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*リトル・ボーイ・ブルー #amazon(4789713180,right,image) 題名:リトル・ボーイ・ブルー 原題:Little Boy Blue (1981) 作者:Edward Bunker 訳者:村井智之 発行:ソニー・マガジンズ 1998.10.16 初版 価格:\1400  犯罪者はなぜ、またどういう過程を経て犯罪者になってゆくのか? バンカーの自伝にも近いこの作品は、少年が親に捨てられ、孤独に生き、盗み、逃げ、鼠のように捕捉され、そして施設に監禁され、世間への脱走を何度も試みては失敗してゆく、という地獄のようなティーンエイジを描いた衝撃の一冊である。少年であるゆえに純粋で愚かで知恵のない行動が彼らを破滅に追いやってゆくスピードはあまりに悲劇的である。  いやだと叫びたくなるくらいにディテール描写が凄まじく、なぜこんなに辛い本を読んでいるのか自分でわからなくなる。読ませているのは真実の重みであり、人間の尊厳への希求であるとしか言いようがない。だけども、この本は読み終えるとたまらなく愛おしい。  この世で最も有名になった死刑囚ゲイリー・ギルモアの不条理に満ちた一生を実の弟が描いたマイケル・ギルモア『心臓を貫かれて』でもぼくは似たような重さを架せられた。しかしそれは別の人間の不条理な闇への理解であり、生と死の無常への共感でもあった。  それに比べると本書は主人公へのフィット感がさらに激しく強い。その分だけ主人公の怒りが、激しさが異常なものではなく、むしろ戦い以外のなにものでもないということに気づいてゆく。社会という未完成でとても公平さの欠けるシステムの中で取り残されてゆくごく少数の者たち。彼らが少年たちであるから、余計に悲しい。  『ストレートタイム』の主人公であるマックス・デンボが本作中にも登場する。まだ若い闇雲でストレートな少年の姿で。施設の中で。悲劇の渦中で。わずかに別の物語でありながら、本書は『ストレートタイム』にやがて至ってゆく物語であり、より根源的であるだけに、バンカーの間違いなくベスト作品であると思う。 (2000.03.20)

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