言われる集合住宅、高層建築はかなりの数に上った。

うん。機械化部隊を狙撃兵、伏兵で足止めするには格好の場所だ。
そして伏撃される側にとってはたまったものではないかな、これは…


『目抜き通りといえる広い通りがない。それだけに伏撃された場合、目も当てられない。
　各小隊は最低50mの距離を可能な限り維持。隘路、十字路を警戒。
　当面は航空隊の投下した発煙筒を頼りに進む。質問は？』
『0-2より0-0、支援は何か受けられますか。この状況では最悪、孤立もありえます』
『上の航空隊から1個小隊、何れかが張り付いてくれる。符牒はエコー。
　海防艦、駆逐艦もじきに射撃位置につく』
『0-2了解』
『0-1より0-0、航空隊から指示目標が増えた場合は。優先はどちらになりますか』
『0-1、当面は最初の目標を優先する。情報量が増えれば、後続部隊を含めて動き方も変わる。
　一時には全ては助けられない、了解か』
『0-1了解、最善を尽くします』

「0-3より0-0、現地展開後の優先順位は」
『決まっている』


中隊長－こちらは本職の歩兵科、そこで下士官兵から予科を経て叩き上げた苦労人－は、
躊躇することなく応じた。彼自身もその質問を待っていたらしい。


『生存者の確認と可能な限りの救援、保護だ。状況次第では回転翼機も呼び出す』
「0-3了解しました、小隊、前進準備！」


そう。陸士卒業こそ遅かったが、陸戦ウィッチとしての経歴は井村が最も長かった。
長い間、軍曹と曹長でうろうろとしていたのは、前線勤務が長く、
部隊が後方に下がる機会を掴みにくかったこと。それ故に内地に戻るのが遅かったことが祟っている。

逆に言えば階級こそ低いものの、ウィッチという主戦兵科将兵の中では、彼女は戦地暮らしの長い古参であった。
そうでなければ市街地戦闘が予期される状況で、前衛など任せられない。


『0-0より各位、中隊前進よーい…前へ！』
「小隊、前進開始、続け」


井村は敢えて殊更には声を張り上げず。反面、女性としては相当に大きな肺活量。
雑音やエンジン音の混交する中でも、それに負けずよく通る声で命じた。

三式中戦車の水冷ガソリン、装甲兵車の空冷ディーゼル。陸上戦闘脚の魔導エンジンが咆哮を響かせ。
そして履帯が半壊した石畳を踏みしめる、あの金属音が一帯を支配する。

戦車5台、装甲兵車7台、陸戦ウィッチ12名からなる先遣中隊は、上陸作戦専門の第五師団。
そこから更に選抜されたに相応しく、多数の重装備を逆に機械化の特徴を活用し、引き連れて進軍を開始した。





「下では始まったみたいですね」


ソフィア・レオノア曹長はまだ慣熟しきっているとは言えないものの、
危うげのない姿勢でLa-9を飛翔させつつ、陸上の様子を見守った。

この高度では既にケシ粒以下にしか見えないが、戦車や装甲兵車の立てる煙は目立つ。
低空哨戒をこなすことが多く、それなりに戦慣れしているソーニャからすれば、直ぐに目についた。


『2小隊が張り付いているけれど、最悪、直協に呼び出されることもある。
　それも踏まえて、今は目を光らせ続けるしかないわね』
『電探情報だけに頼れませんからね』
『上空、同高度もそうだけれど、低空警戒を忘れないこと。
　ネウロイ相手に前線、航続距離の常識は通用しない。各位、気を抜かずに警戒に当たれ』


了解の応答を返すと、ソーニャは編隊2番機の位置を維持しつつ、
間断なく上下左右に視線を張り巡らせた。扶桑の近海とは異なる蒼色。

鮮烈な色合いの群青が、水平線で一つになったような情景は視界という意味では有難かった。
ネウロイは悪天候、夜間など通用しない相手なのだから。


(ここの小隊長サン、ちょっと堅物だけれどこっちをお客さん扱いしないのは、色々と助かるなあ)


第四小隊を率いるソーニャより1つか2つ、年が違う程度の少尉は、
多少杓子定規な所は多いが、余所の部隊から来た「お客さん」。
つまり員数の仕事のみをさせて、後は厄介者のように遠ざける真似はしなかった。



(地中海でもこの高度では、陽光も温かみはないですね…寧ろ高高度から太陽を背に来られたら)

第三小隊。つまり本来なら夜間哨戒任務班に属するウィッチ達の指揮を任された、
リーヌ・クスリンナ中尉は、左手をかざして視力を失わないよう、わずかに太陽を仰ぎみた。

同時に彼女の頭からはナイトウィッチの証左。魔導アンテナがかすかに光っている。
元来は夜間悪天候に用いるものだが、まともに眼を向けるのが辛い天頂を監視するには、
昼間でも意外と便利なのである。


『3-2より0-3、連中、来ますかね』
「出来たら来て欲しくないですが、相手が相手ですからね」
『夜も飛ばないといけませんし、出来たら…』
『3-1より3-2、芹沢、愚痴を言いなさんな。下ではそれどころじゃないんだから』


実際のところ、本来は夜間哨戒も行うべき3小隊を投入すべきかどうか。
当初は飛行戦隊司令部も悩みどころであったらしい。

しかし地図上は小島とはいえ、実際に探す側からすれば広大なマルタ島市街地。
そこを探す目は一つでも多く欲しいところであり、当然、低空を飛ばざるを得ない捜索班。

その援護に当たるべきウィッチも、いやが上でも必要という現実を前に、
飛行戦隊は交代による哨戒体制維持という観点からは望ましくない、総力出動を余儀なくされた。




(静かだ。ネウロイもマザーハーバー以外はさほど動かなかったのか。破壊の痕跡も少ない)

