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    <title>DMMバトルロワイアル @ ウィキ</title>
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    <description>DMMバトルロワイアル @ ウィキ</description>

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    <title>オープニング</title>
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    <description>
      『目は覚めたか』

　そこは潮風の入り込む鎮守府でも、秋風の吹く本丸でもない。
　血風が荒ぶ戦場でもなければ、はたまた芳しい香りの満たすスプリングガーデンでもない。
　暗い、暗い、空間の広狭すら満足に推し測れない闇の中。
　勝利の誉れとは無縁の常闇――そんな世界に突如響いたのは、地の底から響くような重々しい声だった。
　
　それと同時に、淡い光に照らされて闇が晴れる。
　現代の電球のように目に痛い光ではなく、どちらかと言うと灯籠や提灯のそれを思わせる風情ある光だ。
　照らし出された空間がどこまで続いているのかは相変わらず確認できなかったが、そこには大勢の人間の姿があった。
　人数は合わせて四、五十名程度と言うところだろうか。ちなみに男女比は、女性の方が圧倒的に多いようだ。
　一箇所に集められた彼らから少し離れたところに、声の主は立っていた。
　
　鬼……幽鬼。落ち武者。そういう単語を連想させる、人間離れした姿を持った存在だった。
　黒目と白目の区別も付かない眼球は常に発光しており、眼だけに留まらず全身が妖しく輝いている。
　少し動くだけでギチギチと不気味な音を奏でる彼らに対し、恐怖よりも敵愾心を向けている者の方が多いのは流石、日々戦いに明け暮れる戦士達と言うべきだろう。
　海であれ、陸であれ、花の世界であれ。
　彼ら彼女らが常人とは比べ物にならないほどの場数を踏んでいることは変わらない。
　ただ――眼前の『敵』の正体を正しく認識している者の数はわずかだ。刀剣の付喪神、都合十一体。彼らだけが、この敵に関する正しい知識を持っていた。

「歴史修正主義者……！？」

　歴史修正主義。それは本来歴史の通説を再検討し、正当な改訂を加えるべきという思想の持ち主を指す言葉だ。
　逆に言えば改訂と称して歴史を歪曲する者を指す言葉でもあり、刀剣達が戦っている主義者達は後者である。
　彼らは時代を超え、武力活動による歴史改変を目論む社会の敵だ。
　彼らの活動を阻止するために審神者と言う職業が生まれ、古の刀達は刀剣男士として現世に顕現することとなった。
　要するに、何度となく戦ってきた相手だ。
　今更驚くような相手でもないし、落ち着いて戦えば余程の状況でもない限りほぼ確実に倒せる、その程度の敵。

『止めておくがいい。命が惜しければな』

　ただ、一つ妙なことがあった。
　先に述べたように、歴史修正主義者の活動はほとんどが武力によるものだ。
　こうしてわざわざ大勢を一箇所に集めるなんて真似をしたことはなかったし、ここまで意思疎通の出来る主義者にも遭遇した試しはない。
　
『それに私は、今すぐにお前達へ危害を加えるつもりはない。そちらが刀を抜かない限り、手を出すことはしないと約束しよう』

　今こうして淡い闇の中に立ち、集められた者達と向かい合っている歴史修正主義者は、普通の人間のように饒舌だった。
　普段なら姿を目視するなり問答無用で仕掛けてくるというのに、今回のそれは嫌に落ち着いているように見える。
　その事実の奇妙さに、臨戦態勢を取っていた刀剣達も一歩を踏み出せずにいた。
　不気味な静寂が再び漂い始めた頃、口を開いたのは天下五剣――三日月宗近と呼ばれる刀である。

「……その余裕は、俺達に巻かれている『これ』から来るものか」
『然り』

　指の甲で三度、三日月は首に巻かれた『それ』を叩く。
　すると、やや軽い音がした。金属音だ。『それ』は金属で出来ていた。
　首に巻き付けられた金属の輪。本来飼い犬に付けるべき『それ』は、察しの通り首輪だ。
　集められた全員の首に、黒く鈍い輝きを放つ首輪が取り付けられている。
　いや、それだけではない。首輪は十秒に一回ほど、ピッと小さな電子音を鳴らしてもいた。
　機械じかけの首輪、多数の人間がよからぬ者の手で集められているこの状況。

『その首輪の中には爆薬が内蔵されている。もしお前達が私に攻撃しようと言うのであれば、それを起爆させてもらう。
　……言うまでもないが、首は急所だ。どれだけ練度やレベルの高い者でも、密着した状態で爆発を浴びれば即死する』

　淡々と語り、元凶の彼は異音を鳴らしながら右腕を挙げた。
　それと同時に、一人の少女の首輪が一際喧しく電子音を鳴らし始める。
　「えっ？　えっ？」と慌てる少女はまだ小さく、あどけない顔立ちをしていた。
　幼いながらに説明を聞いていたのが一番の不運だった。最初は困惑していた彼女も、三秒と経つ頃には理解してしまう。
　歴史修正主義者と呼ばれた怪人は、この首輪には爆薬が内蔵されていると言っていた。
　そして彼の任意で起爆することが出来、爆破された者は誰であろうと即死するとも。
　
　途端に込み上げてくる恐怖、現実を直視できないが故に浮いてしまう笑み。
　泣き笑いのような顔で、少女は自分の姉達の方を見た。
　……歴史修正主義者の挙げた右手が下ろされたのは、まさにその瞬間だった。
　
『――このようにな』

　枕に銃口を押し当てて引き金を引いたような、くぐもった音が淡闇の中で不吉に響く。
　少女の首がサッカーボールのように宙を舞い、熟れた果実でも落としたような音を鳴らして墜落する。
　ごちゃごちゃの表情を顔に浮かべたまま血液を噴き出すだけのスプリンクラーとなった彼女の名前を、電と言った。
　倒した敵にすら温情をかけ、誰よりも争いごとが嫌いな――皆の妹のような駆逐艦娘だった。

