え?正直何が起こってたかさっぱりっス。少年その2に届いてしまったメイド服の件でおもしろおかしく弄って愉しんだ 効果は確かだと立証されてるのだから試してみたらとアドバイスしたことしか覚えてないっス。
街の全域、特に夕方~夜半にかけて白い霧が出るそうで。もちろんそれだけなら別にどうだっていいんですがね。どうも一部で一ヶ月前のアレと同じような現象が確認されたそうで。
それで例のギルドの娘っ子が現出した今までに殺してきた連中の群れに付きまとわれて大変だったとか、それを助けるために他の皆が動いたとか何とか。助けるものは助けたっぽいっスけど、別に白い霧の原因は解決してませんな。さて、どうしたもんっスかねぇ。
ふふふ、結局事件の全容はコッチ側の方が見えているのですよ。今回に限り。殺し屋のお嬢さんに起こった今回の一連の騒動。最初のきっかけはこちらで用意させていただきました、あとの全てはこの土地自体とお嬢さんの記憶と意思が呼び起こしたもの、とでも言っておきましょうか。まあなぜわざわざお嬢さんをターゲットにしたか、ということに関しては一応今は伏せておきましょうか、一応、ね(*1)。
さて、とある方にはべらべらと喋ってしまいましたからここで私、ないし私どもの立場でも改めてご紹介させていただきましょうか。少し、長くなりますよ。
私ども、八部衆と呼ばれる存在の目的はヤギリがこの世界に復活することのお手伝いとなります(*2)。もっとも半数以上は自分の意志というよりはヤギリの仕込んだシステムに取り込まれて強制されている形になりますけれど。 ヤギリはかつて、人の身でありながら自らの存在を永遠のものとするためにレジェンドのレネゲイドビーイングとなりました。人の意思と記憶の中に自らの存在を偏在させることによってひとつの伝承として永遠にあり続ける、そういう目論見だった様子。ですがそれは彼のあり方に脅威を覚えた彼の血族さん達によって阻まれました、力を弱められたところを封印され、さらに記録や記憶を操作することによってヤギリの存在を人々の意思から取り除いた、というわけです。
そんなヤギリがこちらに介入出来るようになったきっかけは経年劣化で封印の力が弱まってしまったこと、ないし彼の直系の血筋には消すことの出来ないヤギリの存在が残ってしまっていたことが原因でしょうか。歴代の当主はその影響を受けて少しずつ少しずつ行動をねじ曲げられていった、というわけですよ。例えば能力を維持するためと呼称して直系の血筋を濃くしてみたり、例えば最低限の封印を管理するための資料ですらも廃棄させたり、例えば自分の体の器とするモノが出来ないかと特に近親相姦を繰り返させた異形の白子さん達を執拗なほどに産み出させてみたり。まあ、色々でございます。
ヤギリがこちらに戻ってくるために講じたプランは二通り。ひとつは自分の人としての半生と似た経緯を送り、似た名を持つあの若君の意思を侵食し、朝倉 桐也として成り代わり再び人として生きること。ふたつめがそれを拒まれたとき、彼を中心に記憶されたヤギリの名を足がかりに再びレジェンドのレネゲイドビーイングとしてこの世界での存在を固着化させること。まあ、要はどちらに転んでも大丈夫なようにしておいた、ということです。
ヤギリが何をなそうとしているか、かつての彼は自らの理想を追い求めていました。ですが、それに私はあまり興味はありません。本人にでも直接お確かめください。どの道、レネゲイドビーイングとしての彼の特性、白い霧はすでに濃く顕れはじめています。こちらに出てくるのも時間の問題でしょう。ああ、もちろん八部衆たる我々としても大きな働きどころということになります、直接相対するのも間近となるでしょうね。楽しみにしておいてくださいませ。
最後になりますがこの度、先日の件で出来た欠員の穴を埋め、新たにシステムの犠牲者 八部衆の同胞が増えました、大変喜ばしいことでございます。…………歓迎いたしますよ、嘉納 伊吹様?