先遣中隊の先導を務める井村少尉は、小隊の前衛を務める自らを含む陸戦ウィッチ4名。
それらが戦車、装甲兵車を即座にシールドでカバーしうるか。
そして市街地特有の隘路などを見逃していないか、小刻みに確認しつつも、若干怪訝に思った。

装備する宮菱三式陸上戦闘脚乙型は、機動力もシールド強度もリベリオンやオラーシャの主力。M4型やT-34型に劣らない。
いざ戦闘となった場合でも、何とか敵性目標を制圧し小隊。
ひいては先遣中隊全体の前進を鈍らせない自信はある。しかし－


「これは、いますね」
『伏撃皆無とはいかなさそうだな？』

45トン近い鉄の竜騎兵。17ポンド戦車砲と最大120ミリの装甲を纏う三式中戦車改。
それに乗車した、自分の叔父程もの戦車長。

九五式軽戦車の時代から戦車に乗り続けた、小隊先任下士官の戦車兵の言葉に井村は同意した。


「おそらくは。数は多くないでしょうが、それだけに機を伺っていると考えたほうが。
　僅かですが、瘴気は残っています」
『ネウロイの巣が砕け散った残滓…とだけは片付けられんな。
　了解、前衛をしっかり頼む。後ろはこちらが預かった』
「願います」
『ああ、願われた。そちらも無茶はするな、救援を前に倒れては元も子もない』


一般的な年齢で言えば、まだ大人になりかけが精々の井村に対し、
年長ぶることもなく、それとなく将校の振る舞いを教えてくれた年嵩の古参戦車兵。

彼は声音こそ油断なく乗車している戦車も自ら乗り出し、
車載重機関銃で警戒しつつも、井村ら陸戦ウィッチを気遣う言葉を寄越した。


古参兵の中にはウィッチの存在に戸惑う者も多いが、この戦車長は「困惑する前に軍隊で上手に振る舞えるよう」と、
井村以外の陸戦ウィッチにも指導、気遣いを欠かさない几帳面な。
反面、目を瞑れるところは瞑る、現役下士官として長く過ごしてきた戦車兵らしい、世知を心得た男だった。

「小隊、引き続き四周を警戒しつつ前進。ネウロイの伏撃、奇襲はあるものと思え。
　目標地点到達後は生存者捜索、発見後は速やかな警護と救助。以上、前進再開」



だが幸いというべきか、井村の第三小隊を含む先遣中隊は、
目的地に到着するまでの間、ネウロイを見つけることも。
あるいは攻撃を受けることもなかった。

上陸専門の第五師団、そこから選抜された精鋭中隊らしく、到達も予定より五分程度の遅延。
四周を常に警戒し、ネウロイに波を拾われる可能性のある無線の使用を控えたにしては、相当な速度といえる。

だが、本当の意味での困難はそこからであった。彼女たち、彼等が目的地とした発光信号のあった区画。
そこは想像以上に厄介なことになっていた。


『ハマダ0-3より各位、ハマダ0-3より各位。生存者多数を発見。衛生状態難有り。
　傷病者少なくとも100名以上、埋葬されない遺体30名以上、至急本隊急速前進を具申！』



『アルファリーダーよりエコー各位。船団指揮船より通電。現在、ハチドリ全機急速発進準備。1小隊、護衛に回されたし』
『エコー0-1了解…0-4、ハチドリの護衛に当たれ。0-3は継続して高々度警戒。0-1及び0-2は先遣隊近隣を警戒』

「0-2より0-1、了解。小隊各位、高度800まで降下。無許可、もしくはネウロイの攻撃なしでの発砲厳禁」

小隊各位からの応答を耳にしつつ、千早はやはりこうなったかと頭の何処かで、覚めた考えを浮かべていた。

軽くバンクを打った後、ロール機動に入り高度を下げ始める。
みるみるうちに視野を覆う、ロマーニャの古都特有の石造りの街並み。

その間で陸戦ウィッチや戦車、装甲兵車が警戒にあたり、
衛生兵や医療ウィッチと思しき白い鉄鉢を被った人影が、忙しげに行き来してるのが見える。

(埋葬されていない遺体。多分、家族親族の死を受け入れられなかった人と、
　それ以外で悶着があったんだ。早めに火葬してしまえばこんなことは－)


欧州で何度も目にした遺体未処理が原因の疫病。
それを思い出しつつも、千早は部下に悟られない程度に、僅かに舌打ちした。

今のは近しい人間を亡くしていない立場の論理だ。
目の前で家族を失った人間は、理屈ではなく感情で動いてしまう。

(私だって幼い頃、両親を亡くしたじゃない。
　小さいから覚えていないと言い聞かせているけれど、その実は－)


僚機に目を配り、固有魔法で一瞬浮かした双眼鏡で断続的に眼下を警戒しつつ、千早は自らの想念に軽い自己嫌悪を抱いた。

いけない。
六六六空にいる時は全然意識しなかったのに、前線での民間人の人死に動揺してる。しっかりしなきゃ－


『アサルト－もといエコー4-2より0-4、ネウロイ発見、ハチドリを狙ってます、攻撃、攻撃！』
『0-4より4-2、待て！単独では－！』

そんな折、聞きなれた威勢のいい声音が、今は緊張感と殺意をはらんで千早の耳朶を打った。
一瞬、高度をわずかに上げて後方を振り返れば、
そこには落石のような勢いで13mm機銃を構え急降下する、La-9を纏ったソーニャの姿が。


そして彼女が見つけたであろう陸上ネウロイの火線が、千早の視界にはっきりと映っていた。


(何というだらしねぇ更新速度でしょう　orz)    </description>
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    <title>ストライカーユニット総合紹介-諸外国編</title>
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      ・ストライカーユニット概略－カールスラント、リベリオン、オラーシャ編


