Fantasyが始まる

魔法使いえりぽん@まとめ内検索 / 「Fantasyが始まる」で検索した結果

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  • Fantasyが始まる
    子供達の話し声で姦しい道重邸のリビング。 いつものようにノートパソコンを眺めていたさゆみが、そっとため息をつく。 それは、周囲の喧騒にかき消されるくらいほんの小さいものだったのだが。 「珍しいですね道重さんがため息だなんて。何がありましたか?」 「相変わらず目ざといね、はるなんは」 パソコンを閉じながら、さゆみが苦笑する。 「そんな大したことじゃないんだけど、ちょっと面倒なことを押し付けられちゃってさ」 「道重さんに面倒を押し付けるなんて、この世の中にそんな相手がいるんですか!?」 「まあ生きてれば、どうしても色々しがらみってのは避けられないものだからね。 知っての通りさゆみは面倒くさいのが大嫌いだから、 困ったもんだと思わずため息もこぼれたわけだけど」 「面倒な困りごとといえば、こっちの今の状況もなかなかのものですけどね」 春菜の言葉に反応したかのように、駄々をこねるような声がリビングに...
  • 外伝
    ...451-464) ・Fantasyが始まる(27スレ 69-182) ・明日を作るのは君(28スレ 116-122) 生鞘 ・Never Forget(31スレ 72-156) ・愛の種(32スレ 141-170) ・ええか!?(43スレ 149-155) ・WHY(46スレ 103-108) ・春 ビューティフル エブリデイ(48スレ 67-224) ・待ち人来る 願望叶う (54スレ  86-104) ・かえでーれいなの愛の逃避行 (72スレ  138-142)  ※本編作者 ・いきなりクライマックス(妄想) (72スレ  157-158) ・ラブラブ観光 in M○○地区 (73スレ  73-81) ・時の縦穴 (74スレ  29-30)
  • 捲土重来!リベンジ
      「鞘師さん、勝負しましょうよ!海の近くとかハル無敵っすから、今なら絶対負けませんよ!」 「お、いいね。やろうか」 「ていうか、お二人ともここ『道重さんスポット』ですからね。勝負とかできないですからね」 「いやここでもやろうと思えば勝負もできるよ。例えばこんな方法とかね」 会話に割り込んできたさゆみがパチンと指を鳴らすと、 等間隔の円状に配置されたいくつもの丸椅子が出現した。 「これは……椅子取りゲームですね!」 「椅子取りゲーム?」「やろうやろう!」「じゃみんなで勝負するっちゃん!」 その様子に気づいたみんなが集まって、 魔法楽団の老人が奏でる軽快な音楽に合わせて急遽椅子取りゲームが始まる。 ハルもなんとなく嫌な予感がしながら、流れに逆らうことができずその輪に加わったが、 今回も丸椅子の数と参加人数が同じであることに気づけなかったのは痛恨のミスだった。 結果もたらされるあまりに不条理す...
  • ほんとにあったら怖い話
      多くの魔道士達が密かに住まうこのM13地区。 でも、この地区にいるのは魔道士だけではないんですよ。 普段は華やかに見える街並みの中にも、ほんの一本だけ道を間違えただけで、 そこには魔道士なんかよりも恐ろしい異形の存在が闇の中で息を潜め、 みんなのことを狙って虎視眈々を目を光らせているのですから……。 例えば夜も遅くなったからって、近道を使って早く帰ろうと 暗い路地に足を踏み入れてはいけません。 人通りもほとんどないような静寂の支配する暗がりに、 いるはずのない人影を目にしてしまうかもしれない。 勇気を振り絞って恐る恐る近づいてみると、そこには……。 人ではなく、なぜか一体のマネキンが立っているんです。 それもただのマネキンではなく、とても可愛らしい――見た目はそう、 まるで道重さんを幼くしたような――少女のマネキンが……。 ただ、いくら可愛いといっても、そんな路地の暗がりでマネキンが立...
  • わたしがついてる。 ~TRUTH~
    「盛りだくさん会」の控室で、珍しく石田さんと小田さんが隣同士になってはる。 その光景を見た時、はるなはもういてもたってもいられず、 咄嗟に思いついた「いたずら」をこっそりと実行に移してしまったんや。 その結果、小田さんの「ブラシって、必要ですよね」という一言を、 石田さんが「私って、必要ですよね」と聞き間違え、 さらにそのことを石田さんが握手会の開始前アナウンスで ファンのみんなに伝えたため混乱が広がり、次の部の開始前アナウンスで 小田さんが訂正するという、何とも面白い展開が巻き起こった。 ……なんて他人事のように言うてるけど、開始前アナウンスでファンのみんなに伝えるよう 石田さんをけしかけたのはこのはるななんやけどね(苦笑) はるなとしては「いたずら」大成功でもうニヤニヤが止まらん状況なんやけど、 では実際どんな「いたずら」を実行したのか……。 それは、だーさくさんにこっそり魔法をかけた...
  • 第三章 深まる混迷
      衣梨奈がさゆみの前に連れてきたのは、コケティッシュな雰囲気を持つ小柄な少女だった。 「この娘も手を貸してくれると言うんで連れてきちゃったんですけど、大丈夫ですか?」 衣梨奈の言葉に、困ったように腕組みをするさゆみ。 「うーん、手助けしてくれるのは確かにありがたいんだけどね。 大丈夫かと聞かれると、本編との兼ね合いもあるからこのタイミングだと 色々問題があるというのが正直なところなんだよねぇ」 半ば独り言のように呟きながら考え込んでいたさゆみだったが、 しばらくしてついに吹っ切れたのか、衣梨奈の隣にたたずむ少女に声をかける。 「うんわかった。じゃあ、あなたは今回初登場のオダベチカって 名前の娘だということにしておくけど、それでいいかな?」 「はい、わかりました!」 いかにも楽しげな様子で快活に返事をするオダベチカ。 「詳細はもう生田から聞いてるね。じゃあさっそくだけどエネルギーを注入させ...