　首から上を失った胴体に縋り付き、わあわあと甲高い泣き声をあげる彼女の姉達。
　そんな光景を一瞥もせずに、歴史修正主義者は話の続きを始める。
　無臭の淡闇はすっかり血生臭く、喧しい空間に成り下がっていた。
　集中する敵意の目線の中でも淡々とした調子を崩さない辺り、やはり彼は怪人なのだろう。

　この状況に昔読んだとある小説を連想したのは、軍艦の記憶を受け継ぐ『艦娘』の一人だった。
　二十一世紀に入るやや前に刊行され、社会に大層大きな衝撃を与えたというデスゲーム・ノベル。
　そのタイトルは確か……『バトル・ロワイアル』。

『刀剣男士。艦娘。城娘。そして、花騎士。お前達にはこれから、我々の主催する遊戯に参加して貰う』

　作品の登場人物達が舞台となる島に集められ、腐敗した政府に行わされた『プログラム』の内容は――そう。


『――殺し合え。同胞を、見知らぬ顔を、全て、全て。自分以外の全てを殺戮せよ。そして、勝者となるがいい』


　殺し合い、だ。
　死をもって他人を蹴落とす椅子取りゲーム。
　小説の内容をなぞるように爆弾付きの首輪を用意して、この怪人は自分達にそれをさせようと言う。
　……到底認められる話ではない。仲間を無惨に殺しておきながら何を偉そうに語っているのだと噛み付きたくなる。
　にも関わらず誰も行動に移せず、拘泥たる思いを飲み込むしか出来ずにいるのは、首筋に突き付けられた死の重さ故。
　この怪人の指先一つで、いつでも自分の首はあの少女のように宙を舞う。
　その状況で後先考えずに牙を剥いてかかるような馬鹿は、どうやらこの中には居ないようだった。

『安心しろ。何の報酬も与えないと言うわけではない』
「……報酬だって？」
『見事全ての命を摘み取り、最後の一人となった勝者には……とある権利を贈呈しよう』

　一拍置いて歴史の冒涜者が吐いた言葉は――……楔のように、あるいは返しの付いた針のように心へ深く突き刺さった。

『それは結果を変える権利。歴史を変える権利だ。世界を二分する大戦の結果、主君の生涯、生前の悔恨、世界を千年に渡り蝕み続けた呪いですら、我らが容易く書き換えてやろう。我らが殺し合いを起こさなかった世界、特定の人物が死ななかった世界、というものでも構わない。何でも叶えてやる』

　それでは本末転倒だろうと呟く声が聞こえたが、彼はそれでも構わないと豪語する。
　変えられる歴史は一つ。しかし、個数さえ守れば改変に限度はないと言う。
　殺し合いをなかったことにすることすら可能だと言われ、心に不穏なものを芽吹かせた者も少なからず居た。
　
『拒むと言うのならそれも道だ、好きにするがいい。だがその首輪は無理に引き剥がそうとしたり、一定時間毎に我々が提示する侵入禁止区域に踏み込んだ場合に爆発する。更に言うなら、死者が六時間以上出ない場合もだ。その時には残念だが、全員の首輪を起爆させて貰う』

　何が道だと誰かが悪態をつく。
　これでは最初から、選択肢などないも同然だ。
　生きたければ殺し合え、死にたいのなら何もするな。
　―――怠惰に膝を抱いたまま、歴史の闇へと落ちていけ。


『では、良き戦いを』


　怪人が左腕を挙げると、全員の首輪が一際甲高い電子音を一度だけ鳴らした。
　それと同時に首輪の接合面から電流が瞬間的に流れ、全員の意識を一瞬にして奪い去る。
　どれだけ戦いを重ねた者であろうと、一瞬抗うことすら敵わない。
　砂袋を叩き付けるような音が数十回連続し、遂には闇の中、意識を保っている人間は一人も居なくなった。
　残されたのは歴史修正主義者――人類の仇敵のみである。

　これから始まる戦いに、誇りも誉れもありはしない。
　あるのは血臭と死臭、銃声と剣戟、裏切りと無念。
　艦娘。刀剣男士。城娘。花騎士。世のため人のために戦っていた彼ら彼女らの生き様は、この時一人残らず陵辱された。
　奪い合え、歴史を。勝者だけが、世界を変えることが出来る。
　勝者にならなければ――伸ばした手が、何かを掴み取ることはない。


&amp;color(red){【電＠艦隊これくしょん　　死亡】}
&amp;color(red){【残り５０人――DMMバトルロワイアル、開始】}


***時系列順に読む
NEXT:[[月光香]]

***投下順に読む
NEXT:[[月光香]]

|BACK|NAME|NEXT|
|-|歴史修正主義者|:[[]]|
|&amp;color(cyan){GAME START}|三日月宗近|:[[]]|
|-|電|&amp;color(red){GAME OVER}|    </description>
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    <title>月光香</title>
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    <description>
      　誰かが死ぬ瞬間を見たのは初めてだった。
　
　薄黄色の灯りに照らされた淡闇の中で鳴り響いた電子音の音色が頭に焼き付いて離れない。
　殺された少女はあの時、花騎士――シクラメンのすぐ近くに立っていた。
　自分がこれからどうなるのかを理解して、それでも現実を受け入れられずに浮かべていた泣き笑いの表情。
　幼い顔が軽い音と共に宙を舞い、水っぽい音と一緒になって地面に落ちる瞬間。
　シクラメンは全てを見ていた。少女がどうやって死んだかの一部始終を観測していた。