３．カールスラント製ストライカーユニット 

①【フラックウルフFw190戦闘脚】／ハンマーシュミット大尉、クスリンナ少尉、ヴァルツ曹長、リトマネン曹長装備 

メッサーシャルフBf109Gと並ぶ、カールスラントを代表する航空戦闘脚。 

元ウィッチが開発し、扱いやすさを重視した設計であり、頑丈なフレーム強度と素直な操縦性を有する。 
モジュール構造化による、前線での整備性容易化も、設計段階から盛り込まれ、 
｢軍馬」と言われるほど高い実用性から、前線部隊から大いに好評を得ている。 

製造数ではBf109に及ばないが、実戦部隊での評価は寧ろ、こちらの方が高かったと言われる。 
メルスには及ばないとは言え、他国の基準からすれば相当数の機体が製造され、バリエーションも多い。 
この部隊にやってきたフラックウルフも、大別すれば三種類に分けられる。 

最も癖が無く、代表的な機材がハンマーシュミット大尉、リトマネン曹長が用いるA5/A8型である。 
中高度以下で最大限性能を発揮するタイプであり、高々度戦闘こそ苦手であるが、 
加速力や急降下性能。高速域での旋回性は高く、四式戦闘脚でも手こずるほどであった。
主に昼間の対小型ネウロイ駆逐戦闘に活躍しており、多くの友軍ウィッチの護衛に活躍している。

もう一つ種類は、リトマネン曹長同様、スオムスよりやってきたクスリンナ少尉が用いる、R2型である。 
この機体は少数が製造された夜間戦闘仕様であり、軽量小型の魔導レーダーアンテナを追加。 
同時に高々度性能の改善を図るために、二段四速過給器を追加したBMW801R2へ、魔導エンジンが換装されている。 
高高度での長距離巡航・哨戒能力を突き詰めた機材である。 

そして最大の変わり種は、ヴァルツ曹長の装備する機体であろう。彼女の期待は書類上は「A8」とされている。 
だが扶桑へ出向する彼女の身を案じた基地司令と整備班長が、奇策に等しい抜け道を使ったのだ。 

装備改変が予定されていたため、先行配布されていたFw-190Dの図面を参考。 
更に彼女の原隊飛行場へ不時着した、夜戦隊のHe219の「DB603E」型エンジンを用いて、
あろうことか「D型に限りなく近いA8型」を作り上げたのだ。 

本来なら厳罰ものであるが、装備改変に伴う座学のために来訪していたフラックウルフ社の技術者。 
やはり彼女もエクスウィッチであり、未知の任地に赴くのであれば、
より高性能な装備を渡すべきという理解と協力を示し、改修は大車輪で行われた。

結果としてヴァルツ曹長の減退と、ウィッチ出身のエンジニアは員数外の装備を用い、
帳面には載っていない、事実上のFw190D作り上げてしまったのだ。 

幸いにして扶桑皇国に於いてもDB603/605は「マ-240」の名称で、些か仕様は異なる部分があれど、 
それなりの数がライセンス製造されており、部品供給の目処が立ったのは救いであった。 
彼女は、原隊の期待に背くことなく、高々度要撃要員の１人として活躍を示している。 

これだけの種類が存在しながらも、何とか整備維持、運用が出来たのは、 
近代的ストライカーユニットの原型を作り上げた宮藤博士の部品規格化の徹底もあるが、 
フラックウルフ社の更なる機材モジュール化、ユニット化、強度重視設計の推進も大きい。 

この部隊には重爆要撃や対地支援が得意な反面、対戦闘機戦闘が苦手なウィッチも多かったが、 
フラックウルフは四式戦や紫電、烈風と共に、彼女達に群がる戦闘機タイプのネウロイ駆逐に、大きな威力を発揮している。 
また、クスリンナ少尉の「空中夜間歩哨」としての技量は、部隊を度々夜間の奇襲から救った。 

無論、対爆撃機戦闘でも無力というわけではなく、恐ろしい話であるが、 
弾薬を撃ちつくしたヴァルツ曹長、リトマネン曹長が臨時でペアを組み、 
｢機銃の銃床で撲殺」する形で、中型航空ネウロイを撃墜したケースも存在する。 

なお、余談ではあるがノイエカールスラント本国では、44年12月現在。 
フラックウルフ社が月産240機の大量製造体制を確立し、D9型の大量配備が開始されている。 
ヴァルツ曹長の帳面にはない水冷フラックウルフも、近い将来に正規のD9に更新される予定である。
 
なお、カールスラント本国においては、空母飛行隊用にリベリオン製R2800へ魔導エンジンへ換装。
塩害対策なども施した艦上機型の開発。少量製造も進んでおり、六六六空でも数機の存在が確認されている。


②【メッサーシャルフBf109G6/K14戦闘脚】／ティリアナ・リッピ中尉装備 

ロマーニャの中堅貿易商、そこの令嬢にしてかなりの度胸と経験も持つティリアナ・リッピ中尉。 

彼女が自前の飛行艇共々赴任してきた際に、持ち込んできた単戦型ストライカーユニット。 
言うまでもなく、カールスラント空軍の中で最多が装備され、諸外国にも多くが輸出された著名なユニットである。 

当初はメーカーサイドの、ウィッチの意見を軽視した技術優先の設計により、かなりの問題を生じた。 
しかしながら実戦部隊からの報告、空軍総監部からの指導を経て。 
またフラックウルフの新型機に危機感を覚え、彼等もウィッチの意見を積極的に取り入れ、急速に完成度を高めた。 

そしてリッピ中尉の装備するG6型などにいたって、一応は一通りのネガを払拭できたといえる。 
その気になれば、20mmクラスの機関砲も十分搭載できるペイロード。航続距離こそ短いが高い巡航速度。 
高高度でも630km/h以上を安定して発揮できる「DB605」水冷魔導エンジン。 

