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_0 - (2010/12/31 (金) 10:47:58) の編集履歴(バックアップ)


メセナ法によるブラジルの多文化奨励
〜民間の積極的参加によって多文化を保護しようとするブラジルの文化政策〜


 ブラジルのような国で、文化を仕事にするというのはかなりの挑戦である。ある面では、国民とその芸術の多様性と創造性に特徴づけられるように、芸術文化資産の豊かな国であるが、別の面では、根深い社会の不平等を抱えている。後者は、必ずしも文化財へのアクセスがオープンかつ民主的でないことの、原因となっている。全ての文化活動は、この不平等を意識して規律づけられなければならず、文化活動を、成熟した市民社会を形成するために貢献するようなものに変えなければならない、ということはあたり前のことである。そして、文化の普及が、段々と、メセナ法を通じて可視化されてきていることは、言及する価値がある。
──ヒカルド・ヒベルボイン(Ricardo Ribenboim)

 ヒカルド・ヒベルボインは、彫刻家で、イタウ・クルトゥラル(Itau Cultural)の元代表である。イタウ・クルトゥラルは、イタウ銀行(※2008年にイタウ銀行とウニバンコ銀行が合併したために、イタウ・ウニバンコ・ホールディング)が設立した文化機関で、本論が議論の対象としているブラジルの連邦メセナ法を通じた支援によって、最も多くの文化プロジェクトへを行ってきた団体である。●年に設立し、これまで(2010年11月現在)、●金額の支援を受け、●個もの文化プロジェクトを行ってきた。

●メセナ法
 本論の議論において、便宜的にメセナ法と呼ぶものは、
ブラジルの法律第8.313号(ブラジルでは通称Lei Rouant:ルアネー法と呼ばれている)のことである。
──※法令全文は、"Guia do Incentivo a Cultura"のp257〜p290にある、できれば全文訳したいよね

ブラジル連邦共和国の構成単位は、連邦、州、連邦区、市(ムニシピオ)であり、各構成単位は、連邦憲法が他の構成単位に帰属させていないすべての権限を有する原則があり、その限りにおいて各構成単位は独自に立法することができる。
しかしながら、憲法がかなり広範な権限を連邦に留保しており、民法・商法・刑法・訴訟法・選挙法・農業法・海法・航空法・宇宙法・労働法は、連邦の立法事項だ。

本論文が主に取り上げる上記のメセナ法は、連邦レベルの法律であり、国全体に適用される。連邦レベルでの文化支援奨励法である。
連邦レベルの文化支援奨励法には、メセナ法の他に、視聴覚作品法(法律第8.685号:通称Lei do Audiovisual)があり、州レベルのものでは、サンパウロ州のPACやバイーア州のFAZCULTURAが有名で、市レベルのものでは、サンパウロ市のメンドンサ法(Lei Mendonça)が有名だが、メンドンサ法がこれらの文化支援奨励法の中で一番早い1990年12月に成立した。
州レベルでは、他にアクレ州、セアラー州、マトグロッソドスル州、ミナスジェライス州、パライーバ州、リオデジャネイロ州、リオグランデドノルテ州、リオグランデドスル州、サンタカタリーナ州にある。
市レベルのものは他に、サン・ジョゼ・ド・カンポス市(サンパウロ州)、アメリカーナ市(サンパウロ州)、ベレン市(パラ州)、ベロオリゾンチ市(ミナスジェライス州)、コンタージェン市(ミナスジェライス州)、カベデロ市(パライバ州)、クリチバ市(パラナ州)、ゴイアニア市(ゴイアス州)、ロンドリーナ市(パラナ州)、マセイオ市(アラゴアス州)、リオデジャネイロ市(リオデジャネイロ州)、サンタ・マリア市(リオグランデドスル州)、ヴィトリア市(エスピリトサント州)などにある。

これらの文化奨励法に共通するのは、各法が定めた制度に基づいて承認された文化プロジェクトのために寄付した金額を申告すれば、全額ではないが、支払うべき税金が控除される。控除される税金の種類や、寄付額に対する控除額のパーセンテージも法によって異なる。パーセンテージが幾段階かに分かれており、文化プロジェクトの承認時にパーセンテージが決まる場合も多い。

本論でメセナ法と呼ぶルアネー法は、文化プロジェクトへの寄付によって、所得税が控除される法だが、寄付額に対する控除額のパーセンテージも改正によって変わってきた。パーセンテージ以外の面でも、改正により変更されてきたが、本論では、特に断りがない限り、筆者がブラジルでの現地調査を行った2010年1月の時点の同法を対象としたい。