　それはとても悲惨で残酷で、言葉に尽くせないような光景だった。
　死体に縋り付いて泣く者もあったのだ、さぞかし彼女は愛されていたのだろう。
　これはシクラメンの想像だが、きっと彼女は優しくて明るくて、誰からも愛される子供だったのだと思う。
　そんな子の命を、歴史修正主義者とか言われていたあの怪人は事もなげに動作一つで奪い去ってしまった。
　“首輪が爆発するとどうなるか”を見せ付けるためだけの犠牲にして、その死に感慨一つ漏らしはしなかった。
　
　…………狂ってる。その行動を理解できないし、したいとも思わない。
　大人しく優しい性格のシクラメンでさえ、嫌悪感が込み上げてくるのを禁じ得ない。
　だがそれ以上に―――恐ろしかった。
　自分と同じ形をした命が壊れる瞬間を見たシクラメンだからこそ、恐怖の度合いは他人の比ではない。
　一瞬で人をあんな風に殺してしまう爆弾が、自分の首にも等しく巻き付けられているのだ。
　主催者の居場所と通信でもしているのだろうか、首輪は十秒くらいの周期で電子音をピッと鳴らす。
　その度に心臓が弾けそうになる。
　首を飛ばされた少女の死に顔や、離れた首の断面から噴水のように溢れてくる血液の色合いが簡単に瞼裏に再現される。
　
　臆病な彼女にとって、それは耐え難い苦痛だった。
　ほんの僅かな物音ですら、自分を害そうとする誰かが鳴らしたものかと錯覚してしまう。
　そんな有様だから、彼女はゲームが開始してから今に至るまで、目を覚ました地点から一歩も動いていない。
　シクラメンは今、観音堂の境内で膝を抱えていた。
　深夜帯には少々お近付きになりたくない場所だが、幽霊よりもよっぽど身近な脅威が島中を彷徨いている以上、そういう想像をしている余裕はあまりない。　
　
「団長さん……」

　自分の体温を抱きながら、自然と口をついて出たのは敬愛する名前だった。
　花騎士達を従えて害虫に立ち向かう彼の背中が、今は無性に懐かしい。
　その懐かしさが、今の二人の間にある距離がいかに遠いかを物語っているようでもある。
　
　今までも辛い戦いはあったし、死んでしまうのではないかと思ったことも何度かはあった。
　それと比べても今回のは別だ。生きて帰れる目が極端に少ない。少なすぎる。
　敬愛する――あるいはそれ以上の感情を寄せている――彼ともう一度会える可能性は、砂粒もかくやというほど微小だ。
　ましてシクラメンは、花騎士の中でもそう強い方ではない。
　仮に歴史修正主義者の用意したゲームに乗ったとして……いわゆる優秀な騎士達に勝てるかと言うと怪しいものがある。
　
　……こんな風に、ふと気を抜けば自分が得をする方に考えてしまうのが嫌になる。
　心のどこかでシクラメンは既に諦めてしまっていた。何故ならどれだけ頭を回しても、未来というものが全く見えない。
　精密な作りの首輪。いつでも主催者が操作することが出来、生殺与奪はいつでもあちらに握られている。
　よしんばそれをどうにかする手段が見つかったとしても、殺し合いに乗った参加者に殺される可能性だってあるわけで。
　つまり、状況を打開できる可能性は限りなく低い。先程も言ったが、賭けにしては分が悪すぎる。
　そんな微小な確率に賭けるくらいなら、いっそ誰かが優勝し、歴史を変えてしまうのが一番楽なのではないか。
　そう思ってしまうのも、無理のないことだった。

　いつも手放すことなく持ち歩いている分厚い本のハードカバーを握る手に力が籠もる。
　―――彼女が視界に自分以外の誰かを見含めたのは、まさにその瞬間だった。

「よう、お嬢ちゃん。いい夜……たぁ、言えねえか」

　境内に植えられた唐松の木に凭れて立つのは、美しい白髪と黄金色の瞳を持った男だ。
　顔立ちの整った男のことを俗に“イケメン”と呼ぶが、そんな一言では形容しきれない、不思議な男であった。
　神秘的、と言うのか。まるでこの世ならざるものを目にしているような感覚を覚えてしまう。
　
「えっ、あっ、その」
「はははは、驚かせちまったか？　さっきからずっとこうして立ってたんだが、お嬢ちゃんと来たらまるで気付く様子がねえ。俺は他人を驚かせるのが好きでね。ついつい悪癖が出ちまった」

　シクラメンは自分の顔に朱が差すのを感じる。
　彼が居たことには本当に、全く気付かなかった。
　悪い想像に没頭するあまり、自分の身を疎かにしていたようだ。
　これでは世話がない、と思わず苦笑と溜息が漏れて出る。

「――鶴丸国永だ。面倒臭い説明はこの際省くが、お嬢ちゃんと同じく、この趣味の悪い遊戯に巻き込まれた被害者さ」
「……シクラメン、です」
「シクラメン？　……ふむ、どっかで聞いたような名前だな。うちの主が確か、そんな花を育ててたような」

　顎に手を当て首を傾げる鶴丸。花騎士の説明をしようかとも思ったが、それよりも優先して話すべきことがある。

「えと――国永、さん……？」
「鶴丸でいい。呼び名に対した意味はないが、そっちの方が呼ばれ慣れているもんでな」
「じゃあ、鶴丸さん。……鶴丸さんは、どうするつもりなんですか？」
「どうする、とは？」

　意地悪な返しだとシクラメンは少しむっとした。
　出会って……もとい、シクラメンが鶴丸を認識してから一分と経っていないが、それでも彼が聡明な人物だというのは話していて伝わってくる。
　質問の意味が分かっていて、敢えてとぼけているのだ。
　……こっちは真面目に聞いているのに。そんなシクラメンの不満を感じ取ったのか、鶴丸は大きく笑った。