なにより一番の懸念事項であった、ストライカーユニットのフレーム強度不足。 
その点を重量増大を承知で改善したことで、特に一撃離脱に大きな威力を発揮する、高い降下性能を得ている。 
カールスラント本国でも既に、大多数がG型系列に改編されている。 

また、この部隊には現行機種に乗り換える間に、Bf109系列を装備していた欧州出身者が多数存在し、 
整備維持、運用研究、離着艦訓練なども比較的順調に進んだことも幸いした。 

六六六空では航続距離の短さ。その代償として得た高速と高高度性能を活用し、専ら艦隊防空に用いられている。 
リッピ中尉自身も、ロマーニャ空軍で中隊長勤務を行っていた頃から、この機材との付き合いを有し、
特性は重々理解しており、長所を極力活用すべく一撃離脱、精密射撃に特化。その方面の技量の修練に励んでいる。 

また、彼女は自分の愛機が戦闘行動時間が短いことをよく理解しており、 
短時間に高い発射速度で大量の7.92mm機銃弾を叩き付けられるMG34汎用機関銃。 
その特注仕様(銃身・機関部強化による耐久性強化型)を装備し、 
重爆邀撃隊の阻害に襲来する戦闘機型ネウロイを相手に、かなりの奮闘を見せている。 

当初は、些か勇敢さと攻撃性に任せた、慎重さの足りない部分もあったが、 
その点を先任のバッシス中尉やキヴィニーット中尉、ハンマーシュミット大尉など、 
カールスラント製機材を扱った経験を有するベテランから指摘、指導を受けることで、 
現在は中堅以上の、頼りになるフロントアタッカーとなっている。 

なお、後々になって彼女の機材も、こればかりはカールスラント本国の正式部品を用い、 
魔導エンジンを「DB605」の中でも最新型に換装したK4型に近い仕様へ改修を受けている。 
同時に、エンジン換装に伴うペイロード増大を活用し、 
扶桑製の連合軍統一規格の増漕を2本搭載。航続距離の延伸も図っている。

後にこれは本ノイエカールスラント本国でも「K14」として、一定数が正式製造された。 

そして流石は商家の娘というべきか、彼女は標準型エーテル増漕に関するライセンス製造権を、
出雲中佐やロマーニャの各種航空メーカーを仲介して、母国にももたらしており、 
ある程度、同国空軍が用いている、Bf109GやMC202などの航続距離、戦闘継続時間改善を図ろうと努力もしている。 

このあたりは実に逞しく、同時に、祖国を離れても自国の現状をしっかり見据えているあたり、 
彼女が只のお嬢様ではないことの証左であろう。
実際、戦闘脚にしても戦闘機にしても、どれだけ長時間空中で戦えるか。 
その点こそが重要であり、ロマーニャ本国で同様の研究が進んでいたのも幸いした。 

なお、ユニットそのものとは関係ないが、北洋護衛作戦以降のリッピ中尉は、 
重量の割に威力が大きく、命中精度も良好な、九九式二号二型改13mm機銃を愛用している。 
重装甲化の進むネウロイ相手には、適度な大口径機銃が必要と割り切ったのだ。 


③【ハイネケルHe219戦闘脚】／白水御影少尉装備 

優れた戦術空軍でありながら、些か夜間防空で立ち遅れていたカールスラント空軍。 

彼らがメッサーシャルフBf110に続き、当初より夜間戦闘機材として設計、開発した双発重量級ストライカー。 
贅沢なことに、魔導エンジンには最新の「DB603E」が双発で搭載されており、 
高高度性能や、兵装ペイロードは非常に優秀である。航続距離も欧州製ストライカーとしてはかなり長い。 

実際のところ、このエンジンが選ばれた理由はひとえに、夜間防空戦闘に於いては、 
どうしても重量の嵩む機載魔導レーダーの搭載が必須であること。 

そして夜間哨戒は長時間となることから、長い航続距離が必要となり、魔法エーテル燃料の搭載量を。 
何よりその割に敵ネウロイと接触し、攻撃を行うチャンスが僅少であるため、
その希少な攻撃時間で撃墜するため、大火力を搭載するためである。 

このため、He219は双発戦闘脚というカテゴリーを差し引いても、かなり重たい部類の機材に入る。 
あちらは当初より艦上戦闘脚として設計されたとはいえ、リベリオンの同じ双発戦闘脚である、
F7F「タイガーキャット」の二割以上の重量というあたりから、お察しいただきたい。 

そのため、最大速度はエンジン出力に比して、さほどではない。 
ウィッチの魔法力で左右はされるが、平均で630km/h強といったところである。 
また、重量級の機体であるため、操縦特性はかなり癖があり、 
一時期は「日向」での運用に際しては、着艦は当初よりバリアネット使用を前提とすることも考慮された。 

幸いにして、この点は、この頃になると陸空軍出身の空中勤務者への、離着艦教育体系が完成していたため、 
白水少尉の長く複戦を扱ってきた技量もあり、辛うじて実用の粋に達している。 

この機材もBf110と同様、些かカールスラント贔屓気味の陸軍が、数個中隊分を導入したものである。 
正直なところを言えば、整備手順は多く、離着陸には陸上基地でも長大な滑走路が必要。 
そして夜戦でも、やはり単戦ストライカーの護衛をつけないといけないなど、欠点は少なくない。 

さりながら、「DB603」双発の大出力に支えられた高高度哨戒能力。600km/h以上長時間発揮できる速度性能。 
そして何より、兵装ペイロードが凄まじいものがあった。

本家カールスラント空軍でも、多用な兵装を用いて運用。 かなりの戦果を挙げているが、
扶桑皇国陸軍においても、同じく試験導入されたMk108型30mm機関砲。 
もしくはホ-5型20mm機関砲を背面兵装パックに最大で、4門を背負って出撃した事例さえ存在している。 
(流石に近日はそれは無茶がすぎるとして、五式/「ホ-155Ⅱ」系列30mm機関砲を装備して出撃することが多い)