  • しょうがない 夢追い人
    〇月△日(晩春) M13地区に隣接する地区にある小さなワンルームの一室。 家具や荷物も最低限にしか揃っていないその部屋の真ん中で大きく背伸びをした彼女は、 自分の頬を両手で「パンッ!」と叩いて気合を入れた。 今日からここで彼女の新たな生活が始まる。 『本当はお前の様な実績のある魔道士に頼むような仕事ではないんだがな。 病み上がりのリハビリ替わりと思って、普段はノンビリ過ごしていてくれ。 だが近いうちにきっとお前の力が必要となる事態が訪れるはずだ。 その時はよろしく頼むからな』 局長の言葉が、脳裏に蘇る。 確かに物足りない仕事ではあるけど、マイペースにゆったり過ごすのも嫌いじゃない。 いざという時の真打登場の機会が訪れるまで、しばらくは力を貯めることにしようか。 そして彼女はニヤニヤとした笑みを浮かべながら、 来るべき活躍の機会を想像して自分の世界に浸り込んだ。 〇 〇月▲日(梅雨) も...
  • インスピレーション!(だーさく編2)
    はるなが道重さんから伝授された魔法は、それこそ山のようにある。 ただはるなの力不足のせいで、残念ながら使いこなせているのはまだほんの一部だけや。 だからこそ今でも弛まぬ修行が欠かせへんのやけど、 そんな中で、今回新たな魔法の習得に成功した。 これがまた強力な魔法で、その影響を考えるだけでニヤニヤが止まらへん。 ただし、その前に立ちはだかる大きな問題が一つ。 それはとにかく使い勝手が難しいということ。 上手くタイミングを見計らないと、そう簡単に使える魔法ではないのも確か。 とはいえ、覚えた魔法はやっぱり試してみたいと思うのが人情というもので、 おいそれとお蔵入りするわけにはいかへん。 善は急げとばかり、はるなはさっそく「何かしら」のための計画を練ることにした。 標的はもちろん……あの2人やね。 フフフフ……。 ○ 「はーちんが歌を教えてほしいなんて珍しいね。でも何で『インスピレーション!...
  • 里保の初夢
      もしもうちが魔道士でなかったら、いったいどんな人生を歩んでいただろうか。 以前はそんな想いが頭を過ぎることさえなかった。 なぜって、それまでのうちにとって魔法の存在が自分自身を形成する全てであり、 魔法のない人生など考える余地さえなかったから。 それが、「魔道士でない人生」などという今までにない想像をするようになったのは、 間違いなく大魔女・道重さゆみに出会ったからだろう。 あの人と出会って、うちは以前と変わった……と思う。 事あるごとに自問自答し、そして思い悩む時間が増えた。 そんな中で、自分の根幹をも揺るがすような想像にまで思考がたどり着いたのは、 ある意味必然といえるものだったのかもしれない。 もちろん、今のうちが魔道士としての人生を送っているのは疑いのない事実だし、 そうでない人生についてどれだけ空想してみたところで、 当然のようにそれは夢物語以上には決してなりえない。 それで...
  • わたしがついてる。
    その日の「盛りだくさん会」の控室で、珍しくあたしの隣の席になったのは小田だった。 別に小田が隣なのが嫌だとか、そういうわけではない。 積極的にというわけではないけど普通に会話もするし、強いて言えば、 ニヤニヤしながらチラチラ観察してくる尾形の視線がうざったいと感じるくらい。 だからその時も、あたしはいつも通り小田の話を軽くあしらいながら身支度してたんだけど。 「私って、必要ですよね」 あまりに突然すぎる小田からの問いかけに、ブラシを探していた手が思わず止まる。 反射的に横を向くと、まずあたしの目に入ったのは小田の逆隣りに座る野中の姿だった。 彼女も思いがけない小田の一言に、思わず反応してしまったのだろう。 その驚愕の表情と似たような顔を、きっと今のあたしもしているはずだ。 周りを驚かせた本人である小田は、澄んだ瞳であたしのことをジッと見つめていた。 意味深な言葉とは裏腹に、特に深刻そうな顔...
  • ロボキッス(まーどぅー編)
    2016年も気づけばもう3月。 今日無事ゲネプロも終了し、春のツアー本番が本格的に近づいていた。 ライブで一体どんな充実した空間を作り上げられるか、今からホンマに待ち遠しい。 もちろんそれは、歌やダンスなどパフォーマンス面でもそうやけど、 それ以上に、曲の合間のフリーな部分でのメンバー同士のイチャイチャや、 マイクを落とすとか思わぬハプニングをきっかけに垣間見える人間関係などなど、 想像しただけでもうワクワクが止まらへん。 道重さんが鞘師さんの唇を強引に奪ったようなことはさすがにないやろうけど、 ほっぺた程度ならチューするメンバーも絶対おるんやろうな。 その瞬間を見逃さず、しっかりと瞼の裏に焼き付けておかんと。 ちなみに「瞼の裏に焼き付ける」というのは比喩でもなんでもなく、 「脳内カメラの魔法」という、まばたき一つでその瞬間の光景を鮮明に 記憶しておくことができる素晴らしい魔法を、道重さん...
  • 17歳の恋なんて
    「恋は勘違いから始まる」 恋愛に関する格言の一つに、こんな言葉があるそうです。 必ずしも恋愛の全てが全てそうだとは思いませんが、 確かに勘違いをきっかけに始まる恋が多いというのも事実でしょう。 ではなぜ、勘違いが生じてしまうのでしょうか? それは、自分の行動、そして言葉が、意図した通りに相手に伝わるとは限らないから。 ……という、当たり前と言えば当たり前すぎる答えが、大きな要因だと思われます。 意を決して伝えた言葉がまったく相手に響かないこともあれば、 意図せぬ何気ない一言が相手の心を大きく震わせることもあります。 両者の認識の差異が思わぬ誤解や勘違いを生み、 そこから恋の始まりやすれ違いへと繋がっていく。 だからこそ恋愛は一筋縄ではいかない当事者にとっては難解極まりないものであり、 逆に傍観する側からすれば、世間には恋愛を題材とした漫画やドラマが溢れているように、 見ていてこんなに面白い...
