クランの狂宴

魔法使いえりぽん@まとめ内検索 / 「クランの狂宴」で検索した結果

検索 :
  • クランの狂宴
      さぁて、今日のボクの獲物はどの娘かな? ファルス、いや工藤遥が、不敵な笑みを浮かべて周囲を見渡す。 そして、遠巻きにその姿を見つめる少女たちの中から一人の生贄を選び出した。 リリー、いや鞘師里保は、自分に向けられた遥の視線に気づき、ハッとした表情で後ずさる。 不敵な笑みはそのままに、ゆっくりと里保に近づく遥。 「いや! 来ないで!!」 遥に背を向けて必死の形相で駆け出す里保。 その様子に慌てることもなく、遥はゆっくりとその後を追った。 「逃げたって無駄さ。キミの存在はボクの掌の上にあるのだから」 広い屋敷の中とはいえ所詮は室内、徐々に遥に追いこまれていく里保。 慌てて躓きかけた隙を突かれて、一気に壁際まで追い詰められた。 窮地に追い込まれながらも強気な視線で睨みつけてくる里保に、 遥は上から見下して楽しげに鼻で笑う。 そんな一瞬の隙を狙って里保が壁際をすり抜けようとした、その時。 ドン...
  • 小ネタ
    ...2スレ 884) ・クランの狂宴(14スレ 203-204) ・新作上映(14スレ 476) ・ぽん大好き(15スレ 438-440) ・星を求めし者(15スレ 572-573) ・上映予告(17スレ 303) ・ほんとにあったら怖い話(18スレ 101-104) ・さゆみの昔話(20スレ 687) ・ホウキに乗った王子様(20スレ 778) ・絶対のお告げ(22スレ 91-92) ・真夏の夜の怪談(23スレ 343-345) ・巻き込まれ少女(23スレ 691-695) ・ウソつきあんた(29スレ 130-133) ・くちづけのその後(30スレ 70-141) ・SHOCK!(34スレ 95-96) ・彼女になりたいっ!!!(38スレ 64-65) ・娘。小説書く!『魔法使い○○○ん』(56スレ 60-62) ・今春上映 (59スレ 98) ・しょうがない 夢追い人 (61スレ 7...
  • 第二章 冷たい雨のクラン
      「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」 【配役】 鞘師里保 / リリー 和田彩花 / スノウ 福田花音 / 紫蘭(シラン) - 監督生 譜久村聖 / 竜胆(リンドウ) - 監督生 田村芽実 / マリーゴールド 佐藤優樹 / マーガレット - お嬢様だと思ってる勘違いの女の子。3人の召使がいる 鈴木香音 / ローズ - 仲の良い4人組 竹内朱莉 / カトレア - 仲の良い4人組 勝田里奈 / ナスターシャム - 仲の良い4人組 石田亜佑美 / チェリー - 仲の良い4人組 中西香菜 / キャメリア - 男役 工藤遥 / ファルス - 男役。 小田さくら / シルベチカ - 失踪した少女 田辺奈菜美 / ジャスミン - マーガレット親衛隊 加賀楓 / クレマチス - マーガレット親衛隊 佐々木莉佳子 / ミモザ - マーガレット親衛隊 ○ かつて、ヴァンプ(吸血種)は不死の命を持っ...
  • マーガレットの話 3
    ◇ 夜中、マーガレットは短剣を手にクランの奥の柱の前に立っていた。 その柱には小さな傷がある。 目立たない、ともすれば見落としそうな傷だけれど、マーガレットにはその意味がわかる。 マーガレットは短剣を振り上げ、新たな傷を刻みつけた。 この行為に意味を持たせるつもりはあまり無い。 だけれども、慎重なマーガレットは先への備えを怠るつもりは無かった。 クランの色々な場所に、色々な形で印をつける。 揺蕩う記憶のようには簡単には消すことの出来ない傷を。 ふと気配を感じ、マーガレットはビクリと肩を揺らし振り上げた剣を止めた。 それから手を下ろし、静まり返ったクラン見回した。 気のせい、とは思わない。 マーガレットは自分の思考、論理を信じるのと同じくらいに直感、感覚を信じていた。 その感覚の鋭敏さこそが自分の本懐であるとさえ考える。 だから...
  • マーガレットの話 1
    ◇ 「お姉さま!マーガレットお姉さま!」 自分を呼ぶ愛らしい声に、マーガレットは読んでいた本から顔を上げた。 パタパタとスカートを翻しやってくる可愛らしい少女、ミモザの姿を見つけ マーガレットの顔に笑みが浮かぶ。 「どうしたのミモザ。そんなに走って」 ミモザに続いて、クレマチス、ジャスミンもマーガレットのところにやって来た。 ミモザは少し息を切らし、マーガレットを見つめる。 それから恥ずかしそうに頬を染め、手に持った白い輪を差し出した。 「中庭に綺麗なお花が咲いていたから、クレマチスと花冠を作ったんです!お姉さまに!」 少し歪なシロツメクサの花冠。 マーガレットは、その花冠とミモザとクレマチスの顔を見渡し、柔らかく頬を緩めた。 「とても上手に出来たわね。私が貰ってもいいの?」 ミモザはクレマチスの手を取り、二人で大き...
  • マーガレットの話 4
    ◇ 「舞踏会のドレスが無いわ。じいや!ばあや!」 マーガレットの声が響く。 いつもと変わらない光景。 クランの少女達は、誰もその声に耳を傾けることは無い。 「ねえ、どこなの!」 マーガレットと目が合わぬように、少女達が視線を逸らす。 ある物は侮蔑の目で彼女を眺めた。 雨のクランの遊戯室にマーガレットが現れると、自然にその周りから人が居なくなる。 頭のおかしい少女マーガレットと、関わり合いになりたいと思う者は誰もいなかった。 マーガレットは何を分からず、どうして自分の周りに誰も居ないのか理解出来ない。 お城の中の視線は全て自分を蔑んでいて、プリンセスに対する敬意の欠片も見当たらない。 不安で、マーガレットは叫び続けた。 どうすることも出来なくて、寂しくて叫び続ける。 目に涙を浮かべながら、マーガレットは毎日自分の存在を主張し続...
