目次
15.物理的脱藩よりまず精神的脱藩をやれ
善川 久々に快活な大らかな話を聴くことができました。
龍馬 まあ世の中女性化し過ぎてまんで女のような考え持っとる人間ばかりだ。
善川 もう現在管理社会が行届き過ぎて人びとの心を委縮させている面もあると思うんですよ。
龍馬 そうだな、もっと若返らにゃいかん。やらにゃあいかん。能力も発揮せんままにほとんど年取っていくんだ、こんなんじゃあいかん、特に若いもんに言っとけ――。みんな脱藩しろってな。現代における脱藩だ。昔の藩が現代の管理社会だな、今でいうと組織社会が藩だな、既成の体制だ。この脱藩をやらにゃいかん。脱藩をやってもだな、その人に実力さえあれば人々は従いてくる。世の人は認める、要は実力があるかどうかだ。脱藩しなさい、脱藩を。
善川 脱藩者、そういう脱藩者意識を持ったものが集まらなきゃ新しい社会は生まれてこないというわけですね。
龍馬 但し脱藩が目的じゃないんだぜ、やることがはっきりできた時に脱藩するんじゃ。脱藩してから何かをやるんじゃないわけだ。まあそういうわけだ。脱藩を奨めたけど世の中失業者が増えてはいかんからこの際言って置くが、失業しろといっているわけじゃないということだ。まあ物理的な脱藩だけでなくて、精神的な脱藩をやりなさいと、まあそういうことだな。なんかわしゃ見とるとなんか馬鹿な集団に思えてしようがないわ、もう会社では上にはペコペコ言いだなあ、夜はまた会社の上役と一緒に飲んでだ、土、日にはまたゴルフをやってだなあ、同じ人間ばかりが四人、五人とくっついて動いとるのみるともう情けないわ、馬鹿じゃないかと思うな。こんなの精神的に脱藩出来ていないということだ。まあ給料貰うためには働かにゃいかんが、それ離れたらもう皆好きにしなさいよ。好きにすることが無いんだよ他に、だから一緒に酒を飲んでだなあ、一緒に歌唄って、一緒にゴルフして玉打っとるわけだよ、あんな愚にもつかんことやっとるわけだよ。馬鹿なのになりゃあ毎週毎週やってるわけだ同じ者同士が、何の進歩があるかそんなもので、もっと精神的に脱落せよ、精神的に脱藩するためにゃ高次の日標目的がいるというわけだ。もっと天下国家を論じよだ。会社の中でやっている時は議論するのもいい、仕事するのもいい、会社離れたらもう会社の人間ではなくてだな、もういろんな人と天下国家を論じるような世の中になれ。青年達は特にそうでなくちゃならん。そう言っとけ――。
善川 では、龍馬先生本日はいろいろご指導賜わりありがとうございました。後五名の大先輩方のご指導を願ったあとで、いま一度先生にご降下願って、引続き総括的なご指導を願えれば幸いと存じますので、本日はどうもありがとうございました。