  • 本編18 『おかえり』
    ▼   煙る雨の中を里保と衣梨奈が飛ぶ。 春菜は衣梨奈のスケボーにしがみつき、遥を担いだ優樹が森の中を駆けていた。 様々なイレギュラーを考慮に入れていたけれど、不測の事態は殆ど無く、 かなりの余力を残したまま優樹を連れ出すことに成功した。 仮拘置所から数十キロをひた走り、 森の中を流れる小川のほとりで里保達は一度地に降りた。 優樹もそれを受け、立ち止まり人の姿に戻る。 雨で川の水嵩が増している。 降り注ぐ雨に木の葉が揺られ 轟々と流れる川の水も煩い。 大きな木の下で改めて身を休め、それぞれが濡れそぼった服を乾かしていた。 優樹の姿を見て、遥の目が潤む。 優樹も、小さく遥の名を呼び、抱き付いた。 里保が感覚を研ぎ澄ます。 見られている、追跡されているという感じは無かった。 けれども、自分の感覚が絶対だとは言えない。 「はるなん、どう?追われてるかな?」 里保の問いに、春菜は黒猫の姿のまま少...
  • 本編16 『出撃』
    ▼ 里保と衣梨奈と優樹が出立した日の翌日、いつもと同じように夜が訪れる。 深夜、遥は悶々とした気持ちを抱え衣梨奈たちの帰りを待っていた。 二日の間、さゆみと二人だけで暮らした。 さゆみは多くを言わず、ただ変わらない優しさを遥に注いでくれる。 それが遥の心に小さく瑕をつけた。 結局、何一つ恩を返せないまま、ここを出ることになる。 助けてくれたことも、泊めてくれたことも、優しくしてくれたことも。 せめてもと思い、遥はこの二日間でさゆみの家を隅々まで掃除し、 率先して食材や日用品の買い出しをした。 そんなことはさゆみのくれた微笑の一つの対価にもならないと思いながら。 思いが色々な場所に飛び跳ねる。 さゆみのこと、亜佑美のこと、衣梨奈のこと、里保のこと、春菜のこと、 そして優樹のこと。 どこに跳んでも、愉快な気持ちにはなれない。 もう作戦は始まっていて、順調ならば今頃優樹は一人ぼっちになっている...
  • 第四章 永遠の終わりとはじまり
      「あ~面白かった」 「まーちゃん何があったか覚えてるの?」 バリバリと音をさせて煎餅を食べながらご満悦の優樹に、亜佑美が驚いたように尋ねる。 「もちろん! どぅーとやすしさんに会ったよ」 「あ~でも、あたしも里保ちゃんに会えたような気がする。ただの夢かもしれないけど」 「聖も多分どぅーに会えたかも」 「そう言われてみるとうちも鞘師さんに会ったのかな? まーちゃん他に残ってる記憶とかあるの?」 「う~ん、なんかとっても楽しかったことだけはよく覚えてるよ」 「やっぱり優樹ちゃんも具体的なことはわかんないのか」 気絶から回復した4人は、一仕事を終えた和やかな雰囲気で紅茶を手に談笑していた。 しかし衣梨奈だけは、眉間にしわを寄せて険しい表情のまま会話にも加わらなかった。 オダベチカは連れてきたものの、他にえりができることは何かないんだろうか。 みんなのようにわかりやすく力になりたいのだけど、 ...
  • マーガレットの話 4
    ◇ 「舞踏会のドレスが無いわ。じいや!ばあや!」 マーガレットの声が響く。 いつもと変わらない光景。 クランの少女達は、誰もその声に耳を傾けることは無い。 「ねえ、どこなの!」 マーガレットと目が合わぬように、少女達が視線を逸らす。 ある物は侮蔑の目で彼女を眺めた。 雨のクランの遊戯室にマーガレットが現れると、自然にその周りから人が居なくなる。 頭のおかしい少女マーガレットと、関わり合いになりたいと思う者は誰もいなかった。 マーガレットは何を分からず、どうして自分の周りに誰も居ないのか理解出来ない。 お城の中の視線は全て自分を蔑んでいて、プリンセスに対する敬意の欠片も見当たらない。 不安で、マーガレットは叫び続けた。 どうすることも出来なくて、寂しくて叫び続ける。 目に涙を浮かべながら、マーガレットは毎日自分の存在を主張し続...
  • スマホになりたい
    目を覚ますと、私はスマホだった。 何でこんなことになってしまったのか、もちろん理由はさっぱりわからない。 ……と、言いたいところだけれど、実は心当たりがないわけでもない。 考えられる可能性はただ一つ。 私自身が、スマホになりたいと願ったから。 それもただのスマホではなくて。 それは……。 ♪We re BRAND NEW MORNING! 新時代の幕開け!! ♪We re BRAND NEW MORNING! 時間(とき)を超えて行くぞ!! スマホになった私から、大音量で「BRAND NEW MORNING」が流れ出す。 セットされていた目覚ましが、設定時間になり稼働したためだ。 そして目覚ましを掛けた持ち主は、大音量にすぐに反応して起き上がる……こともなく、 まったく耳に入ってもいないかのように、スヤスヤと眠りの世界に浸り込んだままだった。 その安らかな横顔に私はそれだけで蕩けそうにな...
  • 夕陽に黄昏
    黄昏時。  太陽が沈みうっすらと夕焼けの名残が残る、空が闇に覆われる直前の時刻。  魔のモノが多く出没するという「逢魔が時」でもある。  「近道しようなんて横着するんじゃなかったな」  神社の裏手、木々の間を縫うように続く小径の途中。  帰宅が遅くなりつい裏道を選択したことを、聖はひとり後悔していた。  昼間であれば木漏れ日が気持ち良い散歩道でも、  この時間帯になると様相が一変し、何が出てもおかしくないような  得体の知れない不気味さを感じてしまうのは、辺りの暗さのせいだろうか。  「薄……」  ……暗くてなんか怖い、と続けようとして思いとどまる。  口に出すと余計に怖くなりそうだったから。  「……ましたか?」  「ひぃっ!」 後方から突然声をかけられ、聖は思わず悲鳴を上げる。  それは囁くような小さな声音で、一瞬空耳かと疑う。  いや、空耳であってほしいと念じながらそっと振り向く...
  • 色っぽい じれったい
    半年に一回のハロコン大阪公演。 この時だけ、お泊りで12期が4人部屋になる、年に2回だけ訪れる特別な日や。 だから12期のみんなはこの日が来るのを特に楽しみにしとるし、 それこそハイテンションになるんもようわかるんやけど。 でも、あの日はなんだか、いつもと様子が違ったんや……。 1日目の公演も無事終了し、ライブの疲れも感じさせんくらい騒がしくお喋りしながら ホテルの部屋に到着したうちら4人は、まずはそれぞれ自分のベッドを確保する。 この部屋の利用もこれで3回目だけに、揉めることもなくあっさり定位置に収まり、 荷物を投げ捨てて思いっきりベッドに寝転びやっと身体を休めることができた。 本当はこのままダラダラしていたかったんやけど、そういうわけにもいかん。 あと30分ちょいもしたら、みんなで集まってハロコンの反省会があるんや。 その前にできれば軽くお風呂に入ってライブの汗を流したくもなるんやけ...