  • マーガレットの話 2
    ◇ 深夜一度目の地下室探索を終えたマーガレットは 寝付けない夜を過ごしていた。 そこには確かに、薬、名簿、そして写真があった。 全てを裏付ける確かな証拠。 そして現在もクランに在籍しながら、ただ一人どこにもその名前が記されていなかった人物。 予想はしていたし、ある程度分かっていたこと。 だけど、覚悟していたはずのマーガレットにとっても それらは余りにも大きな衝撃だった。 むせ返る臭いも相俟って、胸が悪くなり頭がガンガンと痛み 長くその場に留まる事は出来なかった。 自分の精神が余裕を失っていることを感じ、そこに居たという証拠を出来るだけ隠すのが精いっぱいで 地下室を出たマーガレットは、すぐに湯浴みをした。 あの臭いが身体にこびりついているような気がして、堪らなかったから。 確かに事前に示された物は見つけた。 それは想像以上の衝撃を...
  • 第四章 永遠の終わりとはじまり
      「あ~面白かった」 「まーちゃん何があったか覚えてるの?」 バリバリと音をさせて煎餅を食べながらご満悦の優樹に、亜佑美が驚いたように尋ねる。 「もちろん! どぅーとやすしさんに会ったよ」 「あ~でも、あたしも里保ちゃんに会えたような気がする。ただの夢かもしれないけど」 「聖も多分どぅーに会えたかも」 「そう言われてみるとうちも鞘師さんに会ったのかな? まーちゃん他に残ってる記憶とかあるの?」 「う~ん、なんかとっても楽しかったことだけはよく覚えてるよ」 「やっぱり優樹ちゃんも具体的なことはわかんないのか」 気絶から回復した4人は、一仕事を終えた和やかな雰囲気で紅茶を手に談笑していた。 しかし衣梨奈だけは、眉間にしわを寄せて険しい表情のまま会話にも加わらなかった。 オダベチカは連れてきたものの、他にえりができることは何かないんだろうか。 みんなのようにわかりやすく力になりたいのだけど、 ...
  • 嘆きの先にある光(リリウム編)
      魔法使いえりぽんと演劇女子部 ミュージカル「lilium-リリウム 少女純潔歌劇-」の世界のコラボSSです ※リリウムの完全なネタバレが盛り込まれています 第一章 異界からの誘い第二章 冷たい雨のクラン第三章 深まる混迷第四章 永遠の終わりとはじまり第五章 深愛の果てにあとがき
  • 第五章 深愛の果てに
      バンシーのドレインタッチがリリーの身体に接触する、その寸前。 リリーの前に突如、水の障壁が現れる。 水壁は、触れたバンシーの身体を大きく弾き飛ばすと、そのまま細かい水玉となり消滅した。 「鞘師さん! 今です!!」 声を上げながら飛び込んできたのは立ち去ったはずのファルス――いや、 その身体を支配した工藤遥だった。 遥の声に応えるように鞘師里保もまた、リリーの身体を支配して起き上がる。 「信じたくなかったけど……。本当にそうだったんだ」 「やっぱりあなたが、バンシーだったんだね」 遥と里保が目を向けた、その先にいる人物。 「スノウ……」 遥が寂しげにその名を呟いた。 バンシーと化したスノウの様子は、普段通りの姿とほとんど変わりがなかった。 真っ赤に泣き濡れた瞳。魔力を帯びた掌。いつものスノウと違うのはそれだけだ。 壁際まで飛ばされたスノウがゆっくりと立ち上がり、哀しげな瞳を2人に向ける。...
  • ハロウィンの怪談・再び
      「今年もハロウィンの時期ですね。去年は鞘師さんが大変なことになってましたけど」 「うんホントまいったよ。でもお化けの正体が保田さんだとわかった今年はもう大丈夫だから」 「ただこの街で噂されてるのは、保田さんの件だけじゃないんですよ」 「まだ他にもあるの?」 「現在、魔道士の間で流れている噂の最先端は『食いしん坊の口裂け女』ですね。 ハロウィンでみんなを脅かすとお菓子がもらえると知り、この日を狙って出没してるらしいですよ」 「なにそれ。この地区の魔道士達も個性的なこと思いつくよね」 「だから鞘師さんも今日の夜はおとなしく家にいたほうがいいですよ」 「はるなんも心配性だなぁ。大丈夫だようちは強いから」 なんて見栄を張って家を出たものの、やっぱり暗がりの街はちょっと怖いな。 噂のせいか人通りもまったくないし、なんか無性に気味が悪く感じる。 みんなへのお土産のドーナツもちゃんと買えたから、今...
  • 新作上映
      ――ねえどこなの? 隠れてないで出てきてよ 春菜の勤める古本屋を訪れた里保は、店の片隅に平積みされた未整理状態の本の中から まるで魅入られたかのように薄汚れた一冊の本を手にする。 それは読んだ者が実際の登場人物になったかのように物語を体感できる、不思議な書物だった。 ――リリー……私があなたを幸せにしてあげる 幻想的な世界に心惹かれハマりこんでいく里保。 話の主人公に共感を深めた結果、ついには物語の中に完全に取り込まれてしまう。 里保と同化し魔力を増したその書物は、周囲の少女たちを次々と魅了し取り込んでいく。 ――こんなことが許されて良い訳ありません 書物の暴走を止めるため、衣梨奈は春菜とともに物語の世界に潜入する。 永遠の雨が煙る千年の花園、「LILIUM」の世界へと……。 ――お伽噺は結末を迎えた 現実の世界へと帰ろう はたして衣梨奈は、クランで巻き起こる悲劇を前に里保達を救...
  • 第三章 深まる混迷
      衣梨奈がさゆみの前に連れてきたのは、コケティッシュな雰囲気を持つ小柄な少女だった。 「この娘も手を貸してくれると言うんで連れてきちゃったんですけど、大丈夫ですか?」 衣梨奈の言葉に、困ったように腕組みをするさゆみ。 「うーん、手助けしてくれるのは確かにありがたいんだけどね。 大丈夫かと聞かれると、本編との兼ね合いもあるからこのタイミングだと 色々問題があるというのが正直なところなんだよねぇ」 半ば独り言のように呟きながら考え込んでいたさゆみだったが、 しばらくしてついに吹っ切れたのか、衣梨奈の隣にたたずむ少女に声をかける。 「うんわかった。じゃあ、あなたは今回初登場のオダベチカって 名前の娘だということにしておくけど、それでいいかな?」 「はい、わかりました!」 いかにも楽しげな様子で快活に返事をするオダベチカ。 「詳細はもう生田から聞いてるね。じゃあさっそくだけどエネルギーを注入させ...
