「ss2-05 神速──12 Second “Zeus”──(前)」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
ss2-05[前] 神速──12 Second “Zeus”──
視認。
アルテミス/戦闘モード。
≪各関節の同調率23%…。安定化の為、深層意識“アストラエア”を覚醒させます≫
≪“アストラエア”、思考パターン連動、同調率83%安定≫
≪ヴァンガード様!≫
頭の中に直接響く声。アルテミスとは違う声が響いた。
(うわ。なんだ? アストラエア?)
≪なんだか、私の頭の中に居るみたいです≫
アルテミスが言う。気持ちの悪い感覚だ。
(アルテミスまで…身体を乗っ取ってるから頭に響くのか?)
≪私たちがヴァンガード様を支援します≫
(まさかこんなことになるとは思わなかったが…来るぞ)
「貴様か。こんなところまで来るとはな」
「喋り方が変わったな。この裏切野郎がッ」
ビームブレードとトゥーエッジブレイドが干渉する。
当然押し負けし、そのまま吹き飛ばされた。
(チッ、どっからあんな化物武器持ってきやがったんだ)
≪攻撃兵装、アトラデス、展開≫
不意にアストラエアの音声が響く。
同時に、ビームブレードが消失し、代わりにアトラデスが出現した。
滝のように流れる雨を、出現した実体剣が弾いていく。
「ナイトレーヴェン…」
小声でつぶやく。その声は誰にも届かぬまま、雨の音にかき消される。
「行くぞ…」
同時に光が見えた。
2度目の会敵(エンゲージ)。夜鴉の背中のブースタが爆ぜる。一瞬で距離を詰め、刃を交える。
ガッ、と音が響き、衝撃が奔る。意に介さない様子の夜鴉は、その態勢のまま足を振り上げてヴァンガードを吹き飛ばした。
「がッ、く……!」
追撃。
轟音と同時に接近する夜鴉。それを紙一重で避ける。
≪AURAチャージ、完了≫
(行けるか…!)
背部のユニットがそれぞれ3枚の翼に変形し、オレンジ色の光を放出する。
「まだ遅いな」
「チィッ」
突如として加速し、夜鴉へ突撃するヴァンガード。右腕の剣を突き出す。その刃は、紫の光を纏った。
夜鴉の肩が火を噴く。
我ながら理不尽な兵器を作ったと反省するヴァンガードだが、そんなことを考えている暇は無い。
突き。
居合いや突きの技術による間合いの錯覚を利用し、先程高速で相対した時よりも速い速度で刃が接近する。
その刃をアトラデスの表面で防ぐ。紫色のオーラが剣を守り、傷一つ残さずに弾いて見せた。
「やってくれる、だが!」
爆発、旋回。
肩が爆ぜた。高速で右側へ移動すると同時に、左足を引いて旋回。足の動きで上乗せされた旋回は、慣性を利用して一瞬でヴァンガードの背後まで移動した。
「ッ!」
一閃。
AURAユニットが沈黙し、推進力を失った"身体"が徐々に落下する。
≪ヴァンガード様!≫
二人分の女の声が響く。その声は意識を"底"から叩き起こし、その力を解放した。
リミッター・解除。
全ての蒼い光が、赤い、深い紅へと変貌する。あらゆる神経が先鋭化されるような感覚。機械的な腕の、更に事細かな繊維まで感じ取れるような感覚。
「何をしようが、この速さに追随するなど不可能…ッ!」
最後の言葉と同時に、銃弾が飛翔した。
夜鴉の3本のラインアイの内1本に突き刺さった。
「馬、鹿な……」
紅い瞳を見開いたヴァンガードが──迫る。
一瞬で相対。
ヴァンガードが剣を振り上げる。
(ここから先は、“コイツ”が知っている)
「テメェは、"左に避ける"!」
ヴァンガードが脚部の補助ブースタをフルスロットル、夜鴉の肩が爆炎を放つのと同じタイミングで、右側へ高速移動。大きな雨粒を弾きながら、振り上げた剣を袈裟斬りする。
「がァッ!?」
尖鋭的な胴体に、深い溝を与えた。
事前に既存の夜鴉の戦闘パターンを埋め込んだアルテミス。
『データ』と言う名の知恵を、予測に、確信に変える。
「ナイトレェヴェェェン!」
「ヴァンガードォォォォ!」
刃が交わり、引き、牽制する。
既に、夜鴉は気付き始めていた。
一秒が、“延長されている”。
[[戻る>ヴァンガード編 二部]] [[ss2-05 神速──12 Second “Zeus”──(後)]]