  • 本編10 『おとなの階段』
    ▼   遥は窓から差し込む強い日差しに瞼を擽られて目を覚ました。 どこだかも分からない部屋の、知らないベッドの上で自分が寝ていることを 夢現の中でぼんやりと受け入れる。 楽しい夢を見ていた。 目が覚めてから、どんどんと楽しくない想念が流れ込む。 どちらが現実で、どちらが夢。それも時間が経つにつれ、ちょっとずつ頭が受け入れた。 楽しくない方が現実だ。 夢の内容は殆ど覚えていないけれど、少し懐かしい気がする。 ようやくはっきりと目覚め、取り敢えず身体を起こした遥は、仲間のことを思い出していた。 遥は協会の施設で魔道士の卵として育った。 別に大層な目的があったわけでもなく、ただ身寄りのない魔道士の子供が 寄せ集められて育つ孤児院のような場所だったけれど、遥にとっては大切な家。 そこで一緒に育った仲間とは、掴み合いの喧嘩も数え切れないほどした。 大好きな友達だった。 でも多分、もう会うことは出来な...
  • バッドエンド ~傍観の代償~
    「ご用件はなんでしょう」  会長の執務室。緊急の用件があるとして呼び出された執行局局長が、会長に訊ねる。  「時間がないので本題から入らせてもらう。  仮拘置所が襲撃を受け、そこにいた狗族の子供がさらわれた。  いや、奪還されたという言い方が正確かもしれんな」  「なんですと!」  「監視カメラは破壊されて使い物にならなかったが、  諜報部によってすでに襲撃者達の足取りは掴んでいる」  「わかりました、至急メンバーを集めて捕獲チームを編成します」  「そう。本来ならこのような暴挙をおこなった犯人は、  協会の威信をかけて必ず捕らえねばならんのだが……」  会長の言い回しに嫌な予感を覚える。そしてそれはすぐに現実のものとなった。  「犯人グループの中にな。生田局長、君の娘2人の姿があるという連絡を受けてな」  「!!」 「もちろん、たとえ身内だろうが子供だろうが、このような重罪を見逃すわけ...
  • 本編11 『好晴/暗雲』
    ▼   その部屋はもう随分長い間、物置として使われていた。 大きめのベッドが一つあるから、小さな優樹と遥が一緒に寝るには 充分だけれど、その上には埃が積もっている。 それに、部屋にはよく分からない大小様々な物が埃を被ったまま置いてあった。 「うーん、まずこの物をどげんかせんといかんね。 道重さん、これどうします?」 部屋の様子を改めて確認した衣梨奈がさゆみに尋ねる。 「使って無いものだし、捨てちゃっていいよ。欲しいものがあればあげるけど」 里保はそれを聞いて勿体無いと思ったけれど口に出さなかった。 そういう割り切れない考えが片付け下手にしているのだと 以前衣梨奈に指摘されたこともあったから。 「ここって聖とか香音ちゃんが入っても大丈夫ですか?」 「たぶん危ないものは無いはず。書庫とかさゆみの研究部屋には入らないようにね」 さゆみが一応の注意を促して、後を任せると 一同が部屋の中に入っていっ...
  • スプ水先生の奇跡【最終章】 ~最後の魔法~(前)
    今日もまた一日が始まる。 打ちひしがれた心をどうにか奮い立たせて、 みんなの前ではせめて動揺を表に出すことのないようにと腹を括って、 本当は合わせる顔もない野中氏とも表面上は何もなかったように振舞って、 自分自身を偽り続けながら、それでも時は流れていく。 いつまでこんな寒々とした想いを抱え続けていくんやろうか。 もしかしたら永遠に消えることがないかもしれない、この胸の痛み。 でも、それも仕方のないことなんや。 胸の奥から湧き起こり止むことのない恐怖に打ち震えて、 足がすくんで身動きも取れない今のはるなにできることは、ただ一つだけ。 何もかも、全てから目を逸らして生きていく。 たとえはるなの胸の内がどんなに激しく暴れていても、 野中氏の悲しげな顔が脳裏に焼き付いて離れなくても、 全部なかったことにして、心の中を無にして耐え忍んで、 荒れ狂う嵐がいつか収まってくれることを密かに願いながら、 他...
  • 恐怖の晩餐
    「ねえ、知ってる?」 その言葉とともに、まさは強い眩暈に襲われて思わず目を閉じた。 夜の嵐に揉みくちゃにされる小船のように、地面がグニャグニャと歪む。 とにかく倒れないように大地を踏みしめ、ただひたすらに耐える。 ようやく落ち着いてきたのを感じ、ゆっくりと目を開けると、 まさの前にいたのはズッキさんとふくぬらさんだった。 でも……。なんだろう、2人ともいつもと様子が違う。 普段のニコニコと楽しそうな笑顔じゃなく、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべて、 頭の天辺から足の爪先までまさのことを舐めるようにねっとりとした視線を送ってくる。 なんだか……怖い。 「まーちゃんってさぁ、すごい美味しそうだよね」 美味し!? どういうこと? 「うん、そうだよね。聖の好みからはちょっと外れるけど、 美味しそうだってことはよくわかるよ」 「特にさぁ……」 ズッキさんの視線が、まさの脚へと注がれる。 「そのモモ...
  • 今春上映
    ――だれだろぉ??ww ばーい 突然失踪したまーどぅーの2人。戸惑うみんなの元に送られてきたのは、優樹からの一通のメールだった。 ――なんでこんなことに…… 優樹の放つ悋気が強大な魔力となってM13地区全体を覆い、仲間が次々と正気を失っていく。 ――それでうちのものになるというのなら……。えりぽんをシャンデリアにするんだ!! そしてついには里保までも。 ――黒幕という存在をご存じない? 追い詰められた衣梨奈に手を差し伸べる不思議な少女。 ――生田さんと私の『歌声の魔法』を重ね合わせることができればきっと…… はたして衣梨奈は、優樹の悋気を解き放ち仲間を助け出すことができるか。 ――#佐藤優樹さんへの報告はお控え下さい 「魔法使いえりぽん外伝 ~生田と謎のシャンデリア~」 Coming Soon(嘘)   ※参考 爆笑佐藤優樹chanhttp //ameblo.jp/morning...