  • ハロウィンの怪談 ~TRUTH~
    里保が帰ってこない。 軽い用事で一人で出かけて、帰りにドーナツを買ってくるとは言ってたけど、 それにしたってそんな時間がかかるものではないはず。 里保の実力を思えば考えにくくはあるものの、暗くなってからの女の子の独り歩きだけに、 まさか何らかの予期せぬ危険に巻き込まれたなんて可能性もないとは言いきれない。 「ドーナツまだかな~」 「まーちゃんもドーナツよりまず鞘師さんの心配しようよ」 「念のためみんなで探しに行った方がいいんじゃない?」 みんなのざわめきが広がる中、不安げな声を上げたのは春菜だった。 「もしかして、本当に『食いしん坊の口裂け女』に遭遇してしまったのかも」 「何それ? いくらハロウィンだからってそれはな……」 「うんそれかな」 笑って否定する衣梨奈の言葉は、さゆみの思わぬ肯定によって遮られた。 「えっ!? それって一体どういうことですか?」 「りほりほはその『食いしん坊の口裂...
  • ハロウィンの怪談 ~REVERSE~
      壁に掛かる燭台の灯りにうっすらと照らされた、武骨な石造りの玄室。 大きな魔法陣が描かれた床の中央で、結跏趺坐を解いたあたしは一つ大きなため息を吐いた。 ほどなくして、すぐ側の空間が歪み、瞬間移動の魔法で一人の少女が姿を現す。 「お帰りこんこん。そしてお疲れさま」 「ただいま~。ガキさんもお疲れさま」 心地良い疲労感に包まれたあたし達は、満足げに顔を見合わせた。 ○ 放浪の旅を続けていたあたしがこのT7王国へとやってきたのは、 ちょうど一週間ほど前のことだった。 ここに来るまでに立ち寄ったいくつかの王国と違い、 あまり整然としておらず悪く言えばチープな、でも雑多で活気のある街並み。 こういう雰囲気は、あたしも嫌いではない。 あたしがこの国に立ち寄ったのは、懐かしい友人に会うためだった。 「あらガキさん久しぶり~。こんなとこで会うなんて驚きだね~」 後ろからのんびりした声をかけられて振...
  • 本編13 『主席・だーいし』
    ▼   まだ雨に烟る淡い光の中、遥は目を覚ました。 いつの間にか眠ってしまっていた。 夢現の身体が優樹を見失って慌てて身体を起こす。 すると、手の中に確かな温もりが戻って 続いて目に優樹の安らかな寝顔が映って、一つ安堵の息を吐いた。 穏やかな寝顔。 それでも、優樹がどこかに行ってしまわないか、 不安は消えてくれなかった。 浅い眠りの中で、また友達の夢を見ていた。 何か告げる暇も無く逃げてきたから、自分たちのことを心配しているかもしれない。 もう二度と会えないことを覚悟はしていたけれど、 それでもこんなことになるとは思っていなかった。 燻った協会への怒りは、悔しさになり、悲しさになって 遥の心を締め付けた。 繋いだ手をそっと離す。 眠っていても、無意識にかなり強く握っていたようで 汗ばんだ掌は仄かに赤く火照っていた。 もう一度優樹の寝顔を見つめる。 普段の元気な優樹とは全然違う、大人っぽ...
  • 青春コレクション
    「ようやく動いたね」 「動きましたね」 「野中の気魄に押されて気持ちが揺れ動いたことで、 尾形もついにこれまでの『観察者』から、『ラブコメの当事者』として昇格なの」 「そうですね。これまで色々外堀を埋めてきましたけど、 尾形ちゃんの心を揺さぶるまでは至ってませんでしたから」 「で、それからどうなの? 普段の様子からして変わってきたりしてるんじゃない?」 「それがですね……。尾形ちゃんも野中ちゃんも、驚くほどに変化がないんです。 注意深く観察しているとたま~にぎこちなさを感じる瞬間もないではないんですけど、 他のメンバーはまず気づいてないでしょうね」 「ふーん、そうなんだ。 一歩間違えば本気で告白されてもおかしくはない状況に追い込まれて、 尾形も何にも感じてないはずはないんだけど。 間違ってかかった魔法の影響で偶然おかしな雰囲気になっただけだと、 無理やり納得させてなかったことにしてるってと...
  • いきなりクライマックス(妄想)
    「良かった~。かえでーならきっと来てくれると思ってたよ」 「良かったじゃないよ! これって一体どういうこと!?」 「どういうことって何が?」 「何がって全部だよ! なんであんな助けを求める電話をしたのよ?」 「電話したのはもちろん、かえでーに来てほしかったからに決まってるじゃない」 「じゃあ橋本って男は? あの大爆発は何だったの??」 「あの大爆発はねぇ……。玲奈がやったんだ」 「そんなはずは! だってあれは間違いなく『魔力爆発』……。 もしかして、玲奈の因子で??」 「ねぇかえでー。かえでーの師匠と道重さんが対立した原因って、何なのか知ってる?」 「…………。因子が絡んでるって話はなんとなく聞いてるけど」 「つんく♂さんが譜久村さんと鈴木さんを、因子持ちの2人を 魔道士にしようとしたことが、全ての発端なんだって」 「ちょっと待ってヨコ! なんで魔道士でもないヨコがそんなこと知ってんのよ!...
  • 『浪漫~My dear~』 第2部「それぞれの想い」
    2部「それぞれの想い」    M13地区で最大の書籍数を誇る書店。ここでは一般人向けの書籍だけではなく魔道士向けの書籍も裏で数多く扱っている。  飯窪春菜にとってそこは自らの野望を成就させるのにまたとない場所であった。  「おう、春菜!まーた9丁目の畠さんが自作のレシピ帳を置いてくれって頼みにきたよ。  そんなんいらねっつうのになぁ」  「そうだったんですか?たいへんでしたねぇ」  前日、休みを取っていた春菜に対して店主が声をかける。  (畠さん…かわいそうに…)  心でそう思いながら春菜は相槌を打つ。  この陽気な親父は春菜が働く書店の主人である。恐らくこの話題に上がった畠さんは  春菜の知る限りれっきとした魔道士であったが、確か息子さんは一般人であった気がする。  (きっと畠さんは研究本をうちに隠しておきたかったんだろうな…)  一般の人々にとって危険にもなりうる魔法の研究をそのまま...