その索敵能力と火力は、他の欠点に釣り合うものであり、一度捕捉してしまえば、 
複数種類の機関砲多数の同時斉射により、短時間に大型航空ネウロイを撃破してしまう事も少なくはなかった。 

さりながら、この機材は余りに重く、複雑で、大きく、高価に過ぎた。 
また、魔導レーダーシステムが魔法力及び電子技術双方の研究で小型化が進み、 
単戦タイプのストライカーへの装備も可能となってからは、 
如何に夜戦邀撃機として優秀でも、扶桑陸軍航空としては大量調達を躊躇するには十分であった。 

結果として、2個飛行隊相当30機前後が配備され、現在の夜戦隊の主力は四式複戦(キ-96/102)系列や、 
四式単戦や海軍の「紫電改」に小型魔導レーダーを増設した夜戦仕様へ移行している。 

但し、その高性能は実戦部隊でも惜しまれており、六六六空においても先任夜戦ウィッチであるシュニッツラー少佐、 
クスリンナ少尉の指導で技量を上げた白水少尉の手で、夜間重爆要撃に戦果を挙げている。 


④【Ta-152H型戦闘脚】/ヘレーナ・シュニッツラー少佐装備 

カールスラント本国でも、本当にごく僅かしか配備されておらず、
まさに最新鋭と言うに相応しいストライカーユニット。 

フラックウルフFw190Dの改良型であるが、その高性能ぶりと博士のこれまでの功績をたたえ、 
タンク博士の苗字。その頭文字である「Ta」が、特別に冠されている。 

恐らくはこの部隊では、P-47Nと並び最高峰に近い性能を誇っている。 
世界水準で見たとしても、このユニットに比肩しうるものは、ブリタニアのスピットファイアMk22。 
リベリオンのP-51D以降。その程度ではないかと言われるほどである。 
事実、特にその高高度性能は六六六空の中で、他の追随を許さない。 

これはシュニッツラー少佐が戦闘指揮の傍ら、フラックウルフ社製新型機材のテスト飛行に、 
積極的に協力してきたことから、メーカーから試験を兼ねて特別に配備された機材でもある。 
個性派のメンバーに隠れ目立たないが、 彼女は100機以上撃墜のエースでもある。
既に5年以上、戦地と後方を交互に飛んだベテランであり、その点をメーカーから買われたのだ。

そのようなベテランウィッチと最新鋭ユニットの組み合わせが、何故、異国である扶桑皇国。 
海軍六六六空へと転属してきたか。これはシュニッツラー少佐が自国の夜間防空システム。 
その遅れに関して、温厚な彼女としては珍しく、率直な苦言を度々呈したこと。 

そのことがファイターマフィア上がりの空軍元帥に煙たがられ、同時に何れは再建されるカールスラント母艦航空隊。 
その試験運用を兼ねて、転属命令を受けた経緯を有する。 
ちなみに彼女の率直だが適切な苦言を退けた件の元帥は、皇帝直々の落雷を受けたとも言われる。 


経緯はどうであれ、ベテランの将校ウィッチが操る最新機が到来したことは、六六六空にとって僥倖そのものであった。 
彼女がナイトウィッチとしての資質と研究蓄積を有していたこと。 
同時に温厚ながらも効率性と慎重さを重視し、教育者としても長けていた恩恵により、夜間哨戒の効率は一挙に上がった。 

端的な例としては、少佐自信が後々にカールスラント本国で「ツァーメ・ザウ」と呼ばれる、 
他のナイトウィッチと共同で開発した夜間要撃戦術を、他国のウィッチ達に、
時には図面を多用したマニュアルさえ用い、分かりやすく教授したこと等が挙げられる。

そして彼女は夜間哨戒・夜間戦術の教官としてだけではなく、昼間戦闘もこなせる逸材であった。 
高度10000m以上で700km/hの高速、低下しない運動性を発揮できるTa-152H。 
派手さはないが、僚機ともども生き残ることを一義とした戦術が身についた彼女の組み合わせは、 
往々にして並の昼間ウィッチ以上の戦果を挙げている。 

転属の経緯は兎も角として、フラックウルフ社にとって貴重なテストウィッチのひとりであり、 
最新機材であることから、ノイエ・カールスラントより定期的に、純正部品の補給が届いており、稼働率にも問題はない。 
また、欧州製ストライカーとしては足が長い部類に入るのも長所である。 

此の様な最新機材が、如何にこれまで新機材試験に貢献してきたベテランに対してとはいえ、 
円滑に供給できたかは、上記のとおり、フラックウルフ社がD9量産体制を当時、既に確立させた余力にもよる。 

部隊のナンバー2。そして夜戦隊指揮官を率いる彼女には、まさに相応しい機材であり、 
戦地によっては「何故あの最新鋭機が！？」と、現地部隊より驚愕されることも多かった。 


4．リベリオン製ストライカーユニット

①【F7F-4N「タイガーキャット」艦上戦闘脚】／エッカート少尉、クラリーチェ少尉装備 
　 
リベリオン海軍が発注、採用した「双発魔導エンジン搭載の艦上戦闘脚」という、
ある意味では極めて異色なストライカーユニット。メーカーはF6Fと同じくグラマー社。
同国の傑作艦上戦闘ストライカーF6F「ヘルキャット」と同一の、 
｢R2800」型魔導エンジンを双発で搭載した、リベリオンならではの贅沢な機材である。 

空力設計も洗練されており、双発ストライカーとしては非常に軽量に仕上がっている。 
夜戦ストライカーユニットの傑作として知られる、カールスラントのHe219に比して、二割以上軽量であり、 
最大速度は高度6000m以上で400kt/hと俊足を誇った。 