  • 本編23 『少女たちの選択肢』
    ▼ 定食屋さんを出ても相変わらず行く宛ての無かった9人は いよいよ強さを増した風を避ける為にもと、街で一番大きなショッピングモールに入ることにした。 建物内には外の暴風を感じさせない穏やかな音楽が流れていて 賑やかな装飾の店が並んでいる。 特にこの街独特というわけでもない、どこにでもありそうなショッピングモールだけれど 年若い女の子達にとってウインドウショッピングはやっぱり心躍った。 衣梨奈達と緩く会話をしながら さくらは定食屋さんで思いついたことをずっと考えていた。 自分が街を離れなければならない時間。 大魔女がどれくらい、自分の事、『先生』のことを察知しているのか。 そして二人の気持ち。 障害が多い。 何度も考えて、確実と言える方法は無いことを改めて確認する。 一番の問題は、聖と香音の気持ち。 二人に事情を説明して、納得した上で一緒に来てもらう。 それが理想だけれど、もうきちんと説得す...
  • 本編21 『不思議な女の子』
    ▼ 夏の暮れ。 煌々たる月光に照らされ静かにうねる海面の上空を薄雲を縫ってそれは飛んでいた。 巨大な漆黒の翼をゆっくりとはためかせ、風を巻き起こしながら竜が飛ぶ。 その羽音は独特の音色で、波音に混ざって遥か遠くまで響いていた。 「ふわぁ。お前本当に速いね」 飛竜の首に少女が跨っている。 少女の名前は、小田さくらという。 キラキラとした水面や、満天の星空、次々に後ろに流れていく雲の欠片に目を輝かせていたさくらは、 遥か遠くに海岸の灯りを見つけて言った。 話しかけられた飛竜は特に反応もせずただ前だけを見て一定の速度で羽を動かしている。 さくらはそんな無愛想を気にもせず嬉しそうに微笑んだ。 「私のことば、分かるのかな?でも先生の言葉が分かるんだから、きっと分かるんだよね」 さくらがその大きな首を撫でると、飛竜は一度瞬きをした。 さくらはもう一度楽しそうに笑って、視線を前に戻した。 「すごい。...
  • 涙ッチ
    それは京都公演も無事終了し、東京公演に向けての舞台稽古の前のことやった。 ちょうどメンバー全員が集まっている時に、 マネージャーさんより衝撃の情報が告げられた。 新垣里沙さんの結婚。 新垣さんといえば、「愛ガキ」「ガキカメ」という偉大なカプを生み出した カプヲタ界隈にとっても大きな存在感を示す先輩の一人や。 ただ新垣さんのキャラ故かカプ特有の湿り気はあまりなく、 どちらかと言えば名(迷?)コンビとしてのイメージが強いというのはあるんやけど。 ラブコメとしての新垣さんのカプやったらそれこそ、 某屋根スレの「俺ガキ」の方がよっぽど……おっと、ついつい話が逸れるところやった。 そして、現メンバーにも繋がる新垣さんの主要カプがもう一つ。 それが、新垣さんと生田さんの「生ガキ」。 生田さんが新垣さんLOVEなことは当然周知の事実やったからこそ、 新垣さんの結婚話を聞いた時、はるなのみならずメンバー...
  • 本編34 『台風一過』
    ▼   飛竜に乗って舞い戻ったM13地区は、秋だった。 昨夜の台風で散り散りに飛ばされ、道に張り付いた濡れた木の葉を 穏やかな高い空が見下ろしている。 まるで昨日とは何もかも違っているような街の様子が 子供たちに酷く懐かしい感覚を起こさせた。 一晩の戦いにどんな意味があったのかは誰にも分からないまま 確かな変化を齎している。 それは季節の移ろいのように、自然なこと。 朝の街の上に竜が飛来したことに色めき立った街の魔道士たちも さゆみの目論見通り、それが道重邸の庭に降り立ったのを認め 直ぐに日常へと戻った。 飛竜は10人の乗員を全て下すとまた飛び立ち、島へと帰っていった。 いろいろなことを後回しにする。 子供たちは、もう殆ど眠気に抗えなくなっていたから。 聖と香音をそれぞれの家に送ると、 衣梨奈、里保、亜佑美、優樹、遥、春菜、そしてさくらは 道重家のリビングのソファの上で泥のように眠りに...
  • ドラマティック モンスター
    きっかけは、よくある些細な日常の一コマだった。 「鞘師さんと生田さんって、ホント仲いいですよね~」 「やすしさんはうぃくたさんのことが大好きだから」 事あるごとにからかい交じりで冷やかされ、 さすがの里保も我慢の限界とばかりついに声を荒げた。 「ちょっともういい加減にしてよ! 人の言動を勝手にドラマティックに解釈したり、 うちがえりぽんのことを大好きすぎるとか勝手に決めつけたりされても ホントいい迷惑なんだからさ!! 別にうちはえりぽんのことなんて大好きじゃないし。 ……普通。うん、ドラマティックじゃなくて 他のみんなと同じ普通でしかないんだから!!」 その言葉に過剰に反応したのが、まるで自分のことを否定されたように 受け止めてしまった衣梨奈だった。 「何それ。 そんなこと言ったらえりの方が巻き込まれてよっぽど迷惑やけん。 里保のことなんかえりも別に普通やし、 えりにとっては里保よりも聖の...
  • 黒猫の追憶
    ――年に一度、大熱を出して寝込むことがある。 ――独りベッドで身体をギュッと丸め、ただひたすらに回復の時を待つ。 ――朦朧とした意識の中で、いつも必ずある夢を見る。 ――いや違う。いつも必ずある夢を見ていたことを思い出す。 ――それは私が、夢の中だけでもまた会いたいと心の奥底で願っていたあのお方の記憶。 ――そして、夢の中でも二度と体感したくはないと怯えるあの日の記憶……。 … … … いつの頃からはわかりません。 私は、使い魔としてご主人様にお仕えしていました。 それ以前の記憶はないので、きっとご主人様に直接見いだされたか召喚されたのでしょう。 ご主人様はとってもお優しい方です。 使い魔といっても所詮はただの黒猫、簡単な魔法が使える程度で 私ができるお手伝いなどたかが知れたもの。 それでもご主人様は、こんな私に仕事一つ頼むのにも丁寧に導いてくださいます。 そして私が仕事の完了を報告...