  • 本編3 『へんな黒猫』
    ▼ 今日は朝から雨。 教室に入りながら聖は、昨日の転校生のことを今一度考えていた。 昨日も一晩、里保のこと、というより里保と衣梨奈のことをずっと考えていた。 いろいろと訳のありそうな転校生。小さく可愛らしい容姿とは裏腹に 落ち着いていてクールな印象を受けた。 でも、衣梨奈との再会で見せた不器用な笑顔は 彼女の秘めた優しさの欠片だったようにも思う。 衣梨奈にとって里保が大切な人であることはすぐに分かった。 クラスに早く溶け込ませようと世話を焼いていることも。 だから自分も協力したいし、里保とも早く仲良くなりたい。 前向きな気持ちしかないはずなのに、何故か心がモヤつく。 雨のせいだろうか。 それとも、自分が何も知らないせいだろうか。 もっと知りたいと思った。里保のこと、衣梨奈のこと、自分のこと。 バカな頭が恨めしい。 「あ、おはよう聖ちゃん」 「おはよう、香音ちゃん」 親友の笑顔に、少しだ...
  • 本編1 『りほりほ引っ越す』
    ▼ 「失礼します」 鞘師里保は一つ深呼吸をして、戸をくぐった。 深く椅子に腰掛けた50絡みの男が、里保を迎え入れる。 「ご苦労。まあ、楽にしてくれ」 「はい」 男の前まで歩み出た里保は少しだけ肩の力を抜いた。 相手の表情が幾分柔らかかったこともある。 きっとそんなに悪い話では無いのだろう。 「早速だが、お前の担当地区が決まった」 「はい」 事前にそのことは聞かされていた。 問題は自分がどこの地区で戦うことになるのか。 とは言っても、里保にとって場所はどこでもよかった。 なるべく自分の力を試せ、伸ばせる、最前線と呼べる場所であるなら申し分無い。 「特に希望は無い、ということだったが、本当にそれで良かったのか?」 「はい、私は自分の力を活かし戦える場所ならばどこでも構いません」 どこまでも真面目な里保の物...
  • わたしがついてる。 ~REVERSE~
    「ブラシって、必要ですよね」 私は確かに、石田さんにそう伝えたはずだった。 私の言葉を受けて石田さんのリアクションがなんか変だなとは思ったけど、 その時点では特に深い意味とか考えたりしなかった。 それがまさか、石田さんがあんな聞き間違えをしていただなんて。 しかもその聞き間違えをファンのみんなの前で公言してしまうだなんて……。 「私って、必要ですよね」 石田さんの公言のせいで、私は何度もファンのみんなに気を遣われてしまい、 その度に、 「言ってないです言ってないです!  『ブラシって必要ですよね』って言ったんです!笑 みんなに言っといてください!」 と苦笑いながら訂正をせざるを得なくなってしまった。 「石田さんがさっきのアナウンスですごい暴露してはりましたけど、 一体何があったんですか?」 どうにかその部の握手会も一段落し、 すぐにでも石田さんに抗議しに行かなくちゃと思っていた時、 ニヤ...
  • スプ水先生の奇跡【最終章】  ~黒幕達の想い~
    「そろそろみんな本格的に煮詰まってきたようなの」 「そうですね。じゃあ私が最後のひと押しを……」 「大丈夫、その必要はないから。だって…………」 「だって?」 「もうとっくに、始まってる」 「…………。 もしかして道重さん、その『恋ならとっくに始まってる』のセリフを ただ言いたかっただけってことはないですよね?」 「フフフ、別にそれだけが理由じゃないの」 「『それだけが』ってことは、それも理由の一つではあるってことじゃないですか」 「まあそれはともかくとして。 ここまで来たらもう背中を押すまでもないから、 最後のお膳立てだけきちんと整えてあげて、 後はクライマックスをじっくりと堪能させてもらうことにするの」 「そうですね。これまで色々手回ししてきた分、 存分に楽しませてもらいましょう」 「うん。この立ち位置はさゆみ達だけの特権だからね」 「はい」 「「ウフフフフフフフ…………」」 (おし...
  • ほんとにあったら怖い話
      多くの魔道士達が密かに住まうこのM13地区。 でも、この地区にいるのは魔道士だけではないんですよ。 普段は華やかに見える街並みの中にも、ほんの一本だけ道を間違えただけで、 そこには魔道士なんかよりも恐ろしい異形の存在が闇の中で息を潜め、 みんなのことを狙って虎視眈々を目を光らせているのですから……。 例えば夜も遅くなったからって、近道を使って早く帰ろうと 暗い路地に足を踏み入れてはいけません。 人通りもほとんどないような静寂の支配する暗がりに、 いるはずのない人影を目にしてしまうかもしれない。 勇気を振り絞って恐る恐る近づいてみると、そこには……。 人ではなく、なぜか一体のマネキンが立っているんです。 それもただのマネキンではなく、とても可愛らしい――見た目はそう、 まるで道重さんを幼くしたような――少女のマネキンが……。 ただ、いくら可愛いといっても、そんな路地の暗がりでマネキンが立...
  • 外伝
    外伝 ※18禁表現が入っている場合があるので自己責任でお願いします ・秘密の言い訳(2スレ 561-562)     ・猫たらし香音(3スレ 82-84 ※微エロ?) 鈴飯 ・黒猫はるなんとご主人様(3スレ 376-379) ・笑顔の君は太陽さ(3スレ 463-464) りほかの ・こんな一つの未来(6スレ 204-210) 生鞘 ※本編作者  ・小さなしるし (6スレ 342-343) さゆりほ ・里保の初夢 (6スレ 749-753) ・えりぽんとさゆみん (6スレ 932-934 ※エロ) 生さゆ ・えりぽんとさゆみん ~その2~ (6スレ 957-961) 生さゆ ・大魔女、風邪を引く(8スレ 473-476) 生さゆ ・チョコレットの魔法(8スレ 968-984) 生さゆ ※本編作者 ・もうひとつの大人の階段(9スレ 191-204) みずっき ・イメージトレーニング(10スレ ...