上昇力や武装搭載能力も大きく、リベリオン海軍も一時期は、このストライカーに大きな期待を寄せたと言われる。 

しかし、この機材は艦上戦闘脚としては離着艦や高速旋回に強度上、些か難があること。 
どうしても調達コストが高価であること。対戦闘機戦闘が不得手であること。 

そしてなにより艦上機、陸上機を問わず、単発レシプロストライカーの著しい性能向上により、 
存在意義が薄れたことから、結果として発注は少数に止まっている。 

扶桑皇国海軍においても、フレーム強度をやや強化した上で、 
魔導レーダーアンテナを追加した夜戦仕様を１個飛行隊相当、試験導入は行っていた。 
リベリオンならではの高い品質管理と速度、上昇力、夜間運用能力は高い評価を得ている。 

しかしながら、やはり扶桑においても「烈風」「紫電」系列、陸軍の「疾風」の高性能化により、 
存在意義が有用とは認められず、横須賀航空技術廠。その実験飛行隊にて、 
各種試験飛行を定期的に繰り返す日々が続いた。高性能を有しながらも、誰もが持て余す不遇なストライカーであった。 

この機材が扶桑皇国海軍で、僅かなりとも脚光を浴びたのは「あの」六六六空においてであった。 
同部隊では対地攻撃型・空対空哨戒用ストライカーユニット「天山」を用いるウィッチ2名が所属していた。 
彼女達は「天山」の特性を活用し、夜間・悪天候の哨戒任務に活躍していたが、 
護衛ウィッチなしでは運用できるものではなく、その点が徐々に問題化しつつあった。 

この点に懸念を抱いた指揮官、出雲少佐が海兵同期の空技廠勤務横河少佐に渡りを付け、 
予備部品込みで2機を代替機材として配備したのだ。 

双発ストライカーユニットの母艦運用は、けして平易なものではなかったが、 
同部隊では樫城中尉、白水少尉と双発型のエキスパートが複数存在していた。 

既に中堅、あるいはベテランの域に達していた彼女達の教育を受けることで、
元天山乗り達も、相応の苦労を経ながらも無事に離着艦技能を身につけた。 
樫城中尉曰く「そもそも艦上機なのだし、あの二人の技量を考えれば、出来ない方がおかしい」とのことである。 

六六六空におけるF7F-4Nは、あくの強い機材に慣れた彼女達らしいというか、 
けして悪い評価ではなかった。2人のウィッチは樫城中尉や白水少尉の教え。 

｢重爆に対してダイヴ＆ズームの一撃離脱に徹すること｣｢敵戦闘機は優位にない限り相手にしないこと」 
｢魔導レーダーの上方だけではなく、母艦との連携と肉眼確認を忘れないこと｣。 

これらの教えを一義とした戦術を行い、特に夜間や悪天候での哨戒戦闘任務。 
もしくは、大きなペイロードを活用した戦闘爆撃任務に活躍している。 

なお、F7Fを用いる二人のウィッチ。ベルタ・エッカート少尉とクラリーチェ・アルベティーニ少尉。
彼女らは同じストライカーユニットを用いつつも、非常に対照的な運用を行なっている。

エッカート少尉が対地攻撃任務の経験から、シールド強度を極力重視したセッティングを行うのに対し、
高速要撃任務を多く経験したアルベティーニ少尉は、防護力よりも速度に重点をおいた調整を行なっている。
この点で一時期、「天山」からの機種転換で難儀した時期も存在するが、彼女らは互いの協力で乗り越えたようである。


②FM-2「ワイルドキャット」艦上戦闘脚】／レオノア軍曹装備 

リベリオンがF4F「ワイルドキャット」系列の最終型として開発した、輸出仕様の艦上戦闘脚。 

元々が素直な操縦性と良好な低空性能を持つ「ワイルドキャット」であるが、
このFM-2はほぼ別物といえるほどの機体に仕上がっている。 

魔導エンジン出力は1350馬力にまで引き上げられ、機体重量は一割以上、
各部構造素材の仕様変更や空力特性改善により、軽量化が図られている。 

その運動性は中高度以下では特に良好であり、元より高い信頼性と頑丈さもあいまって、 
レンドリース先のオラーシャやガリア、オストマルクやダキアなどでも、かなり高い評価を得ている。 

飛行時間がそれほど長いとは言えず、離着艦経験も乏しいレオノア軍曹が、 
短時間で「日向」への離着艦に習熟できたのは、この素直で頑丈な軽量ストライカーの恩恵ともいえる。 

とはいえ、問題が存在しなかったわけではない。 
確かに扱いやすく、良好な運動性を誇り、速度もこのクラスとしては良好な560km/h以上に達している。 
戦闘継続時間も長く、それだけに低空戦闘では使いでのある機体であったが、 
近い将来、凶悪化したネウロイと交戦した場合、何処まで通用するかは不安が持たれていた。 

事実、「日向」も参加した北洋護衛作戦に於いては、レオノア軍曹はかなりの苦労を強いられている。 
それでも友軍と連携の上で、複数のネウロイを撃墜しているあたりは流石というべきだが。 
性能不足が露呈しつつあることは、どうしても否めなかった。 

ウラジオストック到着後、レオノア軍曹。昇進により海軍曹長となった彼女には、最新鋭の艦上型La-9。 
その増加試作型が与えられ、機材の性能不足という苦難からは解放されている。 

さりながらLa-9は後々に全軍へ大量配備される傑作となるとはいえ、
当時は未だに増加試作段階であり、信頼性も万全とは言えなかった。 

そうである以上、予備機材はどうしても必要であった。 
実際、同じストライカーを配備されたバラノワ陸軍中尉も、La-9が不調を起こした際、 
それまでの愛機であるP-39改で出撃したケースが多々存在している。 