  • ツワモノどもが夢の中
      ※「外伝」内所収の「里保の初夢」を先に軽く目を通しておくと 導入部分の内容がすんなり入ってくるかもしれません 【Side R】 もしも自分が魔道士でなかったら。 以前、そんなことを密かに夢想していた時期があった。 その想いに一区切りをつけるきっかけとなったのは、一夜の夢によって。 夢の中でまったく違う人生を体験することで、仲間とともに今を生きることの大切さを実感し、 それからは無暗にありえない夢想に耽るようなこともなくなった。 でも……。 あの時の夢は、今もうちの記憶の奥底にしっかりと息づいている。 それは甘酸っぱい思い出とともに、時に切なくうちの心を締め付けてくるんだ。 ○ そして今。 まさかあの夢の続きをまた見ることができるだなんて、思ってもいなかった。 それはまるで夢のようだ……というか正真正銘の夢の中なんだけど。 うちの周りにはかけがえのない仲間達の姿が。 えりぽんがいる...
  • 本編7 『交錯』
    ▼ 里保は鉛のように重い気持ちを抱えたまま 局長への報告をしていた。 『そうか……わかった、仕方ない。これからのことはこちらで検討する。 無理を言って済まなかったな。取り敢えず休んでくれ。里保、怪我は無いか?』 いつになく打ち沈んだ局長の声に、里保の肩がズキリと痛む。 「……はい、大丈夫です。すみません」 『気にするな』 「いまからでも……まだ、追えます。二人はかなりのダメージを負ってます。 今から追えば、簡単に捕まえられますし、そうすれば」 『駄目だ!……もう二人はM13地区の中にいる。分かっているだろう』 分かっていた。 M13地区の中で、協会魔道士として二人を捕まえることは出来ない。 以前戦闘したことはあるが、それは一魔道士としての『勝負』だった。 今は街の魔道士達も里保への感心を薄めている。 でももし、里保が協会魔道士として二人を捕まえれば たちどころにその情報は伝わって、街の...
  • ねたみやっかみと甘いケーキ
    「ありがとうございます!好きです!」 手が塞がってるれいなちゃんのためにドアを開けたら、 彼女は輝くような笑みでこんなことを言ってきた。 可愛すぎかっ!!!!笑 横山玲奈ちゃんはいつも私のところに来てくれて嬉しい。 れいなちゃんの飛び切りの笑顔を見ているだけでほっこりした気持ちになるんだけど、 でもそれとともに、ふとした瞬間にどうしようもなく 加賀さんの幻影をれいなちゃんの隣に感じてしまう。 モーニング娘。 17の13期メンバーの二人のコンビはとにかく良きすぎる!! 超可愛い!(複雑な気持ちは、ないよ、、) 見た目から身長差から何から何まで「絵になる二人」だと思う。 ハロ!ステで13期の発表シーンを見た時の衝撃は今でも記憶に深く刻み込まれている。 自分の同期がれいなちゃんだと知った加賀さんが一度は膝から崩れ落ち、 そしてハグして二人人泣き合ったあの瞬間、あやかの中で全ての時が動きを止めた。...
  • スプ水先生の奇跡【最終章】  ~黒幕達の想い~
    「そろそろみんな本格的に煮詰まってきたようなの」 「そうですね。じゃあ私が最後のひと押しを……」 「大丈夫、その必要はないから。だって…………」 「だって?」 「もうとっくに、始まってる」 「…………。 もしかして道重さん、その『恋ならとっくに始まってる』のセリフを ただ言いたかっただけってことはないですよね?」 「フフフ、別にそれだけが理由じゃないの」 「『それだけが』ってことは、それも理由の一つではあるってことじゃないですか」 「まあそれはともかくとして。 ここまで来たらもう背中を押すまでもないから、 最後のお膳立てだけきちんと整えてあげて、 後はクライマックスをじっくりと堪能させてもらうことにするの」 「そうですね。これまで色々手回ししてきた分、 存分に楽しませてもらいましょう」 「うん。この立ち位置はさゆみ達だけの特権だからね」 「はい」 「「ウフフフフフフフ…………」」 (おし...
  • スプ水先生の奇跡【最終章】  ~牧野真莉愛の想い~
    それは2016年もあと数日で終わろうという、年末のある日。 12期の4人でLINE LIVEを放映したんだけど、 「モーニング娘。 16の12期ニュース」というテーマで話し合った時、 はーちんがまりあにとってすっごい嬉しいことを言ってくれたんだ。 「私は2016年の夏に、まりあちゃんと、あのお仕事帰りに歩いてたら、 お祭りを発見して、2人で、多分東京に来て初めてやったんですけど春水は、 一緒にお祭りに行ったってことが一番思い出ですね。かき氷を食べたりしました」 まりあにとっても強く思い出に残ってるあの日の出来事。 はーちんもまりあと思いは同じだったんだ。 「まりあは、綿菓子食べて、はーちんは、かき氷を食べて」 「そうなんですよ」 はーちんの両肩に後ろから手を置いてアピールしながら、 あの時の気持ちの高揚をどうにか表現しようとするまりあ。 「2人でね、その時にお祭り見つけてキャーお祭りだ―!...
  • 本編8 『シュワポカーの夜』
    ▼   衣梨奈が優樹の身体を客室のベッドへ寝かせる。 それを確認したさゆみが、聖達を居間の方へ促した。 家に上がり込むことを渋っていたお手伝いさんも、さゆみに促されて後に続く。 遥も気を張り詰めながら取り敢えず従った。 「様子を見てみます。すぐ戻るので、少し待っててね。 生田、ちょっと手伝って。りほりほ、お客さんにお茶を出して上げて」 「はい」 さゆみが言い、衣梨奈が返事をする。 里保は、戸惑いながらも頷いてキッチンに向かった。 さゆみの家のヘンテコな居間で 聖と遥とお手伝いさんが、居心地悪く腰掛ける。 聖は、ようやく腰を落ち着けてから まるで分からない状況に、酷く戸惑いを覚え始めていた。 何故、あの子は怪我をしていたのか。 何故病院では治せないのか。何故遥は他の病院に移すことを拒否したのか。 そして、何故さゆみには治せるのか。 柔らかい光に包まれたリビングの、面白い形の椅子に腰掛けな...