  • ロボキッス(まーどぅー編)
    2016年も気づけばもう3月。 今日無事ゲネプロも終了し、春のツアー本番が本格的に近づいていた。 ライブで一体どんな充実した空間を作り上げられるか、今からホンマに待ち遠しい。 もちろんそれは、歌やダンスなどパフォーマンス面でもそうやけど、 それ以上に、曲の合間のフリーな部分でのメンバー同士のイチャイチャや、 マイクを落とすとか思わぬハプニングをきっかけに垣間見える人間関係などなど、 想像しただけでもうワクワクが止まらへん。 道重さんが鞘師さんの唇を強引に奪ったようなことはさすがにないやろうけど、 ほっぺた程度ならチューするメンバーも絶対おるんやろうな。 その瞬間を見逃さず、しっかりと瞼の裏に焼き付けておかんと。 ちなみに「瞼の裏に焼き付ける」というのは比喩でもなんでもなく、 「脳内カメラの魔法」という、まばたき一つでその瞬間の光景を鮮明に 記憶しておくことができる素晴らしい魔法を、道重さん...
  • 登場人物
    鞘師里保。りほりほ 本編主人公の一人 魔道士協会執行局魔道士で、若くして協会若手ナンバー1の実力といわれる才媛。 上司でありえりぽんの父である生田局長に育てられ、えりぽんとは姉妹のような間柄。 大魔女道重さゆみの監視の為M13地区に派遣される。 戦闘の為の魔法を得意とし、風を操り空を飛ぶ高度な魔法を使いこなせる。 一方で私生活はずぼらで一人での暮らしが不安視されなし崩し的に道重家の一員になってしまった。実父ではない生田局長への複雑な思いから、協会魔道士であることへの強い拘りと執着を持っている。 そのため魔道士としては冷徹な面があり、淡々と仕事をこなしてきた。 しかしM13地区にてさゆやえりぽんと触れ合ううちに少しずつ心に変化が起きている。 えりぽんが好きすぎて馬鹿みたい。 道重さゆみ。さゆみん 本編主人公の一人M13地区に住む三大魔道士の一人。たった一人で魔道士協会を相手に出来る美貌...
  • 『浪漫~My dear~』 おまけ
    M13地区にはたくさんの魔道士が住んでいる。その魔道士から放たれている魔力を一つのネットワークにして把握しているらしい。  さゆみ自身あまりにも昔に研究した魔法すぎてよく覚えていなかった。だが、何かと便利なので悪用…もとい利用している。  「今日のお昼はスパゲティを作らせよう。明太子クリームがいいわね。」  さゆみが呟く。  そのときであった。さゆみのネットワークに、しかもお気に入りの場所に巨大な悪意を持つ魔力が1、2…5つ。  直後にノートパソコンから緊急通信を告げるアラームが鳴る。  さゆみが通信に応じると緊迫した様子の少女が映っていた。  「道重さん…、大変です!」  さゆみは、徐に後ろへ手を払う。いくつものスクリーンがさゆみの部屋の中に現れると、その中の一つを覗きこむ。   「…道重さん?」  春菜としては、火急の報せを持ってきたつもり。なのにさゆみはスクリーンを見つめたまま。  ...
  • ラブラブ観光 in M○○地区
    『口は災いの元』。 普段は気にも留めることがないこの諺を、 今回ほど身に染みて実感したことはない。 きっかけは、ほんの些細な出来事だった。 たまたま読んでいた雑誌に掲載されていた、オススメ観光スポットの特集。 様々な絶景スポットや美味しそうな料理の写真の数々を眺めながら思わず呟いた一言が、 間違いの始まりだった。 「ああいいなぁ。あたしもどこか旅行でもしてゆっくり羽を伸ばしたいな~」 それは別に切実さを伴ったものではなく、 ただ単に軽く羨望の気持ちを吐き出しただけにすぎなかったのだけど、 迂闊にも晒した本音に敏感に食いつくヤツがすぐ側にいた。 「もし羽を伸ばしたいなら、石田さんにピッタリの絶好のスポットを知ってますよ」 その時はまだ、楽しげな尾形の笑みに隠された深慮遠謀に気づくはずもなく、 話の流れでそれがどこなのか訊ねると、尾形はとある地区の名前を上げた。 確かその地区は、観光地として...
  • 絶対のお告げ
    普段とは全く違う、威厳に満ち溢れた立ち振る舞いの聖の口から、 朗々と歌いあげるような宣言が発せられた。 「女王の口から漏れ出づる、天のお告げを聞くがよい!!」 それに応じて、聖を取り囲むようにひざまずく一同より、和するように声が返される。 「天のお告げ、それは絶対!!」 満足げに大きく頷いた女王が、ついに臣民に向けてお告げを下す。 「我が星を守るキリ中尉……」 はたしてお告げの内容がどのようなものなのか、固唾を呑んで耳を傾ける一同。 だがそれは、想像の遥か彼方を駆け抜けていった。 「アサダを相手に接吻せよ!!」 ザワ……ザワ……。 あまりにあまりすぎるお告げの内容に、みんな信じられないように横目で周囲の顔色を窺う。 そんな一種の非難が込められたざわめきさえも心地よさげに受け止めた女王ミズキが、 穏やかな声音でお告げの実行を促した。 「キリ中尉。さあこちらへ……」 戸惑いのままに立ち上がり、...
  • 娘。小説書く!『魔法使い○○○ん』
    「失礼します」 野中美希は一つ深呼吸をして、戸をくぐった。 深く椅子に腰掛けた50絡みの男が、美希を迎え入れる。 「ご苦労。まあ、楽にしてくれ」 「はい」 男の前まで歩み出た美希は少しだけ肩の力を抜いた。 相手の表情が幾分柔らかかったこともある。 きっとそんなに悪い話では無いのだろう。 「早速だが、お前の担当地区が決まった」 「はい」 「M13地区に行ってもらう」 その地区に聞き覚えがあって、暫し考えた美希は、その意味にたどり着いて思わず声を出した。 「M13地区……ですか?」 「そうだ。お前には『三大魔道士』の一人を監視、報告してもらうことにした」 美希が辿りついたことを裏付けるように男の口からそう告げられる。 『三大魔道士』とは魔道士協会に所属していない、一人で魔道士協会を向こうに回すことも出来る程の 三人の大魔道士達のこと。 敵対しているわけではないが、協会としてその対応に苦慮するよ...