「悪い悪い、そう怒るなよ。俺は……もちろん乗っちゃいない。殺し合いなんぞする気はない、安心しな」
「それは……どうしてですか？」
「どうして、って言われてもなあ。お嬢ちゃんはもしかして乗ってるのかい？」
「う――そういうわけじゃ、ないですけど」
「ふむ、理由か。理由……ね。雅じゃないから、って答えじゃ不満か？」
「へ？」

　思ってもいなかった答えに、シクラメンは間の抜けた声を漏らしてしまう。
　それを見て鶴丸はまた笑うと凭れた木幹から背を離し、シクラメンの座り込む本堂前へと歩み寄ってくる。

「知り合いの受け売りだ。歴史を変えちまえばそりゃ何も起きなかったことに出来るんだろうが、そいつはちと不格好過ぎるだろう？　仲間殺しを進んでやる趣味もない。刃向かう理由は山ほど浮かんでも、言いなりになる理由は一つも浮かばない……だから乗らない。これで納得するかい？」

　理屈が通っていないと文句をつけるのは簡単だった。
　しかしシクラメンは、爽やかな笑顔で言い放たれたそれに何も言い返せない。
　理屈だの何だの細かいことを度外視したなら、彼の台詞はとても正しく、理想的な答えだったからだ。
　シクラメンだって、仲間を殺したくなんてない。苦楽を共にした同じ花騎士だ。殺したいわけがない。
　そう頭では分かっていても、困難すぎる道のりからつい目を背けてしまっていた。
　鶴丸のようにあっさりと断言してのけるには、シクラメンは少々年季が足りなすぎる。

「そう難しく考えることもない。それに、こんなことを仕出かす連中だ。約束を守る保証もそもそもないってもんだろ？」
「それは……そう、ですね」
「前向きに考えるんだよ、何事も。女ってのは明るい方が可愛いからな」

　古びた木の段差を踏み越えて、鶴丸はシクラメンの隣を通り過ぎた。

「すいません……クセなんです、下を向くの。でも……確かにこんな暗い顔してたら、どうにかなるものもどうにもならなくなっちゃいますね」

　シクラメンの花言葉は“内気”だ。
　花騎士の彼女もまた、この通り誰が見ても分かる内気な人物である。
　そんな少女だからこそ、この絶望的すぎる極限状況の中で人一倍追い詰められていた。
　下を向いて物事をマイナスにばかり考え、一人で悪い方へ悪い方へと歩いていってしまう。
　そこで鶴丸という前向きな人物に出会い、言葉を貰えたというのは……間違いなく彼女にとってプラスの展開だった。
　殺し合いという趣向が善か悪かは、改めて問うまでもない。
　年端もいかない女の子をあんな風に惨殺し、見せしめにするような遊戯なのだ。
　であれば――花騎士として、団長の剣となることを誓った身として、選ぶべき道は一つだろう。

「おや、いい雰囲気になったな。さっきとは打って変わって、明るく前向きな感じが伝わってくるぜ」
「えへ……そうですか？」
「ああ。ところでお嬢ちゃんにいくつか聞きたいんだが、此処に来る前に誰か会った参加者は居るかい？」

　どうやら鶴丸は、最初から境内の中に居たわけではないようだった。
　ということは、シクラメンは境内の外から入ってきた彼に全く気付かなかったということになる。
　自分の迂闊さにまた頬が熱くなってくるのを感じたが、それはそれとして質問には答えなければならない。

「いえ、居ません。……目が覚めた時からこの……観音堂？　の前に居て、それから一歩も動いてないので」
「そうか。そいつは残念だ」

　鶴丸は嘆息すると、不意に足音を止めた。


　…………？

　シクラメンの頭に、疑問符が浮かんだ。
　何か、違和感がある。
　別におかしなところはないといえばそれまでだが、どうにも居心地の悪い感覚がある。
　なんだろう、これは。
　例えるなら間違い探しの問題を解いていて、答えが浮かんでこない時のよう。
　
「……鶴丸さん？」
「どうした？」
「あの……どうして私の後ろに？」

　観音堂の中でも検めるのかと思ったが、そういう気配はない。
　シクラメンが純粋に疑問を抱いてそう問うと、返ってきたのはやはり笑い声だった。
　先程までの爽やかなものとは少し違う――乾いたような、色のない笑い声だった。

「―――俺は、他人を驚かせるのが好きでな」

　それなら、さっきも聞いた。
　
「ただ、俺は別に人を怖がらせたくて驚かすわけじゃない。そいつの驚いた顔と、それから安心する顔を見たいだけなのさ」
「は、はあ」
「人生には驚きが必要だ。予想し得る出来事だけじゃあ、体より先に心が死んでいく。
　なら俺が振り撒く驚きには、心を殺すようなものはあっちゃならないわけだ。そこでこの状況。俺は色々考えた末に答えを出した」

　その瞬間――シクラメンの本能がけたたましく警鐘を鳴らした。
　まずい。何かは分からない、いや分かっている、この状況はまずい！
　
「驚きが来るより先に終わらす。特に、お嬢ちゃんみたいな童っ子相手にはな」

　急いで振り返ろうとした時には既に、金属と何かの擦れ合う音が夜闇に聞こえた後だった。
　読書家でもあるシクラメンは、既存の知識の中からその音の正体を見つけ出してしまう。
　まして彼女は鶴丸国永という男が、腰から提げていた物を見ていた。
　そんな相手に背後を渡すということ自体、この状況では迂闊が過ぎる怠慢だったのだ。
　振り向き、もう一度鶴丸の姿を見ることすら間に合わない。
　どうすれば。
　どうすればいい。
　………………どうしようもない。

