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40日戦争SS - (2007/10/05 (金) 02:18:29) の1つ前との変更点

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「今日の処刑はデールにするアル」 確定白のイーリンさんの決定に、一同驚きの色を隠せない。 それはそうだ。なにしろデールさん処刑を希望している人は誰もいないのだから。 私はどうしても納得できなかった。 ――そう、私はリンクさんが狼かも知れないと思ったときから、すごく苦しくてたまらなかった。 その苦しさから逃れたいために、お茶を濁すようにフリーメアさんを処刑希望してみたり、私を疑っている村長を処刑希望してこの考えから逃げてしまおうとしたこともあった。 本当は今だって死なせたくない。だって彼が人間だったら?無実の罪で彼を失うことになるかもしれない。そうなったら私はどうやって生きていけばいいのだろう。 いいえ、例え狼だったとしても、愛している人を失うことには代わりはないのだから。 だが、同時に個人的な感情で庇うわけにはいけないこともわかっていた。 今まで何人もの人が無実の罪で処刑され、また狼に襲撃されて亡くなっている。今生きている私は、亡くなった人の想い――とりわけ私を信用していてくれていたノエルさんの想い――を背負っていかなければいけない。 2月、リンクさんに告白して想いが通じで、うきうきしていたころ、ノエルさんは最愛の夫を残して処刑されていった。「リンクさんが狼」という遺言を残して。 彼女に白確定の判定が出たとき、彼女の意思を継いで絶対に狼を滅ぼすと誓い――そして今、彼女と同じリンクさんが狼という結論に至って、悩み苦しみながら出した処刑希望。 そんな思いで出した希望を、たかが「自分が生きているうちに判断に困りそうな人間を処刑しておきたい」という理由でなかったことにはされたくなかった。 そんな私も含めて、当然みながイーリンさんの説得にかかった。 しかしイーリンさんの結論は変わらず、業をにやしたもう一人の確定白のイフェイオンさんが、リンクさんへの投票を宣言し、結果多数決でリンクさん処刑に決まった。 処刑は銃殺刑で行われることになっていた。 反対する皆を説き伏せて、私が刑の執行をすることに承諾してもらった。 「イフェイオンさん。刑の執行の前にリンクさんと少しお話させて頂いても構いませんか?」 「ええ…少しだけなら大丈夫ですよ。ただ申し訳ありませんが投票までばたばたしてしまって、日が傾く前に時間があまりありませんので15分ほどしかとれませんが…。」 「それで十分ですわ」 そして処刑が決まってから椅子に座ったまま微動だにしない彼の真正面に立った。 「リンクさん…。私、前にあなたを信じないことはあなたを裏切ることって言いましたわよね。そして決して裏切らないとも…。でもやはり私はあなたが人間だとは思えないのです。最後まで信じられずにごめんなさい…」 「や、アンドレアを信じさせてあげられない私が悪いんですから、私のほうこそすみません…。 初めてあった頃のアンドレアは、勝気でいつもなにがあっても負けないって顔してたのに、今はつらそうな表情ばかり…。私のせいでつらい思いばかりさせてしまってるみたいで…」 「いいえ…。確かにつらい思いもしたけれど、リンクさんにはそれ以上に幸せな気持ちをいっぱいもらったから。だから謝らないで…」 「…すみません。…あ、また謝っちゃいましたね。私こそアンドレアには感謝しないといけませんね。アンドレアのことずっとかっこいいなって思ってて、少しでも近づけるように頑張ろうと思って、アンドレアを守りたいから強くなろうって思って。 …少しは強くなれたでしょうか…?」 (この人はこんなにも私を想っていてくれたんだ…。) そう思うと胸がつまり何もいえなくなって、言葉のかわりに彼にだきついた。 彼は私を抱き返して、片手でそっと髪をなでる。 「アンドレアの髪…やっぱり綺麗ですね。」 「…髪だけ…?」 「…や、髪だけじゃなくて全部綺麗です!アンドレアは最後まで突っ込みが鋭いですね…!」 お互いに顔を見合わせてクスクス笑い、そしてもうこんなこともないのかと思うとその笑顔もすぐに消えて。 「…アンドレア。私のためにそんな悲しい顔しないでください。私は笑っているアンドレアが一番好きですよ。」 私は無理に笑顔を作り、そして最後のキスを交わした。 「…そろそろ日が暮れます。もうお別れしないと…。アンドレア。私の最後のお願い聞いてくれますか?」 「どんなこと?」 「明日がきて、まだ狼が生き残っていることがわかっても絶対に自分を責めないでください。私はアンドレアの力を信じています。絶対村に平和をもたらしてください。そして平和になったら、私のことは忘れて、どうかアンドレアを大事にしてくれる人を見つけて幸せになってください。」 その言葉に私はゆっくりかぶりを振り、体を起こして、彼の胸のあたりに銃口をぴったりと押し付けた。 「…両方とも聞けませんわ。まず第一に明日には狼は生きていませんわ。先ほどまでは悩んでいました。リンクさんが村人だったら一生後悔することになると。 でも…イーリンさんがみなの反対を押し切ってデールさんを処刑しようとしたことで確信しました。イーリンさんが最後の狼であるあなたを庇っている狂人であると。 …もし私が狂ってしまえればあなたを守れたんでしょうね。…でも今まで流した血の重さを考えると狂ってしまうわけにはいかなかったんです。 そしてもうひとつ。あなたが狼であっても私は自分自身の手で最愛の人を殺すことになる。そんな私が幸せになれるとも思えませんし、第一あなた以外の人と幸せになれるとは思っていませんから…。 さようなら…愛しています。」 私は静かに引金を引く。そのほんの数瞬の間に、誰にも聞こえないような小声で、確かに彼の声が聞こえたような気がした。 「…やはり私を追い詰めるのはアンドレアでしたね…。私はアンドレアの鋭さがたまらなく怖かったんです…。ふがいない狼でごめんなさい…。」 銃声が鳴り響き、一瞬の静寂の後――村をおおう霧がはれ、残った村人たちの歓声があがった。 これですべてが終わったのだ。 「…リンクさん。あなたは立派な狼でしたわ。あなたはあなた自身の死をもって私の心を喰って、永遠に離さないのですから…」 ----

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