  • 外伝(続きもの)
    本編とは別作者さんによる外伝続きもの ※18禁表現がある場合もあるので自己責任でお願いします ・ケメコ外伝  ◇地底の果てのクリスマス ・シパパパ少女誘拐事件(※微エロ ・『浪漫~My dear~』 第1部 第2部 おまけ ・バッドエンド ~傍観の代償~ ・夕陽に黄昏 ・「魔法使いえりぽん ~伝説の魔法使いを求めて~」 ・新しい青春の舞台 ・ハロウィンの怪談・再び   ~TRUTH~  ~REVERSE~ ・嘆きの先にある光(リリウム編) ・『笑顔』 第一章  第二章  第三章  第四章   過去編 第一章  第二章  第三章  第四章  第五章   真相編 ・魔法少女みずき☆マギカ   第一章  第二章  魔法少女みずき☆マギカ [真編] 叛逆の物語 ・ドラマティック モンスター   オマケ ・黒猫の追憶   ~その先にあるもの~   ~真実を照らす絆~ ・スプ水先生の奇跡 Wha...
  • 第一章 異界からの誘い
      「ったく、どこ隠れてんだよまーちゃんは」 家の中を探し回りながら遥が毒づいた。 優樹にやろうやろうとせがまれ、軽い気持ちで始めた2人だけのかくれんぼ。 いくら広い道重邸とはいえ所詮は室内。隠れられるところも限られているし 本気で探せばすぐに発見できると高を括っていたが、これが驚くほどに見つからない。 きっとどこか絶好の隠れ場所を見つけて、絶対に見つかりっこないだろうと ニヤついているであろう優樹の顔を想像して、無性に腹が立ってくる。 「おっかしーなぁ、もう一通り探したはずだけど。 確かこの先には部屋もなかったはずだし。……あれ?」 遥の記憶では行き止まりだったはずの廊下の先に見慣れないドアを見つけ、思わず足を止める。 もしかしてこの中に優樹が隠れているとか? 「おーい、まーちゃんいるかーい」 コンコンコンとドアを叩きながら声をかけてみるも反応は皆無。 まあもし本当にいたとしても返事はし...
  • ホウキに乗った王子様
    「某国のファイティングコロシアムで新たに存在が確認された魔法使いですが、 どうやらホウキに乗って空を飛べるらしいです」 「ふーん、さすがはるなん情報が早いね」 「でも、ホウキを使って空を飛ぶ魔法使いなんて本当にいるんですね。 伝説の中だけのお話かと思っていました」 「確かに珍しいかもね。さゆみはホウキで空を飛ぶ魔法使いって聞くと、 まず吉澤さんのことが頭に浮かぶんだけど」 「えっ!? なんで吉澤さんが??」 「ずっと昔の話だし、その頃はさゆみも直接関わっていたわけじゃないなんだけどさ。 某国で果てることなく続いているレッドアマゾネスとホワイトバーバリアンの争いに、 吉澤さんが巻き込まれたことがあったのよ。 そこで吉澤さんがホウキで空を飛びながら縦横無尽の大活躍で、ホントすごかったらしいよ」 「それってもしかして、『紅白の戦役』のことですか? まさかそんな大きな争いごとの裏に吉澤さんの存在が...
  • わたしがついてる。 ~TRUTH~
    「盛りだくさん会」の控室で、珍しく石田さんと小田さんが隣同士になってはる。 その光景を見た時、はるなはもういてもたってもいられず、 咄嗟に思いついた「いたずら」をこっそりと実行に移してしまったんや。 その結果、小田さんの「ブラシって、必要ですよね」という一言を、 石田さんが「私って、必要ですよね」と聞き間違え、 さらにそのことを石田さんが握手会の開始前アナウンスで ファンのみんなに伝えたため混乱が広がり、次の部の開始前アナウンスで 小田さんが訂正するという、何とも面白い展開が巻き起こった。 ……なんて他人事のように言うてるけど、開始前アナウンスでファンのみんなに伝えるよう 石田さんをけしかけたのはこのはるななんやけどね(苦笑) はるなとしては「いたずら」大成功でもうニヤニヤが止まらん状況なんやけど、 では実際どんな「いたずら」を実行したのか……。 それは、だーさくさんにこっそり魔法をかけた...
  • わたしがついてる。
    その日の「盛りだくさん会」の控室で、珍しくあたしの隣の席になったのは小田だった。 別に小田が隣なのが嫌だとか、そういうわけではない。 積極的にというわけではないけど普通に会話もするし、強いて言えば、 ニヤニヤしながらチラチラ観察してくる尾形の視線がうざったいと感じるくらい。 だからその時も、あたしはいつも通り小田の話を軽くあしらいながら身支度してたんだけど。 「私って、必要ですよね」 あまりに突然すぎる小田からの問いかけに、ブラシを探していた手が思わず止まる。 反射的に横を向くと、まずあたしの目に入ったのは小田の逆隣りに座る野中の姿だった。 彼女も思いがけない小田の一言に、思わず反応してしまったのだろう。 その驚愕の表情と似たような顔を、きっと今のあたしもしているはずだ。 周りを驚かせた本人である小田は、澄んだ瞳であたしのことをジッと見つめていた。 意味深な言葉とは裏腹に、特に深刻そうな顔...
  • 香音ちゃんの大喧嘩
      香音は校舎裏で人を待っていた。 久しぶりに今からケンカをする。 相手はまだ来ない。 フフ、と自嘲気味に笑いながらすしり、ずしりと四股を踏む。 それにしても、どうしてこんなことになったのだろう。 そう、それは三日前のことだった。 从*´◇`) 「聖ちゃんが男の人と歩いてたよ」 朝、いつものように早めに登校した香音の耳に不意に入ったその言葉。 信じられなかった。いや、信じたくなかった。 認められない。生田が相手ならともかく、どこぞの馬の骨なんかに。 そんなことのために私は・・・ 「みんな、おはよぉ~」 そんな香音の気も知らずに低血圧で朝風呂を終えたしっとり聖がエロけだるそうに登校してきた。 モヤモヤしたまま普段通り接するほど香音は器用ではない。 さっそく聖の机に行き、問いただす。あくまで柔和にいこうと努めながら。 「聖ちゃん、なんか最近、ウチら以外に仲が良い人とかできたりしてない?」 そ...
  • ブラックジャックさゆみん
      続きのように見えて全然別モノです 工藤と聖が道重家の重たい戸を開けると、そこには黒いスーツを着込んだ道重と 小さい女の子(ヤシ子)がいた。 「なんだね、やぶからぼうに」 いきなり家に飛び込まれた道重はあからさまに不機嫌だ。 「道重さん。実はかくかくしかじかで」 聖が必死にことのなりゆきを話すが、道重は工藤をジッと眺めている。 「道重さん、話きいてます?」 「もちろんだ」工藤から視線をそらさず適当に道重が答える。 その視線に耐え切れずに工藤は道重の横にちょこんと座っている女の子を見やった。 「道重・・・さん、この子は?」 「ヤシ子だ。助手をやってくれている」 紹介されるとヤシ子はココヤシ、と挨拶した。 「マサキ・・・といったな。この少女を助けたいと?よろしい。ならば3000万円だ」 「さ、三千まんえん!?」 もちろん無料だとは思ってなかったが、道重の口から飛び出した途方もない金額に工...