如何に飛行時間が比較的長い二人とはいえ、増加試作機材を実戦を介してデータを取るのは、相当なリスクを伴うのだ。 

そのためにレオノア軍曹のFM-2も、予備機材として性能改善が求められた。 
そしてそれはさして難しいとは言えなかった。元よりFM-2の搭載する「R1830」魔導エンジンは、 
宮藤博士の遺した基礎技術に基づき、扶桑とリベリオンが共同で開発した(扶桑名称「金星」「マ-112」)であった。 

そうである以上、宮菱重工が着実に性能向上を果たし、 
大量供給を行っている「マ-112」の最新型を搭載することは、けして不可能ではなかった。 
この点はキ-45の改修に際して、樫城中尉の作り上げた宮菱発動機部門との人脈も、かなり功を奏した。 

元より零式艦上戦闘脚の輸出上のライバルである、FM-2を精密に研究していた宮菱はこの改修に極めて積極的であった。 
彼等は彼等で、この改修によるパテントを用い、リベリオン経由での輸出。 
機材改修バーターの確保に熱心であった(事実、これ以降に製造されたFM-2はこの試作機が原型となった)。 

キ-96にも搭載されている「マ-112Ⅲ」の大馬力に耐えうるべく、軽量化された機体構造は再度、 
強化により原型に等しいそれとなり、外観も逞しいものとなった。 
されど中高度以上の性能は確実に向上しており、レオノア曹長自身の試験飛行の結果は、6000mで615km/hを達成している。 

無論、新型機材への習熟を怠る彼女ではなかったが、如何せんLa-9は最新鋭機であり、 
予想外のトラブルも十分に想定された。当面、幸いにして予備機が必要な状況は生じていないが、
緊急時に任務に耐えうる予備機材が存在していることは、ウィッチの心理的負担をかなり軽減している。


③【P-39「エアコブラ-J」型戦闘脚】／バラノワ少尉装備 

リベリオン陸軍で開発された、かなり変わり種のストライカーユニット。 

一般的には、現行のレシプロユニットは宮藤博士の理論を原型としており、
魔力プロペラは機材先端部に発生するようになっている。 
しかしこの機材は、大口径火砲射撃時における安定性を重視し、
機材先端よりはやや奥まった位置に、プロペラが発生するように作られている。 

この設計自体は、一定の効果を生みだした。 
確かに、特に中高度以下での安定性は高く、バラノワ少尉がホ-203などの重火器を有効に扱えたのも、
この機材の降下機動に際しての安定性。そしてリベリオンの機材特有の頑丈さえに、助けられた部分が多い。
高々度性能は反面劣悪で、主に戦闘爆撃任務に多用されている。 

但し「日向」着任時の彼女のユニットは、その頑丈な設計に反して廃品同然であった。当たり前である。 
連隊長を脅迫して抱き込み、政治将校を殴り倒す不良士官に、まともな機材を渡す軍隊など存在しない。 
連隊の中で最悪に近い、用途廃棄寸前の機材であり、武装も同様であった。 
輸送船経由で彼女が着任したとき、榊整備班長でさえ「これは使うな」と、即座に言い切ったほどであった。 

そして、そこで大きく動いたのが樫城中尉であった。 
一時はバラノワ少尉を自殺志願者の類と勘違いして激怒した彼女は、 
自らの意地にかけて、より高性能な機材へ生まれ変わらせることを決心したのだ。 

飛行五戦隊時代、部下を生き残らせるために、必死の努力を重ねた彼女からすれば、 
オラーシャ帝国が自国のウィッチへ為した仕打ちも、 
それを唯々諾々と受け入れている無気力なバラノワ少尉も、許し難い対象であったらしい。 

まずもって、臨時飛行隊長の樫城中尉と榊整備大尉が、松田艦長に現状報告。 
頭を抱えた艦長が、やむなく海軍省経由でリベリオン陸軍へ予備部品供与を打診。 

幸いにして、リベリオンでは既にP-51D、P-47Dなどの高性能戦闘脚の量産体制に移っており、 
P-39のような「不良在庫」がはけるのは、寧ろ歓迎された。 

指定部品に加え、組み立てれば2機は作れる予備部品が只同然で、オラーシャへのレンドリースの一部から割り引かれ、 
｢日向｣飛行隊へやってきた。そして、そこから樫城中尉による思い切った性能改善措置が始まった。 

彼女は、あれやこれやと悶着は起こしたものの、色々と人脈を形成してしまった明野航空本部に渡りをつけ、 
三式戦闘脚系列の魔導エンジン用の、機械式二段二速過給器を組み込んだのだ。 

このあたりは、宮藤博士が魔導エンジンを完成させた段階で、各種部品の徹底した共通化や系統化を行ったが故に、 
国籍の異なる部品の組み込みも、何とかなった部分がある。 
新品同様の部品で再生され、更にはスーパーチャージャーさえ与えられたP-39は息を吹き返した。 

｢V1710｣エンジンの全開出力は1500馬力に達し、速力も高度5500mで毎時645km/hに達している 
航続距離も1500kmと、中近距離哨戒や対地支援には十分であった。 

武装に関しても、海軍航空ウィッチの航空機銃主力が、使い勝手の良い九九式改二型13mmへ移行。 
彼等が「二式試製三七粍速射砲」として試験導入していた、 
余剰のホ-203が回されてきたことで、とりあえず彼女は何とか戦力の一角となった。 

当初は慣れない高性能に戸惑ったバラノワであるが、徐々に野戦飛行場での戦闘経験を思い出し、 
この改造型。樫城中尉特製の一品物とも言える、このストライカーに習熟し、それなりの活躍を示すことになる。 

｢これならば十分戦える｣と、彼女に気力を取り戻す原動力となったことを考慮すれば、 
性能向上以上に改修の意義は大きかったと言える。LA-9受領後も度々、予備機材として高い稼働率を示している。 


