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**虚空 原題:Thin Air (1995) 著者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker 訳者:菊池 光 発行:早川書房 1995.12.15 初版 価格:\1,748  フランク・ベルソン部長刑事が撃たれて重傷を負い、その妻リーサが消える。それだけで既に緊迫感のある状況である。  『真紅の歓び』以来の三人称視点の章が、スペンサーのモノローグの合間にサンドイッチされた構成。スペンサーのリズムの合間を、リーサの側の窮状が語られるために、読者の側では危機感が常に張り詰めている。『真紅の歓び』の感想でも書いたように、警察小説やサイコ・サスペンスでは大変に効果的な書き方でありながら、ハードボイルドでは見られることのない手法であるように思う。  パーカーはいろいろな意味でハードボイルドの伝統や方法にこだわっていないのがわかる。まあこれまでのもろもろの事象でも、よくわかってはいる。  一方、サービス精神の一環としてだとぼくは思うのだが、忘れられた頃に忘れられたキャラクターを再登場させてくれる、という面もある。ここでは『スターダスト』でアクション・シーンを請け負ってくれたあのガンマン、チョヨをLAから呼び出し仕事を手伝わせる。ヒスパニック・ギャングの世界に乗り込まねばならないという理由で。  ホークはビルマに行っているらしい。内容は知らないほうがいいような仕事で。  うーむ。まだそんなことを言うのか、いい加減、齢だろうに……と思ってしまうけれども。  スペンサーがスーザンとお寒い下ネタ・ジョークを交わしている間に、他の男たちは実によく働いている、と思うことがよくある。ホークもヴィニィ・モリスもチョヨも。  ラストはまたも『ペーパードール』型に曖昧な決着にしたがるスペンサーの意向を、ヒスパニック・マフィアは許さない。当然。この結末に対し、救い出されたばかりのリーサの方が遥かにタフに見えるのは何故だ。アメリカの男と女の真実を描くという一点においては、このシリーズは常に成功していたのかもしれない。

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