  • ケメコのモンハン日記
      ○月×日 独り地底で過ごすこの生活は、とにかく暇だ。暇すぎる。 暇つぶしにとよしこに勧められて始めたツムツムもあらかたやり尽くし、 すぐにまた暇を持て余す日々に戻ってしまった。 じゃあこれをやってみたらと、そこでよしこに勧められたのがモンハンというゲーム。 アクション系は苦手なんだけどと渋るあたしに、そんなの慣れればどうにかなるし、 とにかく一度ハマればとことんまでハマる時間つぶしには最適なゲームらしいからという、 そんなよしこのごり押しに負けて、あまり気乗りしないながら結局始めてみた。 まずはキャラクタを作成。名前は無難に「kei」でいいかな。 後は容姿とか一通り決めて……と。 実際キャラクタを操作してみてまず困惑したのは、慣れない3D視点。 自分の動きと視点が噛み合わず、どこをどう動いてるのかよくわからなくなってくる。 必至に目で追っていると、段々と3D酔いしてきた。 初っ端からこ...
  • ええか!?
    どんよりと灰色の雲に覆われ、いつ泣き出してもおかしくない空。 日も暮れる時間だというのに一向に涼しくなる気配もなく、ジメジメと息苦しい大気。 いかにも気が滅入るような気候ではあったが、桃奈はまったく意に介していなかった。 いやそれどころか、他人の目もあるし身体も疲れ果てているため実際にすることはないが、 できることならスキップしながら帰路につきたいくらい、浮かれた気分に満たされていた。 執行魔道士になりたい、という夢を抱いて桃奈が魔道士協会に所属してから早一年。 入会当初はまだまだ未熟で普段からそれほど目立った存在ではなかったが、 先日の魔法競技会でよもやの優勝したことから一気に脚光を浴びることとなり、 その流れでついに執行魔道士昇格と、とある小隊への加入が決定したのだった。 ここだけの話、一番入りたいと思っていた小隊とは別だったものの、 それでも憧れの執行魔道士に自分がなれるというだけで...
  • 願望叶う
    こんにちは。道重さゆみです。 早速ですが、発表させてください。 道重さゆみ…再生します!! … … … … … 「良かったぁ。これでまなかの努力も報われたかな……」 ベッドに身体を横たえスマホでさゆみブログを眺めていた愛香が、 達成感と安堵に満ちた呟きを漏らす。 「りさちゃん、きっと泣いて喜んでるんだろうなぁ」 親友の泣き笑いの顔が、まるでこの場にいるかのように鮮明に頭に浮かび、 愛香の表情も自然とほころんだ。 これまで、まなかのできることは全てやり尽くし、 そして今日、こうして一つの成果を出すことができたんだ。 ……これでもう、思い残すことは何もない。 愛香は本来、この世界の人間ではない。 別次元にある故郷の世界は、今はもう存在しない。 大規模な魔法戦争が勃発し、星ごと消失してしまった。 愛香は故郷消失の直前、次元をこじ開けて緊急脱出を図り、 爆風に吹き飛ばされてこの世界へと流れ着...
  • 恐怖の晩餐
    「ねえ、知ってる?」 その言葉とともに、まさは強い眩暈に襲われて思わず目を閉じた。 夜の嵐に揉みくちゃにされる小船のように、地面がグニャグニャと歪む。 とにかく倒れないように大地を踏みしめ、ただひたすらに耐える。 ようやく落ち着いてきたのを感じ、ゆっくりと目を開けると、 まさの前にいたのはズッキさんとふくぬらさんだった。 でも……。なんだろう、2人ともいつもと様子が違う。 普段のニコニコと楽しそうな笑顔じゃなく、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべて、 頭の天辺から足の爪先までまさのことを舐めるようにねっとりとした視線を送ってくる。 なんだか……怖い。 「まーちゃんってさぁ、すごい美味しそうだよね」 美味し!? どういうこと? 「うん、そうだよね。聖の好みからはちょっと外れるけど、 美味しそうだってことはよくわかるよ」 「特にさぁ……」 ズッキさんの視線が、まさの脚へと注がれる。 「そのモモ...
  • 小さなしるし
      ぽかぽか陽気の昼下がり。 テスト前ということで衣梨奈は少し早めの帰宅。 一緒にテスト勉強をしようということで、里保も道重家へとお邪魔することに。 手洗いうがいを済ませると衣梨奈は 「おやつの用意してくるけん、里保先に始めとって」 そう言ってキッチンへ向かった。 こういうことは衣梨奈に任せておくのが良いと分かっているので 里保も素直に従ってリビングへと向かった。 さて何の教科から始めようかと考えつつリビングに入ると、 大魔道士・道重さゆみがいつもの定位置、パソコンの前に座っているのが見えた。 しかしどうやらうたた寝でもしているらしく、小さく船を漕いでいる。 どうりで今日は「おかえり」という声が聞こえなかった訳だ。 それにしても。 こんな無防備な姿を見ていると、本当にこの人がそんな凄い魔道士なのかどうか、分からなくなる時がある。 いつもミステリアスな笑みを浮かべ、多分この街で起こっているこ...
  • ケース ピンポン『入浴』
      カコーン 木の桶の音が響く 東洋の神秘の国日本風の風呂場が道重邸には備えられている。 元はと言えばさゆみがネットで見た日本の萌え萌えアニメに登場したのを模したもの。 だから椅子が変な形していたりエアーマットが敷かれていたりと勘違いしてる部分もある だが、この道重邸の大きな風呂場は里保のお気に入りであった。 そんな風呂場で衣梨奈と並んで身体を洗う。 衣梨奈がシャワーで身体の泡を流すと無駄な贅肉の無い均整のとれた身体が現れた。 首から背中、ヒップへのラインは綺麗の一語に尽きる。 胸は世間で言う巨乳では無いが、むしろバランスからいうとちょうど良いくらいだ。 なにより形が美しい、張りを失わない乳房は重力に負けず上を向き、その先端で恥ずかしげにピンクに色づいた乳首が妙にセクシーだ。 それにひきかえと里保は思った。 まだまだ小さいなあと自分の胸を見ていたら、いきなり衣梨奈の手が伸びてきたのだ。 「...