　思考回路がオーバーヒートし、シクラメンという花騎士は、まるで苦痛を和らげようとするかのように意識を手放した。

　
□


「……ほう、こいつは驚いた。臆病な性根が功を奏するとは」

　太刀の刀剣男士、鶴丸国永の振り抜いた刀が、花騎士シクラメンの首を落とすことはなかった。
　鶴丸が良心の呵責を覚えたわけではない。彼は本当に殺すつもりで、自分の写し身である刀を振るった。
　にも関わらずシクラメンを仕留めることが出来なかったのは、刃が首に触れる寸前で彼女が意識を失ったことだ。
　意識をなくした体は脱力して座っていた小階段から転げ落ち、結果として鶴丸の一閃から逃れるに到った。
　歴戦の刀剣男士である鶴丸も、全く予想しない展開。
　臆病で内気な少女相手だからこそ起きた偶然の、生還だった。

「しかし、俺もまだまだだ。驚くより先に殺すと豪語しておきながら、結局は驚かせてしまった。背後に回るというのはやはり不自然過ぎたな……本堂の扉を開き、中を物色する素振りでも見せるべきだったか」

　シクラメンは完全に失神しており、その下にはアンモニア臭を放つ水溜りが広がっている。
　言わずもがな、失禁の跡だ。鶴丸が彼女をそれだけ恐怖させてしまったという意味では、失敗の痕跡とも言える。

「何、次は上手くやる。見せしめにされた娘やこの娘のように、恐怖に慄き死なせるようなことはしないさ」

　刀剣男士に暗殺の心得はない。彼らの職務は戦場で華々しくも泥臭く戦い、歴史修正主義者を跳ね除けること。
　物言わぬ刀だった頃ならいざ知らず、付喪神として顕現してからは人を殺したことなど当然ない。
　不慣れ故に、さしもの鶴丸も失敗してしまった。殺すというのもなかなか上手くいかないものだ。

「だから、そう怖い目で見るなよ。美顔が台無しだぞ、光坊」

　そう言って鶴丸は視線を境内の入り口の方へと移す。
　鶴丸も数分前には彼処から少女を見つけ、境内の中へと入ってきた。
　しかし今、其処には鶴丸の見知った顔が立っている。
　右の眼を眼帯で覆った、端正な顔立ちの男だった。
　腰から刀を提げていることから、彼も鶴丸と同じ刀剣男士であると分かる。

　時に、隻眼の戦国武将と言えば思い浮かぶ人物は一人だろう。
　伊達政宗。奥州の独眼竜と呼ばれた彼の逸話に、燭台の陰に隠れた家臣を燭台諸共切り捨てたと言うものがある。
　この彼は、その“燭台切”に使われた刀が時を経て、審神者の手で刀剣男士として顕現された存在。
　燭台切光忠と言う、太刀に他ならなかった。

　隻眼に長身という見た目は結構な威圧感を持つが、見た目に反して燭台切は穏やかな刀だった。
　本丸では炊事を好んで担当し、出陣すれば勇猛果敢に沢山の戦果を上げる――彼いわく“格好よく決める”。
　その彼が、鶴丸を鋭い眼差しで睥睨している。鶴丸は冗談の通じない様子を見て、一人肩を竦めた。
　燭台切の口から出た言葉は、さながら刃の切っ先のように硬く、鋭い声色で鶴丸の耳に届く。

「――鶴さんは僕よりも早く鍛刀された刀のはずだ。歴史を変えることがどれだけの重罪か、知らないとは言わせない」

　不都合な過去を消したいと考えた覚えは、きっと誰にでもある。
　しかし一つの些細な歴史を変えただけでも、後の世界は大きく変動する。
　世界情勢、文明の発展、社会の興亡、果てには人の存在すらも。
　だから刀剣男士達は、審神者と共に歴史修正主義者と戦ってきたのだ。
　……歴史を変えたい思いを時に飲み込みながら、世界を守る刃として戦場を馳せてきたのだ。

　燭台切には、許せなかった。
　自分や仲間と一緒にそういう戦いをしてきたというのに、歴史修正主義者の甘言に乗ってしまった鶴丸が。
　一方で敵意を向けられた鶴丸は気圧された風でもなく、あくまでいつも通りの調子を保ったまま口を開く。

「ああ、知っているともさ。四十……せいぜい五十か？　それくらいの人数に、沖ノ木島というごく限られた空間。
　そんな狭い歴史だろうと、もしも改変した日にはどれだけの影響が出るか分かったもんじゃない。そんなことも分からないような阿呆ではないぞ、俺も」
「なら……」
「取捨選択……って言葉を知ってるか？」

　当然、燭台切もそんな言葉くらいは知っている。
　
「俺だって考えなしにこういう道を選んだわけじゃない。短い時間だったが、よ～く考えたさ。俺はな、光坊。ちゃんと考えた末に、何も起きなかったことにしようと思ったんだ。――取捨選択さ。歴史の改変によって失われる色んなもんを俺は捨てた。代わりに、お前や主と過ごす日常を取った」
「鶴さんの捨てた物が、どれだけの人を狂わせるか分からない。生きているはずの誰かが死んでしまうことになるかもしれない。……それでも、鶴さんはそれを捨てるのか」
「捨てる」

　鶴丸は、即答した。

「別に見ず知らずの誰かの命や、世の安寧を軽く見てるわけじゃあないさ。だが俺の中では、そんなものより遥かにお前達の命の方が重い」
「……本気、なんだね」
「虚仮でこんなことを言うほど、悪趣味な男になった覚えはないぜ」

　燭台切は唇を噛み締め、変わってしまった同胞の顔を真っ直ぐに見据えた。
　鶴丸が即答した瞬間に、燭台切は悟ってしまった。――この人は、もう止まりはしないと。
　鶴丸ほどの刀が、伊達や酔狂ではなく、確たる自分の意思として殺すことを選んでいるのだ。
　誰がどんな言葉をかけようと、この人――この男が止まることはもうないだろう。
　それこそ、全てを終わらせるまでは。歴史を改変し、沖木島で殺し合いが行われたという事実を消し去るまでは。