⑧【ノース・リパブリカン・P-47D/N戦闘脚】/オティーリエ・ハーケ少尉装備 

リベリオン陸軍が、P-51系列と並んで急速に配備を進めている、新型の大馬力ストライカー。 
P-51がマーリン水冷魔導エンジンを搭載した、スマートなデザインなのに対し、 
こちらは海軍でも多用されているR2800空冷魔導エンジンの出力強化型を搭載。 

他にも防護性能やペイロードを重視したため、非常に逞しい外観をしている。 
故に脚に履くと太く見えるという、ある意味では年頃の少女らしい悩みから、ウィッチから外見は好まれていない。 
しかしながら、高高度性能、防御力、速度、航続力など、全てが高いバランスでまとまっている。 

その他の航法装置や非常時の防御手段も、非常に充実している。 
扶桑の零式の五倍もの価格がするというだけに贅沢な、
しかしウィッチの安全を第一に考えた頑健なストライカーである。 

実際、確かにスタイルは好まれていないが、性能で悪評が囁かれたことは一度もない。 
そして本来であればリベリオン陸軍のストライカーを、
なぜカールスラント空軍のウィッチであるハーケ少尉が装備していたか。 

これはカールスラント空軍の一部で、自国製ストライカーの航続距離不足に、懸念を呈する向きが存在していたこと。 
そしてハーケ少尉本人が、Bf109GやFw190A8で実戦を経験した上で、ある意味では技術者の家系の娘らしいというべきか、 
実に率直極まりない箴言を、上層部に提出してしまったのだ。 

彼女がリベリオンのF6Fや扶桑の四式など、航続距離の長いストライカーと比較して批判を行ったのも、
自国技術を過剰に信奉する上層部の一部。その神経を逆撫でする形で災いした。 

そのために彼女は、自国製ストライカーに懐疑的な勢力が、
試験目的で輸入したP-47D型のテストウィッチに選出されたのだ。 
大半のカールスラントのウィッチは、余りこの機体を好まなかったが、 
理屈で行動することの多い彼女には、贅沢だが合理的なこの機材は、まさに最高の相棒であった。 

500km/h以上の高い巡航速度、増漕を装備すれば2000kmを超える航続距離。 
最大速度や上昇力、運動性。何より降下性能はFw190A8さえ懸絶しており、 
ペイロードもMk108型30mm機関砲と大型背部弾倉を装備しても、びくともしない大きさであった。 

この高性能機材の試験導入は、カールスラントストライカー開発スタッフを大いに刺激し、 
液冷型フラックウルフの改良。ジェットストライカーの開発促進など、良い刺激にはなった。 

しかし彼女個人にとって、良い転機を齎したかというと、この点は微妙と言える。 

「何故、なまじ国産にこだわって、これのライセンス製造を行わないのですか？」という、理には適っているが、 
自国の技術に高いプライドを持つウィッチ、上層部、技術陣全てに煙たがれる、 
ある意味では迂闊な発言を行ってしまったのが、後に彼女に数奇な運命を辿らせる。 

空軍部内でこの発言は、かなり物議をかもしてしまったため、当面、部内の諍いを沈静化させるため、 
彼女は扶桑皇国海軍の航空戦艦。その所属飛行隊という、 
普通ならば予想もしない部署への転属となったのだ。ある種の懲罰人事だったのかもしれない。 

しかし彼女にとってそれが懲罰になったか。これまた微妙なところである。 
元々が細かいことをさして気にしない性分であり、 
その上、各国のウィッチとストライカーが集まった六六六空は、ある意味で技術者肌の彼女にとっては天国とも言えた。 

なお、44年末の段階で、彼女のP-47は純正部品による改修を経て、D型からN型に改修されている。 
陸上重戦を航空戦艦で使うというデータは、本国よりもリベリオンのメーカーが重視し、技術支援を惜しまなかった。 
P-47Nといえば後々最高傑作の一つと言われるものであり、転んでも只では起きない彼女らしい幸運である。


5．オラーシャ製ストライカーユニット

①La-9単発航空戦闘脚/バラノワ中尉、レオノア曹長装備

オラーシャ帝国陸軍航空隊が、随所で増加試作型の運用を開始したばかりの最新ユニット。
魔導エンジンこそ従来のLa-5、La-7に搭載されたものと同系列であるが、ユニットの素材と空力特性を徹底改善。
中高度で670km/h以上の最大速度を発揮し、上昇力や降下性能。高速旋回性能も良好なレベルである。

最大の改善は航続距離であり、ユニット内部のエーテル燃料タンクを拡大したこと。魔導エンジンの燃費を改善したこと。
そしてユニットの空気抵抗を減少させたことなどの恩恵で、最大で1700km以上の飛行が可能である。
シールド強度、ペイロードも相当に大きく、これまで地道に国産機を改善してきたオラーシャの、技術的昇華ともいえる。

その様な最新機材が何故、素行不良で他国の部隊に事実上放逐された不良士官。あるいは技量いまだしな海軍曹長。
この二人に回されてきたかといえば、それはひとえにオラーシャで母艦での離着艦経験を有するウィッチが、非常に少ないことに起因する。
無論オラーシャにも、そういった手練の。母艦勤務敵性を有するであろうウィッチは相当数存在する。
しかし彼女たちは連合軍の精鋭たるJFW。あるいは前線飛行隊につきっきりであり、洋上運用試験まで手が回らなかった。

そのために比較的後方といえる扶桑海軍に出向し、航空戦艦という難物での離着艦を繰り返した二人にも、増加試作機がよこされたのだ。
新型機一つでそう、飛行特性や技量が極端に変わるわけではない。
しかし多少のトラブルの多さを差し引いても、その性能は大いに歓迎された。オラーシャのユニットらしい頑丈さも健在であった。

後に派兵された激烈な地中海戦線で、二人が無事に生還し得たのは、後にオラーシャ航空戦力の主力となるLa-9。
その性能に支えられた部分が大きいのは、間違いないであろう。    </description>
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