  • 女の園(よこでぃー編)
    「ちょっと横山ちゃん、髪飾りがズレてるよ!」 「あれっ? ズレちゃってますか?」 「私が直してあげるから動かないでね」 「ありがとうございます野中さん」 野中さんとよこよこの楽屋での微笑ましいやり取りを、 私は少し離れた席で見るともなく見ていた。 よこよこは野中さんと仲がいい。 いや正確には、よこよこは先輩全員から可愛がられていて、 中でも野中さんとは特に仲がいい、と言うべきだろう。 私も別に仲が悪いとか疎遠な先輩がいるわけではないけど、 よこよこのコミュニケーション能力には到底かないっこないと、 すでに半ば諦めの境地に達してしまっている。 「ホントすごいよね、横山ちゃんの妹力は」 私の思考をまるで読んでいたかのように話しかけてきたのは、飯窪さんだった。 「誰にでも物怖じすることなく近寄っていって 気軽に話しかけていけるんだから、それだけで一種の才能だよね。 あの可愛らしい笑顔を向けられ...
  • 捲土重来!
      ついにこの時が訪れた! ハルは、目の前に対峙する里保を眼光鋭く睨みつけた。 一方の里保はまったく余裕の表情を崩さず、心なしか楽しげですらある。 それがまたハルの癇に障った。 こいつはまーちゃんのことを傷つけたにっくき相手。 いやそれ以上に自分自身許せないのは、その時こいつと勝負を交わし負けていることだ。 その後、大魔女さゆみの仲介によりいつの間にか仲直りしたみたいになっているが、 あの悔しさをハルは片時も忘れたことはなく、 いつか必ずリベンジを! と、密かに牙を研いでいたのだ。 そして今、捲土重来の絶好の機会を前に、ハルは気持ちの高揚を抑えきれなかった。 両者が、まるで示し合わせたかのようにゆっくりと動き出す。 1対1の勝負では、格下の者が格上の者の周りを回るという話もあるそうだが、 今回は2人とも同じように、一定の距離を置いて時計回りに綺麗な円を描いていた。 まるでメロディに合わせ...
  • 上映予告
      ――「知の帰還」ねぇ。よりによってなんでこのタイミングで…… 始まりは、G.Mよりさゆみの元に送られてきたほんの一言の警告メールだった。 ――あぬみんよりちっこい魔道士なんて、まさ初めて見たかも 長きに渡る闇の封印を破り、彼女がM13地区へと姿を現す。 ――同期だから言うわけじゃないけど、そんな悪い娘じゃないのよ。ただ……天性のトラブルメーカーなだけ 彼女の暗躍により、仲間達の絆が無残にも引き裂かれていく。 ――はるなんだっけ? あんたのトークなかなか見込みあるね。オイラの弟子にしてやろっか 彼女の目的はいったい。 ――え、えりぽんなんて…………大っ嫌い!! そして生田は再び仲間の絆を取り戻し、この街に平和を齎すことができるか。 ――もうこれ以上、お前の好き勝手にはさせない!!! 「魔法使いえりぽん外伝 ~生田と知の魔法使い~」 Coming Soon(嘘)  
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          ハロプロ@2ch掲示板 モ娘(狼)の小説スレ 娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』のまとめサイトです     ▼娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 54  http //hanabi.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1479812811/ ▼避難所 魔法使いえりぽん避難所Part2http //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20619/1438181952/ 娘。小説『魔法使いえりぽん』.避難所http //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20619/1401159235/     ▼youtube 動画娘。 小説 『魔法使い えりぽん』   ◆娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 RPG風ver3.1 本編あゆみん編までと、りほりほ、香音ち...
  • 本編1 『りほりほ引っ越す』
    ▼ 「失礼します」 鞘師里保は一つ深呼吸をして、戸をくぐった。 深く椅子に腰掛けた50絡みの男が、里保を迎え入れる。 「ご苦労。まあ、楽にしてくれ」 「はい」 男の前まで歩み出た里保は少しだけ肩の力を抜いた。 相手の表情が幾分柔らかかったこともある。 きっとそんなに悪い話では無いのだろう。 「早速だが、お前の担当地区が決まった」 「はい」 事前にそのことは聞かされていた。 問題は自分がどこの地区で戦うことになるのか。 とは言っても、里保にとって場所はどこでもよかった。 なるべく自分の力を試せ、伸ばせる、最前線と呼べる場所であるなら申し分無い。 「特に希望は無い、ということだったが、本当にそれで良かったのか?」 「はい、私は自分の力を活かし戦える場所ならばどこでも構いません」 どこまでも真面目な里保の物...
  • えりの知らない物語
      ――いつもどおりのある日の事 君は突然立ち上がり言った「今夜星を見に行こう」 えりぽんの誘いは、いつも突然でそして強引だ。 夕飯を食べ終え、自室で2人まったりしている時に、 えりぽんはいきなり腰かけていたベッドから勢いよく立ち上がり言った。 「今夜星を見に行こう!」 「今夜って、今から?」 「もちろん!」 「今からって、誰と行くのさ?」 「えりと里保の2人で」 うちが断るはずはないと、ハナから決めつけているような満面の笑み。 それがなんだか悔しくて、うちもせめてもの抵抗をしてみる。 「でも、こんな時間に出かけたら色々五月蠅く言われるんじゃない?」 「だから、2人でこっそり家を抜け出すっちゃよ。ドキドキして楽しかろ?」 結局、一度言い出したら聞かないえりぽんの強引な誘いを断れるはずもなく、 2人してこっそりと家を抜け出すこととなった。 誰にも見咎められることなくすんなりと外出できたのは拍...