「だとしたら――僕は貴方の敵だよ、鶴さん」
「ははははっ、それでこそ光坊だ。お前はそっちの側に立ってる姿がよく似合ってる」
「……僕だけじゃない。他の皆だって、歴史を改変するなんてことに賛成はしないはずだ」
「どうかな。俺はぱっと思い浮かべただけでも、俺と同じ考えをする奴の顔がいくつか浮かぶぜ」

　皮肉るように言うと鶴丸は足元の少女を一瞥し――しかし刃を向けることはなく、刀を鞘に収めた。

「俺もお前も練度は結構なもんだ。お互い、この場でやり合って無駄に消耗したくはないだろう。此処は俺が折れてやる」

　シクラメンをこの場では殺さない。だから、お前と俺が此処で今すぐやり合う理由はない。
　鶴丸は一方的に戦わないことを決め付けると、そのまま境内の外へと歩き始めた。
　燭台切はそれを、ただ黙って見つめている。一歩も動かずに、視線も動かさずに、黙って。
　堕ちた同胞の足が自分の真横を通り過ぎる瞬間に、燭台切はやっと言葉を発した。

「……似合わないよ、鶴さん」
「そうか？　俺は我ながら、自分によく似合った役回りだと思ってるんだけどな」

　鶴丸はこれから、殺人者として島中を行脚するだろう。
　人を驚かせるための口先を騙しの道具にして、歴史を変える権利のために殺して回るだろう。
　……この島には刀剣男士のことを知らない参加者も沢山いる。
　彼らはそんな鶴丸のことを殺人鬼と罵り、悪として断罪することだろう。
　そう考えると、肩を並べて戦場を共にした刀として得も言われぬ悲しみに襲われる。

　燭台切には、立ち去る鶴丸の背中を黙って見送ることしか出来なかった。
　ただ――歴史を変えるのは禁忌であり、間違ったことだという認識は一切変わらない。
　燭台切光忠という刀はあくまで正攻法での状況打破に挑むつもりだ。
　それだけに、歴史を変えるという鶴丸国永を無視することは出来ない。
　次に遭遇することがあったなら、その時は雌雄を決する時になるだろう。

　境内へ足を踏み入れ、倒れた少女を抱え上げる。
　ひとまずは本堂の中で休ませ、目が覚め次第事の経緯を説明――……という流れがベターか。

「……ああ。本当に、嫌な夜だ」

　溜息混じりに見上げた夜空は、いつもよりずっと薄汚らわしいものに見えた。


【一日目・深夜／C-6・観音堂】

【燭台切光忠＠刀剣乱舞-ONLINE-】
[状態]：健康
[装備]：燭台切光忠＠刀剣乱舞-ONLINE-
[道具]：基本支給品一式、ランダム支給品１～２
[思考・状況]
基本方針：歴史は変えない。歴史修正主義者を打破し、本丸へ帰る
１：……とりあえず、起きるまで待とうか。
２：鶴さんと次に会ったなら――

【シクラメン＠FLOWER KNIGHT GIRL】
[状態]：気絶、失禁
[装備]：シクラメンの本＠FLOWER KNIGHT GIRL
[道具]：基本支給品一式、ランダム支給品１～２
[思考・状況]
基本方針：？？？
１：…………


【鶴丸国永＠刀剣乱舞-ONLINE-】
[状態]：健康
[装備]：鶴丸国永＠刀剣乱舞-ONLINE-
[道具]：基本支給品一式、ランダム支給品１～２
[思考・状況]
基本方針：全員殺し、歴史を変えて殺し合いを起きなかったことにする
１：参加者を殺して回る。手段を選ぶつもりはない。


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|BACK|NAME|NEXT|
|&amp;color(cyan){GAME START}|燭台切光忠|:[[]]|
|&amp;color(cyan){GAME START}|鶴丸国永|:[[]]|
|&amp;color(cyan){GAME START}|シクラメン|:[[]]|    </description>
    <dc:date>2016-10-16T15:37:55+09:00</dc:date>
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  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/dmmbr/pages/20.html">
    <title>【刀剣乱舞-ONLINE-】</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/dmmbr/pages/20.html</link>
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      |キャラ名|登場話|
|三日月宗近|[[000&gt;http://www65.atwiki.jp/dmmbr/pages/18.html]]|
|岩融||
|今剣|[[002&gt;http://www65.atwiki.jp/dmmbr/pages/25.html]]|
|明石国行||
|蛍丸||
|愛染国俊||
|燭台切光忠|[[001&gt;http://www65.atwiki.jp/dmmbr/pages/24.html]]|
|加州清光||
|大和守安定||
|へし切長谷部||
|鶴丸国永|[[001&gt;http://www65.atwiki.jp/dmmbr/pages/24.html]]|    </description>
    <dc:date>2016-10-16T15:37:04+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/dmmbr/pages/19.html">
    <title>【艦隊これくしょん-艦これ-】</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/dmmbr/pages/19.html</link>
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      |キャラ名|登場話|
|赤城||
|加賀||
|金剛||
|比叡||
|榛名||
|霧島||
|島風|[[002&gt;http://www65.atwiki.jp/dmmbr/pages/25.html]]|
|暁||
|Верный||
|時雨||
|夕立||    </description>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/dmmbr/pages/25.html">
    <title>夢幻想夜</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/dmmbr/pages/25.html</link>
    <description>
      「んー」

　帳の下りた沖木島に、殺し合いの空気とは場違いな声が響いた。
　間延びした、聞きようによっては真剣味がなくも聞こえる、そんな声だ。
　
「参ったなあ。これ、ちょっとヤバいかも――」