  • 色っぽい じれったい
    半年に一回のハロコン大阪公演。 この時だけ、お泊りで12期が4人部屋になる、年に2回だけ訪れる特別な日や。 だから12期のみんなはこの日が来るのを特に楽しみにしとるし、 それこそハイテンションになるんもようわかるんやけど。 でも、あの日はなんだか、いつもと様子が違ったんや……。 1日目の公演も無事終了し、ライブの疲れも感じさせんくらい騒がしくお喋りしながら ホテルの部屋に到着したうちら4人は、まずはそれぞれ自分のベッドを確保する。 この部屋の利用もこれで3回目だけに、揉めることもなくあっさり定位置に収まり、 荷物を投げ捨てて思いっきりベッドに寝転びやっと身体を休めることができた。 本当はこのままダラダラしていたかったんやけど、そういうわけにもいかん。 あと30分ちょいもしたら、みんなで集まってハロコンの反省会があるんや。 その前にできれば軽くお風呂に入ってライブの汗を流したくもなるんやけ...
  • 星を求めし者
      始まりは一つの小さな点。 それがもう一つの小さな点と出会い、そして両者が通じ合うことによって線となる。 二つの小さな点をきっかけにして生じた線は、それだけで魔力を伴っているの。 そしてさらに、もう一つの小さな点が交わることにより、その力は更なる変化を引き起こす。 それが三角形。三つの点がそれぞれ引かれあい、線から面へと広がりを見せることにより そこから生じる魔力は飛躍的に増大する。 この三角形が、魔力を引き出す図形の基本となるものなの。 魔力を引き出すための図形、その一つの完成形となるもの。それが五角形。 五芒星、桔梗印などと呼ばれるその図形は、五つの点か絶妙のバランスでせめぎあい そこから大いなる星の魔力を現出させる。 この五芒星の魔力を使いこなしてこそ、一流の魔道士の証だと言っても過言ではないの。 星の一角を担う者。それが飯窪春菜。 彼女がスノウドロップを主りし者と出会うことで、...
  • 熱戦のゆくえ
      決勝の相手は……執行魔道士の鞘師里保さん。 噂に違わぬその実力は、戦ってみてすぐに思い知らされた。 私の得意とする吹雪の魔法は、風の魔法に遮られて鞘師さんには届かない。 他の攻撃も尽く軽くいなされて、消耗するのは私ばかり。 でも、さっきから鞘師さんはずっと受身なままで、これって一体!? 「2人の実力差、もう十分にわかってくれたよね。 これ以上戦っても意味ないから、このまま負けを認めてくれないかな。 うちは、亜佑美ちゃんを傷つけたくないんだ」 やっぱりそういうことなんだ……。 確かに実力差は嫌というほどわかっている。 でも鞘師さんを本気にさせることもできずに敗退なんて、私のプライドが許さない。 こうなったら捨て身の勝負を挑むしかない! 「まだまだこれからですよ鞘師さん。私の本当の実力、しっかりと味わってください!」 「高速変なおじさん」で幻惑! 「高速ステップ」そして「高速振り向き」で鞘...
  • Happy大作戦 ~実践編~
    「ねえまーちゃん、この頃さぁ、尾形ちゃんの様子がなんか変だと思わない?」 「変ってどーゆーこと?」 「ちょっと離れたところでみんなのことジッと眺めてニヤニヤしてたりさ」 「別に前からあんな感じでしょ。きっと好きなんだよあーいうのが」 さすがはまーちゃん、どこまで深く考えているのかはよくわかりませんが、 真実を見抜く目をしっかり持っています。 「まーちゃんのこともよく観察してるようだけどね」 「うっそ何それ!? 信じられないんだけど!!」 そのくせ自分自身のことになると全然見えてなかったりするのですから、 そのギャップがいかにもまーちゃんらしくて面白いです。 「ほんとほんと。尾形ちゃんって案外まーちゃんのこと気になってるんじゃないかな?」 「ちょっとそんなわけないじゃん変なこと言わないでよ!!」 怒ったように声を荒げてまーちゃんは席を立ってしまいましたが、 それでも私の下準備はしっかり完了し...
  • 本編35 『魔法使いえりぽん』
    ▼   首都近郊の摩天楼の一角。 その中にあっては目立たない、大きくも小さくも無いマンションの前にさゆみは立っていた。 遥か昔にはこういう大都会に身を置いていたこともあったけれど その頃の『都会』とは何もかも違う。 M13地区の表通りとも随分と違う。 往来が激しく賑やかで、道行く人の顔はどこか疲れていた。 さゆみは今一度建物を見上げ、それから近くのコンビニで買い揃えた手荷物を確認して 足を踏み入れた。 マンションの真ん中あたり、特に目印も無い部屋を ぼんやりと記憶していた番号を頼りに探し当てる。 確証も持てないままインターフォンのベルを鳴らすと 程なく、くぐもった声が聞えてきた。 『どちらさま?』 「道重です」 さゆみの返事に、その声は楽しそうな色を帯びた。 『道重ちゃん?待ってて、今開けるよ』 部屋の中からガサゴソと音が聞え それからガチャリとドアが開いた。 「こんにちは。 この間のお礼...
  • What is LOVE? ~アナザーストーリー~
    「だーさくさんのキューピッドなんですねわたし」 5月3日、春ツアー北海道公演の2人MC。 これまでブログやラジオでしか話していなかったこの話題を 直接ファンのみんなの前で披露するという、はるなにとって記念すべき日となった。 「えっ? 石田さんと私の??」 「はい! はい!」 2人MCの相手役は小田さん。 ラジオでは石田さんの前で話していたことを思えば、 だーさくさん両方の前で話せるというのもある意味奇跡やね。 「わたしの、バースデー繋がりなんですがわたしの誕生日の日に、 石田さんが尾形に『おめでとう』という連絡をするはずが、 間違って小田さんに、『おめでとう』って送ったんですよ……」 〇 日付が2月15日に替わり、17歳の誕生日を迎えるその数分前。 はるなは部屋のベッドに腰掛け、スマホを片手に精神を集中させていた。 この記念すべき誕生日に、道重さんの教えを実践する。 その決意とともに、...
  • @wiki全体から「クランの狂宴」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索