  • 本編22 『台風』
    ▼ さくらは衣梨奈達に別れを告げると、急ぎ足で夕暮れの街を駆け出した。 どこに向かおうと考えて、今朝休んだ神社を目指す。 だけど途中で、あそこはダメだと思い直した。 走って、もう衣梨奈や優樹達から十分に離れたことを感じ、さくらは一度立ち止まった。 それから息を整え、ゆっくりと歩く。 一気に汗が噴き出し、身体が風に冷まされていった。 「はぁ、薬の効果思ったよりずっと短いなぁ…」 とぼとぼと歩きながら独りごちる。 この街にいられる時間も思った以上に少ない。 衣梨奈に対して少なめに滞在時間を申告したけれど、残りの薬の量を考えると 本当に明後日いっぱいがギリギリだと思えた。 それまでに目的の二人が見つけられるだろうか。 だけどさくらには、そのことについての不安は驚く程に無かった。 昼間口にしたように、見つかるならば見つかるし、見つからなければ見つからない。 それでいいと思った。 もし見つからない...
  • 嘆きの先にある光(リリウム編)
      魔法使いえりぽんと演劇女子部 ミュージカル「lilium-リリウム 少女純潔歌劇-」の世界のコラボSSです ※リリウムの完全なネタバレが盛り込まれています 第一章 異界からの誘い第二章 冷たい雨のクラン第三章 深まる混迷第四章 永遠の終わりとはじまり第五章 深愛の果てにあとがき
  • 『笑顔』過去編 第三章
      まだ昼には早い街中を、私はひたすら走り続けた。 向かう先は、はるなんの家。 家の場所は、初めて会った時に訊いていてわかっている。 そうだ・・・私の家から、意外と近くにあるんだった。 全力疾走。今までこんなに走ったことってあったっけ? 心臓が悲鳴をあげる。膝もがくがくする。 でも・・・構わなかった。止まらなかった。 顔が、体が熱くてたまらないのは、走っているからだけではないと思う。 はるなんに、会う。 そして・・・ わからないこと、彼女のわからないことを、全部訊く。 そう決心したら・・・してしまったら。 なんだかもう、足が止まらないんだ。 『頭で考えずに、全力でぶつかってこい!』 あの人の言葉が胸に響く。 私は、自分で単純だなぁとも思う。 絵が話しかけてくることに、心を動かされてしまって。 あの人が、一体なんなのかもわからないのに・・・ でも、単純でよかった。素直でよかった。 だから、今...
  • 私の魅力に 気付かない鈍感な人
    まりあが横から思いっきり抱きつくと、尾形ちゃんはわざとらしく顔を顰めた。 そんなことを気にもせずそのままの勢いでほっぺにチューしたら、 尾形ちゃんはいかにも嫌そうな顔でまるで変顔をしてるようになっちゃった。 これが尾形ちゃんとまりあの関係。 でも今はこれでいいんだ。 尾形ちゃんが本気で嫌がってるわけじゃないことくらいまりあもよくわかってるし、 それに、まりあは尾形ちゃんのことが大大大好きなんだから!!! ○ 「このツアーの間に、尾形ちゃんと仲良くなる!!」 なんて宣言をしたのは、去年の春ツアーのこと。 積極的に尾形ちゃんとお話しする機会も作って、 確かに加入当初よりはずっと仲良くなれたと思う。 でも、尾形ちゃんがまりあに接する時の態度は、 野中ちゃんやあかねちんが相手の時とはなんか違うんだ。 なんというか、よそよそしいってまではいかなくても、 普通に話してるだけならいいけど、それ以上は...
  • くちづけのその後
    今にして思えば、あの時の私は調子に乗りすぎだったかもしれません。 「どうですか、この最新画像は?」 「さすがはるなん、今回もうまく撮れてるの」 「ちょっ、いつの間にハルの寝顔なんか撮ってるんだよ!!」 いつの頃からか、みんなの寝顔をこっそりと激写することが 私のマイブームとなっていました。 後日それを披露した時の楽しげなみんなの反応と、 撮られた本人の悔しがる様子が、より一層の激写欲を駆り立てるのです。 「でもはるなんさぁ、寝てるどぅーを激写しようとこっそり近づいてる時、 前かがみのがに股ですごい不格好だったよ」 「あの格好、はるにゃんこがカニの物真似する時そっくりだった!」 「いいのよ、あの時の私は『妖怪寝顔ばばぁ』だから。 撮るときの格好なんか気にしてちゃ最高の寝顔をゲットできないしね」 「くっそー! 今度はハルがはるなんの不細工な寝顔を激写してやるから!!」 「ふふふ、くどぅーにそん...
  • 本編2 『道重さんの家』
    ▼ 住宅街の一角にその豪邸は一際異彩を放っていた。 門扉の上には可愛らしいうさぎの彫像が二つ、来客を見下ろすように座っている。 奥に見える家は、一見古風な洋館という感じだが、施された意匠には どこか場違いな、和洋の入り乱れた不整合があって その違和感が”魔法使いの家”としての佇まいを際立たせていた。 何より、その家全体から幾重にも雑多な魔力の波が漂っていて その流れに、里保は酔いそうになった。 「これはまた、それっぽい家だね……」 「やろ?」 「よくここに住んでるね」 「慣れやけん」 衣梨奈は相変わらず笑っている。 「ただいま」 衣梨奈が少し首を上げ、二羽のうさぎに声をかけると 石造りのうさぎが挨拶をするように首を傾げた。 それと同時に、門がゆっくりと開く。 雨に濡れたうさぎのうちの一羽がクシャミをするように身を捩ったあと 元の形に戻って動かなくなった。 様々な草花の植えられた庭を抜け...
  • 本編12 『魔道士協会の思惑』
    ▼ 「生田、りほりほ、ちょっと来て」 さゆみの呼びかけに里保は眉をひそめ、衣梨奈と顔を見合わせた。 わざわざ部屋の前まで来て、ドア越しに告げられたその声は静かで色が無い。 普段の優しいさゆみとは、まるで別の人が発したかのよう。 何事だろうと、二人ドアを開けると さゆみはもう階下に降りていて、遥と優樹に同じように声を掛けていた。 夏の夜の室内なのに、何かしら肌寒いような気がして一つ身震いする。 それはさゆみの纏う空気の所為だと思った。 里保達がリビングに降りると、さゆみは椅子に深く腰掛けていた。 里保と衣梨奈、それに遥と優樹が続いて入ってきても、視線を動かさず、 パソコンの画面とは少しずれた中空を見つめている。 その顔には、いつも湛えていた微笑が無かった。 玄関のドアが開く音が聞こえる。 続いて遠慮がちな声が響いた。 「おじゃまします」 里保はその声が春菜のものだとすぐ分かったけれど その...
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