　声の主は子供らしさ、幼さを多分に残した少女だった。
　顔立ちはあどけなくも端正で、もう少し歳を重ねれば息を呑むような美人になること請け合いのそれ。
　にも関わらず、その服装は際どいの一言では形容しきれないほど“アレ”だ。
　ウサギの耳を思わせるカチューシャも奇抜だが、何より下だ。
　ミニスカートとしてもやり過ぎだろう丈の短さに加え、下着の紐が思い切り覗いてしまっている。
　見ようによってはギャグか何かにも見える絵。しかし当の彼女は今、至って真剣だ。

「うーん。どうしようかなあ」

　そう言って、首に巻き付けられた肌触りのやけに良い首輪をコンコン叩く。
　過度な衝撃にならない程度に触ってみた感じ、まず力技では無理だろうという当たり前のことが分かった。
　少なくとも中の爆薬なりセンサーなりを作動させずに外すのは不可能に違いない。
　専門の道具なり知識なりがあれば別なのかもしれないが――生憎、駆逐艦娘・島風にはそういう分野の知慧はなかった。

　となると、ゲームから逃げ出すという選択肢は早々に潰えてしまったことになる。
　残された選択肢はこの悪趣味なゲームを催した運営を叩くか、彼らの口車に乗って仲間を殺すかのどちらかだ。
　
「一応、最後に全部なあなあには出来るんだよね――あの変なのの話が本当なら」

　殺しは禁忌だ。そのくらい、島風だって当然知っている。
　敵以外に砲を向けることも演習などで時折ありはしたが、殺す気……もとい沈める気で向けたことは一度もない。
　純粋に殺す理由がないからと言ってしまえばそれまでだが、そうでなくとも島風はそんなことはしなかったろう。
　それは何も自分だけじゃない。他の仲間も皆そうである筈だと、島風は思っていた。
　殺してしまえば、もう取り返しは付かない。
　同じ艦娘を建造することは資材さえあれば理論上はいくらでもできるが、そうして建造された二代目はあくまでも“二代目”だ。
　沈んだ艦は、失われた命は戻らない。直せない。そう知っているから、人も艦娘も誰かを殺しはしないのだ。

　だが、その“当たり前”はこの沖ノ木島の戦いには適用されない。
　優勝した人物が望みさえすれば、命の重さも殺しの罪も、みんなまとめてなあなあになってしまう。
　……もちろん、あんな約束全部口先だけだと言われてしまえば反論する材料はないのだが。

「どーしよっかなーっ」

　自分の背丈より少し高いブロック塀の上に座って、足をばたつかせながら島風はおとがいを上へと向けた。
　嫌な空だ。これならいっそ、雨でも降ってくれればいいものを。
　殺し合いの一コマとは思えないほど暢気に、島風は自分の立ち位置を考える。

「はぁ」

　―――正直に言えば、島風はどちらでもよかった。
　
　殺し合いに乗って皆のために皆を殺す方でも、殺し合いに歯向かってあるかもわからない光明を探してみるのでも、どちらでも構わなかった。
　流石に殺した相手を殺したままにしておくのは寝覚めが悪いからやらないが、生き返るなら事態の収束に向けて頑張ってみるのもアリかな、と思っていた。
　あまりにも浮つきすぎている。これでは宙ぶらりんだ。今の島風を見たなら、誰もがそういう苛立ちを抱くだろう。
　事実、今の彼女は宙に浮いていた。仲間の駆逐艦が殺された時も、どこか上の空でそれを見ていた。
　元々島風は協調性にやや欠けるきらいがあったが、それでもこれほどではなかった。
　何もかもどうでもいいとまでは言わない。しかしやはり、殺し合いという現実に対して真剣になれない。
　他人事のようにこの地獄を見つめ、観測している自分がいる。

「結局、肝心な時には助けてくれないんじゃない。―――提督の、ばか」

　島風は人と打ち解けるのがそれほど得意ではない。
　協調性に欠けると言ったのもそういう一面だ。
　建造されてからと言うもの、友達を作るでもなく一人で過ごしていた彼女。
　そんな彼女を見かねて話しかけて来てくれたのが、島風をこの時代に再現した『提督』だった。

　最初は鬱陶しかった。ただ、心の深いところに彼が入ってくるまでに時間はかからなかった。
　彼は島風が速く走ると喜んでくれたし、戦果を上げて帰ってくると頭を撫でて褒めてくれた。
　彼に褒められたい一心で島風は頑張って、頑張って頑張って頑張って――いつしか、島風も“みんな”の一員になっていた。
　
　それからの日々は楽しかった。けれど、長くは続かなかった。
　聞いてしまったからだ――提督が、他の艦娘と『ケッコン』したという話を。

　別に、自分がそうなりたかったわけではない。
　そういうことは考えたこともなかったし、自分と彼の間に打算はなかったと断言出来る。
　出来る筈なのに、それを聞いた時から島風の頭の中の大事な物が一つぽっかりと抜け落ちてしまった。
　いつも通り朝起きて座学の授業を受ける。命令があれば出撃し、時にはＭＶＰだって取ってくる。
　いつもと変わらない日常のはずなのに、世界はあまりにも虚ろに見えた。白黒のアニメでも見ているようだった。
　
　今思い返せば。自分が提督に感じていたものは、異性としての愛情――だったのだと思う。
　気付いた今では、もう何もかも遅い。巻き返しの機会は奪われたままで、ダメ押しにこの殺し合いゲームだ。
　……せめてもう少し早く呼んでくれればよかったのに。これだから遅いやつは嫌いなんだ。
　心の中で毒づく島風が、夜闇の中に自分を見つめる視線を感じ取ったのは丁度その時のことである。

「おや。みつかってしまいました」
「だあれ、あなた」
「みてのとおり、てんぐです」
「なにそれ」

　島風は失笑したが、確かに視線の主の格好はそれらしかった。
　中性的な顔立ちの、恐らくは島風より年下だろう少年。
　赤い両目が暗闇の中でも月明かりのおかげで見て取れる。
　その服装は、現代の日本では時代錯誤と謗られるようなものだ。
　おまけに少年は、島風が座っているブロック塀よりも更に高い空き家の屋根上に立って彼女を見下ろしている。
　これなら確かに、それらしいと言えばそれらしい。後は首の輪っかさえなければ完璧だ。

「ぼくは今剣。おたがいさいなんでしたね、こよいは」
「そうね。私は今、どうするか迷い中」

　気だるげに島風が答えると、少年――今剣は目を丸くした。

「おや。ころしてしまうんですか？」
「言ったでしょ、迷い中。最後に元通りに出来るんだったら、それでもいいかなとは思う」
「それはいけません。れきしをかえるのはいけないことだと、岩融……ぼくのなかまがいっていましたよ。
　かなしいことがあっても、そのさきにいまがあるんだーって」
「よくわかんない」
「じつはぼくもなんです」

　……なんだか、この子と話してると気が抜ける。
　島風ははあ、とややわざとらしく溜息をつき、ひょいと塀の上から飛び降りた。
　それを追うように今剣も屋根を蹴って今度は塀に飛び移り、また島風を見下ろす。

「ついて来ても面白くないよ」
「さあ、それはいってみないとわかりません」
「……天狗なら、皆連れてどこか遠い山の奥にでも運んでくれたらいいのに」
「むう。いじわるをいうかたですね、えぇと――」

　今のは少し大人気なかったと、さしもの島風も（言ってからではあるが）反省する。
　ただ素直に詫びるのも癪なので、名前を名乗ることで手を打つことにした。

「島風よ。駆逐艦、島風」
「くちく……？　……って、あ！　まってくださいよう！」

　追いかけてくる天狗の少年を無視して、島風はあてもなく歩き始めた。
　普段の島風なら此処らで一つ速さ比べと洒落込むところだが、今はそういう気分でもない。
　……どうするかは未だに決めかねている。殺すか、立ち向かうか。心はまだ浮いている。
　
　夜は――まだ長そうだ。


【一日目／深夜／B-4・鎌石村】

【島風＠艦隊これくしょん-艦これ-】
[状態]：健康、やや上の空
[装備]：12.7cm連装砲＠艦隊これくしょん-艦これ-
[道具]：基本支給品一式、ランダム支給品１～２
[思考・状況]
基本方針：どちらでもいい
１：どうしようかな。
[備考]
※本人支給の連装砲はいわゆる「連装砲ちゃん」ではありません

【今剣＠刀剣乱舞-ONLINE-】
[状態]：健康
[装備]：短刀『今剣』＠刀剣乱舞-ONLINE-
[道具]：基本支給品一式、ランダム支給品１～２
[思考・状況]
基本方針：かたなとして、つとめをはたします
１：島風さんについていってみましょう！　しんぱいです


***時系列順に読む
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***投下順に読む
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|BACK|NAME|NEXT|
|&amp;color(cyan){GAME START}|今剣|:[[]]|
|&amp;color(cyan){GAME START}|島風|:[[]]|    </description>
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    <title>【１日目】</title>
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      *オープニング
|話数|題名|登場人物|場所|作者|
|000|[[オープニング]]|歴史修正主義者、三日月宗近、電|不明|[[◆1vx4f3byYk]]|


*深夜
|話数|題名|登場人物|場所|作者|
|001|[[月光香]]|燭台切光忠、鶴丸国永、シクラメン|C-6・観音堂|[[◆1vx4f3byYk]]|
|002|[[夢幻想夜]]|今剣、島風|B-4・鎌石村|[[◆1vx4f3byYk]]|

*黎明
|話数|題名|登場人物|場所|作者|


*早朝
|話数|題名|登場人物|場所|作者|    </description>
    <dc:date>2016-10-16T15:34:52+09:00</dc:date>
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    <title>【000～050】</title>
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      *000～050話
|話数|題名|登場人物|場所|時間|作者|
|000|[[オープニング]]|歴史修正主義者、三日月宗近、電|不明|深夜？|[[◆1vx4f3byYk]]|
|001|[[月光香]]|燭台切光忠、鶴丸国永、シクラメン|C-6・観音堂|深夜|[[◆1vx4f3byYk]]|
|002|[[夢幻想夜]]|今剣、島風|B-4・鎌石村|深夜|[[◆1vx4f3byYk]]|    </description>
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    <title>【FLOWER KNIGHT GIRL】</title>
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      |キャラ名|登場話|
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|オトメユリ||
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|クロユリ||
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|ネリネ||
|ヒガンバナ||
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    <title>メニュー</title>
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      **メニュー
-[[トップページ]]
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**本編
-時系列順に読む
--[[【１日目】]]
-投下順に読む
--[[【000～050】]]
-追跡表
--[[【艦隊これくしょん-艦これ-】]]
--[[【刀剣乱舞-ONLINE-】]]
--[[【御城プロジェクト:RE～CASTLE DEFENSE～】]]
--[[【FLOWER KNIGHT GIRL】]]
--[[【主催陣営（※ネタバレ含）】]]
----

**各種情報
-[[参加者名簿]]
--[[参加者名簿（死者表示）]]
-[[ルール]]
-[[地図]]
-[[支給品情報]]

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**その他
-[[書き手一覧]]

----

**リンク
-[[本スレ&gt;&gt;http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1476375231/]]
-[[俺ロワ・トキワ荘&gt;&gt;http://jbbs.shitaraba.net/otaku/12648/]]
-[[2chパロロワ事典＠wiki&gt;&gt;http://www11.atwiki.jp/row/pages/153.html]]

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    <title>【主催陣営（※ネタバレ含）】</title>
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